エナメル質の溶解性実験あるいはPlaqueの付着性実験などに, 個体差の著しい抜去歯を使用すると, 測定値にバラツキが生じ, 再現性の問題で難がある。そこで, エナメル質に性状が近似し, かつ均一で各種実験に応用可能な試験片の成型を試みた。
多数抜去歯から精製した325meshのエナメル質粉末に, polymer溶液を混和し十分に分散させた後, 乾燥, 粉砕を行なって, 250meshの粉末を調製し, その200mgを試験片の成型に用いた。粉末を成型金型に充填し, 18ton/cm
2の高圧処理を行なって, 厚さ0.7~1.0mm, 直径13mmの錠剤状のエナメル質板 (以下Enamel Disk) に成型した。
エナメル質粉末とpolymerの組み合せで, 良好な成績が得られたのは, Polymethyl methacrylate (PMMA), epoxyおよびpolystyreneの3種類で, いずれも10%, 20%, 30%濃度で良い結果が得られた。なかでも, 成型過程での操作性やEnamel Diskの物性値から総合判定した結果, 10%PMMAの場合が最も優れていた。10%PMMAから得られたEnamel Diskの比重は, 2.27±0.07, 硬度はVickers hardness numberで79.80±4.47, 曲げ破壊強さは0.928 (kg/mm
2) ±0.059であった。また, 10%PMMAのEnamel Diskの硬度と曲げ破壊強さの変異係数は, 5回の繰り返し測定で5.60%, 6.36%と比較的小さく, 物性面で均一な試験片を得るという, 本研究の目的は一応達せられた。
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