日本歯科医学教育学会雑誌
Online ISSN : 2433-1651
Print ISSN : 0914-5133
32 巻 , 2 号
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研究報告
  • 黒木 俊一, 梅澤 幸司, 牧村 英樹, 長濱 文雄, 野本 たかと, 川良 美佐雄
    2016 年 32 巻 2 号 p. 57-63
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    抄録 超高齢社会となり訪問歯科診療を必要とする患者はますます増えてきている. しかし, 訪問歯科診療を実施している歯科診療所の数は少なく, 社会の要求に対応できていない現状がある. すなわち訪問歯科診療を実施あるいは指導できる歯科医師の育成が教育機関の急務となっている. また, 卒業直後の歯科医師臨床研修は一般歯科診療の診療技術の修得が目的で, 訪問歯科診療に関する研修項目は見学程度であり, 臨床研修を修了しても訪問歯科診療に関する知識も治療技術も修得できていない. 本研究は, 日本大学松戸歯学部付属病院の協力型施設のなかでも訪問研修を標榜している研修施設に対して, 訪問歯科診療の実施状況と研修歯科医の研修状況についてのアンケート調査を行い, 臨床研修プログラムの改善点について検討した.

     その結果, 訪問歯科診療の実施回数が多い研修施設ほど多種の介護施設で訪問診療を実施していた. また, 研修医は訪問先では歯科治療を実施していなかった. 原因として, 多くの研修指導医が訪問歯科診療は経験の浅い研修歯科医には実施不可能であると考えており, 研修歯科医の訪問歯科診療への参加については消極的であった. しかし大半の研修指導医が社会的ニーズを感じており, 臨床研修プログラムにおける訪問歯科診療に関するプログラムは増やすべきとも考えていた. 今後, 臨床研修医が積極的に訪問歯科診療に参加できるように研修プログラムを改善するとともに, 指導歯科医の研修歯科医に対する意識の改革を進めるべきと考えられた.

  • 岡 広子, 高田 隆
    2016 年 32 巻 2 号 p. 64-71
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    抄録 近年, わが国において海外の歯学部学生の受入れが盛んに実施されている. われわれは, 平成24年度より複数の提携校から日本語も英語も母語としない学生が引率者なしで一堂に集まる広島大学歯学部の10日間の短期受入れ国際プログラムにおいて, 参加学生の事前準備や振返りの過程をサポートするため, オンライン学習支援システムの活用を始めた. 実際には, 広島大学共通のオンライン学習支援システムに短期受入れ国際プログラムのコースサイトを開設し, 教材としてプログラムスケジュール, 注意事項, 配布予定の資料, 学習項目, 課題一覧を掲載するとともに, e-mailと連動する連絡機能と課題提出機能を英語で設定した. そして, 年々, システムとシステムを用いる短期受入れ国際プログラムに改善を加えてきた. 平成25年度以降, 参加学生のほとんどがプログラム前後1カ月を含めた期間, コースサイトへアクセス可能となり, システムの活用とともに, 参加学生のプログラムへの積極性や予習・復習を含めた自己学習の意欲も高まった. また, 平成25年度はオンライン学習支援システム利用時間と課題成績に正の相関が認められた. 平成26年度は事前に学習支援システム活用の必要性と情報更新をより詳細に参加学生にむけて提示するように改善を行っている. 短期受入れ国際プログラムでの実績から, オンライン学習支援システムによって, 各参加学生のアクセス状況や情報を共有し, その情報を元にした指導を行うことは, 海外との受入れ・派遣プログラムに限らず, 国内も含めて大学間で連携して行うその他のプログラムでも有用で応用可能と考えられた.

  • 宇野 光乗, 野々垣 龍吾, 横山 貴紀, 岡 俊男, 倉知 正和, 石神 元
    2016 年 32 巻 2 号 p. 72-77
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    抄録 朝日大学歯学部ではチーム基盤型学習 (TBL : team-based learning) を導入するための準備として, 歯科医学教育推進センター主導により, 歯学部全教員を対象にしたワークショップ (WS) が行われた. その後に歯学部の授業 (1, 4年生対象) の一部でTBLが導入された. こうした経緯を背景として本分野 (固定性義歯学) でも2013年度と2014年度の授業の一部にTBLを実施した. 本研究では, その意識調査について検討した. 分析対象は, 2013, 2014年度後期に固定性義歯学の授業 (客観的総合演習) を受けた本学歯学部4年生とした. 学習効果はアンケート調査により検討した. アンケート調査は質問11項目について回答させ, アンケート調査の質問番号ごとに各カテゴリーの回答数をm×n分割表に当てはめて, カイ2乗検定 (p<0.05) により年度間比較した.

     以上のことから, TBLは学習方略の変更ではなく, 学習者を復習重視から予習重視へ転換し, 能動的学習へ学習者を誘導することが可能となった.

  • 國領 真也, 中原 孝洋, 冨永 和宏, 吉岡 泉
    2016 年 32 巻 2 号 p. 78-83
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    抄録 臨床推論は, 臨床的な問題解決のスキルを習得することである. われわれは臨床実習前に参加型授業として口腔外科症例における臨床推論の授業を行っている.

     今回臨床推論の授業で, クラウド型クリッカーを用いた5年次の臨床推論の参加型授業での学生の授業へのコメント記入状況と学生の満足度を調査した.

     クリッカーを使用した臨床推論の, ある1回の授業における記述式問題, 選択式問題それぞれの設問に対する発言者数を調査した. また, 臨床推論の授業終了時に, 授業の満足度に関する質問紙調査を実施した.

     発言者数調査では, 全設問で平均75.6%の学生が発言し, 選択式問題では89.7%, 記述式問題では61.5%の学生が解答し, 有意に選択式問題のほうを多く解答していた. クリッカーを使用した授業には興味や関心をもてたと答えた学生は96.5%であり, この授業を全体的に満足していると答えた学生は97.6%であった.

     臨床推論にクリッカーを用いた参加型授業は, 学生の参加意識が高まり, 質問紙調査の結果からも, 学生の満足度の高いものとなった.

  • 吉田 登志子, 山中 玲子, 鈴木 康司, 河野 隆幸, 白井 肇, 塩津 範子, 武田 宏明, 兒玉 直紀, 鳥井 康弘, 窪木 拓男
    2016 年 32 巻 2 号 p. 84-92
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    抄録 本論文では臨床実習を終了した6年次生が, 自身が1年次に受講したエスコート実習をどのように評価しているかを実習直後の評価と比較, 検討した.

     1年次に実施された患者エスコート実習に対するアンケートは同一学生に2回実施された. 1回目は1年次のエスコート実習直後に, そして2回目は5年経過後の臨床実習終了時に1年次に受講したエスコート実習を振り返り, アンケートに回答した. その両方に回答した82名を対象者とした. 1回目と2回目の評価を比較, 分析した結果, 以下の結論を得た.

     臨床実習終了時のエスコート実習に対する評価は, 1年次の実習直後の評価と比較して有意に低下した. エスコート実習直後にはエスコート実習を肯定的に評価していたが, 臨床実習終了時にはその評価が否定的に変化した学生は, 患者の視点の理解や医療人にふさわしいコミュニケーションの技能の理解の観点からその評価が低下していることが明らかになった. 一方, エスコート実習直後と臨床実習終了時の両方においてエスコート実習を肯定的に評価した学生においては, 医療人にふさわしいコミュニケーションの技能の理解の観点からエスコート実習が有意義であると評価していることが示された. 以上より, 学生はエスコート実習直後のほうが5年後の臨床実習終了時と比較してより肯定的にエスコート実習を評価をしていたが, 一部の学生にとっては一定の価値のある実習であることが示唆された.

調査報告
  • 山本 龍生, 木尾 哲朗, 尾崎 哲則, 樫 則章, 角 忠輝, 平田 創一郎, 和田 尚久, 平田 幸夫
    2016 年 32 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    抄録 歯学教育において医の倫理やプロフェッショナリズムの重要性が高まっている. 日本歯科医学教育学会倫理・プロフェッショナリズム教育委員会では, 倫理・プロフェッショナリズム教育の推進に資するために 「2013年度版 よき歯科医師になるための20の質問 倫理的検討事例集」 (以下, 本事例集) を作成し, 全国の大学歯学部長・歯科大学長に送付して教育担当者による活用を依頼した. そこで, 本事例集の使用実態を把握するとともに, 事例集改定のための意見収集を目的として調査を行った. 全国の大学歯学部長・歯科大学長宛に郵送による質問紙調査を行い, 倫理・プロフェッショナリズム教育担当者からの回答を依頼した. 回収率は100%であった. 本事例集は29校中10校 (34.5%) が使用しており, 使用学年は1~5年にほぼ均等に分布し, 科目名は 「倫理」 や 「プロフェッショナリズム」 が含まれるものが多かった. 方略は8校が演習, PBLまたはTBLを取り入れ, 2校が講義のみであった. 使用事例は, 低学年では大学生活に関するもの, 高学年では臨床に関するものが多く, 大学の事情に応じて改変して使用しているところもあった. 今後希望する事例として, 臨床経験のない初年次教育に利用できるような事例, 臨床においては高齢者への配慮, 認知症, 終末期医療などに関するものがあった. 今後は, 本事例集の周知に加えて, 更なる事例の追加, 評価方法の確立が期待される.

教育実践
  • 池田 亜紀子, 勝部 直人, 澤井 有里, 長谷川 篤司
    2016 年 32 巻 2 号 p. 100-107
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

    抄録 口腔の機能を維持・向上することで生活や人生を豊かで安全なものとするためには, 口腔保健の維持増進が必須である. この目的の達成のためには全人的な総合歯科診療を理解・習得することが必須であり, その育成手段として教育資源 (シナリオベースの症例模型) を開発した. 本教材は, 医療面接シナリオ, 口腔内写真, エックス線写真, 歯周検査データとこれらデータに準拠した実習用顎模型から構成される. 学習者は以下のステップを段階的に学習することにより, 予防を含めた全人的包括診療を意識した歯科臨床の流れを理解できる.

     ステップ1 : 医療面接シナリオから 「患者の病」 を理解し, 顎模型による口腔内診査および検査所見の分析を行うことで問題点を整理し, プロブレムマップを作成.

     ステップ2 : プロブレムマップの活用により, 治療の成功と再発防止に必要な患者教育について考察.

     ステップ3 : 総合治療計画の立案と治療のシミュレーション実習.

     今回, 本学歯学部3年次生を対象にステップ1の実習導入を試みたところ, 多くの学生から全人的な総合歯科診療を理解し, 臨床実習への準備として有用であるとの回答を得た. 1つの教育資源を用いて学年ごとにステップアップする到達目標を与えることで, 臨床推論能力・総合診療計画立案能力の向上が達成され, 国民の健康に貢献できるオーラルフィジシャンの養成が期待できるものと結論した.

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