日本交通科学学会誌
Online ISSN : 2433-4545
Print ISSN : 2188-3874
18 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 高齢期の交通行動と情報処理特性
    小菅 英恵
    2018 年 18 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/21
    ジャーナル フリー
    これまで、歩行者事故の分析では、運転者側と歩行者側の人間特性を考慮した分析がなされてきた。人間の安全行動には外界情報の入力・処理・出力といった情報処理過程がかかわり、高齢歩行者の事故にいたる交通行動の背景には、加齢に伴い低下した情報処理能力やその方略の発達的変化も考えられる。今後、より効果的な高齢歩行者の未然防止対策を検討していくには、高齢期の情報処理特性といった心理背景にも焦点を当て、高齢歩行者の行動を分析していく必要がある。
  • 反町 一博
    2018 年 18 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/21
    ジャーナル フリー
    国内の交通事故における死者数は減少傾向にあるが、高齢者の人口増加などを背景として、その減少幅は縮小する傾向にある。そこで、さらなる交通事故死者数低減に向けた対策の一つとして、事故を未然に防ぐ先進安全装置の普及が求められている。先進安全装置としては、カメラやミリ波レーダなどのセンシングデバイスで自動車を検知し、自動ブレーキで衝突を回避するAEB(Automatic Emergency Braking)やカメラで車線上の白線を検知し、車両が白線をはみ出した際にドライバへ警報を行うLDWS(Lane Departure Warning System)などが普及している。また。近年では、センシングデバイスの性能向上や画像処理などのソフト開発の発展に伴い、歩行者や自転車などの自動車に比べて検出が困難な対象も警報や制御の対象にすることが可能になり、高速道路だけではなく一般道のような複雑な道路環境でも作動できるシステムが提案されるなど、先進安全装置の作動する対象や環境が多岐にわたってきている。一方、交通事故低減に向けた先進安全装置開発のためには交通事故データの解析は必須であるが、車両の用途や重量によって交通事故の発生状況や被害が異なる場合も多い。トラックは乗用車と比べて用途や重量が多岐に渡るため、交通事故データの解析を進めていくうえではそれらを十分に加味する必要がある。本投稿では、トラックの先進安全装置開発の取り組みを理解してもらうために、トラックと乗用車の交通事故統計や義務づけされている保安基準の違いについて紹介する。また、トラックにおける先進安全装置の具体的な事例として衝突被害軽減ブレーキ(AEBS:Advanced Emergency Braking System)について紹介する。
  • 本邦刑事判例からみた運転者の注意義務と問題点について
    馬塲 美年子, 一杉 正仁
    2018 年 18 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/21
    ジャーナル フリー
    視野や色覚に何らかの異常がありながら、運転を継続している人は多い。眼疾患患者が自動車を運転して事故を起こした際の社会的責任を明らかにするために、本邦の刑事判例を検討した。国内で発生した交通死傷事故の刑事裁判例のうち、眼疾患があったと考えられる運転者による自動車事故で、運転者が生存している例を対象とした。対象例の抽出は、既報の報告にしたがって、過去の判例と新聞記事の検索で行った。対象は5例であり、すべて男性であった。年齢が判明している4例の平均年齢は60歳であった。事故時の眼疾患は、白内障が2例、網膜色素変性症、斜視、先天性色覚異常、視野欠損が各1例(重複あり)で、いずれの運転者も事故前から何らかの症状を自覚していた。対象例は、すべて過失犯として起訴され、有罪が4例、無罪が1例であった。有罪例では、運転者の眼疾患が刑事責任の判断に及ぼす影響はほとんどなく、運転者としての基本的な注意義務違反による過失と判断された。眼疾患に罹患している運転者でも、運転を行ううえでは健常者と同等の注意義務を果たすことが求められる。したがって、視野障害や色覚障害がある場合、運転者自身がそれを自覚し、運転時には自らの障害に応じた対処が求められる。このような運転時のリスクや責任を運転者に啓発するとともに、眼疾患や眼症状を有する人における自動車運転可否に関するガイドラインの作成など、医師が注意や指導を行いやすい基盤作りが必要であると考えられた。
  • 6症例の検討
    奥野 隆司, 井上 拓也, 吉田 希, 仲野 剛由, 西岡 拓未, 石黒 望, 一杉 正仁
    2018 年 18 巻 1 号 p. 24-31
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/21
    ジャーナル フリー
    失語症患者において自動車運転再開に必要な言語能力を明らかにすること、失語症患者に対する効果的な運転支援策を明らかにすることを目的に、脳卒中後の失語症患者で運転再開に至った6症例を検討した。失語症の検査として、Standard Language Test of Aphasia(SLTA)を実施した。神経心理学的検査として、Mini Mental State Examination(MMSE)、Trail Making Test(TMT)-AおよびB、Kohs立方体組み合わせテストを実施した。運転の評価・訓練には、簡易ドライビングシミュレーター(DS)を用いた。SLTAにおいて文字認識・理解は全6人で良好であった。一方、6人全員が減点されたのは「口頭命令に従う」・「語の列挙」であった。神経心理学的検査では、MMSEで基準値を下回った者が3人、TMT-Bを完遂できなかった者が1人であった。DSでは、訓練当初から運転能力にほぼ問題のなかった者が3人、訓練当初は運転能力に問題はあったものの徐々に改善がみられた者が3人であった。失語症の検査で文字認識・理解の程度を把握することは重要である。そして、失語症患者では、神経心理学的検査だけで運転再開の可否を判断することは困難であり、DSを用いた運転評価及び訓練が有用であった。失語症患者では、神経心理学的検査や文字認識・理解の程度を評価したうえで、DSを用いた運転能力の評価と訓練を継続的に実施することが重要である。
  • 松井 靖浩, 及川 昌子
    2018 年 18 巻 1 号 p. 32-38
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/21
    ジャーナル フリー
    本稿では、歩行者検知型被害軽減装置を搭載する車両の衝突速度低減時の歩行者の被害軽減効果を明確にすることを目的とし、貨物車を含む車両の衝突速度と歩行者重傷率・死亡率との関係を交通事故実態に基づき分析した。ここでは、公益財団法人交通事故総合分析センター所有の交通事故統合データおよび事故例調査データを使用した。大型貨物車、中型貨物車、小型貨物車、1Box車、セダンを対象として、車両衝突速度が減少した場合の歩行者の傷害状況を分析した。セダンが30km/h以下、小型貨物車および1Box車が20km/h以下、中型貨物車が10km/h以下で歩行者に衝突した場合、死亡率は5%以下となった。大型貨物車は、10km/h以下で歩行者に衝突すると、死亡率が10%以下となった。このように歩行者の死亡率は、車種により異なる傾向を示すことが明らかとなった。また、車両衝突速度が30km/h以上の場合、衝突速度を10km/h低減させるだけでも死亡率は大幅に減少可能なことが示された。交通事故による死傷者を大幅に低減させる技術として、歩行者検知型被害軽減装置への期待は大きい。将来、車両衝突速度を減少させる機能が適切に作動可能な装置として、車種ごとに適切な目標を定めて開発され、貨物車を含む各種車両に適用された場合、交通事故における歩行者の死傷者数の大幅な減少が期待される。
  • 松井 靖浩
    2018 年 18 巻 1 号 p. 39-41
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/21
    ジャーナル フリー
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