日本人開業歯科医師のB型肝炎について, その罹患状況および感染源としての唾液について調査, 研究を行なった。
調査方法および対象は, 3つの段階に分けて行なった。
1. 肝炎に関するこれまでの既往について全国の30歳~60歳までの男子開業歯科医師を対象としたアンケート調査を実施した。抽出率は1/10である。
2. 現在の肝炎の既往について, 東京都内あるいは近郊に在住する25歳~60歳までの開業歯科医師の血清中のHBV関連抗原, 抗体について検索を加えた。対象者数は209名であり, 対照者群としては, 東京都内一般事務系職員290名の血清とした。
3. 感染源としての唾液についてHBs-Ag, HBe-Agの検索を行なうことで, 唾液がB型肝炎の感染に占める度合を検討した。対象は血清中のHBs-Agが陽性な者36名の口腔底貯留唾液と耳下腺純唾液である。
その結果, 日本人開業歯科医師は, 一般入に比べ, 不顕性にB型肝炎に罹患している率が高く, その経路は, 歯科患者の治療の際の唾液あるいは血液による可能性が高いことが判名した。さらに, 血清学的追跡調査によれば, 一人の開業歯科医師が年間に接触するHBs抗原陽性者の数は35~40名程度であると推計された。又, 唾液中のHBV関連抗原は血液による潜血の可能性が高く, HBe-Agの検索結果, 唾液による感染の可能性のあることが立証された。又, 各国の歯科医師との比較によれば, 日本人歯科医師は最もB型肝炎に感染している率が高いことが判名した。
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