口腔衛生学会雑誌
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52 巻, 5 号
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総説
  • シャイハム オーブリー, 新庄 文明
    2002 年 52 巻 5 号 p. 658-662
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー
    Dental caries is a highly prevalent chronic disease and its consequences cause a lot of pain and suffering. Sugars, particularly sucrose, are the most important dietary aetiological cause of caries. Both the frequency of consumption and total amount of sugars is important in the aetiology of caries. There has been considerable debate about the acceptable levels of sugars for controlling dental caries. The pioneering work by Professor Takeuchi is fundamental to the current debate on the relationship between sugar levels and caries. Takeuchi and his coworkers formulated some basic epidemiological principles of caries which are not generally appreciated. Based upon Takeuchi's research on the dose-response relationship between sugars and caries, his insights that there are acceptable low levels of sugar which are compatible with low or no caries, and the concept that the dose-response relationship between sugars and caries is S-shaped, international and national bodies formulating food and health policies are in a good position to suggest what levels of sugars are acceptable for oral health.
原著
  • 清田 義和, 葭原 明弘, 安藤 雄一, 宮崎 秀夫
    2002 年 52 巻 5 号 p. 663-671
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,地域に在住する70歳高齢者を2年間追跡し,歯の喪失の発生状況を把握するとともに,全身健康状態も含めた歯の喪失リスク要因を明らかにすることを目的としている。1998年に新潟市在住の70歳高齢者599名を対象にベースライン調査を行った。分析対象者は,ベースライン調査を受けた有歯顎者554名のうち,2年後に追跡調査を実施できた402名(男214名,女188名)である。まず,歯の喪失の発生状況をみるために,喪失歯数の分布,一人平均喪失歯数,歯種別および歯,歯周の状況別の喪失歯率を算出した。さらに,2年間の歯の喪失の有無とベースライン時の口腔および全身状態,質問紙項目との関連をみるためにLogistic回帰分析を行った。調査期間中に歯を1本以上喪失した者は124名で,喪失歯の発生者率は30.8%一人平均の年間喪失歯数は0.27本であった。歯の喪失の発生は比較的広く起こっていたが,喪失歯数別の人数分布は非常に偏っていた。歯の喪失リスクに間するLogistic回帰分析の結果,BMIが24以上(20〜24を基準),IgG高値異常(1,901 mg/dl以上),日常生活動作(歩行,階段昇降,椅子からの立ち上がりなど)の支障あり,LA(Loss of attachment)≧6mmの部位の割合が4%以上,クラウン装着歯数が9本以上(0本を基準),根面未処置う蝕を保有の者が,有意に歯を喪失しやすいことが示された。以上の結果から,歯周状態や歯の修復状況,根面う蝕など口腔局所の要因に加え,高齢期の全身健康状態が歯の喪失にかかわっていることが示唆された。
  • 吉野 浩一, 松久保 隆, 高江洲 義矩
    2002 年 52 巻 5 号 p. 672-676
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー
    喫煙が歯周病の発病因子であることの報告は年ごとに増えてきている。歯科医院への受療状況を概観すると,歯周病に関連した歯科医療費の支出の増加傾向が推測される。そこで著者らは,某銀行健康保険組合員の25〜64歳までの男性3,296名を対象とし,3年間分のレセプトを年齢群別に調査分析した。その結果,件数および日数は喫煙習慣のある者が高い傾向を示したが,有意な差はみられなかった。点数についてみると,45〜54歳群では,喫煙習慣がある者は5,192.8点,ない者が4,274.8点と有意な差(p<0.05)がみられた。今回の調査対象者において,喫煙習慣に起因する歯の疾患は,歯科医療費の増加傾向と密接な関連があることが示唆された。今後は調査対象者の異なる集団と比較検討が望まれる。
  • 行木 隼人
    2002 年 52 巻 5 号 p. 677-687
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,中学生・高校生における顎機能異常の発症頻度,および咀嚼能力の主観的評価と顎機能異常ならびに咬合機能との関連を検討することを目的とした。札幌市内の2つの中学校と2つの高校に在籍する全校生徒1,381名を対象とした。調査の内容は,(1)自記式質問調査法による食品の摂食可能の程度,自覚的な顎機能異常の有無,(2)口腔内診査(現在歯数とDMF歯数)と(3)臨床的な顎機能異常の有無,および(4)咬合感圧紙を用いての咬合機能(咬合力・咬合圧・咬合接触面積)の測定であった。自記式質問紙調査より,対象者を摂食に不自由のない者(咀嚼能力の高い者)と不自由を感じている者(咀嚼能力の低い者)とに分類して,2群の間で年齢,性別,現在歯数, DMFT,顎機能異常の自覚的症状と他覚的症状,および咬合機能を比較した。最終的にすべてのデータの整った男子648名,女子663名,計1,311名を分析対象とした。その結果, 1.21品目の食品すべて摂食可能と答えた者は780名(咀嚼能力の高い者:分析対象者の59.5%),1つでも摂食が困難であると答えた者は531名(咀嚼能力の低い者:分析対象者の40.5%)であった。2.中学2年生,高校2年生,高校3年生において,女子に咀嚼能力の低い者の占める割合が男子と比べて有意に高かった。3.顎機能異常について最も多く認められた症状は,自覚症状では関節雑音であった。また歯科医が判定した結果,各学年ともクリック音の症状がある者の割合が最も多く,全体の9%の者に認められた。次に高頻度に認められた症状は顎偏位(3.3%)であった。4.単変量解析の結果,自覚症状("顎関節部の疲労感"および"関節痛"),性別(女性),クリック音の4項目において咀嚼能力との間で有意な関連(p<0.01)が,顎機能のそのほかの症状(顎圧痛,筋症状,顎運動痛,開口制限のいずれかがある)において有意な関連(p<0.05)が,そして,8本以上DMF歯数を有している者(OR=1.25)に10%以下の水準で有意傾向が認められた。ロジスティック回帰分析の結果,自覚症状("顎関節部の疲労感",p=0.048),女性(p<0.001)の項目で有意な関連が認められた。以上より,中学生,高校生における顎機能異常(筋症状)の有無が咀嚼能力に影響している可能性が示唆され,この年代における咀嚼能力の低下を防ぐために顎機能異常の重症化を予防する重要性が示唆された。
  • 中林 靖雄, 安井 利一, 宮武 光吉
    2002 年 52 巻 5 号 p. 688-694
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー
    近年,顎関節に症状を訴える者の低年齢化に関する報告がある。顎関節症の予防および早期発見をするためには,学校歯科健診において,有用性の高いアンケート調査をすることが重要である。そこで,高校生を対象として,顎関節に関して保健調査に使用することのできる有用なアンケート項目および診査項目を明らかにすることを目的として,本研究を実施した。アンケート調査において有訴率の高い質問は,「ときどき頭痛がある」,「頭,顔面,首にかけての場所以外に痛みではなくとも疲労感がある」,「耳が聞こえにくいことがある」であった。顎関節の診査項目のうち,1項目以上の他覚症状を認めたのは166名(37.3%)であり,出現率の高い項目は,「顎の変位」,「開口障害」,「右側クリッキング」であった。また,女子の開口量において,スクリーニングレベルを40mm未満とすると偽陽性率が高くなることが判明した。アンケート結果と診査結果をクロス集計したところ,複数のアンケート項目において「はい」と答えた者のほうが,「いいえ」に比べ「1項目以上の他覚症状をもつ者」の割合が有意に多かった(p<0.01)。今回の調査結果から,顎関節の診査を行う前に,事前のアンケート調査を行い,診査を行うことにより,顎関節症のスクリーニングをより適切に行うことができると思われた。
  • 黒川 亜紀子, 土屋 維男, 武者 良憲, 杉原 直樹, 眞木 吉信, 高江洲 義矩
    2002 年 52 巻 5 号 p. 695-705
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー
    職域成人における歯冠部齲蝕の発病特性について,歯種・歯面別に明らかにすることを目的として追跡調査を行った。対象は,都内某事業所の従業員のなかで,5年後を追跡することができた23〜54歳の男性118名と,22〜29歳の女性23名の合計141名である。上顎と下顎それぞれ切歯群,犬歯群,小臼歯群,大臼歯群の計8歯群に分類し,各歯群を唇・頬側面,口蓋・舌側面,近心面,遠心面,咬合面の5歯面に分けて集計・解析し,次の結果を得た。1.5年間の発病者率は,20歳代女性が最も高く(69.6%),40歳代男性が最も低かった。しかし年齢階層間に有意な差は認めらなかった。2.発病歯率が高いのは20歳代女性の上下顎大臼歯群と上顎小臼歯群,次いで50歳代男性の上顎大臼歯群であった。3.発病歯面率は,20歳代女性,20歳代男性および50歳代男性が高かった(5.7〜6.3%)。4.部位別発病歯面率は,全歯種でどの年齢階層においても咬合面の発病が最も高い(7.7〜17.2%)。 20歳代の男女を歯群別にみると,大臼歯群では咬合面に次いで頬側面が,小臼歯群は咬合面に次いで遠心面が発病しやすい傾向がみられた。以上のことから,職域成人における口腔保健指導の主たるターゲット年齢は,発病率の高い20歳代であり,歯種・歯面別にみると,上下顎大臼歯群の咬合面と頬側面,次いで上顎小臼歯群の咬合面と遠心面における発病リスクが高く,これらを自己管理できる指導の重要性が示唆された。
  • 吉田 直美
    2002 年 52 巻 5 号 p. 706-717
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー
    東京医科歯科大学歯学部附属病院を受診する患者は,当病院をどのように評価して受療行動をおこしているのか,臨床教育への評価は病院評価とどう関連しているのかを知ることを目的に,1日の外来患者1,483名を対象に自記式質問票による調査を実施した(回収率43.8%,分析対象者数650名)。病院評価項目と臨床教育に関する項目について,患者評価の構成概念を検討した後,多重指標モデルを作成し,共分散構造分析を行った。病院評価に影響を及ぼす因子として,『受療安心感』,『受療環境』,『歯科衛生士・看護師の態度と技能』および『歯科医師の技能と態度』という4つの構成概念を仮定した。また,これらの構成概念と関連する因子として,『臨床教育』という構成概念を想定し,これら構成概念の妥当性と相互関係を検証した。仮定したモデルのデータに対する適合度はRoot Mean Square Error of Approximation (RMSEA)=0.041,Goodness of Fit Index (GFI)=0.950および,Comparative Fit lndex (CFI)=0.971となり,統計学的な許容範囲にあった。このことから,高次歯科医療機関であり,かつ歯科医療教育機関である歯科教育病院において,患者による評価の面からは,安心して受療できる条件を整えることが重要であること,患者に対する歯科医療従事者の対応が病院評価および教育に対する評価・理解度に影響を及ぼすことが示唆された。
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