独自に開発した咀嚼機能評価システムを用い,咬合接触面積,歯冠相当部体積,咬合面間空隙量を指標として,ブリッジ装着者の咀嚼機能回復の評価を試みた。被験者15名に対して,ブリッジ装着前〜装着後5ヵ月の間に咬頭嵌合位での咬合採得,質問紙調査を実施し,下記のような結論を得た。1.咬合接触面積の相関分析より,全顎のレンジ0.2mm(装着時と装着後1〜2週の間,相関係数0.41)など,低い相関係数を示す領域が示され,これら領域の変動からブリッジ装着時以降の経過を評価できる。2.ブリッジ装着時における咬合接触面積の平均値は,装着前に比べ全顎ではレンジ1.6mmでは84.1mm^2,同補綴側では93.3mm^2増加し,薄層部を除く各レンジともに装着前,装着時の平均値間に有意な差が認められ,ブリッジ装着による咀嚼能回復について評価できた。3.ブリッジ装着後については,全顎で増加率が1〜2週間後で4.5%,1ヵ月後5.5%,2ヵ月後8.7%,3ヵ月後15.7%,4ヵ月後18.0%と,馴化と考えられる継続的増加が観察でき,装着後3〜4ヵ月でピークを形成していた。今回の被験者については,馴化が装着後3〜4ヵ月で完了すると判断でき,このことから咀嚼機能回復の評価が可能である。4.歯冠相当部体積は,全顎のブリッジ装着時の平均値が装着前に比べて54.6mm^3の増加を示し,装着後も継続した増加が認められ,咀嚼機能回復の評価が可能である。5.ブリッジ装着後の臼歯部左右バランスの回復状況については,補綴側の咬合接触面積が,装着時に対照側とほぼ同値に回復し,装着時以降では±10%以内に変動が安定しており,左右バランスの回復について評価できた。6.食品摂取状況との関連については,ブリッジ装着後も継続して噛みにくい食品があった群(5名)では,噛みにくい食品がなかった群(10名)に比較して3指標とも低い値を示し,その差は有意なものではなかったが,全顎のレンジ1.6mmの咬合接触面積で約60mm^2,歯冠相当部体積で約20mm^3, 咬合面間空隙量で約45mm^3となっており,この点で主観的な食品摂取状況の評価と,各指標による評価が一致した。以上のことから,3指標を用いて,ブリッジ装着および装着後の馴化の過程が観察でき,一口腔を単位とする咀嚼機能回復の評価が実施できた。
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