口腔衛生学会雑誌
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29 巻, 4 号
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  • 柴田 聡明, 永田 清, 中村 亮, 常光 旭, 三崎 旭
    1980 年 29 巻 4 号 p. 346-353
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    唾液中の糖タンパクは口腔細菌を凝集させ歯垢形成に重要な役割を演じている。ヒト耳下腺純唾液より, 血液型物質, 免疫グロブリンを除いた塩基性糖タンパク (プロリンを多量に含む) を精製し, 糖鎖の非還元末端に存在するガラクトースをトリチウムでラベルし口腔連鎖球菌, 特にATCC 9811株との結合性を既に報告した。本実験ではこの塩基性糖タンパクと, 本菌との結合性に影響を及ぼす要因を解析した。この結合性は100℃10分間菌体を熱処理した場合, およびトリプシンによる菌表面の処理により著しく減少した。また, 結合反応は氷冷下においても速かに起こり, 菌体乾燥重量1mgあたり約1μgの糖タンパクが結合した。菌体表面をEDTAで処理しても結合性は著しく減少したが二価金属イオン添加によって回復は認められなかった。単糖, 少糖による阻害実験の結果D-ガラクトース, および非還元末端にD-ガラクトースをもつ少糖例えば, ラクトース, N-アセチルラクトサミンなどにより, 結合性が強く阻害された。以上の結果より, 本菌体表面には, レクチン様物質が存在することが強く示唆された。
  • 小林 やす子, 尾関 正美, 八木 利治, 細井 辰起, 武井 盈
    1980 年 29 巻 4 号 p. 354-360
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    ヒトの抜去歯牙エナメル質をランタン溶液 (La溶液) に浸漬処理を行なうとCaとLaのイオン置換反応がおこり, 歯牙表面にランタン化合物の被膜が形成される。
    合成ハイドロキシアパタイト (HAP) をLa溶液で浸漬処理を行ない, HAP中のCaとLaのイオン置換反応過程及び反応生成物の同定をX線回折法により検討した。
    0.5%以上のLa溶液でHAPを浸漬処理するとHAP中にリン酸ランタン化合物のLa4 (P2O7) 3, LaPO4の生成が確認されたが, 0.1%以下のLa溶液ではこの反応は進行しなかった。
    ヒトの歯牙エナメル質をLa溶液で浸漬処理を行なうとエナメル質表面にLaPO4, La4 (P2O7) 3, LaP5O14, LaHP2O7・3H2O, LaP3O9・3H2Oなど5種類のリン酸ランタン化合物の生成が同定された。
  • 島野 僚祐
    1980 年 29 巻 4 号 p. 361-377
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    実験動物にう蝕抑制作用のあるランタン (La) が歯牙エナメル質にとり込まれる過程についてはまだ不明の点が多い. 本研究では歯牙エナメル質にとり込まれるときのLaの作用濃度と時間との関係, および実験的う蝕抑制のLa濃度とLa投与時における臓器内分布などについて, X線マイクロアナライザ, 螢光X線分析などを用いてLa, Ca, Pの三元素の定量分析を行うと共に, エナメル質表面に生成した物質についてX線回折を行いASTMカードにより同定した.
    ヒト抜去歯牙をLa溶液に浸漬処理するとエナメル質中のCaとLaのイオン置換反応がおこりエナメル質表面がリン酸ランタン化合物でcoatingされた. La濃度が2~8%では3日目で約65%のCaがLaと置換し平衡状態に達したが, 1%以下では置換反応は遅遠し0.001%では反応は進行しなかった.
    エナメル質表面に生成したLa化合物は酸に安定なリン酸ランタンLaPO4とその複合化合物であった.
    ランタン溶液をハムスターに飲用させると実験う蝕症は明らかに減少し, 0.1~0.01% (La量312~31.2μg/ml) でう蝕抑制作用のあることが推察された.
    急性毒性試験によるLaの臓器内分布は1.5%以上では一般に各臓器への蓄積が認められた.
    以上の成績からLaは歯質の耐酸性を強化するが, その毒性は弱く臓器内の蓄積も少いことなどが推察された。
  • 白戸 勝芳
    1980 年 29 巻 4 号 p. 378-387
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    萌出後まもない歯牙の窩溝部における窩溝形態と初期齲蝕の有無ならびに存在部位について観察し齲蝕の初発部位を推定しようとした。
    8~15歳の歯列矯正患者より抜去した臨床的に健全又は着色程度で電気抵抗値600KΩ以上を示す上下顎小臼衡124歯 (窩溝数141) を試料とし, 硬組織薄切機を用いて頬舌的に200μm前後の連続切片とし, それぞれについて70~120μmの未脱灰研磨標本835を作製した。
    生物顕微鏡, 偏光顕微鏡ならびに超軟X線発生装置で未脱灰研磨標本を観察し, 万能投影機を用いて窩溝部の形態計測を行い, 次の結果を得た。
    1) 上下顎小臼歯の窩溝形態各型の出現頻度はIK型が141窩溝中55窩溝と最も多く, 次いでI型40窩溝, U型19窩溝, V型14窩溝, その他13窩溝であった (Table 3)。
    2) 齲蝕の有病状況は124歯中54歯 (43.5%) , 141窩溝中56窩溝 (39.7%) に齲蝕が存在していた (Table 5)。
    3) 初期齲蝕の存在部位はどのような窩溝形態型にもかかわらず一定の傾向を示し, 56齲蝕すべてが上部側壁部に存在し, 窩溝開口部に55齲蝕 (98.2%) , 中部側壁部に47齲蝕 (83.9%) , 下部側壁部に34齲蝕 (60.7%) , 窩溝底部に14齲蝕 (25%) が存在した (Fig. 2, Table 6)。
    以上の知見より上下顎小臼歯の窩溝齲蝕の主たる発生部位は窩溝開口部から上部側壁部であると推定された。
  • 第1報 1971・1972年度の調査成績 (間食調査をふくむ)
    竹内 光春, 卜 茂源, 清水 秋雄, 大沢 武雄, 高橋 義一, 陳 清尚
    1980 年 29 巻 4 号 p. 388-397
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    歯種別に, 「萌出後の国民1人当たり年問砂糖消費量」 (p) が例えば10, 20, 30kgというように異なる値に対応する, 同一の萌出後歯牙年齢における「当初萌出100歯当たり累積齲歯数」 (ΣCx) をつらねたグラフは, 齲蝕予防の疫学的考察に利用価値の高いものである。本調査は, WHOの齲蝕の基準に統一して, このようなグラフを作る際の, pの低い地域での数値を得ることを主な目的とし, あわせて, 台湾における公衆歯科衛生計画の一助となることを目的とした。
    調査地域は台中の南々東60-70kmの南投県鹿谷郷で, 海抜500mぐらいの農山村である。調査は, 1971年から1977年まで毎年1回, 9月ごろに行った。調査対象は3群に分けられる。第1群は, 1971, 1972年度の国民小学校, 国民中学校在学者の断面観察群, 第2群は1971, 1972年度国民小学校入学者のcohort観察群, 第3群は, 1976, 1977年度の国民小学校, 国民中学校在学者の断面観察群である。初年度と最終年度とに間食調査を行った。地域の飲料水中からフッ素はほとんど検出されなかった。
    第1報では, 1971, 1972年度在学者6,080人についての齲蝕指数と間食調査結果を得た。間食から摂取されたショ糖量は1人平均年間7kgぐらいと推定された。
  • 第2報 1971~1977年度のcohort調査の成績
    竹内 光春, 卜 茂源, 許 錦泉, 清水 秋雄, 大沢 武雄, 高橋 義一, 五十嵐 康夫
    1980 年 29 巻 4 号 p. 398-410
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    本調査は, 「萌出後の国民1人当たり年間砂糖消費量」 (p) が異なる値に対応する同一萌出後歯牙年齢における「当初萌出100歯当たり累積齲歯数」 (ΣCx) をつらねたグラフを作る際の, pの低い地域での数値を得ることを主な目的とした。
    第2報では, 第2群すなわち南投県鹿谷郷内の5国民小学校の1971年度入学者群および1972年度入学者群を対象とした1977年度までのcohort観察から得た725人についての齲蝕指数を得た。
  • 谷 宏
    1980 年 29 巻 4 号 p. 411-435
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    近年の学童の齲蝕罹患の地域差を明らかにすることを目的として本研究を行なった。昭和52年から53年にかけ, 北海道4地区, 沖縄県2地区, 東京都世田谷区内の1地区に居住する小学校1年生から中学3年生まで, 8,672名について歯科検診を行なった。東京の小学校6年生と北海道の小学校6年生, および北海道の中学生については質問紙により, 清涼飲料の摂取頻度と歯ぶらしによる刷掃頻度についても調査した。その結果, 東京の学童は北海道や沖縄の学童に比べ, 歯科保健状態ははるかに良好であり, 北海道辺地の学童が最も悪かった。北海道の学童は齲歯数が多いばかりではなく, 東京や沖縄の学童に比べ, 前歯部に齲歯を持つ者の率がはるかに高く, 比較的齲蝕罹患性の低い前歯部の唇面齲蝕も多く, 中学2年生で約20%の生徒に唇面齲蝕がみられた。前歯唇面齲蝕は隣接面や舌面齲蝕とは異なり, 前歯部に齲蝕を持つ者の率が約20%程度蔓延すると, その地区で唇面齲蝕が発生するようになることが示唆された。
    北海道の学童では毎日清涼飲料を摂取する者が多く, 清涼飲料を毎日摂取する者は齲歯数も多く, 前歯に齲蝕を持つ者が多い傾向がみられた。北海道の学童では毎日歯をみがく者の率は全国平均に比べて高いが, 日常の刷掃頻度と齲蝕罹患性との間に明瞭な関係はみられなかった。
    市販の清涼飲料10種について糖量を分析した結果, sucrose量は8.3~14.1g/dl, glucose量は0.13~3.429/dl含まれていた。pHは2.5~3.5であった。また清涼飲料を毎日摂取している者とほとんど摂取しない者各々20名の歯垢を調べた結果, 前者は後者に比べ歯垢中の総生菌数に対するStr. mutansの存在比は極めて高かった。
    国民栄養調査の結果からも, 北海道の人々は他地域の人々に比べ清涼飲料をよく飲むようであり, 北海道の学童における齲歯の多発, 前歯の齲蝕発生は清涼飲料の摂取頻度の高いことと関連があると考えられた。
  • 1980 年 29 巻 4 号 p. 463
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
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