口腔衛生学会雑誌
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53 巻, 1 号
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原著
  • 安藤 歩, 岸 光男, 相澤 文恵, 米満 正美
    2003 年 53 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2003/01/30
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー
    定期歯科健診受診者と非受診者の歯科保健行動の差違を検討するために,歯科保健イベント来場者に対してアンケート調査を行った.15歳以上の者146名(男性52名,女性94名)の回答を分析した結果,フロスの使用,歯ブラシ取り替え頻度について,定期健診受診者で良好な歯科保健行動をとっていることが示された.また,歯科保健イベントヘの来場動機,低年齢における歯ブラシの選択基準から,定期歯科健診受診者の歯科保健に対する意識の高さが推測された.さらに,定期歯科健診受診者は,有意に高い割合で歯口清掃指導を受けたことがあると自覚しており,定期歯科健診が受診者の良好な歯科保健行動と高い歯科保健意識を惹起する可能性が示唆された.
  • 稲葉 大輔, 南 健太郎, 釜阪 寛, 栗木 隆, 今井 奨, 米満 正美
    2003 年 53 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2003/01/30
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー
    著者らは,リン酸化オリゴ糖カルシウム塩(POs-Ca)が馬鈴薯デンプンの加水分解物より抽出でき,カルシウムの溶解性を高めることを先に報告した.本研究の目的は,POs-Ca配合シュガーレスガムのエナメル質再石灰化に及ぼす効果を口腔内実験により確認することである.12名のボランティア(男性6名,女性6名;平均21歳)をランダムに3群(N=4/群)に分け,二重盲検,クロスオーバーデザインの口腔内実験を行った.各被験者は,脱灰した牛歯エナメル質ディスクを取り付けた上顎口蓋プレートを装着し,キシリトールガム, 2.45%POs-Ca配合キシリトールガム,およびショ糖ガムのいずれかを,1日4回噛んだ(期間:2週間/ガム).実験期間中,フッ化物は使用せず,エナメル質ディスクが乾燥しないよう注意した.エナメル質ディスクのマイクロラジオグラフからミネラル濃度分布を評価した.POsガム群の脱灰深度ld (Mean±SD=37±7μm)は,ショ糖ガム(75±19μm;p<0.01)よりも51%,またキシリトールガム(66±28μm;p<0.05)よりも44%,それぞれ有意に減少していた.このミネラル蓄積のメカニズムは,POs-Caが唾液のCa/P比をハイドロキシアパタイトの比率(1.67)に向けて高め,エナメル質に対して過飽和なミネラル状態を維持させたことによると考えられた.本研究より,2.45%POs-Ca配合シュガーレスガムを毎日利用することは,エナメル質初期齲蝕病巣の再石灰化を強く促進し,齲蝕予防に有効であることが示唆された.
  • 神森 秀樹, 葭原 明弘, 安藤 雄一, 宮崎 秀夫
    2003 年 53 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2003/01/30
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高齢者における咀嚼能力が総エネルギー摂取量,栄養素摂取量および食品群別摂取量にどのような影響を与えているかを検討することである.対象者は,口腔診査,食物摂取状況調査,アンケート,血液検査に協力の得られた新潟市内在住の70歳,512人(男性265人,女性247人)である.咀嚼能力については「山本式咀嚼能率判定の変法」を,栄養摂取状況については「半定量的食物摂取頻度調査法」を使用し評価した.咀嚼能力の低い者の割合は,男女それぞれ48%および60%であった.平均総エネルギー摂取量は,男女それぞれ1,706.3kcal(SD=350.8)および1,474.9kcal(SD=252.3)であった.咀嚼能力と総エネルギー摂取量,栄養素摂取量および食品群別摂取量との関連を評価した結果,男性の対象者において咀嚼能力の低い群では,総エネルギー摂取量,緑黄色野菜群およびそのほかの野菜・果物群の摂取量が有意に少なくなっていた(p<0.01,p<0.05,p<0.05).野菜・果物群の摂取量の低下は,抗酸化物質であるビタミン類の摂取量減少につながると考えられることから,男性において咀嚼能力の低下は,心血管系疾患や食道,胃などの消化器系の疾患のリスクファクターとなる可能性が考えられる.以上の結果から,70歳の健常男性では,咀嚼能力は総エネルギー摂取量および栄養バランスに影響を及ぼすことが示唆された.
  • 石津 恵津子, 廣瀬 晃子, 小澤 亨司, 可児 徳子
    2003 年 53 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2003/01/30
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー
    日本では,現在もHIV感染者およびAIDS患者の増加が見込まれており,歯科衛生士においても適切な対応が求められている.本研究では教育効果の検討を目的として,講義形式によるAIDS教育を2つの歯科衛生士専門学校で行い,対象が異なっても同様の効果を得ることができるかどうかを学校間比較により分析した.調査対象は,1999年4月に愛知県A歯科衛生士専門学校と岐阜県B歯科衛生士専門学校に入学した生徒で,AIDSに関する知識および意識を講義形式によるAIDS教育の前後で比較した.その結果,2校で同様に知識の増加が認められ,知識の平均増加量に差はなかった.意識については,個人差が大きく,平均的な傾向を観察することはできなかったが,各項目別の分析では,学校間で意識が近づく傾向が認められた.よって,対象が異なっても同一の方法でAIDS教育を行えば,同等の効果が得られると思われる.
  • 大鶴 次郎, 阿部 智, 品田 佳世子, 川口 陽子
    2003 年 53 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2003/01/30
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー
    平成9年9月から平成13年3月の期間に港町歯科を受診した成人患者を,日本人(407名)と外国人(562名)に分けて分析し,在日外国人に関する歯科医療の実態について調査を行った.平均年齢は,日本人46.9歳に対し外国人は38.5歳と若かった.外国人の出身地域はフィリピンや韓国などのアジアが70%であった.使用言語は英語を話す者が最も多かったが,英語圏以外の外国人患者が2/3を占めていた.職種別にみると,建築や工事現場などの肉体労働者が約30%で最も多く,次いで飲食などのサービス産業に従事しているものが10%であった.健康保険の加入者は約1割で,半数以上が「みなとまち健康互助会」の会員であった.外国人の平均通院回数は2.8回で,日本人の1/2以下であった.外国人の1回当たりの診療費は約5,000円と日本人の約7,000円よりも低かったが,自己負担金の割合は87%と日本人(26%)より高かった.本調査において,平均年齢,横浜市内に住む者の割合,健康保険の加入状況,平均通院回数,診療費,自己負担金に,日本人と外国人のあいだに有意差が認められた.受診した外国人患者は緊急治療を求めて歯科医院を受診する傾向が認められ,このような人々に対してセルフケア,定期歯科健診,予防処置などの重要性を健康教育で伝えていくことが大切だと示唆された.また,現在の互助会の制度を医療経済的な面から検討していくことも必要と考えられた.
報告
  • 小松 義典, 仙道 悦子
    2003 年 53 巻 1 号 p. 38-47
    発行日: 2003/01/30
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー
    本報告は,著者らが昭和60年代まで重度のう蝕有病者率を示した地域において,昭和60年度以降乳幼児を対象にして口腔保健活動を行った10数年間の地域保健活動の取り組みと,その成果を述べたものである.活動の内容は1)3食をしっかり取る,2)砂糖を含むお菓子とジュース類の制限などの間食を含む食習慣の見直し,3)就寝前の保育者による仕上げ磨きの励行という生活習慣の見直し,4)可能な限り乳臼歯の予防填塞を行うことである.活動を行っている過程で,3歳児のう蝕有病者率は平成5年度に,一人平均う歯数は平成4年度に大幅な改善を示した.3歳児のう蝕有病者率は,活動前に80%以上だったものが平成10年度には40%以下に,3歳児の一人平均う歯数は,活動前に6.1本だったものが平成10年度には2.2本に改善した.これは1)間食を規則的に与えるようになったこと,2)飲み物が牛乳・お茶および水の割合が増加したこと,3)仕上げ磨きの実施率が増したことによる影響が大きいと考えられる.さらに,平成10年度の小学6年生におけるう蝕有病者率および一人平均う歯数は,活動前に比較しともに改善を示した.地域の特性を把握し,それに即した活動を行っている過程で,地域の口腔環境は改善できることを明らかにした.この活動の中心的役割を担ったのは歯科衛生士である.歯科医師は口腔保健活動の計画を作成し行政の理解を得られるように努力するべきである.
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