溶媒抽出法を前処理に応用した原子吸光光度法によるエナメル質中チタン (IV) の定量法の確立を目的として, 抽出の至適条件および定量操作の検討を行った後, 検量線の再現性, 共存元素による妨害, 測定値の再現性および溶媒抽出-吸光光度法との比較など, 定量法の精度についての検討を行うとともに, その他の生体硬組織試料への応用の可能性を検討した。
本法は, 試料中のチタン (IV) をクベロン錯体とし, 有機溶媒中に抽出することにより, 妨害となる共存元素から分離した後, 原子吸光光度法で定量を行うものである。
結果の概要は以下のとおりであった。
チタン (IV) の溶媒抽出の至適条件は, 1.15N塩酸酸性, クペロン濃度1.0×10
-2M溶液であり, この条件にて検量線を作成した結果, チタン (IV) 濃度1.0~8.0μg/m
lの間で直線となり, その再現性 (変動係数4.8%) は良好であった。エナメル質中の共存元棄による妨害を検討した結果, その影響は非常に少ないことが認められ妨害除去が可能であった。フッ化チタンアンモニウム溶液作用後のエナメル質粉末試料中のチタン (IV) を測定した結果, その再現性 (変動係数6.2%) は良好な結果が得られた。
次に, 有機相中に抽出されたチタン (IV) ークペロン錯体を吸光光度法にて定量し, 本法の測定値と比較した。その結果, 両法による測定値は近似となり, 本法によリチタン (IV) が精度よく定量されることが確認された。
さらに試料の分解に湿式灰化法を取り込れ, 定量性への影響を検討した結果, その影響は非常に小さく, 湿式灰化法を用いても本定量法によればチタン (IV) が精度よく定量でき, 本法を他の生体硬組織試料に応用できることが確認された。
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