国内の交通事故における死者数は減少傾向にあるが、高齢者の人口増加などを背景として、その減少幅は縮小する傾向にある。そこで、さらなる交通事故死者数低減に向けた対策の一つとして、事故を未然に防ぐ先進安全装置の普及が求められている。先進安全装置としては、カメラやミリ波レーダなどのセンシングデバイスで自動車を検知し、自動ブレーキで衝突を回避するAEB(Automatic Emergency Braking)やカメラで車線上の白線を検知し、車両が白線をはみ出した際にドライバへ警報を行うLDWS(Lane Departure Warning System)などが普及している。また。近年では、センシングデバイスの性能向上や画像処理などのソフト開発の発展に伴い、歩行者や自転車などの自動車に比べて検出が困難な対象も警報や制御の対象にすることが可能になり、高速道路だけではなく一般道のような複雑な道路環境でも作動できるシステムが提案されるなど、先進安全装置の作動する対象や環境が多岐にわたってきている。一方、交通事故低減に向けた先進安全装置開発のためには交通事故データの解析は必須であるが、車両の用途や重量によって交通事故の発生状況や被害が異なる場合も多い。トラックは乗用車と比べて用途や重量が多岐に渡るため、交通事故データの解析を進めていくうえではそれらを十分に加味する必要がある。本投稿では、トラックの先進安全装置開発の取り組みを理解してもらうために、トラックと乗用車の交通事故統計や義務づけされている保安基準の違いについて紹介する。また、トラックにおける先進安全装置の具体的な事例として衝突被害軽減ブレーキ(AEBS:Advanced Emergency Braking System)について紹介する。
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