日本歯科医学教育学会雑誌
Online ISSN : 2433-1651
Print ISSN : 0914-5133
34 巻, 2 号
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原著
  • 井上 博, 内橋 賢二, 平野 俊一朗, 藤本 哲也, 西川 泰央
    2018 年 34 巻 2 号 p. 25-32
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル フリー

    抄録 文部科学省は, 学生の主体的な学びの確立に向けた大学教育の質的転換の一つとして, アクティブ・ラーニングの充実を提唱しており, 学修者の能動的な授業への参加を求めている. 大阪歯科大学では平成28年度からクリッカーを導入することで双方向型の授業が実施可能になった. そこで, クリッカーを用いた授業で適時の知識確認を行い, 知識定着率を調べることでその有用性について検討した.

     平成28年度本学2年次学生137名を対象に, 年度内の異なる時期にA群 (初学時) とB群 (既修時) に分け, 授業中にクリッカーを用いた知識確認試験を実施し比較検討した. A群では, 授業中1つのテーマが終了した時点で問題を提示し, 回答させた. B群では, まず問題を提示して回答させた後に, 問題に関するテーマの授業を行った.

     初学時に正答率が低かった問題において, クリッカーを使用した授業の有用性は高いように思われた. しかし, 初学時に正答率が高かった問題は知識定着率が低下する傾向にあったので, 初学時に正答率が低かった問題だけでなく, 高かった問題においてもフィードバックをしっかりと行うことで学修者の知識定着率の向上に繋がると考えられた.

     クラス全体の理解度をリアルタイムに確認して, その都度フィードバックを行うことができるため, クリッカーを用いた授業は知識定着率向上に有用であると考える.

  • 大沢 聖子, 多田 充裕, 内田 貴之, 青木 伸一郎, 岡本 康裕, 梶本 真澄, 大山 篤, 伊藤 孝訓
    2018 年 34 巻 2 号 p. 33-42
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル フリー

    抄録 歯学部3年次生を対象とした患者付き添い実習において, 学生自身が患者への協力依頼・同意取得を行った場合と指導教員が同意取得を行った場合とを比較することで, 学生みずからが行う同意取得の教育効果について検討した.

     対象は2015年度と2016年度の3年次生 (それぞれ127名, 128名), 付き添い実習に協力の同意を得た本学付属病院の再診患者 (それぞれ127名, 128名) である. 2015年度は付き添いの協力依頼と同意取得を指導教員が行い, 2016年度は学生自身が行った. 両年度とも学生は患者の会計終了時まで付き添い, 患者にアンケートを手渡し, 終了とした. 学生は実習終了後にアンケート記載を行った.

     患者アンケートの回収率は2015年度が67.7%, 2016年度が81.3%で, 有意な差を認めた. 患者アンケートおよび学生アンケートの内容では, 学生の態度, プライバシーへの配慮などの項目で2016年度のほうが良い評価が得られ, 有意な差を認めた.

     患者アンケートの回収率が増加したのは, 学生の丁重な依頼や真摯な態度が社会的報酬となったためと考えられる. また, 学生はみずから同意取得した説明行為に責任を負うこととなり, その後の患者対応やみずからの行動を律したため, 患者および学生自身の評価を高めたと考えられる.

     患者付き添い実習において, 学生自身による同意取得が学生の意識を変えることに繋がり, 患者・学生の双方に良い影響を及ぼして, 実習全体の教育効果を高めることが示唆された.

研究報告
  • 都築 尊, 谷口 祐介, 山本 勝己, 川口 智弘, 香川 豊宏, 米田 雅裕, 城戸 寛史, 髙橋 裕
    2018 年 34 巻 2 号 p. 43-48
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル フリー

    抄録 近年, 歯科医療分野におけるデジタルテクノロジーは目覚ましい発展を遂げており, 診断や手術支援, 補綴装置製作などでデジタル化が進んでいる. 福岡歯科大学臨床実習では, デジタルデンティストリー教育のツールとして, 超音波測定による顎口腔機能デジタル記録解析装置 「ARCUS® Digma Ⅱ」 を導入し, 顎運動の理解に役立てている. 今回それらの教育ツールが学生の顎運動の理解に及ぼす影響を調べることを目的に学生アンケートを行い, 分析を行った. 調査は平成27年度の本学臨床実習生86名 (男性51名, 女性35名) を対象に行った. アンケートの結果より, 全体の54%の学生が顎運動の理解が困難と感じており, 全体の54%の学生が, 顎運動をリアルタイムで観察することで顎運動の理解がかなり深まったと回答した. また, 80%の学生が, 顎口腔機能デジタル記録解析装置で実際の顎運動を見ることは, 顎運動の理解にかなり必要と回答した. 顎運動の理解があまり困難ではないと回答した学生は全体の45%であったが, そのうちの74%が顎口腔機能デジタル記録解析装置の必要性を感じたことがわかった. また全体の95%の学生が, 今後歯科医学にデジタル技術が貢献すると思うと回答した. デジタルテクノロジーを歯科医学教育に取り入れることは, 学生の理解を深める可能性があることが示唆された.

  • 岡 広子, 二川 浩樹, 谷本 幸太郎, 加藤 功一
    2018 年 34 巻 2 号 p. 49-54
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル フリー

    抄録 広島大学歯学部歯学科では, 平成24年度歯学科第2学年から開始した日英両言語教育システム (dual linguistic education system) による授業で, 海外からの留学生と6年間の歯学プログラムの学生がともに学んでいる. 平成24年度から平成28年度までの間に実施した質問紙調査では, 教員は日本語と英語で同等の授業資料を準備するとともに, 学生の内容理解の低下を懸念して, それぞれに自己学習や学生の理解を促す取り組みを行っていた. また, 質問紙に回答した6年間プログラム学生の7割以上が, 「最終的に授業内容を理解できた」 と答えていた. さらに, 学生の 「最終的に授業内容を理解できた」 との回答は, 「授業中の教員の説明を理解できた」 および 「復習をよくした」 との回答と有意に関連しており, 学生の最終的な理解は復習を主体とする自己学習によってもたらされていると考えられた. 加えて, システムの意義についての学生回答は, 終了学期 (第5学年前期) には 「世界にも目を向ける機会の提供」 「専門家として必要なコミュニケーション能力の向上」 「よくわからないが時代の流れ」 「英語の壁の解消」 「専門家として必要な自己研鑽・自己啓発への動機づけ」 となり, 学年進行とともに波及効果を含めたシステムの意義を認識しつつあることが示唆された.

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