口腔衛生学会雑誌
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34 巻, 2 号
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  • 第1報 乳臼歯における着色歯, 黄色線条ならびに螢光線条の出現状況とそれらの関連性について
    白戸 勝芳, 島田 義弘
    1984 年 34 巻 2 号 p. 72-80
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    着色歯, 黄色線条ならびに螢光線条の出現状況を調査し, それら3者の関連性を検討するために, 1968~77年に出生した小児506名から得られた乳臼歯524歯について研究した。肉眼的に観察したのち, 未脱灰研磨標本を作製し, 生物顕微鏡と落射型螢光顕微鏡を用いて観察した。
    また, わが国のテトラサイクリン系抗生物質のOral Suspensionの国家検定量 (国立予防衛生研究所) を参考にし, 次の結果を得た。
    1. 着色歯, 黄色線条ならびに螢光線条の出現頻度はそれぞれ35歯 (6.7%), 36歯 (6.9%), 312歯 (59.5%) であった (Table 2)。一歯平均黄色線条数と螢光線条数は2.22本と3.85本であった (Table 3)。
    2. 着色歯群では, 35歯中12歯 (34.3%) に黄色線条と螢光線条が出現し, 22歯 (62.9%) には螢光線条だけが出現していた。それら22歯中3歯には, 螢光線条は1本しか観察されなかった。両線条が出現していない歯は1歯であった (Table 4)。
    3. 非着色歯群では, 489歯中24歯 (4.9%) に両線条が出現し, 254歯 (51.9%) には, 螢光線条だけが出現していた。残り211歯 (43.2%) には, 両線条とも観察されなかった (Table 4)。
    4. A群 (着色歯で黄色線条がある歯), B群 (着色歯で黄色線条がない歯), C群 (非着色歯で黄色線条がある歯), D群 (非着色歯で黄色線条がない歯) の4群に群別すると, 一歯平均螢光線条数はそれぞれ9.25本, 7.30本, 4.42本, 1.75本であった (Fig. 2)。
    5. わが国におけるテトラサイクリン系抗生物質のOral Suspensionは1970~71年に最も多く生産され, 約19トンであった (Fig. 3)。
    以上の知見から, 歯が単に黄色を呈している, あるいは螢光線条が出現しているという理由でそれらの歯をテトラサイクリン系抗生物質を服用したために生じた着色歯であると安易に診断することは疑問である。
  • 田浦 勝彦, 高橋 紀子, 高木 興氏, 島田 義弘
    1984 年 34 巻 2 号 p. 81-87
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    乳歯列における初期齲蝕病変の進行速度を知るために, 本研究を行った。 1980年5~7月の初回診査時に3~4歳の仙台市内保育園児172名 (男児89名, 女児83名) を対象に, 6カ月間隔で計5回の丁寧な視診型の歯科検診を行った。 初回診査時に検出したエナメル質白濁斑124例, 褐色斑3例, 褐色化した小窩裂溝 (褐色窩溝) 83例ならびにエナメル質に限局した齲蝕 (C1) 174例 (咬合面75例, 隣接面64例, 頬舌面53例) を2年間追跡し, 累積進行率 (島田, 1968)を求めて検討したところ, 次の結果を得た。
    1. 白濁斑や褐色斑の進行速度は遅く, 白濁斑のC1以上への進行率は2年間で12.8%であり, 褐色斑では齲窩に進行した例がなかった。
    2. 咬合面の褐色窩溝は, 2年間に約65%がC1以上の齲窩に進行した。
    3. C1の進行を歯面別に調べたところ, 2年間に咬合面では86.8%が, 隣接面では71.3%が, さらに頬舌面では26.9%がC2以上の齲窩へ進行した。
    4. 褐色窩溝, 隣接面と頬舌面C1は, 最初の1年間に進行する例が多く, 次の1年間の進行例は少ない傾向が存在した。
  • 眞木 吉信, 山本 秀樹, 松久保 隆, 高江洲 義矩, 渋谷 睦, 浅見 邦明
    1984 年 34 巻 2 号 p. 88-96
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    齲蝕原性微生物のresazurin還元性を応用した齲蝕活動性迅速判定法 (Resazurin Disc法) の臨床応用を目的として, 齲蝕の現症と本法の判定結果との関連性を追求した。
    東京都下の幼稚園児136名 (3-5歳) を対象とし, Resazurin Disc法の有用性を統計学的に検討した。
    本法の4段階に評価したtest scoreと齲蝕現症としての一人平均d, f, df歯数およびd, df歯面数の間には, +と〓ならびに+と〓の両群間に統計的な有意差 (p<0.01~0.05) が認められた。さらに, 判定scoreごとの齲蝕罹患歯率と歯面率についてのridit analysisによる検討では, test scoreの上昇に伴う齲蝕罹患の段階的な増加傾向が明らかに認められた。特に, -・+と〓・〓の2群に区分した場合に, その有意差は顕著であった (p<0.005)。このことから, 本法のscoreの設定が, 齲蝕現症に基づく齲蝕活動性を反映していることを確認した。
    df歯率の歯種別分析結果より, 上顎乳中・側切歯と乳臼歯群においてtest scoreの上昇に伴う齲蝕罹患傾向の増大が認められた。
    今回の口腔診査において, 幼稚園児のフッ化ジアンミン銀塗布経験者が, 被験者の23.5%の高率であったので, フッ化ジアンミン銀塗布群と非塗布群問のscoreの判定成績について検討した。その結果, 塗布群はscoreが低いにもかかわらず, 齲蝕罹患が有意に高かった (p<0.001) ので, 統計的な評価を行う際には, 塗布群を除く必要性を認めた。
  • 石川 康子, 友辺 芳明, 大塚 誠, 一森 雅美, 佐藤 誠, 中村 亮
    1984 年 34 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    胆汁酸成分によるプラークコントロールの可能性を検討するため, コール酸とデオキシコール酸の口腔連鎖球菌に対する抗菌作用およびグルカン合成に及ぼす影響を観察した。
    胆汁酸成分の抗菌作用は菌種によりその感受性が異なり, 概ね, デオキシコール酸はコール酸よりも強い作用を示した。培地中に0.1%のデオキシコール酸あるいはコール酸を添加すると, それぞれ殺菌的, 静菌的作用が現われ, 菌の増殖が抑制された。さらに, 培地中にコール酸・デオキシコール酸が含まれると, 可溶性グルカンならびに不溶性グルカンともに産生が低下した。しかし, 各々のグルカンを合成するグルコシルトランスフェラーゼの酵素反応に対して直接的影響は認められなかった。したがって, 胆汁酸はグルカンを合成する酵素のde novoの合成抑制に関与しているのではないかと推測された。
  • 大西 正男, 尾崎 文子
    1984 年 34 巻 2 号 p. 104-108
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    食餌に含まれているCa, PとそのCa/P比率のいつれが, 鼠う蝕誘発能力を抑制するかを知るために, 合成う蝕誘発食餌6PMVのCaとP成分を変えることによって, Wistar系鼠に発生するう蝕数の変化を観察した。 その結果う蝕抑制の第一次決定因子は, Ca/P比率であることがわかった。 食餌中のCa, P量はう蝕発生量に対して立体的な凹面模型で示されることが考察され, このモデルは従来のこの問題に対する3っの学説を統一した。
  • 中西 國夫
    1984 年 34 巻 2 号 p. 109-123
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    フッ化物歯面塗布液およびフッ化物洗口液とエナメル質との反応により生成するフルオロアパタイトの定量的観察を行うことにより, 両フッ化物応用法のエナメル質への作用機序を比較検討することを目的として, X線回折法を用いてtemplate法により検索を行った。フッ化物歯面塗布液としてはフッ素濃度9,000ppm, pH3.6のリン酸酸性フッ化ナトリウム溶液を, フッ化物洗口液にはフッ素濃度500ppm, pH5.0のリン酸酸性フッ化ナトリウム溶液を用いた。
    フッ化物溶液作用エナメル質および各種標準試料を1,000℃にて5時間加熱してX線回折線の尖鋭化を行い, 生成フルオロアパタイトについてa軸格子定数の測定を行ったのち, その定量は標準試料の (410) 回折線について作製したtemplateと実験試料のline profileおよびpeak shiftの状態を対比することにより行った。
    また, エナメル質の加熱により生成するβ-リン酸三カルシウム量の測定を行い, エナメル質アパタイトの結晶性との関連性についても検討を加えた。
    その結果, フッ化物溶液作用によりエナメル質中に生成するフルオロアパタイトはHydroxyfluoragatite (HFA) であり, フッ化物歯面塗布液作用エナメル質では作用後8週でエナメル質中に生成したフルオロアパタイトは約20%, フッ化物洗口液作用エナメル質では約35%であることが示された。
    また, フッ化物歯面塗布液作用エナメル質では多量のフッ化カルシウムの生成を認め, その後, フッ化カルシウムの流出と同時にHFAの生成という過程をたどるのに対し, フッ化物洗口液作用エナメル質ではフッ素取り込み量の増加にともない, かなり結晶性の高いHFAが多量に生成することが認められ, エナメル質アパタイトの結晶性向上 (格子不整修復) が示唆された。
  • 第二報 洗口吐出液のメチルメルカプタン発生能を指標とする口臭測定法
    石川 正夫, 渋谷 耕司, 常田 文彦, 輿水 正樹
    1984 年 34 巻 2 号 p. 124-130
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    新しい口奥測定法として, ヒトロ腔内洗口後の吐出液 (以下洗口吐出液と略す) のメチルメルカプタン発生能を口臭の強さの指標とする方法を検討した。
    洗口吐出液のメチルメルカプタン発生能は, L-メチオニンを基質として洗口吐出液に添加し, 37℃, 嫌気条件下で2時間反応したときに発生したメチルメルカプタン量を炎光光度検出器を用いたガスクロマトグラフで測定した。洗口吐出液のメチルメルカプタン発生能と官能評価による口臭の強さの間には, 正の相関があり (相関係数r=0.70) , メチルメルカプタン発生能が口臭の強さの指標として用いうることが示唆された。
    5名の成人男子 (28歳~43歳) 被験者について, 市販歯磨剤を対照とした0.5% Sodium N-Lauroylsarcorinate配合歯磨剤のメチルメルカプタン抑制作用を検討した結果, 歯磨剤使用後1時間の洗口吐出液のメチルメルカプタン発生能に, Sodium N-Lauroylsareosinate配合歯磨剤が有意に抑制効果を示した (p<0.01)。この結果は, 口臭 (口腔内より生ずる局所的口臭) 中のメチルメルカプタン量を直接測定した場合と同様の傾向にあった。
    以上の結果から, 口臭の測定法に関する考察を行なった。
  • 橋本 雅範
    1984 年 34 巻 2 号 p. 131-145
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    重金属による環境汚染を評価するには, 環境中におけるその物質の濃度測定と同時に, Host側の生体試料中に含有される汚染物質の定量が不可欠である。代表的な重金属の一つである鉛は, その有用性が広く知られている反面, 体内に過度に吸収した場合の中毒は重篤である。
    今回一般生活環境下に居住する被検者を対象として, 試料採取が容易な唾液について, その鉛濃度を測定した。唾液中の鉛は超微量であることから研究報告はこれまで極めて少数である。このため唾液中の鉛をキレートした上で有機溶媒抽出することにより干渉を除去し, 定量感度が優れているフレームレス原子吸光分析することで, 唾液鉛の超高感度分析 (定量限界0.3ng/0.5ml) を再現性良く行なうことができた。
    その結果, 国内5地域に居住する一般人の混合唾液鉛濃度は, 各被検者群とも対数正規性分布を示し, 地域差が認められた (幾何平均値: 田原0.32μg/dl, 名古屋0.78μg/dl, 千葉μg/dl, 熊谷1.51μg/dl, 東京2.23μg/dl)。
    また各地城における被検者群の混合唾液鉛濃度の幾何平均値と, 試料採取場所における大気鉛濃度との間には相関関係 (r=0.95) が認められたことから, 被検者の居住する地域の環境鉛汚染状況を明らかにすると共に, 生体への鉛の侵入を推定する一指標としてその有用性が評価された。
    一方耳下腺唾液鉛濃度 (幾何平均値: 0.269μg/dl) は, 血漿・尿との相関性が密であることから, 生体鉛吸収の程度を明らかにする指標として利用できうるものとの結論を得た。
  • 1984 年 34 巻 2 号 p. e1
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
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