最近, 病院, 歯科診療所などで院内感染の問題が大きく取りあげられてきたため, 消毒, 滅菌の重要性が再認識されるようになってきた。
実際の歯科治療において, 消毒剤を使用する際, 種々の物質が混入して消毒剤の抗菌力に影響を及ぼすことがあるため, 我々は, 歯科診療室内で消毒剤中に混入されることが多いと思われる。歯牙切削粉, アルギン酸印象材, 唾液, 血清, 即時重合レジン, リン酸亜鉛セメントを, 400~102,400倍まで希釈した各消毒剤中 (クロルヘキシジン, 塩化ベンザルコニウム, クレゾール, イルガサンDP-300) に混入させて, 抗菌力に及ぼす影響について実験を行い, 次の結果を得た。
1) 特に消毒剤の抗菌力を低下させた物質は, 歯の切削粉, アルギン酸印象材, 血清であった。
2) 無菌唾液は, 抗菌力を低下させた場合と増加させた場合および影響を及ぼさなかった場合とがあっった。
3) レジン粉は, 抗菌力を低下させた場合と影響を及ぼさなかった場合とがあった。
4) セメント粉は, 抗菌力を増加させる場合と影響を及ぼさなかった場合とがあった。
5) レジン液, セメント液は, ほとんどの希釈系列において菌の発育がみられなかった。
6) 12名の被検者より採取した唾液の抗菌力に及ぼす影響は, 個人差が見られ, クレゾールが最も影響力は大であり, 次いでイルガサンDP-300であり, クロルヘキシジン, 塩化ベンザルコニウムは同程度であった。
7) 各物質混入時の溶液のpH値は, セメント液ではpH 2.2であり, 他のものはpH7.1~7.4であった。
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