口腔衛生学会雑誌
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30 巻, 1 号
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  • III: 殺菌乳酸菌飲料水によるエナメル質の自然表面および表層部の変化
    小高 鉄男, 川原 哲子, 小林 美由紀, 中川 勝洋, 東 昇平
    1980 年 30 巻 1 号 p. 2-11
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    10%ホルマリン (pH6.5) で固定したヒトの切歯を, 37℃の殺菌乳酸菌飲料水 (カルピス) に浸漬し, 唇側エナメル質の自然表面の形態的変化を, 3時間から3日まで, 走査電子顕微鏡を用いて観察した。一方, 24時間あるいは3日間浸漬によって, 表層下に脱灰層をもつエナメル質の表層部を, 透過光顕, 偏光顕微鏡, microradiography, 走査電子顕微鏡により形態学的に観察し, また, X線微小分析とVickers硬度の測定を行った。
    エナメル質の自然表面の結晶は, 浸漬後3から6時間で, その表面が溶解して融合した。24時間後, それらは部分的に溶出, あるいは剥離し, 直径100~150nmの結晶が露出した。これら粗大な結晶は, 3日間乳酸菌飲料水に浸漬した時点で, 約1.5μmの幅をもつ被覆層として, エナメル質の全表面を占めた。
    表層下に脱灰層をもつエナメル質の表層は, 表面から内部へむけて, (1) 前述の被覆層, (2) 比較的すう疎で物理的に破壊されやすい再石灰化層, (3) エナメル小柱の体部と周辺部が著しく溶解する脱灰層, (4) エナメル小柱の周辺部が主に溶解する脱灰前線部の4層に区分された。
  • 森岡 俊夫
    1980 年 30 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    医学領域へのレーザーの応用の研究は近年著しく進展しつつある。歯学領域においても, レーザーによるエナメル質の耐酸性付与, 歯牙沈着物の除去, 歯科用金属の溶接・切断などに応用され成果をあげている。しかしながら, これらの研究はin vitroで行われたものであり, レーザー光を実際に口腔内に導入し実験したものではない。
    そこで強い熱エネルギーをもつレーザー光を口腔内の任意の部位に安全に, かつ的確に照射しうる事が歯学領域におけるレーザーの臨床応用には不可欠である。
    今回は, この目的に試作されたNd-YAGレーザーのビーム・ガイドの構造とその性能の概要を紹介した。
    本装置を用いると, 通常パルス発振及びヂャイアント・パルス発振のYAGレーザー光を口腔の任意の部位に誘導することが可能となった。また本装置の操作性は比較的良好であり, またHe-Neレーザー光のガイドで照射部位が容易に決定しうることが示された。
  • 丹羽 源男
    1980 年 30 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    生体に有害な鉛の硬組織への取り込みを栄養状態の関連において調べた。すなわち, young, adultラットを用いて鉛投与した。5%, 18%, 30%たん白摂取群で4週間飼育した後の鉛の取り込みは5%たん白摂取群が他群にくらべ大きく, さらにadult群よりもyoung群が鉛取り込み量が大きかった。また, 硬組織Ca, Pの変化は主に大腿骨においてみられた。
  • 第1報成型法の検討と物理的性質
    大澤 武雄, 宮澤 忠蔵, 江藤 万平, 清水 秋雄, 川崎 徹
    1980 年 30 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    エナメル質の溶解性実験あるいはPlaqueの付着性実験などに, 個体差の著しい抜去歯を使用すると, 測定値にバラツキが生じ, 再現性の問題で難がある。そこで, エナメル質に性状が近似し, かつ均一で各種実験に応用可能な試験片の成型を試みた。
    多数抜去歯から精製した325meshのエナメル質粉末に, polymer溶液を混和し十分に分散させた後, 乾燥, 粉砕を行なって, 250meshの粉末を調製し, その200mgを試験片の成型に用いた。粉末を成型金型に充填し, 18ton/cm2の高圧処理を行なって, 厚さ0.7~1.0mm, 直径13mmの錠剤状のエナメル質板 (以下Enamel Disk) に成型した。
    エナメル質粉末とpolymerの組み合せで, 良好な成績が得られたのは, Polymethyl methacrylate (PMMA), epoxyおよびpolystyreneの3種類で, いずれも10%, 20%, 30%濃度で良い結果が得られた。なかでも, 成型過程での操作性やEnamel Diskの物性値から総合判定した結果, 10%PMMAの場合が最も優れていた。10%PMMAから得られたEnamel Diskの比重は, 2.27±0.07, 硬度はVickers hardness numberで79.80±4.47, 曲げ破壊強さは0.928 (kg/mm2) ±0.059であった。また, 10%PMMAのEnamel Diskの硬度と曲げ破壊強さの変異係数は, 5回の繰り返し測定で5.60%, 6.36%と比較的小さく, 物性面で均一な試験片を得るという, 本研究の目的は一応達せられた。
  • 小西 浩二, 井藤 信義
    1980 年 30 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    市販の粉末飼料の投与により下顎前歯唇側歯頸部に著明な歯垢付着がみられ, その後付着した歯垢が原因となって中等度の慢性炎症を起すODU Plaque-Susceptibleラット (以下SUSラットと略す) と同じ兄妹から出発し, 同様の方法では歯垢付着や歯肉炎のみられないPlaque-Resistantラット (以下RESラットと略す) について歯垢の付着状態と歯肉の炎症状況の関連性を検索する目的で, 5週齢の両系統のラットに粉末飼料を投与後Plaque Index (以下PlIと略す) とGingival Index (以下GIと略す) の推移について, 毎週2回, 4カ月間調べた。
    その結果, PlIはSUSラットにおいては, 粉末飼料投与直後に急上昇し, 以後経日的に上昇したがRESラットにおいては, わずかに歯垢付着がみられるのみであった。また, GIの推移はSUSラットにおいては, 粉末飼料投与後13週迄は徐々に上昇し, 以後は維持する傾向を示した。
    個々のSUSラットについて, 経月的にPlIとGIの相関関係について調べたところ, 1, 2および3カ月日には負の相関が, また4カ月目には正の相関が認められた。
  • 伊藤 学而, 高木 興氏, 島田 義弘, 井上 直彦, 桑原 未代子
    1980 年 30 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    無歯科医地区学童に対する歯科保健計画の実施過程における乳臼歯の抜去が, 永久歯咬合の成立に及ぼした影響について検討した。資料は, この計画の対象となった岩手県衣川村の学童122名と, 名古屋市のライオンファミリー歯科診療所における乳臼歯完全管理症例58例との永久歯咬合期の口腔模型である。
    これらのなかから, 7歯以上の乳臼歯が抜去された20例と, すべての乳臼歯が脱落時まで保存された49例とを選んで比較したところ, 両者における永久歯不正咬合や機能型要因の頻度には差がみられなかった。かえってdiscrepancy型要因の存在と永久歯不正咬合との間には0.1%以下の危険率で関連が認められた。
    以上のことから, 乳臼歯の早期喪失は永久歯咬合の成立にとくに大きな影響をもたらすとは考えられず, むしろdiscrepancy型要因などの先天的な要因が大きい影響をおよぼしていると考えられた。したがって治療の効率や学童に対する歯科医療の充足のためには, 高度齲蝕罹患乳臼歯の抜去は, 充分肯定されうる処置であるといえよう。
    たここで得られた知見は, とくに咬合の発達過程に関連する臨床歯科医学の再検討にも還元されるべきであると思われる。
  • とくに甲状腺機能を中心として
    原 康二
    1980 年 30 巻 1 号 p. 42-57
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/03/02
    ジャーナル フリー
    ラットによるフッ素 (F) の飲用実験を行い, その甲状腺機能への影響をしらべ, またあわせてFの吸収、分布および成長への影響などについて検討した。ラットは, 普通飼料および低F飼料飼育下で, 各種濃度のNaF溶液を飲用させ54~58日間飼育した。ラットの成長の抑制および臓器重量の減少は, 100ppm以上のF飲用によってみとめられた。また, 血清中および軟組織中F濃度は, 50ppm以上のF飲用により上昇がみられ, それ以下の濃度のF飲用においては組織中F濃度に恒常性がみとめられた。硬組織においては, 低濃度のF飲用によってもF濃度の上昇傾向が明らかであり, F飲用による影響が敏感にあらわれるようであった。また, 飼育飼料によりFの吸収および分布に相違がみられ, 飼料中の成分がFの吸収に対して大きな影響を与えていることが考えられた。
    甲状腺ホルモンについては, 飲用F濃度との間にDose-Response Relatienshipがみられないこと, 高濃度のF飲用においても, 一定の変動傾向がみられず, 甲状腺病理組織像においても, 変化がみられないことなどから, Fは甲状腺に対し特異的な影響を与えないものと考えられた。しかし, 低濃度のF飲用により, ホルモン値の上昇がみられるものもあり, 微量のFによる活性化作用がうかがわれた。下垂体ホルモンについては, 高濃度のF飲用により低下する傾向がみとめられ, Fによる下垂体機能への影響が考えられた。
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