抄録 歯学部3年次生を対象とした患者付き添い実習において, 学生自身が患者への協力依頼・同意取得を行った場合と指導教員が同意取得を行った場合とを比較することで, 学生みずからが行う同意取得の教育効果について検討した.
対象は2015年度と2016年度の3年次生 (それぞれ127名, 128名), 付き添い実習に協力の同意を得た本学付属病院の再診患者 (それぞれ127名, 128名) である. 2015年度は付き添いの協力依頼と同意取得を指導教員が行い, 2016年度は学生自身が行った. 両年度とも学生は患者の会計終了時まで付き添い, 患者にアンケートを手渡し, 終了とした. 学生は実習終了後にアンケート記載を行った.
患者アンケートの回収率は2015年度が67.7%, 2016年度が81.3%で, 有意な差を認めた. 患者アンケートおよび学生アンケートの内容では, 学生の態度, プライバシーへの配慮などの項目で2016年度のほうが良い評価が得られ, 有意な差を認めた.
患者アンケートの回収率が増加したのは, 学生の丁重な依頼や真摯な態度が社会的報酬となったためと考えられる. また, 学生はみずから同意取得した説明行為に責任を負うこととなり, その後の患者対応やみずからの行動を律したため, 患者および学生自身の評価を高めたと考えられる.
患者付き添い実習において, 学生自身による同意取得が学生の意識を変えることに繋がり, 患者・学生の双方に良い影響を及ぼして, 実習全体の教育効果を高めることが示唆された.
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