口腔衛生学会雑誌
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20 巻, 1 号
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  • 大西 正男, 谷 宏
    1970 年 20 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1970年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    第一大臼歯のう蝕発生率を, 同じ歯の裂溝う蝕に充填したアマルガム二次う蝕の発生率と比較する目的で, 同じ地域 (岩手県千厩町) の小児について, 前者はRetrospective folIow-up法で, 後者は小学生のアマルガム充填後1年目の二次う蝕を測定した。健康な第一大臼歯は毎年一定比率で減少即ち真のう蝕発生率はこの期間一定と見なされる (log P=1.989-0.051T; Pは健康歯率, Tは学年, 0.051は集団の第一大臼歯の真の発生率) のに対し, アマルガム二次う蝕は年齢に反比例して減少 (P=1.760+32.2701/T; Pはアマルガムニ次う蝕の発生率, Tは学年) した。この結果は, 従来から知られている歯の萠出後に現われる歯質の化学的並びに物理的変化は凡てアマルガム二次う蝕の病因に関係する因子でありえても, う蝕の発生とは一次的には関係のないものであることを示す。集団内のう蝕形成因子は地域社会にあつてはかなり長い期間変らないと推定されるが, 学年別有病率を連続さしても, 同じ関係が得られた。第一大臼歯以外の歯では抵抗因子が複雑になつていると考察された。しかし同じ処理方法で発病率の真値 (上顎中切歯: 0.0158, 上顎側切歯: 0.0132, 上顎第1小臼歯: 0.007) を計算することができた。またアマルガム二次う蝕の発生率は年齢の函数として表現すべきであると考察された。
  • 岩橋 修
    1970 年 20 巻 1 号 p. 8-44
    発行日: 1970年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    齲蝕罹患は歯の生歯後のエナメル質表面の局所作用のみならず, 歯の発生発育期の状態との関係が深い。 乳歯の歯胚形成や石灰化の開始は胎生中つまり母体内で行われるから, 乳歯齲蝕を検討する場合は母体の状態に対しても十分な考慮をはらう必要がある。
    母体は生活環境の影響を著しくうけるが, その中でも特に外気候が重要な位置をしめている。 そこで, 東京都内幼児4, 992名を研究対象とし乳歯齲蝕の罹患と, その幼児の在胎時における母体の外界の気候要素, 不快指数との関係を検索した。 その結果, 検査対象を1年の年令群に, またその年令群を出生月別に分類して齲蝕罹患状態をdefで観察すると, 各年令群とも全般的に9, 10月出生児は高い値を5, 6, 7月出生児は低い値を示した。 また, これを歯種別defでみると同じような状態がみられた。
    ついで, この各年令群の出生月別defと在胎時の気候要素とは4, 5年令群において出生1ヵ月前の気温, 湿度, 不快指数のいつれかと関係が認められたが, 風速とは関係があまりないようであった。 このようなことは歯種別defにもあらわれた。
    歯種別defと在胎時の気温, 湿度との関係を認めた年令群における出生月別defの中で, そのdefの最低値と最高値を示す在胎時の気温 (y), 湿度 (x) を用いてdefの最低帯を求めると, 気温14.5℃, 湿度62%から気温12.6℃, 湿度73%の間においてlogy=0.0001x+0.99, y=0.2651x2-35.958x+1224の式が, また最高帯は気温21.7℃, 湿度75%から気温26.3℃, 湿度80%の問においてlogy=0.0142x+0.29, y=-0.3290x2+51.929x-2022の式が得られた。 これと同様に不快指数についてdef最高値の出現率は62.5から急増し77.5までは全出現率の50%を示した。
    以上の成績により乳歯齲蝕罹患は母体の外気候と関係があることを推測し得た。
  • 岡田 昭五郎, 鳥井 菊治, 大西 正男
    1970 年 20 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 1970年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    バンサン口内炎, 潰瘍性口内炎の治療に効果があり, その際の口臭の除去に効果があるといわれるFlagyl (Metronidacole) が口臭を主訴とする患者に有効かどうかを検討する目的で研究を行つた。
    実験バンサン感染症をモルモットに作りFlagylを投与した場合, 膿汁中のスピロヘータの消失と共に膿汁の悪臭も消失した。
    他人から口臭のある事を指摘された50名についてdouble blind法によりFlagylを1日400mg, 5日投与した結果では, Flagyl投与群のみ口臭が消失するという結果は得られなかつた。
  • 歯周疾患の免疫学的研究 (Series No. 3)
    上野 真人
    1970 年 20 巻 1 号 p. 50-67
    発行日: 1970年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    歯石は歯周疾患と深い関係をもつている。そこで, 歯石を免疫化学的に研究するために, 歯石, 加熱処理歯石, EDTA-脱灰歯石の三種を抗原として家兎を免疫し, いくつかの異なる抗体を含むと思われる家兎の免疫血清を用いて, 逆に歯石の抗原可能性を解析してゆくアプローチをとつた。得られた免疫血清を用いてin vivoの抗原抗体反応として, PCA反応 (Passive Cutaneous Anaphylaxis) を, またin vitroの抗原抗体反応として免疫拡散法を応用し, 歯石, 歯石抽出物およびその関連物質である歯垢, 唾液, 血清蛋白, さらに実験歯石について, 各々の抗原性を追求した。その結果, 歯石抽出物によるPCA反応が陽性であることから, 歯石には局所アナフィラキシーを惹起せしめるようなアレルギー活性を有する物質が含まれていることを示した。他方, 免疫拡散法において, 未処理歯石に対して少なくとも4本の沈降帯が観察された。このことは, 歯石に沈降反応を起すような比較的強い可溶性抗原が少なくとも4種以上含まれていることを示唆した。歯石に物理化学的な抽出操作を加えた歯石抽出物では, 0.85%NaCl可溶性分画に2本, 不溶性分画を微アルカリである7%NaHCO3に溶解したものに1本の沈降帯を認めた。PCA反応の結果と合せ考え, さきに西村の発表したヒトの皮内反応陽性物質も当然この歯石抽出物質中に存在していると考えられる。また, 家兎の歯石免疫血清と沈降帯をつくる物質が歯垢に2種, 耳下腺唾液10倍濃縮物に1種, 混合唾液10倍濃縮物に3種存在していることが明らかとなつた。さらに, 血清中のγ-グロブリン, アルブミンおよび実験歯石と反応する抗体も歯石免疫血清中に含まれていた。これらの所見は, 歯石の抗原と血清学的に密接な関連を有する物質が歯垢, 唾液, 血清蛋白などに存在していることを示唆している。
  • 第一部enolase
    矢崎 武
    1970 年 20 巻 1 号 p. 68-83
    発行日: 1970年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    精製酵素およびマウス筋homogenate上清を使用しin vivoで, またin vivoではマウスにFを含む水を1週間飲ませ, Fによる筋enolaseに対する影響を検索した。その結果in vitroではhomogenate粗酵素に強い抑制を認め, 特にFを含む粗酵素で酵素反応をスタートさせた場合非常に強い阻害を認めた (50%抑制率0.5mMF)。これは今までのWarburgらの考え方だけでは理解できなかつたが, 2つの阻害型を考えることによつて解釈された。一つは不完全阻害 (可逆性), もう一つはH-factor (homogenate factor) の存在による完全阻害 (不可逆あるいは難可逆性) である。H-factorはhomogenate粗酵素の特性を成すもので, その働きはhomogenateの蛋白を主とする成分がその中心となり, さらにMg, HPO4, など各種イオンとによる総合作用と考えられた。またH-factorの働きの中にHPO4など陰イオンによる活性化促進作用も認めた。in vivoの実験では, controlに対し100および400ppm群で有意の低下を認めた。これは一週間の高濃度急性毒性であり, 必ずしもFとenolaseによる特異的反応の結果のみとは結論し得ない。しかし考えねばならないことは, H-factorの関与する阻害が一般に生体組織内で起り得るものと推測され, さらにこの阻害に時間的増強が認められたことから, 微量Fの長期間投与の場合の酵素系に対する影響はさらに追試, 検討する必要性があるという点である。
  • 口腔診査方式について
    北村 中也, 大西 正男
    1970 年 20 巻 1 号 p. 84-91
    発行日: 1970年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    ある集団の口腔健康管理は出来るだけ簡便で能率よく, しかもその成績が充分に役立ち, 効果が大きく, 経費も出来るだけ安価に行なわれねばならない。著者らは簡易な診査基準として, 口腔を単位とし, 歯, 咬み合わせ, 歯肉, 生え変わりの4項目について診査をした。それぞれの状態を普通, 要注, 要治に分け, さらにこれらの総合的な評価として, 各項目中の最悪の状態で被検者を表現した。すなわち各人に優 (健康), 良 (処置済み), 可 (要注), 不可 (要治) の何れかを与えた。不可には治療を, 可には精密検査を受けるよう勧告をした。この診査管理方法を昭和41年から3年間, 東京都内の歯科診療室のない事業所で実施し, その結果を歯科診療室のある2ヵ所の事業所口腔診査用紙から得られた成績と比較検討した。全体の被検者を口腔健康者群 (優と良), 口腔不健康者群 (可及び不可) とすれば, 昭和41年度において実験と対象事業所の間には有意差がなかつたが, 実験期間中に実験事業所の方に不健康者が健康となつた人が多く, その差は統計的に有意であつた。また口腔診査における処理能率も最良, 且つ補助者数は最少であつた。
  • 北村 中也
    1970 年 20 巻 1 号 p. 92-99
    発行日: 1970年
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    生後1ヵ月時の仔犬の下顎第1大臼歯と第4乳臼歯との中間根尖部近くに, 大きさのわかつているステンレス製画鋲形の標識体を下顎骨外側面上に差し込んだ。標識後常に頭部を定位置に固定できる台を用いて, 第1大臼歯が口腔内に萠出するまでの各過程を1ヵ月ごとに口外法でレントゲン撮影を行なつた。得られたレントゲンフィルムをtraceし, そのtrace上で標識体の実長値から, 歯牙長および歯牙根尖部から下顎骨下縁部の距離を測定換算した。その結果, 標識体の中心から根尖部の距離は, 経時的変動がみられなかつたが, 歯牙長と下顎骨下縁部はともに増大した。発育速度は歯牙の方が大きく, 特に2ヵ月以後著るしい。このことから歯牙長の増大と下顎骨下縁部の増量とは別々の因子が作用し成長していると思われた。また歯胚基底部で営まれている筈の歯牙の発育は下方に向わず, かえつてその位置より上方に向つているように観察され, この点でも下顎骨下縁部と歯槽部の作異が認められた。
  • 森岡 俊夫, 北垣 次彦, 松村 敏治
    1970 年 20 巻 1 号 p. 100-104
    発行日: 1970年
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    口腔の自然感染防禦機構の一つに唾液抗菌因子がある。最近, ロダンを必要とする唾液の抗乳酸菌因子の実態が唾液過酸化酵素であり, この抗菌系の活性発現には過酸化酵素, H2O2およびKSCN, の3成分が必要である事およびその作用機序等についても報告されている。しかしながら本抗菌系の生理的意義については未だ明らかにされていない。そこで口腔における細菌性疾患の代表である齲蝕に着目し, 本抗菌系と齲蝕との関係の解明に着手した。本研究はその基礎実験ともいうべきもので, Rosen等により既に無菌ラットを用いて齲蝕病原菌 (cariogenic bacteria) であると確認されたLactobacillus casei ATCC 4646を供試菌として本抗菌系の抗菌活性の有無を検索した。その結果SL Broth (pH. 5.4)中でのL. caseiの増殖は本抗菌系により著明に抑制される事, およびこの際の増殖抑制率から本抗菌系の活性は定量的に検定される事が観察された。他方, 供試菌は人唾液 (pH. 5.4) 中で本抗菌系により著明に殺菌された。これ等の結果は実験齲蝕の成立に本抗菌系がどの様な阻止効果を発揮するかを追究する上に重要な手掛りを与えるものである。
  • 大西 正男, 谷 宏
    1970 年 20 巻 1 号 p. 105-111
    発行日: 1970年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    2種のフッ化物 (Na-monofluorophosphateおよび, フッ化第1錫) を含む歯磨剤がこれらを含まない歯磨剤 (monofluorophosphate歯磨剤の対照として作られたが, フッ素イオンの点でフッ化第1錫の対照とも見做される) に対して永久歯う蝕発生率の点で比較実験された. 1101名, 5歳より12歳の児童を3群に分け, 上記3種の歯磨剤を1年間各々使用させ, この期間にう蝕好発部位に新生したう蝕数を実験開始時においてう蝕のなかつた好発部位数に対する比率で表した。これを相互に比較した結果, monofluorophosphate歯磨剤は対照に比べて, 平滑面で40.5%, 小窩裂溝で16.1%の抑制率を示し, これに対しフッ化第1錫歯磨剤は対照歯磨剤に比べて小窩裂溝だけに19.4%の抑制率を示した。これらの抑制率はχ2-testにより有意であることが示された。本実験では実際のう蝕好発部位を使用し, 年間う蝕発生率の精度を高め, また結果の統計処理にχ2-testを使用することの必然性を示し, 更にフッ化物が小窩裂溝にも有効であつたことが強調された。
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