口腔衛生学会雑誌
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61 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論説
  • Donald M. BRUNETTE, 八重垣 健
    2011 年 61 巻 5 号 p. 536-543
    発行日: 2011/10/30
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    論文を読むあるいは作成するための,論文の価値判断の指針を解説した.論文の構成要素には,まず「読者(あなた)」が最上位にあり,そしてタイトル・著者・掲載雑誌の位置づけ,要旨(抄録),はじめに,研究方法と材料,結果,考察,結論などの因子がある.そのうえで,読者側からは「読者の印象に残る重要な情報」,そして「読者が個人的に学んだ明確で重要な情報」などの因子がある.読者は,その論文に,どの程度興味を持つことができるか,そして読む価値があるかを,判断しなければならない.そこで,要旨を注意深く読み,「読者が,論文を読む目的」を見つけることが必要となる.「タイトル・著者・掲載雑誌の位置づけ」では,論文に重要な新情報が記載されている可能性や,掲載雑誌のランクなどがわかる.要旨にはいくつかの構成要素があり,要旨を読み,「問題点や新知見」を見つけて論文を続けて読む理由とする.「はじめに」では,探求的で仮説に基づいた研究か否か判定し,研究方法と材料では,読者が実験結果の有効性を確かめ,実験を再現するのに十分な情報を得ることができる.結果では結論の基礎となるデータを十分に知り,考察では「論理のある確固とした結論」にしようとの著者の意図を知ることもできる.一方,「はじめに」で記載された仮説の答えを「結論」で明確に知ることができる.
原著
  • 小林 五月, 山本 龍生, 阿部 智, 安藤 雄一, 相田 潤, 平田 幸夫, 新井 誠四郎
    2011 年 61 巻 5 号 p. 544-550
    発行日: 2011/10/30
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    フッ化物配合歯磨剤の使用割合が約9割となったが,フッ化物配合を意識して購入している保護者はその中の約半数である.本研究では,フッ化物配合歯磨剤使用中の児童の保護者の中で,フッ化物配合を意識して購入している者の歯科保健行動の特性を検討することを目的とした.1道12県の18小学校の児童6,126名の保護者を分析対象とした.歯磨剤選択理由にフッ化物配合を挙げたか否かを目的変数としたロジスティック回帰分析の結果,学年(オッズ比0.90,95%信頼区間0.86-0.93),口すすぎにコップ以外を使用(0.70,0.59-0.84),すすぐ回数が3回(0.72,0.56-0.93),4回以上(0.66,0.50-0.85),う蝕予防のために歯磨剤を使わせる(1.84,1.62-2.10),フッ化物歯面塗布を受けさせる(1.77,1.53-2.04),および定期歯科検診を受けさせる(1.28,1.10-1.48)の項目との関係が有意であった.これらの結果から,フッ化物配合を意識して購入している保護者は,児童のう蝕予防に好ましい保健行動をとっていることが明らかになった.すすぐ回数はフッ化物配合歯磨剤によるう蝕予防効果に影響することから,今後はフッ化物配合歯磨剤の適切な使用法の普及が望まれる.また,フッ化物配合を意識して歯磨剤を利用することは,その他の好ましいう蝕予防の励行を示すよい指標になることも示唆された.
  • 大岡 貴史, 坂田 美恵子, 野本 富枝, 村田 尚道, 内海 明美, 弘中 祥司, 小倉 草, 向井 美惠
    2011 年 61 巻 5 号 p. 551-562
    発行日: 2011/10/30
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究では,幼児の食や口腔の健康に関する新たな支援方法の確立の一助とすることを目的とし,都内某区における2007年度の保育園歯科健診に参加した乳幼児1,398名(男児724名,女児674名)の保護者を対象に,児の口腔内状況や食事に関する保護者の疑問や不安についてのアンケート調査を実施した.口腔内に関する疑問や不安の有訴割合は,2〜4歳男児で65〜72%,3歳女児で75%と,乳歯列完成期にあたる時期で高い値を示した.食事に関する疑問や不安では,1歳女児で29%と低かったが,女児の他のすべての年齢および男児のすべての年齢で60%以上の高い有訴割合を示した.具体的な食事に関する項目では,2歳児で「かまない」の有訴割合が他の年齢児よりも有意に高く,「丸飲みをする」では1,2歳児の有訴割合が3〜6歳児よりも有意に高かった(女児の2-3歳間を除く).「食事量が一定しない」では,2〜4歳女児で他の年齢よりも有意に有訴割合が高く(4-5歳間を除く),「好き嫌い」については,男児では2歳児よりも3歳児が,女児では1歳,2歳児よりも3歳児の有訴割合が有意に高かった.以上の結果から,咀嚼に関する項目では比較的低年齢児の保護者で,自食に関する項目では比較的高年齢児の保護者で高い有訴割合がみられるものと推察された.乳幼児期においては,口腔内や食事に多くの疑問や不安がみられるとともに,児の性・年齢によってその頻度も変化することが示唆され,保護者への多方面からの支援が必要と考えられた.
  • 岩崎 正則, 葭原 明弘, 宮崎 秀夫
    2011 年 61 巻 5 号 p. 563-572
    発行日: 2011/10/30
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は咀嚼回数と体格の関連を成人期と高齢期に分けて比較検討し,年代による差異が存在するかどうかを明らかにすることである.2009,2010年に行われた調査に参加した614名を本研究対象とした.煎餅を用いた咀嚼回数の測定を行い,対象者を咀嚼回数24回以下,25〜30回,31回以上の3群に分けた.また身体計測結果から内臓脂肪蓄積,肥満,および痩せを定義した.そして年代(成人期:20〜64歳,高齢期:65〜89歳),性別で層化し,ロジスティック回帰モデルを用い咀嚼回数と体格の関連を評価した.成人期では咀嚼回数が25〜30回の群を基準としたとき,24回以下の群および31回以上の群の男性は内臓脂肪蓄積オッズ比(95%信頼区間)がそれぞれ6.89(1.63-29.1),および6.17(1.39-27.3)であり有意に高かった.さらに24回以下の群および31回以上の群の男性は肥満オッズ比も有意に高かった.(それぞれオッズ比[95%信頼区間]=7.33[1.42-37.8],および8.09[1.50-43.7]).高齢期では咀嚼回数が30回以下の群を基準としたとき,31回以上の群の男性は痩せのオッズ比が有意に高かった(オッズ比[95%信頼区間]=5.76[1.17-28,4]).本研究結果から,男性において咀嚼回数と体格の関連は成人期と高齢期では異なることが示唆された.
  • 岩崎 正則, 葭原 明弘, 宮崎 秀夫
    2011 年 61 巻 5 号 p. 573-580
    発行日: 2011/10/30
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は特定健診対象者における歯周疾患スクリーニングテストとメタボリックシンドロームの関連を検討することである.2009,2010年度に本調査に参加した40〜74歳,488名を本研究対象とした.唾液中の潜血反応を利用した歯周疾患スクリーニングテストを行い,対象者を陽性群,陰性群に分けた.また特定健診の結果からメタボリックシンドローム判定項目である肥満,高血圧,高血糖,および脂質異常を定義した.さらに肥満者でかつ判定項目3つ(高血圧,高血糖,脂質異常)のうち2つ以上を持つ者をメタボリックシンドロームと定義した.年齢,性別,および喫煙状況を共変量としたロジスティック回帰モデルを用い,歯周疾患スクリーニングテストとメタボリックシンドロームの関連を評価した.歯周疾患スクリーニングテスト陰性群を基準としたとき,陽性群の肥満,およびメタボリックシンドロームに対する調整オッズ比はそれぞれ1.64(95%信頼区間=1.03-2.61)および2.49(95%信頼区間=1.34-4.63)であり,統計学的に有意だった.歯周疾患スクリーニングテスト結果と高血圧,高血糖,および脂質異常の間には統計学的に有意な関連は認められなかった.本研究結果から,特定健診対象者において歯周疾患スクリーニングテストとメタボリックシンドロームの間には有意な関連があることが示された.
  • 梅谷 健作, 玉木 直文, 森田 学
    2011 年 61 巻 5 号 p. 581-588
    発行日: 2011/10/30
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    ブラッシングが脳を活性化させるということが報告されている.本研究では,術者によるブラッシングが患者の自律神経系に与える影響を評価すること目的とした.測定項目は,心拍変動解析による自律神経の活動,ストレス指標の唾液アミラーゼ活性とSTAI(State-Trait Anxiety Inventory)による状態不安の程度の3つとした.対象者は健常男性15名(年齢32.3±9.5歳)とし,ブラッシング処置を15分間行った.処置前に心拍変動,唾液アミラーゼ活性と状態不安を測定し,ベースラインとした.処置中の15分間は,心拍変動解析を継続して行った.処置終了後,再び処置前と同じ3項目を測定した.その結果,心拍変動解析においては,副交感神経の活動の指標であるLnHF(Lnは自然対数)の値がベースラインと比較して処置の終盤(処置開始後10〜15分の5分間)と処置後に有意に上昇した.自律神経の活動の指標であるLnTPはすべての時点で有意に上昇したが,交感神経の活動の指標であるLn(LF/HF)にほとんど変化は認められなかった.状態不安の得点は処置の前後で有意に減少したが,唾液アミラーゼ活性の値は減少傾向にあったものの統計学的な有意差はなかった.以上の結果から,ブラッシングによる適度な刺激が,中枢神経系に作用した結果,副交感神経の活動に変化が生じたものと考察された.副交感神経活動の指標であるLnHFが上昇し,状態不安の得点が減少したことから,術者によるブラッシングには患者をリラックスさせる効果がある可能性が示唆された.
報告
  • 末續 真弓, 松本 勝, 竹下 玲, 深井 智子, 杉 陽子, 流石 知佳, 田口 耕平, 宮嵜 至洋, 新保 秀樹, 鈴木 普久, 安井 ...
    2011 年 61 巻 5 号 p. 589-593
    発行日: 2011/10/30
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    わが国では,母子歯科保健活動として,1歳6か月児と3歳児に対し歯科健康診査と保健指導が母子保健法により実施されているが,近年,幼児のう蝕有病者の減少率は以前ほど高くはなくなってきている.幼児のう蝕は,口腔保健に対する保護者の態度と関連して生活習慣に著しく関連があるとされている.そこで,幼児の口腔衛生に対する保護者の意識を向上させることは,う蝕予防に効果的であると考えられる.本報告は,2歳の時期に歯科健康診査と保健指導を行うことにより,3歳児のう蝕有病状況,口腔保健に関連する生活習慣に影響を与えるかどうかについて,東京都東久留米市において検討を行った.平成19年度に実施された3歳児歯科健診を受診した幼児のうち,1歳6か月児歯科健診時にう蝕のない幼児744名を対象として,2歳児歯科健診受診の有無別に3歳児歯科健診時のう蝕有病状況および問診結果について解析を行った.その結果,3歳児のう蝕有病状況を2歳児歯科健診の受診の有無で比較すると,受診者でのう蝕有病者率は受診していない者に比べ有意に低かったが,生活習慣については差は認められなかった.以上のことから,1歳6か月児歯科健診時にう蝕のない者は,2歳児歯科健診を受診し,保健指導を受けることのほうが,2歳児歯科健診を受診ならびに保健指導を受けない者より3歳児歯科健診でのう蝕有病者率が少ないことが示された.
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