口腔衛生学会雑誌
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35 巻, 3 号
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  • 浅野 淑子, 島田 義弘
    1985 年 35 巻 3 号 p. 270-286
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    24時間尿へのフッ素 (F), カルシウム (Ca) ならびにリン (P) の排泄量における性と年齢による変動を知る目的で, 仙台市内の歯学部附属病院の入院患者239名 (1~80歳) について2~4日間の24時間尿を採取した。尿量とそれぞれの測定濃度とから排泄量を求め, さらにそれぞれの排泄量について体重比とクレアチニン比を求めて比較検討した。
    尿中F量とCa量については, 明瞭な性差を認めず, 男女ともに30歳代まで加齢的に統計学的有意に増加した。一方, 尿中P量については, 39歳以下の多くの群で男性が女性より統計学的有意に大きく, かつ男女ともに10歳代で早くも成人と同等のレベルに達した (Tables 1, 2)。
    F量ならびにCa量の体重比とクレアチニン比については, 29歳以下群では男性が高く, 30歳以上群では逆に女性が高い値を示すことが多かった。30歳を境として2群に大別したところ, 男女群間にしばばしば統計学的有意差が認められた。男女のF/体重比とF/クレアチニン比ならびに女性のCa/体重比とCa/クレアチニン比については, 30歳以上の各群が29歳以下の各群より統計学的有意に高いことが多かった。一方, P量の体重比とクレアチニン比については, 40歳以上の女性群が男性群よりしばしば統計学的有意に高く, 男女ともに15~19歳まで加齢的に統計学的有意に減少した (Tables 5-8)。
    F量ならびにCa量の変動係数については, 1~9歳一括群が10~59歳一括群より統計学的有意に大きかった。一方, P量の変動係数については, 統計学的有意な年齢群間差を認めず, かつF量ならびにCa量の変動係数より統計学的有意に小さかった (Tables 9)。
    以上, 尿中排泄量に関する成績からも, F代謝とCa代謝間の関連の深さ, ならびにこれらの代謝とP代謝間の相違が追認された。
  • 平沢 一晃, 丹羽 源男
    1985 年 35 巻 3 号 p. 287-297
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    フッ素が生体に投与されるとかなりの部分が速やかに呼収され, 一時的な血清中フッ素濃度の上昇をもたらすことはよく知られている。本論文はフッ素投与による, 血清中全フッ素濃度およびイオン型フッ素濃度, さらに血清中カルシウム濃度の変動を日本白色種ウサギを用いて検討したものである。
    ウサギに体重1kgあたり, それぞれ1, 2, 4, 6, 8, 10mgのフッ素をNaFとして経口投与し, 耳辺静脈より経時的に採血し, 次の結論を得た。
    1. フッ素投与による血清中フッ素濃度の変動は, イオン型フッ素濃度および全フッ素濃度ともに, 投与後すみやかに上昇する。また, 投与フッ素量が多くなるほど, 血清中イオン型フッ素濃度および全フッ素濃度の上昇は急激であり, 投与時間後までの上昇は, フッ素投与前に比べていずれのフッ素投与群でも有意に高かった。
    2. フッ素投与後4時間までは, 血清中イオン型カルシウム濃度が減少し, 24時間後にはいずれのフッ素投与群でも投与前の値に戻った。また, フッ素投与による血清中全カルシウム濃度は, フッ素投与前の値との間に有意差を示さなかった。
    3. フッ素投与により血清中リン濃度は, いずれのフッ素投与群でも15分, あるいは30分後に最低値を示したが, すぐに投与前の濃度にもどり, フッ素投与前濃度と投与後の各測定時間でのリン濃度に有意差は認められなかった。一方, 血糖値はフッ素投与4時間まで投与前の値より有意に高かった。しかし, いずれのフッ素投与群も時間の経過とともに血糖値は減少し, 投与前の値に近づいた。
    4. フッ素投与による血清中フッ素濃度の半減期をイオン型フッ素濃度と全フッ素濃度で求めた結果, いずれの濃度とも投与フッ素量の増加とともに半減期が長くなった。
  • 成田 清彦
    1985 年 35 巻 3 号 p. 298-313
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    鉛作業者の健康管理には, 従来から作業環境の気中鉛濃度の測定, 作業者の検診成績などを参考にして作業者の健康管理, 作業環境の改善がなされてきた。また検診項目としては, 血液および尿の鉛濃度測定, 血液比重, 尿coproporphyrin, 尿δ-aminolevulinic acid (ALA), 血液δ-aminolevulinic dehydrase (ALA-D), free erythrocyte porphyrinなどがあり, これらの成績と血液鉛濃度との関係が研究されている。しかし近年, 血液および尿のみならず唾液を用いる方法が, 一般有害物質について検討されつつある。
    本研究では, 洗口液を試料とし鉛作業者の洗口吐き出し液 (以下洗口液と略す) 鉛量が, 作業環境鉛濃度および個人の鉛曝露の指標となりうるかを追求した。
    方法は某蓄電池工場における作業者に0.2%酢酸溶液30mlで洗口してもらい, その洗口液全量の鉛量を測定した。また一部の被検者では尿および血液鉛濃度, 歯垢および歯石の鉛濃度, 血液比重と, さらに職場環境気中鉛濃度を測定した。洗口液の鉛量の測定は, 洗口試料液を共栓付の三角フラスコ (ガラス製で300ml) に混酸とともに入れ, 加熱し, 湿性灰化する。灰化液のpHを調整し, APDCとMIBKにより抽出し, MIBK層を原子吸光分光光度 (AAS) 法により測定した。
    その結果0.2%酢酸溶液で30秒間洗口を行うことにより, 一般生活者の洗口液中の鉛量は9名の幾何平均0.41μg SD 1.9で, 連続して洗口しても鉛量の変動は少なかった。
    また, 鉛作業者126名の洗口液鉛量は幾何平均1.18 μg SD 2.7であって, 職場別の環境鉛濃度と, その職場の鉛作業者の平均洗口液鉛量は, かなり高い相関関係 (r=0.73) を示した。
    以上のことから, 鉛作業者の洗口液鉛量は, 作業環境気中鉛濃度を反映し, 個人の鉛曝露量を推定するための指標となりうる。
  • 特に混入物質による影響
    小澤 亨司, 相良 徹, 二村 佳世子, 赤石 吉雄
    1985 年 35 巻 3 号 p. 314-329
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    最近, 病院, 歯科診療所などで院内感染の問題が大きく取りあげられてきたため, 消毒, 滅菌の重要性が再認識されるようになってきた。
    実際の歯科治療において, 消毒剤を使用する際, 種々の物質が混入して消毒剤の抗菌力に影響を及ぼすことがあるため, 我々は, 歯科診療室内で消毒剤中に混入されることが多いと思われる。歯牙切削粉, アルギン酸印象材, 唾液, 血清, 即時重合レジン, リン酸亜鉛セメントを, 400~102,400倍まで希釈した各消毒剤中 (クロルヘキシジン, 塩化ベンザルコニウム, クレゾール, イルガサンDP-300) に混入させて, 抗菌力に及ぼす影響について実験を行い, 次の結果を得た。
    1) 特に消毒剤の抗菌力を低下させた物質は, 歯の切削粉, アルギン酸印象材, 血清であった。
    2) 無菌唾液は, 抗菌力を低下させた場合と増加させた場合および影響を及ぼさなかった場合とがあっった。
    3) レジン粉は, 抗菌力を低下させた場合と影響を及ぼさなかった場合とがあった。
    4) セメント粉は, 抗菌力を増加させる場合と影響を及ぼさなかった場合とがあった。
    5) レジン液, セメント液は, ほとんどの希釈系列において菌の発育がみられなかった。
    6) 12名の被検者より採取した唾液の抗菌力に及ぼす影響は, 個人差が見られ, クレゾールが最も影響力は大であり, 次いでイルガサンDP-300であり, クロルヘキシジン, 塩化ベンザルコニウムは同程度であった。
    7) 各物質混入時の溶液のpH値は, セメント液ではpH 2.2であり, 他のものはpH7.1~7.4であった。
  • 山村 利貞
    1985 年 35 巻 3 号 p. 330-344
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    フッ化アンモニウム溶液のフッ化物歯面塗布液としての, 臨床応用の可能性を検索する目的で, 現行のAPF溶液と同一のフッ素濃度とpHを有するリン酸酸性フッ化アンモニウム溶液 (フッ素濃度9000ppm, pH3.4) を調製し, エナメル質におよぼす影響について検討を行った。
    Intact Enamelに各溶液を作用させ, エナメル質表面の走査電子顕微鏡観察, 酸溶解性試験ならびにX線マイクロアナライザによる線分析を行った (実験1)。エナメル質粉末に各溶液を作用させ, X線回折法による反応生成物の同定と, 作用後ならびに1MKOH溶液洗浄後の試料の化学分析を行った (実験2)。次いでエナメル質粉末に各溶液を2, 4, 6, 10分間作用させ, X線回折法により内部標準法を用いて, エナメル質中のフッ化カルシウム量を測定した。さらに水洗後の残留フッ化カルシウム量と溶出フッ素量を経時的に測定した (実験3)。
    その結果, Intact Enamelでは実験群において表層に多量の沈着物を認めた。酸抵抗性はフッ化アンモニウム溶液作用の方が高く, フッ素取り込みもAPF溶液作用群より数倍高いことが示された (実験1)。エナメル質粉末では実験群にフッ化カルシウム生成を認めたが, フッ化アンモニウム溶液作用群の方が結晶性の高いフッ化カルシウムが多量に生成された。また, 1MKOH溶液洗浄後もかなり多量のフッ素が残留しエナメル質のCa/Pモル比が1.67であったことから, フルオロアパタイト生成が示唆された (実験2)。フッ化物溶液の作用時間との関係では, フッ化アンモニウム溶液の方が約2倍のフッ化ヵルシウム生成が認められた。蒸留水中への溶出フッ素量はAPF溶液作用群の方が早期に高い値を示すのに対し, フッ化アンモニウム溶液作用群では安定した値を示した。
    これらのことから, リン酸酸性フッ化アンモニウム溶液はエナメル質に作用して, 結晶性の高い, 水に溶出しにくいフッ化カルシウムを多量に生成するため, フッ化カルシウムは低濃度のフッ素供給源として有効に働くことが確認された。また, 臨床応用上APF溶液よりも短い塗布時間あるいは低濃度で同様の効果が期待されることが示唆された。
  • スクリーニング手法を中心として
    新倉 美智子, 丹羽 源男
    1985 年 35 巻 3 号 p. 345-360
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    東京都心部の某保健所で, 1歳6ヵ月児, 3歳児歯科健診に参加し, 1歳6ヵ月児のう蝕罹患状況が, 3歳児う蝕罹患に移行する状況を同一個体で追跡検討を行った。また, 同時に母親から, 質問紙法により, 家庭の歯科保健に関する生活習慣を調査した。とくに, 毎日の歯磨き習慣, 歯磨きの時期, 間食の与え方, 間食の内容の4項目と歯垢の付着について, う蝕High Risk群, Low Risk群を設定し, 3歳児df者率との関連を追求し, さらに, スクリーニング指標の有効性を検討して, 次の結論を得た。
    O1型, O2型の3歳児う蝕罹患群は, df者率で, O1型がO2型より有意に低かった (p<0.01)。dft, dfsもO1型がO2型より低かったが, 有意差は認められなかった。う蝕High Risk群のdf者率は, 間食の与え方 (p<0.05), 間食の内容 (p<0.01), 歯垢の付着 (p<0.001) で有意に高かった。スクリーニング検査の有効性は, Youden Index, Predictive Valueの両者とも高いのは, 歯垢の付着であり, O1型, O2型スクリーニングでは, Predictive Valueに高い値が認められた。
    以上の結果から, 3歳児う蝕罹患には, 歯垢の付着, 間食の与え方に注目すべきであり, またO1型, O2型スクリーニングの有効性も示唆された。
  • 眞木 吉信
    1985 年 35 巻 3 号 p. 361-377
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    唾液中細菌叢の年齢推移による生態学的な現象を明らかにするために, 新生児期から老年期に至るまでのS. mutans, Streptecocci, LactobacilliおよびActinomycesの定着, 増減ならびに相互関連性について疫学的な分析を試みた。
    出生直後から老人までの14の年齢集団, 1127名を被験対象とし, 混合唾液中の各種菌数測定と動態分析を行った。
    出生直後では, Lectebacilli, ActinomycesおよびStreptocecciの検出者率は31%で菌数レベルも低かったが, 4-5日後になるとStreptecocciの104以上のレベルでの検出者率は90%に達し, 比較的早期の口腔内への定着が示唆された。これに対して, Lactobacilliの口腔内への定着は4-5歳頃, Actinomycesの場合は3歳頃と推定された。S. mutansは新生児期には全く検出されなかったが, 1-2歳以降の時期には被験者全員から検出され, 7歳まで増加傾向にあった。総菌数は正常分娩児の場合, 出生直後で平均103程度の菌数レベルを示したが, 帝王切開児2名中1名には全く検出されなかった。しかし, 4-5日後には両者とも106-108と他の年齢集団と殆ど変わらない菌数レベルに達した。
    S. mutansLactobacilliの菌数レベルは類似しており, 両者には各年齢層において比較的高い相関性が認められた。総菌数およびStreptococciの年齢推移は, 1-2歳以降安定しているが, 16歳の集団についてはStreptococciActinomycesとともに菌数レベルの減少を示し, 逆にLactobacilliは増加した。妊婦は20歳代の細菌叢に比べて, S. mutansの増加とActinomycesの減少が見られ, 総義歯装着者では同年代の有歯顎者と比較して, S. mutansLactebacilliの菌数レベルの減少が認められた。これらの差異はいずれも統計的に有意なものであった (p<0.05)。
  • 飯島 洋一, 稲葉 大輔, 宮沢 正人, 田沢 光正, 片山 剛
    1985 年 35 巻 3 号 p. 378-383
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    岩木川流域の3市9町8村の飲料水中のフッ素濃度を測定した。この結果, 浅井戸や伏流水あるいは河川の表流水を水源とする場合のフッ素濃度は, 無視しうる程度 (<0.1ppm) であることが示された。これに対して, 深層地下水 (200~300m) を水源とした飲料水は高いフッ素濃度 (0.3~1.1ppm) を示していた。
    このように高いフッ素濃度が何に由来するのかを検討するため, 歯牙フッ素症が発現する地区の深井戸 (250m) 掘さく時に採取した地質試料のフッ素濃度を地層ごとに分析した。
    total Fならびにionizable F (Mean±S.D.) は, それぞれ130.3±43.1ppm, 37.4±24.8ppmであるが, ionizable Fのtotal Fに対する割合は10~70%と地層による変動が大きい。このなかで, 40~70%と高い値を示す地層は比較的限られており (全体の1/3程度), 収水を目的としたストレーナー開口部とその周辺には, これらの地層 (砂質シルト) が存在していた。また砂質シルトのionizable Fは易溶出性であった。これらのことは, 飲料水中のフッ素が地質に由来する可能性のあることを示唆している。
  • 特に気菌と環境因子との関係
    福島 真貴子, 金井 昌代, 野田 隆二, 北村 中也, 相良 徹
    1985 年 35 巻 3 号 p. 384-392
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    近年, 病院・診療室内における空気汚染が問題となり, 特に空気中細菌 (気菌) による院内感染が取りあげられ, その対策が積極的に推進されるようになってきた。
    そこで著者らは, 歯科診療室における空気汚染を把握するため, 気菌に着目し鶴見大学歯学部附属病院予防歯科診療室とその待合室において1年間にわたり, SY式ピンホールサンプラー法と落下法により気菌を測定し, また室内環境の測定をも行い次のような結果を得た。
    1) 室内気候は, 気温が23.3~28.4℃, 気湿が45~77%, 気流が0.06~0.20m/secであった。2) 在室人数は, 2~26人であった。3) 気菌コロニー数は, SY法では, 0.03~0.52個/l, 落下法では, 0.58~5.33個であった。4) 気菌コロニー数と気温, 気湿, 気流の間には, ほとんど相関はみられなかった。5) 気菌コロニー数と在室人数との間では, 相関係数はSY法で0.666, 落下法で0.590と高い正の相関が得られた。6) SY法と落下法との間における気菌コロニー数の相関係数は0.814と高い正の相関が得られた。
  • 片山 剛, 飯島 洋一, 田沢 光正, 宮沢 正人, 長田 斉, 稲葉 大輔, 氏家 高志, 鈴木 明子, 鈴木 国友, 落合 良仁, 阿部 ...
    1985 年 35 巻 3 号 p. 393-401
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    フィチン酸ナトリウム配合フッ化スズ歯磨剤の齲蝕抑制効果を臨床的に評価する目的で, プラシーボ歯磨剤とフッ化スズ歯磨剤を対照として, 2年間にわたる臨床試験を二重盲検法により実施した。
    岩手県下4小学校の1年生から5年生の児童998名をそれぞれの試験歯磨剤使用群に振り分け, 各児童に氏名を表示した試験歯磨剤を学校および家庭用に配布し, 歯科衛生士による口腔衛生指導を年3回実施した。また, 学校における給食後の歯磨きは養護教諭ならびに学級担任の指導のもとに, 指定された歯磨剤と歯ブラシを用いて行われた。
    試験開始時の萌出している健全歯を対象として2年間にわたる各児童の齲蝕増加 (ΔDMFT, ΔDMFTrate, ΔDMFS, ΔDMFSrate) をコーホート観察した。フィチン酸ナトリウム配合フッ化スズ歯磨剤のプラシーボ歯磨剤使用群に対する齲蝕抑制率はΔDMFT rateおよびΔDMFS rateでみるといずれも21%であり, フッ化スズ歯磨剤使用群よりも有意に齲蝕を抑制していた (p<0.05)。なお, 前歯群を対象とした場合のフィチン酸ナトリウム配合フッ化スズ歯磨剤およびフッ化スズ歯磨剤の齲蝕抑制率は, ΔDMFTでみるとそれぞれ47%および40%であった。一方, 大臼歯群におけるフィチン酸ナトリウム配合フッ化スズ歯磨剤の齲蝕抑制率 (ADMFS rate) は13%で, フッ化スズ歯磨剤 (-1%) に比べて有意に高い効果を示した (p<0.05)。
    以上の結果から, フッ化スズ歯磨剤にフィチン酸ナトリウムを配合することにより, 齲蝕抑制効果が著しく向上することが明らかにされた。
  • 大西 正男
    1985 年 35 巻 3 号 p. 402-412
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    既往の発見に基いて, 飲茶計画の評価が典型的な日本の二農村で5カ年間の学校歯科公衆衛生的規模で行われた。小窩裂溝 (CF) と隣接面のう蝕病変が臨床的基準とNo. 1縫針の尖端で検出された。両村の平均う蝕経験は最初の計画年度で減少し, 減少率はその後は殆んど恒常に経過した。5カ年間の平均減少率はCFで22.1%, CAで26.1%であった。
    計画の評価は三つの観点, 近接性, 易用性, 受容性からなされた。上記の減少率はコップー杯の番茶の出費1.5円で得られたことからこの計画の経済的近接性は高いと見做された。年間の番茶生産量は日本の学童数の約4.5倍を賄えそうであった。客観的な受容性を測るために, 現存永久歯数 (D) と永久歯列年齢 (T) の積の1/2をう蝕危険度と呼び, それに対するう蝕経験 (CF及びCA) の比率である疫学的なう蝕感受性 (ESF及びESA) と呼ばれる新しい尺度を導入した。ESFとESAの滅少率は, それぞれ19.5%と21.3%であった。変色や変形の徴候は下顎前歯には見られなかった。
    過剰投与による中毒を避けるために, 多因子性に起るう蝕の予防は, 単一物質だけでなく, 多種の予防活性物質の組合せで達成すべきである。
  • とくに歯面別検討による差異の解析
    栗田 啓子, 佐藤 芳彰, 日田 昇一, 兵藤 博昭, 及川 清, 谷 宏, 鈴木 敏則
    1985 年 35 巻 3 号 p. 413-425
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    本研究は生活習慣要因が乳臼歯う蝕発生に与える影響の歯面別差異を経時観察によって明らかにすることを目的とした。493名の幼児について3歳及び6歳時に歯科検診及び質問紙調査を実施し, その結果を用いて分散分析, 次に数量化理論1類を実施した。各生活習慣要因の乳臼歯う蝕発生及び重症化に関与する影響の大きさ及び各要因毎の影響条件を解析し, 目的を達成した。
    1. う蝕罹患指標に6歳の時点における乳臼歯dmft, 乳臼歯高度う歯dmt, 咬合面dmfs, 乳臼歯平滑面dmfs, 隣接面dmfs, 第1乳臼歯遠心面dmfs, 第2乳臼歯近心面dmfsを用い, これらと各生活習慣要因との関連を分散分析によって明らかにした。その結果各生活習慣要因と各う蝕罹患指標との関連の強さが示され, 特に甘味飲料摂取のう蝕誘発性は平滑面, 甘味菓子類摂取のそれは咬合面において大であり. 両要因における影響時期の相違が示唆された。
    2. 分散分析において5%以下の有意率を示した要因を独立変数とし, 各う蝕罹患指標を従属変数として夫々数量化理論1類を実施し, 各生活習慣要因毎の個々の条件がう蝕発生及び重症化に与える影響を詳細に検討した。
    3. 乳臼歯dmftについては3歳時における甘味飲食物及び牛乳摂取の影響を認めたが, 甘味菓子類摂取改善による抑制効果を認めなかった。甘味飲料摂取改善による抑制効果は認めた。
    乳臼歯う蝕重症化については甘味菓子類摂取改善による抑制効果を認め, 甘味飲料摂取については低年齢児期よりの摂取制限の継続が最も有効な抑制因子であった。保健所における歯科検診, 歯科保健指導及びフッ化物局所塗布を4回以上受けた者は乳臼歯高度う歯が少であった。
    咬合面う蝕については甘味菓子類摂取改善による抑制効果を認めなかった。一方, 乳臼歯平滑面う蝕については, 甘味飲料摂取改善による抑制効果を認めたが, 甘味菓子類摂取については3歳時における摂取制限が有効であり, 摂取改善による抑制効果を認めなかった。
    第1乳臼歯遠心面う蝕については甘味菓子類摂取改善による抑制効果を認めず, 一方, 第2乳臼歯近心面う蝕については, 乳臼歯高度う歯dmtと同様に3歳過ぎよりの甘味菓子類摂取改善による抑制効果を示した。
    4. 以上の知見より, 甘味菓子類と甘味飲料における夫々のう蝕罹患に及ぼす影響時期が異なることが明らかであった。
  • 飯野 新太郎, 可児 徳子, 福岡 幸伸, 山田 真理子, 磯崎 篤則, 伊川 英二, 山根 勇, 可児 瑞夫
    1985 年 35 巻 3 号 p. 426-434
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    フッ化チタンアンモニウム溶液作用によリ, エナメル質表面に生成するglazeの耐久性を検索する目的で, in vitroで7日間の蒸留水水洗実験を行い, X線マイクxアナライザ分析ならびに走査電子顕微鏡による観察を行った。フッ化物溶液はフッ化チタンアンモニウム溶液 (フッ素濃度9000ppm, pH 3.4) とリン酸酸性フッ化ナトリウム溶液 (フッ素濃度9000ppm, pH 3.4) で, controlには蒸留水を用いた。Intact enamelに各溶液を20℃にて60分間作用させ, 直後, 水洗24時間後および7日後にエナメル質表層の元素分析を行った。形態的観察は上記試料のほかに, 0.5M過塩素酸処理後の試料についても行った。
    その結果APF溶液作用群ではエナメル質表層に高濃度に取り込まれたフッ素は水洗により急激に減少するのに対し, フッ化チタンアンモニウム溶液作用群ではエナメル質表層にチタンとフッ素が取り込まれ, 水洗後も安定に存在することが示された。両フッ化物溶液作用群ともに, エナメル質表面に沈着物を認めたが, APF溶液作用群では水洗により速やかに溶出するのに対し, フッ化チタンアンモニウム溶液作用群ではglaze様の変化を示し, 水洗後もglazeは残留した。また, glazeの耐酸性は水洗後も変らず, 持続することが認められた。
  • I. 菌型と諸性状
    中川 昇, 佐藤 隆昭, 鶴水 隆, 橋本 喬, 佐藤 誠, 中村 亮, 尾崎 文子, 大原 里子, 川口 陽子, 岡田 昭五郎
    1985 年 35 巻 3 号 p. 435-443
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    MCLS患者および母親の歯垢より分離したStreptococcus sanguisは, 生物学的ならびに血清学的特異性による分類を試みたところ特徴的な性状を示した。
    生物学的には, 分離株のすべてがグルカン産生能, 過酸化水素産生能, α溶血性を示したが, メリビオース, ラフィノースの発酵能を有し, アルギニン, エスクリンの加水分解能は有せず, これまで記載のB型に類似している。
    血清学的には, 熱抽出抗原による同定では, 従来の4血清型 (I~IV) のいずれに対する抗血清も反応しない新たな2つの血清型に大別された。
  • 鶴本 明久, 品田 佳世子, 尾崎 文子, 岡田 昭五郎
    1985 年 35 巻 3 号 p. 444-445
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
  • 尾崎 文子, 中村 千賀子
    1985 年 35 巻 3 号 p. 446-447
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/10/27
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