口腔衛生学会雑誌
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44 巻, 5 号
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  • 佐藤 勝, 土屋 博紀, 伊藤 卯一, 呉城 英俊, 新田 裕
    1994 年 44 巻 5 号 p. 638-644
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    4種の腸内細菌は主としてActinomycesCandida albicansといったグラム陽性の口腔常在微生物と菌株特異的に共凝集した。口腔内微生物との共凝集性はEnterobacter cloacaeが最も高く, 次いでSerratia marcescens, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniaeの順であった。共凝集は一様に腸内細菌上の易熱性の成分によって仲介されていた。マンノースを添加することによって, 一部の共凝集反応は解離されたが, その他の反応は影響を受けなかった。このことは認められた共凝集反応には腸内細菌上のマンノース感受性と非感受性の2種の凝集素が関与していることを示している。供試した20株の腸内細菌のうち12株はまた, ヒト全唾液によっても凝集した。口腔常在微生物との共凝集能および唾液による凝集性は口腔内における病原性腸内細菌の定着を高めるものと考えられる。
  • 細菌数および残留塩素濃度
    竹木 幸恵, 今井 敏夫, 福田 雅臣, 小柳 巌, 山本 益重, 朝田 和夫, 遠藤 智彦, 鈴木 茂行, 石田 尚, 丹羽 源男
    1994 年 44 巻 5 号 p. 645-652
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    歯科治療の際, 水は高頻度で使用される。その水はエアータービン, エアーウォーターシリンジを通して患者口腔内へ供給されるため水質の良否は重要な問題である。この研究では週明けのエアーウォーターシリンジから供給される水を連続的に採取し, 細菌数および残留塩素濃度について検討した。
    細菌数は標準寒天培地にて試料水を37℃で48時間培養後, コロニー数から算定し, また細菌数の推移から予測排水必要量を求めた。残留塩素濃度はDPD酸化比色法 (510nm) にて測定した。細菌数, 予測排水必要量に関しては各歯科診療所のユニットヘの給水方式との関連についても検討を加えた。以下がその結果である。
    1) 診療開始前の初水10ml中からは2.6×103~57.5×103CFU/mlの細菌が検出され, 排水に伴いその数は減少した。
    2) 初水10ml中の残留塩素濃度はすべての試料が検出限界以下で, 210ml排水後に基準に達したのは10試料のうち1試料であった。
    3) 予測排水必要量は50ml~434mlにおよび直接水道では平均278ml, 間接水道では332mlであった。
    4) ユニットヘの給水方式の違いによる細菌数, 予測排水必要量に有意な差は認められなかった。
    5) 試料から得られた細菌は9種類で, いずれもブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌であった。
  • 寺岡 加代, 柴田 博, 渡辺 修一郎, 熊谷 修, 品田 佳世子, 浅香 次夫, 尾崎 文子, 岡田 昭五郎
    1994 年 44 巻 5 号 p. 653-658
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    本研究は, 高齢者向きマンション入居者 (男29名, 女61名, 平均年齢74.9±5.2歳) を調査対象とし, 咀嚼能力と身体活動性および高次の生活機能との関連性について検討した。咀嚼能力は試験ゼリー法と自己評価によって, 身体活動性は敏捷性, 握力および平衡機能, 生活機能は老研式活動能力指標を用いて評価した。
    その結果, 咀嚼能力は身体活動性では敏捷性と握力との間に関連性があり, 生活機能面では「社会的役割」に属する項目と有意な相関関係が認められた。よって, 高齢者においては咀嚼能力が生活の質に関わる諸因子に影響を及ぼすことが示唆された。
  • 稲葉 大輔, 飯島 洋一, 高木 興氏
    1994 年 44 巻 5 号 p. 659-664
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    フッ素徐放性材料 (FRD) がヒト歯根象牙質の初期齲蝕におよぼす効果をin situで検討した。被験者は22~25歳の成人21名で, FRDとしてフッ素徐放性シーラントを用いた。口腔内実験は, 脱灰した歯根象牙質試料を, はじめにシーラント併用なしで, 次に試料を換えて併用ありで, 各7日間, 被験者の上顎第一大臼歯頬面に装着して行った。回収した試料を順に対照群, FRD群とし, マイクロラジオグラフ (MR) から脱灰深さ (Ld) とミネラル喪失量 (△Za) を評価した。MRの所見は個別にきわめて多様である特徴を示した。Ldの平均値 (単位: μm) は, 口腔内装着前: 55.7±4.3 (±S.D.), FRD群: 58.2±10.7, 対照群: 65.3±15.5を示した。また, △Zaの平均値 (単位: ETa・μm) は, 口腔内装着前: 3,670±527, FRD群: 4,733±1,355, 対照群: 5,569±1,490であった。各指標ともFRD群で低い値を認めたが, MR所見上の著しい個体差を反映して, FRD群と対照群との差は統計学的に有意ではなかった。ただし, 口腔内装着前とFRD群の間には各指標とも有意差が認められず, 個別には21名中17名でFRD群が対照群よりも低い△Zaを示し, かつFRD群の5例ではMR上で明瞭な再石灰化所見が観察されたことは, FRDが根面初期齲蝕の進行を抑制しうる可能性を示唆すると考えられた。
  • 遠藤 浩正
    1994 年 44 巻 5 号 p. 665-674
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    咀嚼機能の問題は, 摂食機能の基礎となるものとして, 幼児期から老年期の各ライフステージにわたって考慮されなければならない。そこで今回, 著者は発達期の児童および生徒の咀嚼能力の評価法の確立のために, 小学生と中学生を対象に口腔内診査, 咀嚼値の測定ならびに咬合の発達と咀嚼能力の関連についての解析を実施した。
    調査対象は埼玉県下の小学生1年生から6年生までの児童513名 (男子249名, 女子264名) と, 中学校1年生から3年生までの生徒387名 (男子193名, 女子194名) であった。口腔内診査では現在歯数とう蝕の状態について診査を行った。咀嚼能力の測定は乾燥したピーナッツを用いた篩分法によって行った。さらに咬合の発達状態を総咬合力, 平均咬合力および咬合接触面積を用いて測定・解析を行った。
    今回の研究の結果より, 以下の結果を得た。
    1. 咀嚼値は小学校5年生あるいは6年生で低下し, 中学生ではほぼ一定となる傾向がみられた。
    2. 総咬合力, 咬合接触面積は増齢とともに増加する傾向がみられたが, 小学校5年生あるいは6年生で一時的に低下する傾向が認められた。
    3. 咀嚼能力に影響を与える因子として, 永久歯現在歯数, 総咬合力および咬合接触面積との関連性が示唆された。
    4. 本研究の結果から, 学齢期における食生活指導を行う際には, 咀嚼能力の発達に考慮した指導内容とする必要性が示唆された。
  • 仙台市某高等専門学校の15~19歳学生について
    千葉 潤子
    1994 年 44 巻 5 号 p. 675-687
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    近年, 多くの先進工業国で, 永久歯齲蝕が非常に減少している。そこで, 我が国の青少年における永久歯齲蝕の動向を調査するために, 仙台市内某高等専門学校の15~19歳の男子生徒1387名について, 1975年から1991年の間の齲蝕有病状況の調査を行った。その結果, DMFT指数, DMFS指数は共に各々の年齢群において大きな年次変動を示したので, チェビシェフの直交多項式を用いて分析を行ったところ, この期間における15~19歳のDMFT指数の年次推移に, 統計学的に有意な2次回帰性が認められ, この調査期間に齲蝕有病が増加し, やがて減少に転じたことが示唆された。次に, DMFS指数を3か年移動平均法で算出したところ, 最大齲蝕量, 即ちピークを各年齢群の年次推移に認めた。さらに, ピーク後における15~18歳の齲蝕傾向線に, 統計学的に有意な負の一次回帰性を認めた。ピーク時は15~19歳で各々1979, 1980, 1981, 1982, 1983年であり, 各年齢のピーク時から1990年までのDMFS指数の変化は, 15歳は13.91から11.08に, 16歳は16.85から13.21に, 17歳は19.17から15.26に, 18歳は21.02から17.97と減少した。従って, 当該青少年では15~19歳にわたって, 1975~91年の間に齲蝕減少が現れ始めたのが確かめられた。今後, 公衆歯科衛生がより推進されフッ化物の使用がさらに普及すれば, この減少傾向はより顕著なものになると予測された。
  • 片山 剛, 佐藤 美津子, 伊藤 恵子, 大友 さつき, 澤田 テル子
    1994 年 44 巻 5 号 p. 688-694
    発行日: 1994/10/30
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    著者らは“Strip mutans”法により判定した唾液中ミュータンスレンサ球菌量と小学校児童 (3年生と6年生) の永久歯齲蝕経験の関連性を断面観察 (ベースライン調査) した成績 (口腔衛生会誌, 44; 211, 1994) から, 唾液中に106CFU以上のミュータンスレンサ球菌を保持する集団を齲蝕ハイリスクグループとした。本研究はベースライン調査対象児童を再診査し, 当該菌量グループの一人平均年間齲蝕増加量 (ΔDT, ΔDMFT) を算出・比較することにより, 唾液中ミュータンスレンサ球菌量と齲蝕罹患の関連性を調査することを目的とした。ベースライン調査時の3年生と6年生ならびに再診査 (追跡調査) 時の4年生と中学1年生の菌量レベルclass 3 (>106CFU/ml唾液) のDMFT指数は, class 0あるいはclass 1~2のそれらと比べ統計学的有意差 (p<0.01またはp<0.05) であった。なお, DT指数の差は3年生の菌量グループ間でのみ明らかであった。一方, ΔDMFTを指標としたclass 3と他の菌量グループとの比較では, 6年生から中学1年生に至るclass 3とclass 0の間で有意差 (p<0.05) を認めた。なお, 3年生から4年生に至るΔDMFTも同様の傾向 (p=0.10) を示していた。以上の成績から, “Strip mutans”法によるclass 3 (>106CFU/ml唾液) の菌量グループを齲蝕ハイリスクグループとみなして良いのではないかと考えた。
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