口腔衛生学会雑誌
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25 巻, 4 号
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  • 脊柱の形態を中心として
    西方 雄三
    1975 年 25 巻 4 号 p. 205-226
    発行日: 1975年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    作業姿勢に関する研究は従来から人間工学や産業医学の領域では重要視され数多くの研究が行なわれている。しかし歯科診療に際しての診療姿勢についての研究はこれまであまり行なわれていない。歯科診療に際しては歯科医師がそれぞれ個人的な姿勢をとっているのが現状であることから著者は著者の所属している教室の“歯科医師の職業衛生学的研究”の一連として表題の如き研究を行なった。即ち著者は歯科医師ごとに個人的な姿勢によって行なわれている診療姿勢が, 歯科医師の脊柱になんらかの影響を及ぼすのではないかと考え, 診療部位, 診療内容別に, 咬合平面角度, 歯科診療用椅子の背板角度及び術者の診療位置などについて観察し, 更に歯科医師の脊柱についてX線撮影及び診療姿勢の写真を撮影し, これらを基として作製した脊柱模型上から種々の診療姿勢による脊柱の変化についての検討を試みた結果, 次のようなことが明らかになった。
    1) 咬合平面角度
    立位診療では平均上顎診療時で27.1°, 下顎診療時で23.8°, 椅坐位診療では上顎診療時に46.6°, 下顎診療時で37.4°と何れも上顎診療時に大である。
    2) 背板角度
    立位診療では平均値でみれば上顎診療で130.8°, 下顎診療時で128.8°, 椅坐位診療では上顎診療時に155.8°, 下顎診療時に152.9°を示し, 椅坐位診療時に大である。何れも上顎診療時にやや大である.
    3) 診療位置
    立位では上顎診療の場合8.8時, 下顎診療において9.0時, 椅坐位では, 上顎診療9.8時下顎診療で9.9時と共に上顎よりも下顎にやや高い平均値をしめした。
    4) 歯科医師の脊柱側轡は4°以上の者についてみると出現率は52.2%で, 脊柱の捻れが87.0%と脊柱側彎より捻れの方が高頻度に認められた。脊柱の捻れが右捻れ及びS字捻れが多いことから不自然な歯科診療姿勢によるものと考えられた。
    5) 脊柱側彎の側彎椎体は1人平均5.9個でTh8~9を中心にみられ歯科医師に特有の傾向といえよう。
    6) 診療姿勢を脊柱模型のシュミレーションによって分析の結果, 立位診療ではTh7付近から右前傾で, 頸椎部が急に左傾する捻れの状態があり, C1~Th1の捻れの有意性が認められた。椅坐位診療では, Th12付近から腰椎にかけて後彎する特徴がみられた。
    7) 歯科診療姿勢は, 脊柱彎曲を予防するうえで脊柱の安定度を規定しうるような条件を設定することが望ましい。
    8) 歯科医師の健康管理の上からは, 脊柱を中心とした回転屈伸などの体操を行なう必要性が考えられた。
  • Cdsを用いた歯面照度の測定及び歯鏡の効果
    榎並 秀栄
    1975 年 25 巻 4 号 p. 227-245
    発行日: 1975年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    歯科においては古くから歯科用照明装置が用いられているが, 歯科医師の疲労に対する訴えには眼に関するものが多い。しかし, これまで歯科用照明についての研究は誘に少ないことから著者は表題の如き研究を行なった。まず著者は実験的に総義歯患者の人工歯内に盤接光電素子 (Cds) を挿入することによって各歯面の照度を測定することを可能とし, これを用いて各歯面の明るさを測定し, 同時に歯鏡が歯面の照度を高めるのにどの程度役立つかについてを検討した。即ち16個のCdsを, 総義歯の人工歯6遠心面, 舌面, 頬側面, 1唇面, 1舌面, 4567咬合面および6遠心面, 舌面, 頬側面, 4567咬合面に埋入し, 各歯の受光面として測定時のCds光導電体の指数を測定し, 得られた値を照度計によって換算した。
    1) 実験用総義歯を装着した被検者を歯科用治療椅子にすわらせ, 上顎咬合面上からの照射をA, 下顎咬合面上からの照射をC, その二等分線上からの照射をBの方向とし, 正中位より20°右寄りをX, 正中位をY, 正中より20°左寄りをZの3位置とし, 9方向よりそれぞれ照射し, 照射位置による明るさの変化を観察した。
    2) 歯鏡による歯面照度の効果をみるために外径を異にした3種を用いて歯面照度を測定し, さらに直射時の照度を基準とした場合, および中切歯唇面照度との割合について検討した。
    3) 市販されている, 22mmの歯鏡60個について反射率および反射光量を測定した。
    4) 外径16mmと35mmの2種の歯鏡を用いて着色した米粒を選別する能率および疲労について測定した。Landolt環と同様の直径10mmと16mmの2種類の黒色のリング (L環) を用いて反射によりこれを読みとらせる能率および誤りについて測定した。
    5) 集団検診において, 歯鏡外径の大小による結果の影響を検討した。
    6) 歯鏡別検診時間について検討を行なうために3種の歯鏡を用いて検診を行ない一顎の検診に要する実時間を求めた。
    以上の結果, 1) ~7) にしめすような内容を明かにしえた。
    1) それぞれの位置から照射した場合の直射照度は, 上顎においてはA, B, C位置の順に各歯面照度の増加がみられY位置の中切歯唇面において最高を示し, 6遠心面において最低で最高に比し僅かに0.04%でしかなかった。下顎においては, C, B, A位置の順に上顎とは反対に照度を増し, AZ位の4咬合面において最高を示し, 6遠心面のCX位が最低で最高に比し, 0.1%にすぎなかった。
    2) 歯鏡利用の照明効果は上下顎第1大臼歯遠心面においては19mm歯鏡が有効であったがその他は外径の大きい歯鏡において効果的であった。
    3) 市販歯鏡の反射率は, JIS規格に達しているものはなかった。
    4) 歯鏡の反射率と反射光量は歯鏡外径の小さいものでは, 反射率は大であるが, 反射光量は外径の大なるものに大である。
    5) 着色した米粒の選別作業を歯鏡を使用したことのない者によって行った結果は19mm歯鏡では, 35mm歯鏡を使用して実施した場合に比して能率が悪く, しかも外径の小さい歯鏡を用いた場合に疲労感を強く訴えた。歯科医師について行った結果も同様であったが34,000Luxの場合に効率がよく, しかも35mm歯鏡の方が能率的で, フリッカー値からも疲労の少ないことがみられた。
    6) L環を用いての作業では34,000Luxの方が能率的であった。このことから歯鏡の大きさと照射光量によって, 能率の異なることが判明した。
    7) 集団検診においては歯鏡外径の大きさが時間的能率に差のあることおよび診断の誤りを左右することが認められた。
  • 第1報Dextranaseの口腔粘膜刺激性に関する一考察
    丹羽 源男, 清野 精文, 金子 重夫, 西田 厚生, 斉藤 邦男, 村上 俊樹, 内山 実, 菅沼 信夫
    1975 年 25 巻 4 号 p. 246-250
    発行日: 1975年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    医薬品, 化粧品等の局所刺激試験として, 一般的には眼刺激試験や皮膚刺激試験が行われている。しかしながら口腔内で使用されるもの, 例えば歯磨剤やその配合薬剤等においては, これらの刺激試験方法をそのまま適用することには, 粘膜組織や生理的機能等が相違するため疑問がある。著者らは歯磨剤に配分する薬剤の刺激性について口腔内で行う方法を考案し, さらに眼刺激試験との対応関係では, 著者らの方法が秀れていることを推察した。
  • 古賀 敏比古, 井上 昌一, 寿 武一郎, 森岡 俊夫
    1975 年 25 巻 4 号 p. 251-257
    発行日: 1975年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    人の口腔内において形成される歯苔の主として表層構造の経日的変化ならびに同歯苔をStreptomyces globisporus 1829株由来の溶菌酵素で処理して生じた変化を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。
    上顎臼歯の頬側平滑面に接着したプラスチック箔上に形成される自然歯苔は経日的に厚みを増し, その表層は平坦から次第に凹凸が激しくなると共に, 構成微生物は粗から密packにされた状態になった。幼若歯苔の微生物構成は単純であり, 形成第1日目の歯苔は殆んど球・短桿菌のみから成り, 2日目歯苔においてもこれらが支配的であったが, 一部に糸状菌の出現が認められた。成熟 (7日目) 歯苔では糸状菌が優勢となり, 歯苔表層容積の主体を占めた。球・短桿菌と糸状菌とは多くはそれぞれ小集落を形成して存在したが, 時には両者がトウモロコシの穂軸 (corn cob) 様の形をとって共存していた。
    幼若歯苔をin vitroにおいて溶菌酵素処理すると歯苔表層の本酵素感受性菌はそのin siteにおいて溶解され, 溶解残存像は凹凸感の強い網目状ないしはスポンジ状・蜂巣窩洞状を示していた。成熟歯苔においては著明な溶解像は認められなかったが, 球・短桿菌の存在は認め難く, また糸状菌の形成する竹籠様構造が処々で断裂されているのが観察された。
    以上の結果から, 溶菌酵素は主として幼若歯苔の特に最表層に作用し, 同部の感受性菌を溶解することにより, その構成細菌叢を変化させ, 歯苔構築に影響を与えることが示唆された。
  • 上領 哲範
    1975 年 25 巻 4 号 p. 258-293
    発行日: 1975年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    手用歯ブラシによる歯垢清掃効果は各個人の歯みがき動作に認められる習慣性や癖 (習慣性や癖は歯みがき圧や歯みがき動作の回数で表現することができるが, 歯みがき圧は歯みがき時の歯ならびに手や腕の筋および関節などの生理的に変えにくい感覚のフィードバック機構によって決定される) に左右されることがわかっているので, 歯垢清掃効果 (歯垢清掃効果率は歯みがき圧と歯みがき動作の回数との積に比例する) の向上を求めるには, 手用歯ブラシによる刷掃だけでは限度があり, それにたとえば流水を付加するというような他の補助的手段を加える必要がある.
    しかし, 流水を付加しても, 歯みがき動作そのものの習慣性や癖は改善されず, 歯みがき部位差による歯みがき動作の難易も影響を受けないし, また歯垢清掃効果率は歯みがき圧と歯みがき動作の回数に比例するという流水非付加時に認められる現象もなくならない。
    ところが, 歯垢清掃効果率が100%の被検者では, 歯みがき圧と歯みがき動作の回数とは逆比例するという流水非付加時に認められた現象は, 流水付加時には認められなくなる。
    流水を付加すると, 流水量が多いときには歯垢清掃効果は増大するので, 刷掃時の流水付加は手用歯ブラシによる刷掃の補助的手段としてはきわめて有効である。
    だから, 流水という機械的な因子が加わることによつて手用歯みがきによる歯垢清掃効果の手動パターンがくずれ, 流水という機械力 (流水圧および流水量) そのものによって清掃効果がよくなるわけである。
    しかし, 流水だけによる歯垢清掃においては, その効果は手用歯ブラシだけによる場合に比べるとかなり低い。また, 手用歯ブラシによる刷掃時に認められた歯みがき動作の難易に基因する歯垢清掃効果率の部位差は現われなくなることは, 人の感覚のフィードバック機構によらない機械力による歯垢清掃の特徴である。
  • 務台 方彦, 木村 義夫, 平木 吉夫, 梅崎 良則, 高橋 徳太郎, 馬田 三夫, 高添 一郎
    1975 年 25 巻 4 号 p. 294-305
    発行日: 1975年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    1) 20歳から30歳台の男女を被験者とし, 乳酸菌飲料投与後, 飲料中に含まれるLactobacillus casei subsp. casei PSR 3001株の口腔内消長を検討した。
    無処理対照群では投与直後供試菌は唾液中に106-7/cc, 歯垢中に103-5/cc見出されたが, 以後急激に減少し, 24時間後には唾液中では102/cc以下となり, 歯垢中には見出されなかった。投与後うがい処理群, 投与前brushing処理群, 高糖分食品の経時的投与群でも, 供試菌の消長は無処理群とほとんど変らなかった。各群においてう蝕の有無は, 供試菌消長のパターンに影響を与えなかった。各群において唾液と歯垢中の供試菌の減少には危険率1%で有意な相関性が認められた。
    2) 乳酸菌飲料製造用菌株Lactobacillus casei subsp・casei YIT 9018の菌体外多糖質産生性と糖発酵性をStreptococcus mutans BHTおよびStreptococcus mutans OMZ 176-1を対照として調べた。
    Sucrose加Rogosa液体培地で培養した場合, 供試乳酸菌は水溶性, 不溶性多糖類とも産生しなかったが, Str. mutansはいずれをも多量に産生した。またStr. mutansは自己の産生する水溶性多糖類を発酵したが, 供試乳酸菌は発酵しなかった。
    供試菌とStr. mutansの混合培養系では, 不溶性dextran合成量は, Str. mutansの単独培養に比較して少なかった。培養中の培地pHを6.0に保って培養した場合にも結果は同様であった。
  • 丹羽 源男, 貴志 淳, 加藤 増夫, 三田 昭太郎, 藤木 昇, 今村 嘉孝, 森田 純司, 谷 幸信, 矢島 敏夫, 井田 潔
    1975 年 25 巻 4 号 p. 306-321
    発行日: 1975年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    学校歯科衛生において, 歯の管理には齲蝕ならびにその処置状態を集団的に把握し, 問題点を見出すことが重要である。そこで, 昭和44年度に, 神奈川県全域で小学校, 中学校の児童・生徒総計458,040名を対象に観察を行った。その結果, 1. 小学校児童のDMF者率では全体的にみて高学年ほど高率であり, また女子は男子より高率であった。中学校生徒の場合も, 女子は男子より高率であった。2. 小学校児童の1人平均DMF歯数も全体的に低学年より高学年に向かって直線的増加傾向を示し, 女子は男子より, また市部は郡部より多い。中学校生徒では, 女子は男子より, また郡部は市部より多い。3. 小学校児童の処置歯率では全体的に学年の進むにともない4学年生まで急な上昇を示し, それ以後の上昇はきわめてゆるやかであった。中学校生徒の場合は女子は, 男子より, また市部は郡部より高率を示した。4. 小学校児童の未処置者率は, 全体的に学年の進むにともない上昇するが, 3学年生までは急上昇し, その後はゆるやかな上昇傾向を示し, 中学校生徒の場合も全体的な学年毎の上昇傾向は変らず, また郡部は市部より高率であった。
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