口腔衛生学会雑誌
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45 巻, 5 号
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論説
原著
  • 渡辺 猛, 筒井 昭仁, 境 脩
    1995 年 45 巻 5 号 p. 769-775
    発行日: 1995/10/30
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー
    当福岡歯科大学予時世科学教室は各地の歯科医師・教員・保健婦からの要請に基づいて,フッ化物洗口法が円滑に開始され継続されるように種々の情報を提供している。当教室ではフッ化物洗口法の普及活動に関して,1990年10月より講演会・研修会・シンポジウムに関する情報を,また1991年11月からは新たに通話・ファクシミリ・郵便・面会に関する情報を加えて,パーソナルコンピュータ上のデータベース「活動データベース」に記録し管理してきた。1994年末日の時点で活動データベースを観察したところ,情報量は2.0メガバイト,レコード数は1,169であった。1991年11月以降,レコード数が毎月ほぼ一定の速度で増加していたので,各地のフッ化物洗口法普及活動に関する情報を活動データベースに日常的に記録することができたものと考えられた。また,活動データベースを利用することによって,複数の市町村を対象とした活動に関する情報であっても,必要に応して市町村別や関係者別に検索でき,活動に関する情報を市町村別にワードプロセッサーなどで記録する従来の方式ではできなかった各種の利用方法が可能になった。これらのことより,他大学歯学部の予防歯科学教室や口腔衛生学教室などが各地のフッ化物洗口法普及活動を支援するとき,活動に関する情報をデータベースで管理する方式は有用であろうと考察した。
  • 岸 重人, 丹羽 源男
    1995 年 45 巻 5 号 p. 776-781
    発行日: 1995/10/30
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー
    Lundstromらは自然頭位による軟組織側貌分析を考案し,スウェーデン人正常咬合者の基準値を報告している。本研究では同様の方法による日本人正常咬合者の基準値を知ることを目的とした。矯正治療既往のない大学生(男子21名,女子18名,平均年齢23.4歳)の側貌写真から11の指数値(水平成分:8,垂直成分:2,水平/垂直:1)を計測した。性差及びスウェーデン人との人種差をそれぞれの指数について検討し,6指数についてはアメリカ白人女子との人種差も検討を行った。この結果,5つの指数(No. 1, 2, 3, 6, 7)について性差が認められ,男子の方が女子より2〜10ポイント高かった。また6つの指数(No. 2, 3, 6, 7, 8, 11)について人種差が認められ,No. 6及び11を除く全てが3〜6ポイント日本人男子の方がスウェーデン男子より高かった。一方,女子では5つの指数(No. 1, 2, 3, 6, 7)について人種差が認められ,4から10ポイント日本人の方が低かった。従って日本人男子はより前方位の鼻,上下顎,オトガイ及びより輪郭の明確なオトガイを有する傾向がみられた。しかし日本人とスウェーデン人との比較では男子と女子に現れた人種差に共通した特徴は認められなかった。また日本人女子はスウェーデン人及びアメリカ白人に比べてよリ後方位で輪郭の明確でないオトガイを有していた。これらから軟組織側貌による重篤度判定にはこれらの性差や人種差を考慮した重み付けがなされることが望ましいと考えられる。
  • 田口 円裕, 飯島 洋一, 高木 興氏
    1995 年 45 巻 5 号 p. 782-787
    発行日: 1995/10/30
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,我々が新しく開発した改良型エナメル質脱灰装置を用いて,ショ糖とエナメル質脱灰能の低いパラチノースとの混合比が異なる溶液中のショ糖の割合が,齲蝕誘発性にいかなる影響を及ぼすかを検討することである。改良型エナメル質脱灰装置は,被験者(n = 8)の下顎第一大臼歯頬側部に装着された。口腔内装前後,4日間は,同部の歯口清掃を行うことなくエナメル質切片表層に歯垢の蓄積を促した。4日後,装置を口腔内より取り出し,in vitroにおいて被検溶液を作用させ,37℃で24時間培養を行った。被検溶液には,10%パラチノース,9%パラチノース+1%ショ糖,8%パラチノース+2%ショ糖,7%パラチノース+3%ショ糖,5%パラチノース+5%ショ糖および10%ショ糖を用いた。エナメル質薄切切片は,Microradiographによって脱灰程度が評価された。溶液中のショ糖が脱灰に及ぼす影響は,ショ糖濃度が増加するにしたがい,脱灰程度が増大する所見を示した。溶液中のショ糖の濃度が3%以上になると10%ショ糖溶液における脱灰程度と有意差が認められなかった。さらに,被検溶液の違いにより,被験者間で脱灰程度に多様性があることから,食品の齲蝕誘発性を評価する場合には,被験者の歯垢ならびに唾液の特徴によって結果が異なることを示唆しており,被験者の選択にあたっては,被験者の歯垢の性状ならびに唾液緩衝能を把握しておくことが重要であることが示唆された。
  • 森田 学, 石村 均, 石川 昭, 小泉 和浩, 渡邊 達夫
    1995 年 45 巻 5 号 p. 788-793
    発行日: 1995/10/30
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー
    本調査の目的は,再治療が必要とされた様々な歯科修復物について,再治療に至った原因と,それまでの使用年数を調べることである。調査は,岡山市と名古屋市の10歯科医院において行われた。対象は,歯科修復処置が施されているにもかかわらず,歯科医師の判断により,再治療または抜歯が適当と診断された3,120歯であった。調査時に,既存修復物の種類,および,再治療が必要であると判断された理由を記録した。また,その修復物の使用年数を,患者への聞き取り調査から求めた。その結果,レジン,インレー,鋳造冠,アマルガムの平均使用年数は,それぞれ5.2,5.4,7.1,そして7.4年であった。レジン,アマルガム,インレーでは,2次齲蝕を原因として再治療される場合が多く認められた。インレーや前歯部で汎用される補綴物では,脱落によって再治療される場合が多くみられた。しかも,その場合の使用年数は,他の原因で再治療された場合の使用年数と比べて短かった。従って,インレーや前歯部で汎用される補綴物については,その脱落を可及的に防ぐことで,使用年数を効果的に延ばせる可能性が示唆された。
  • 戸倉 瑞木, 江川 富士男, 宮坂 芳弘, 小澤 義彦, 奥村 智信
    1995 年 45 巻 5 号 p. 794-800
    発行日: 1995/10/30
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー
    日本歯科大学歯学部附属病院外来初診患者への対応と病態の推移を1984年と10年後の1994年のデーターを比較,検討し以下の結果が得られた。1. 来院患者数は,1984年3,097名,1994年4,374名と41%増加した。2. 年代別には,20代の患者が最も多く,30代,40代,50代の患者は,各年代とも大きな差がなかった。3.男女比では,女性の方が受診率が高くなっていた。4. 主訴別では,疼痛が最も多かった。5.歯科疾患別では,う蝕に代表される硬組織疾患が最も多く,増齢にしたがって,歯周疾患,または,欠損が多くなる傾向が見受けられた。6. 顎関節異常を訴える患者が増えた。特に,女性に多く見られた。7. 歯科治療に対し不安や恐怖心をいだいている者が,31%から29%と初めて30%を下回った。8. 全身疾患の既往別では消化器系疾患が最も多く,心疾患,循環器系疾患(含高血圧),感染症と続いた。
  • 竹木 幸恵, 今井 敏夫, 福田 雅臣, 内野 卯津樹, 小林 寅〓, 小島 健一郎, 高橋 秀明, 加賀美 毅樹, 加藤 弘之, 丹羽 源 ...
    1995 年 45 巻 5 号 p. 801-806
    発行日: 1995/10/30
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー
    我々は先の研究でエアーウォーターシリンジから供給される水が細菌に汚染されていること,その多くがグラム陰性桿菌であったことを報告した。そこでこの研究では週明けのエアーウォーターシリンジから供給される水の細菌数,エンドトキシン濃度を測定し,ならびに細菌の同定を行った。細菌数は標準寒天培地にて37℃,48時間培養後算定した。エンドトキシン濃度はエンドスペシー(生化学工業社製)にて測定した。細菌の同定は各種同定培地,自動細菌同定システムVITEK system(bio-Merieux社製)を用いた。以下がその結果である。1.採取した水の細菌数は初水10ml中では1.36〜217.0×10^3CFU/mlであったが,250ml排水後では平均93%減少し,0〜10.1×10^3CFU/mlとなった。2.エンドトキシン濃度は初水10ml中では11.5〜472.8ng/mlで,250ml排水後では平均88%減少し0.8〜57.5ng/mlとなった。3.細菌数とエンドトキシン濃度の間に有意な関連性は見られなかった。4.250ml排水後での減少率は細菌数,エンドトキシン濃度とも直結式給水のほうがタンク式給水よりも約10%高かった。5.試料からMoraxella sp.,Sphingomonas paucimobilis, Flavobacterium sp., Corynebacterium sp.の他,典型的な性状を示さないブドウ糖非発酵性桿菌が検出された。
  • 笹原 妃佐子, 河村 誠, 河端 邦夫, 戸田 信彦, 土田 和範, 岩本 義史
    1995 年 45 巻 5 号 p. 807-814
    発行日: 1995/10/30
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー
    近年,自然科学系の研究者のみならず社会科学系の研究者においても,解析手段としての統計学はますますその重要性を増している。しかし,研究者は,通常,統計学における検定結果を第1種の過誤を犯す確率αによって解釈し,第2種の過誤を犯す確率βについて考慮することはほとんどない。本研究では,既存の有限母集団から,ある一定の大きさの標本を繰り返し抽出する実験を行った。母相関係数の異なる二つの有限母集団(母相関係数; 0.215,0.650)それぞれについて,標本の大きさとβについて検討し,再現性のある結果を得るための妥当な標本の大きさについて考察を加えた。有限母集団の一つは,幼児の母親から得られた2847組の歯科保健行動目録(HU.DBI)と口腔評価指数(ORI)のデータであり,その相関係数は0.215であった。他の一つは,2885組の大学新入生の身長と体重のデータで,その相関係数は0.650であった。それぞれの母集団から,標本の大きさが25,50,100,200,300,400の標本をランダムに100回ずつ抽出し,得られたすべての標本において. HU-DBIとORIの順位相関係数,ならびに,身長と体重の相関係数を計算した。その結果,母相関係数0.215 (P<0.001)のHU-DBIとORIのデータでは,有意水準を5%(α=0.05)とすると,標本の大きさが100の場合,全体の51%の標本で帰無仮説が棄却され,標本の大きさが400の場合, 99%の標本で帰無仮説が棄却された。つまり,標本の大きさが100の場合,βは0.49,標本の大きさが400の場合,βは0.01であった。一方,母相関係数0.650 (p<0.001)の身長と体重のデータでは,標本の大きさが50以上では,帰無仮説はすべての標本で棄却された。つまり,標本の大きさが50以上で,βは0.00を示した。以上の結果から,ある標本において,2変数間の相関係数の有意性が危険率5%以下で確認されたとしても,その標本の大きさが小さい時には,別の標本において同様の結果を得る確率は必ずしも高くないことが示唆された。即ち,第1種の過誤を犯す確率(危険率)が5%以下であったとしても,ある程度の標本の大きさが確保されていない場合には,結果の再現性はあまり期待できないと考えられる。
  • 大橋 たみえ, 横井 憲二, 可児 徳子, 可児 瑞夫
    1995 年 45 巻 5 号 p. 815-822
    発行日: 1995/10/30
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー
    本研究では,フッ化アンモニウムの歯磨剤への応用を考えてフッ素濃度900ppm, pH 4.5のリン酸酸性フッ化アンモニウム溶液について,人工う蝕形成抑制効果をリン酸酸性フッ化ナトリウム溶液(900ppmF^-,pH 4.5)作用の場合と比較検討することを目的として,溶液作用後に人工う蝕形成を行ったヒトエナメル質の表面および断面のSEM観察とCMR, PLM観察,微小焦点X線回折を行い,以下のような結果を得た。リン酸酸性フッ化ナトリウム溶液とリン酸酸性フッ化アンモニウム溶液作用後のエナメル質表面に多量の顕粒状物質の沈着が確認され,これは,フッ化カルシウムであることが推測された。人工う蝕表面のSEM観察では,フッ化物作用群で,表面に微細な粒子が沈着し,control群よりも表面が平滑で,人工う蝕形成抑制像が観察された。また固群の人工う蝕抑制像は,明らかに異なることが確認された。人工う蝕断面のSEM観察,およびCMR, PLM観察により人工う蝕の深さはcontrol群で約100μm,APF群で約20μm,NH_4F群では約40μmであり,APF群,NH_4群で高いう蝕抵抗性を示した。微小焦点X線回折による人工う蝕部の結晶性は,APF群,NH_4F群で健全エナメル質と近似した高い結晶性を示した。以上のことから,本研究では,フッ素濃度900ppm,pH 4.5のリン酸性フッ化アンモニウム溶液作用エナメル質においてう蝕抵抗性獲得効果が認められたが,そのう蝕抵抗性獲得効果は,APF溶液作用エナメル質の方が高いことが明らかになった。
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