着色歯, 黄色線条ならびに螢光線条の出現状況を調査し, それら3者の関連性を検討するために, 1968~77年に出生した小児506名から得られた乳臼歯524歯について研究した。肉眼的に観察したのち, 未脱灰研磨標本を作製し, 生物顕微鏡と落射型螢光顕微鏡を用いて観察した。
また, わが国のテトラサイクリン系抗生物質のOral Suspensionの国家検定量 (国立予防衛生研究所) を参考にし, 次の結果を得た。
1. 着色歯, 黄色線条ならびに螢光線条の出現頻度はそれぞれ35歯 (6.7%), 36歯 (6.9%), 312歯 (59.5%) であった (Table 2)。一歯平均黄色線条数と螢光線条数は2.22本と3.85本であった (Table 3)。
2. 着色歯群では, 35歯中12歯 (34.3%) に黄色線条と螢光線条が出現し, 22歯 (62.9%) には螢光線条だけが出現していた。それら22歯中3歯には, 螢光線条は1本しか観察されなかった。両線条が出現していない歯は1歯であった (Table 4)。
3. 非着色歯群では, 489歯中24歯 (4.9%) に両線条が出現し, 254歯 (51.9%) には, 螢光線条だけが出現していた。残り211歯 (43.2%) には, 両線条とも観察されなかった (Table 4)。
4. A群 (着色歯で黄色線条がある歯), B群 (着色歯で黄色線条がない歯), C群 (非着色歯で黄色線条がある歯), D群 (非着色歯で黄色線条がない歯) の4群に群別すると, 一歯平均螢光線条数はそれぞれ9.25本, 7.30本, 4.42本, 1.75本であった (Fig. 2)。
5. わが国におけるテトラサイクリン系抗生物質のOral Suspensionは1970~71年に最も多く生産され, 約19トンであった (Fig. 3)。
以上の知見から, 歯が単に黄色を呈している, あるいは螢光線条が出現しているという理由でそれらの歯をテトラサイクリン系抗生物質を服用したために生じた着色歯であると安易に診断することは疑問である。
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