日本歯科医学教育学会雑誌
Online ISSN : 2433-1651
Print ISSN : 0914-5133
37 巻, 3 号
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原著
  • 宇野 光乗, 岡 俊男, 石神 元, 倉知 正和
    2021 年 37 巻 3 号 p. 77-83
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

    抄録 本研究は, 令和元年度・朝日大学医科歯科医療センターの臨床研修歯科医53名 (単独方式Aプログラム24名, 研修施設群方式Bプログラム29名) に対し, 自分自身の臨床スキル (25項目・5段階) と研修環境 (5項目・4段階) の満足度についてアンケート調査した結果を検討したものである.

     臨床スキル25項目内で満足度が高かった項目は, 動揺歯抜去 (92.5%), 前歯部浸潤麻酔 (92.5%) であった. 一方, 満足度が低かったのは, 前歯部ブリッジ (34.0%), 臼歯部ブリッジ (37.7%), 下顎智歯抜去 (45.3%) であった. 研修環境5項目の満足度は, 高い順に人間関係 (92.5%), 指導方法 (88.7%), 技能修得 (84.9%), 患者数 (81.1%) そして知識修得の73.6%であった.

     アンケートの調査結果に基づいて, 臨床スキル25項目を目的変数, 研修環境5項目を説明変数として行った正準相関分析の結果, 臨床スキルの満足度は, 研修環境との間に有意に大きな正準相関係数 (0.908) を示し, 構造係数から研修環境の一日の 「患者数」 と 「指導方法」 は, 臨床スキルの満足度との間の相互依存関係に大きく関連していることが示唆された.

  • 大澤 銀子, 仲谷 寛, 大津 光寛, 岩田 洋
    2021 年 37 巻 3 号 p. 84-92
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

    抄録 近年, 将来の医療・ケアについて, 本人を人として尊重した意思決定を実現するプロセスであるアドバンス・ケア・プランニング (ACP) の重要性が唱えられており, 歯科医師もACPの概念を理解し, 患者や家族, 医療従事者やケアチームなどとACPの実践現場に携わる可能性は大きくなるであろう.

     本学では, 2017年度より生命歯学部の第2学年に実施している医療コミュニケーション概論実習において, 終末期医療について考える基盤を醸成するために, もしバナゲームTMを用いたACPの実習を取り入れている. 本研究では, 学習のレディネスの改善による学生の学びについて, 実習後の選択的および自由記載回答によるアンケートに対する, 計量テキスト分析を通した内容分析を行った. 学習のレディネスの改善には, 「余命半年」 を学生が自分事として考えられるよう報道や動画視聴などを取り入れた. 学習のレディネスの改善により, 学生の学びは単なるゲームの実施という体験から医療従事者としての視点をもち, 他者の価値観の尊重へと変化していった.

     ACPを始め医療においては定形化した解がない事項が多く存在し, 省察的な学びは重要である. われわれ教育者は学生の省察的な学びの効果を高めるために学習のレディネスを継続的に工夫していく必要がある.

  • 佐藤 拓実, 野村 みずき, 都野 さやか, 中村 太, 伊藤 晴江, 長谷川 真奈, 藤井 規孝
    2021 年 37 巻 3 号 p. 93-101
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

    抄録 適合診査材を用いた義歯調整は高頻度に行われる基本的な歯科治療であり, その修得は日々の臨床経験によるところが大きく, 効果的な教育方法は確立されていない. そこで経験の浅いstudent dentistや研修歯科医に対して義歯内面の調整が必要となる 「強圧部分」 の判断能力を教育する方法について検討した.

     対象者は令和2, 3年度に新潟大学医歯学総合病院で研修を行った研修歯科医39名と指導歯科医5名とした. 下顎無歯顎模型に適合する全部床義歯レプリカを作成し, 内面に凸部を付与した. レプリカ内面に粘膜調整材料を塗布して圧接した. 対象者はこの課題用レプリカの 「強圧部分」 を回答した. その後, 対象者には指導用レプリカを用いて, ①対象者が説明した 「強圧部分」 に対して指導者がフィードバックを行う, ②指導者が対象者に対し 「強圧部分」 を説明する, ③対象者はレプリカ内面の写真を用いた視覚教材で自主学習する, この3つの教育方法のうちいずれか1つを行った. 7日以上経過後, 再び同じ課題に対して回答した課題用レプリカの 「強圧部分」 について, それぞれの正解率と教育方法, 教育前後の個人正解率を分散分析と多重比較を用いて統計学的に分析した.

     その結果, 各指導法で正解率は教育前に比べて上昇し, 各教育方法において教育後の個人正解率は上昇した. 以上の結果から, 義歯の適合診査の教育には今回設定した教育方法を組み合わせることが効果的であると考えられた.

調査報告
  • 木方 一貴, 田中 雅士, 赤堀 裕樹, 長谷川 智哉, 瀧谷 佳晃, 河野 哲
    2021 年 37 巻 3 号 p. 102-108
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

    抄録 朝日大学歯学部では, 2018年度より第5学年保存科臨床実習生の希望者に対し, 歯科用実体顕微鏡 (以下, マイクロスコープ) を使用した体験実習を開催している. 本研究では, eラーニングシステムによる事前学修と, グループワークやグループトレーニングによるアクティブラーニングを活用した実習が学修効果に及ぼす影響を検討したため報告する.

     2019年度の実習は第5学年学生の保存科臨床実習生の希望者27名に対して行った. 参加者には, 実習に先立ちeラーニングシステム (Moodle) に設定したマイクロスコープの構造と操作方法に関する資料により事前学修を促した. 実習開始時に顎模型に装着された上顎左側第一小臼歯の根管付き模型歯の口蓋根に最大倍率で焦点を合わせるまでに要した時間の計測を行った後に, グループワークを30分間実施し, 再度同様の時間計測を行った. その後インストラクターによるフィードバック後にグループトレーニングを行い, 焦点調整時間の計測をした. 計測した焦点調整時間を, Mann-WhitneyのU検定を用いて統計学的処理を実施した.

     焦点を合わせる時間は, 実習前後で有意に減少した. グループワーク後の結果はデモンストレーションとトレーニングのみを行った前年度の実習後の結果と同等であり, グループトレーニング後の結果はインストラクターと同等の結果を得た.

     本実習において事前学修とグループワークを効率的に用いることにより, マイクロスコープの操作に一定の学修成果が得られた.

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