口腔衛生学会雑誌
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34 巻, 5 号
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  • 森主 宜延, 永井 真弓
    1984 年 34 巻 5 号 p. 520-530
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    鹿児島市内保育所児の口腔内状態を明らかにするとともに, その歯科保健実態と現状から, 幼児期における保育所の歯科健康管理に対する役割の考察を行なった。対象は, 鹿児島市内保育所17カ所, 1200名である。年齢分布は0歳から6歳までであった。
    以上の対象者について, アンケート調査 (歯みがき, 間食の摂取状況), 齲蝕, 不正咬合, 異常歯そして歯垢付着状態について診査した。以上調査項目から次の結果を得た。
    1) 鹿児島市内保育所の歯科保健状況は不良であり, 所児の齲蝕罹患状況も不良であった。特に3歳, 4歳児は著しく不良であった。又, 口腔衛生状態も不良であった。
    2) 在所期間による齲蝕罹患率に差は示されなかった。
    3) 齲蝕罹患状況と間食の摂取回数ならびに, 定検の有無とで有意の関係を示した。
    4) 保育所における歯科健康管理の1案を提示した。
  • 中垣 晴男, 小山 芳和, 榊原 悠紀田郎
    1984 年 34 巻 5 号 p. 531-537
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    生体歯のエナメル質溶解性測定研究をすすめるための基礎的知見とし, 成人対象に141日間フッ素およびplacebo (蒸溜水) 洗口をさせ, その期間前後の生体歯エナメル質溶解性測定を行った。
    対照は4名の歯学部学生 (2名フッ素洗口群, 残り2名対照群) で, 全期間141日をフッ素洗口群においてI: Placebo洗口期, II: フッ素洗口期 (500ppm) およびIII: フッ素洗口期 (1,000ppm) の3段階に分けた。対照群は全期間placeboで洗ロした。生体歯のエナメル質溶解性測定は酢酸ナトリウムー塩酸緩衝液 (酢酸1.4M, pH2.3) を用いる中垣の方法を用いた。その結果以下の結論を得た。
    1) フッ素洗口を行うことによって生体歯のエナメル質溶解性が減少した。
    2) この減少は洗口液のフッ素濃度を500ppmから1,000ppmに変更したときよりもplaceboから500ppmに変更したときの方が大の傾向にあった。
  • 中垣 晴男, 柴田 学, 榊原 悠紀田郎
    1984 年 34 巻 5 号 p. 538-547
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    歯学部学生の125名の上顎左側中切歯および下顎左側第1大臼歯について, 酢酸ナトリウムー塩酸緩衝液 (酢酸1.4M, pH2.3) を用いる中垣の方法で生体歯エナメル質溶解性を測定し, それより3年前からの増加DMFTとの関係をスクリーニング・テストとしての立場から検討した。結果の概要は次のようであった。
    1) エナメル質溶解性 (溶出カルシウム量, x±SD) は, 上顎左側中切歯1.64±0.45μg (研磨後2.22±0.52μg), 下顎左側第1大臼歯は1.97±0.47μg (研磨後2.47±0.57μg) であり後者の方が多かった。
    2) 上顎左側中切歯と下顎左側第1大臼歯のエナメル質溶解性 (溶出カルシウム量) は, 研磨条件の有無にかかわらず, 同一口腔内で有意な相関が認められた。
    3) ΔDMFTとエナメル質溶解性 (溶出カルシウム量) との関係は明瞭でなかったが, スクリーニング. テストとしての有効性では, 上顎左側中切歯より下顎左側第1大臼歯の方が, 溶出カルシウム量のx-SD値でΔDMFT≧2, ΔDMFT≦1に分けたときが, 敏感度+特異度の和がもっとも高かった。
  • 可児 徳子, 福岡 幸伸, 飯野 新太郎, 清水 真理子, 山根 勇, 磯崎 篤則, 可児 瑞夫
    1984 年 34 巻 5 号 p. 548-555
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    pHおよびフッ素濃度の異なるフッ化物洗口液のエナメル質粉末におよぼす影響を比較検討する目的で, 永久歯工ナメル質粉末 (200mesh通過品) を材料とし, in vitroで実験を行った。フッ化物洗口液は中性フッ化ナトリウム溶液 (pH7.0), リン酸酸性フッ化ナトリウム溶液 (pH5.0) ならびに厚生省認可のフッ化物洗口剤ミラノール (BMD社製pH5.0) のフッ素濃度100, 250, 500ppmのもの合計9種類を用いた。エナメル質粉末に各フッ化物洗口液を30分間作用させ, エナメル質粉末へのフッ素取り込み量, 酸抵抗性およびエナメル質アパタイトの結晶性の検討を行った。
    エナメル質へのフッ素取り込みは酸性のフッ化物洗口液の方が中性のものより高く, 特に500ppm F-ではリン酸酸性フッ化ナトリウム溶液作用で高い値を示した。ミラノールでは中性フッ化ナトリウム溶液に比べて約2.3倍のフッ素取り込みを認めた。酸抵抗性の向上ならびにエナメル質アパタイトの結晶性の向上はフッ素取り込みと相関性のあることが示された。
    これらの結果から, フッ化物洗口液は中性よりも酸性の方がエナメル質へのフッ素取り込み量は高く, 酸抵抗性獲得の効果も高いことが認められた。また現行のフッ化物洗口液では低濃度においても繰り返し応用することにより十分な効果が期待できることが示唆された。
  • 統計的解析法による
    粟田 啓子, 佐藤 芳彰, 及川 清, 谷 宏
    1984 年 34 巻 5 号 p. 556-575
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    本研究は北海道内3地域, 沖縄県1地域における幼児を対象とした歯科検診及び生活習慣に関する調査結果を用いて夫々の地域に特異的な生活習慣要因とう蝕罹患との関連性を統計的に分析して相対的に位置づけした結果, う蝕発症の地域特性を明らかにし, 次のような知見を得た。
    1. 4地域の幼児集団における生活習慣の状況を夫々特徴づける要素を3根抽出した。それらは第1根が糖分摂取, 第2根が生活の規則性, 及び第3根が食習慣の規則性であった。
    2. 都市部と郡部において食生活を含む生活習慣に関して対象児を夫々特徴づける要素は糖分摂取であり, 都市部である札幌市と那覇市における夫々の対象児を特徴づける要素は生活の規則性であった。郡部であるえりも町と木古内町における夫々の対象児を特徴づける要素は食習慣の規則性であった。
    3. 那覇市内2保育所における対象児ではう蝕を抑制するには食習慣の規則性の改善, 乳臼歯う蝕重症化抑制のためには生活の規則性の改善が最も必要であった。
    札幌市内23保育所における対象児では乳前歯のう蝕抑制及び乳臼歯う蝕重症化抑制のためには糖分摂取制限, 乳臼歯う蝕抑制には食習慣の規則性が最も必要であった。
    えりも町ではう蝕抑制及び乳臼歯う蝕重症化抑制, 乳前歯及び乳臼歯のう蝕抑制のためには, 夫々食習慣の規則性, 生活の規則性の改善及び糖分摂取制限が必要であった。
    木古内町ではう蝕抑制及び乳臼歯う蝕重症化抑制のためには, 夫々糖分摂取制限及び生活の規則性に関する改善が最も必要であった。
    4. 都市部と郡部においては乳臼歯う蝕発生に関して明らかに相違が認められた。乳臼歯う蝕抑制のためには都市部では食習慣の規則性に関する改善が最も必要であり, 郡部では糖分摂取制限が最も必要であった。
  • 藤沢市における事例
    北原 稔, 高野 敬子, 堀内 欣治, 松坂 佳代子, 向井 晴二
    1984 年 34 巻 5 号 p. 576-583
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    地域保健活動の場において, 歯周疾患予防管理の資料を得るため, 神奈川県下の地域住民234人を調査したところ次のような結果を得た。
    1) 地域成人の98%以上の殆どの者が, 歯周組織に何らかの異常が認められた (Table 2)。また, 1人平均の有所見の部位 (Sextant) は半数以上の部位に及んでいた (Fig. 1)。
    2) 増齢に伴い, 「出血のみの者」や「歯石の者」という軽度の異常が認められた者の割合は減少し, 逆に4mm以上の「歯周ポケットの者」の割合 (P1とP2の和) が20-29歳で47%, 30-44歳で67%, 45-64歳で81%と増加する傾向にあった (Table 2)。また, 30歳以上の年齢層において, 歯周ポケットがある者の割合は男子が女子を上まわる傾向にあった。
    3) 1人平均の有所見のSextant数全体は増齢的に増加し, とくに4mm以上の歯周ポケットのSextant数の増加が著しく45-64歳で2.34sextantsに及んでいた (Table 3, Fig. 1)。また, 同じ年齢層においては, 女子より男子がよりひどく歯周疾患に侵されている傾向が認められた。
    4) 地域成人の90%以上の者に歯周疾患予防のための口腔衛生教育が必要であり, 予防処置 (歯石除去) は, 20-29歳で80%以上, 30歳以上で90%以上の者に必要であると考えられる結果であった。また, 複雑な外科処置の必要な者は, 20-29歳で3%, 30~44歳で15%, 45-64歳で32%に及んでいた。(Table5)。
    これらの結果から, 今後, 地域において若い年代から歯周組織を守る保健活動を早急に推進する必要があると考える。
  • 第I報原子吸光光度法によるチタン (IV) 定量における基礎的検討
    可児 徳子, 清水 真理子, 福岡 幸伸, 飯野 新太郎, 可児 瑞夫
    1984 年 34 巻 5 号 p. 584-589
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    フッ化チタン化合物作用後のエナメル質中のチタン (IV) を原子吸光光度法を用いて定量する方法を確立する目的で, 原子吸光分光分析装置によるチタン (IV) の測定について基礎的検討を行った。
    原子吸光分光分析装置には日立偏光ゼーマン原子吸光分光光度計 (180-80形) を用い, 測定条件の設定, 共存元素, 無機酸による妨害, ランタンによる妨害除去, ならびに標準添加法による定量について検討を行った。
    1) 原子吸光光度法によるチタン定量の至適測定条件は, 波長364.3nm, ランプ電流値12.5mA, バーナー高さ10.20mm, アセチレン流量0.37kg/cm2, 亜酸化窒素流量1.60kg/cm2であった。
    2) エナメル質中に共存する元素すなわちカルシウム, リン酸, マグネシウム, フッ素による妨害, ならびに過塩素酸, 塩酸, 硫酸などの無機酸による妨害が認められた。
    3) リン酸による妨害はランタン添加により抑制が可能であったが他の元素の妨害除去はランタン添加では不可能であった。
    4) エナメル質試料の標準添加法による定量では, 測定値の再現性が低く, 実用性に欠けることが認められた。
    以上の結果から, エナメル質試料溶液中のチタン (IV) を直接定量することは妨害イオンが多く困難であリチタン (IV) を分離する前処理が必要であることが判明した。
  • 第II報溶媒抽出-原子吸光光度法によるエナメル質中チタン (IV) の測定
    可児 徳子, 清水 真理子, 福岡 幸伸, 飯野 新太郎, 可児 瑞夫
    1984 年 34 巻 5 号 p. 590-597
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    溶媒抽出法を前処理に応用した原子吸光光度法によるエナメル質中チタン (IV) の定量法の確立を目的として, 抽出の至適条件および定量操作の検討を行った後, 検量線の再現性, 共存元素による妨害, 測定値の再現性および溶媒抽出-吸光光度法との比較など, 定量法の精度についての検討を行うとともに, その他の生体硬組織試料への応用の可能性を検討した。
    本法は, 試料中のチタン (IV) をクベロン錯体とし, 有機溶媒中に抽出することにより, 妨害となる共存元素から分離した後, 原子吸光光度法で定量を行うものである。
    結果の概要は以下のとおりであった。
    チタン (IV) の溶媒抽出の至適条件は, 1.15N塩酸酸性, クペロン濃度1.0×10-2M溶液であり, この条件にて検量線を作成した結果, チタン (IV) 濃度1.0~8.0μg/mlの間で直線となり, その再現性 (変動係数4.8%) は良好であった。エナメル質中の共存元棄による妨害を検討した結果, その影響は非常に少ないことが認められ妨害除去が可能であった。フッ化チタンアンモニウム溶液作用後のエナメル質粉末試料中のチタン (IV) を測定した結果, その再現性 (変動係数6.2%) は良好な結果が得られた。
    次に, 有機相中に抽出されたチタン (IV) ークペロン錯体を吸光光度法にて定量し, 本法の測定値と比較した。その結果, 両法による測定値は近似となり, 本法によリチタン (IV) が精度よく定量されることが確認された。
    さらに試料の分解に湿式灰化法を取り込れ, 定量性への影響を検討した結果, その影響は非常に小さく, 湿式灰化法を用いても本定量法によればチタン (IV) が精度よく定量でき, 本法を他の生体硬組織試料に応用できることが確認された。
  • 磯崎 篤則
    1984 年 34 巻 5 号 p. 598-632
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    学校歯科保健プログラムへのフッ化物歯面塗布法ならびにフッ化物洗口法の併用導入の有用性を明らかにすることを目的として, 小学校において, 児童を対象に両方法を併用したう蝕予防プログラムを導入実施し, 導入年次別のう蝕予防効果にっいてCohort分析を行い検索した。
    研究対象は, 岐阜県下某小学校児童972名 (男子511名, 女子461名) である。これらの対象は, 1975年度の1年次から6年次までの全学年児童と1976年度の1年次児童であり, これらの児童がそれぞれ6年次になる1976年より1981年までのCohort分析を行った。
    総萌出歯についてのDMFTおよびDMFS, 個人DMFT数およびDMFS数分布状態ならびに, 歯種別のDMFT rateについての比較検討をした結果, 低学年次より早期に予防法を開始したグループにおいて顕著なう蝕予防効果が認められた。
    以上の結果から学校歯科保健活動の場でのう蝕予防対策としては, Brushing指導, 歯科衛生教育, 間食指導のみでなく, 歯質強化を目的としたフッ化物歯面塗布法およびフッ化物洗口法を併用導入することにより明らかなう蝕予防効果が認められ, 学校歯科保健プログラムにフッ化物歯面塗布法およびフッ化物洗口法の併用導入の有用性と低学齢期から導入し, 全学年を通じて継続実施することの重要性が示唆された。
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