口腔衛生学会雑誌
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65 巻, 3 号
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原著
  • 石川 昭
    2015 年 65 巻 3 号 p. 270-275
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー
     吸指癖がある幼児はう蝕が少ないという報告があるが,う蝕が減少してきている現在においてもその関係が成り立つのか,吸指癖の有無とう蝕罹患および不正咬合発現との関連を再検討し,今後の歯科保健指導を行ううえでの根拠を得ることを目的に研究を行った.対象は,平成19年度から25年度までの7年間における浜松市の3歳児歯科健診を受診した幼児とした.問診項目から吸指癖の有無を確認し,歯科健診の結果からはう蝕の有無および不正咬合の有無をみた.吸指癖の有無別に,う蝕の有無および不正咬合の有無についてクロス集計し,χ2検定を行った.う蝕有病者率は,平成19年度は19.0%であったが,25年度は11.8%に減少した.吸指癖の出現者率と不正咬合の発現者率は,年度による大きな差はなかった.どの年度においても,吸指癖のある子はない子に比べ,う蝕有病者率が低く,その差は1.6%から4.4%の範囲であった.また,どの年度においても,吸指癖のある子はない子に比べ,開咬などの不正咬合が発現する率が高く,その差は9.4%から16.8%の範囲であった.今回の結果から,吸指癖は,う蝕の抑制および不正咬合の発現のどちらにも影響を与えていることが再認識されたが,う蝕有病者率が減少している現在においては,3歳児における吸指癖は,う蝕の抑制に与える影響より,不正咬合の発現に与える影響のほうが相対的に大きくなると推察される.
  • 長谷 晃広, 相田 潤, 坪谷 透, 小山 史穂子, 松山 祐輔, 三浦 宏子, 小坂 健
    2015 年 65 巻 3 号 p. 276-282
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー
     近年,歯学部において「将来設計に関する教育(以下,キャリア教育)」が実施されているが,これまでその効果を全国的に検証した研究はほとんど報告されていない.そこで本研究は,全国の研修歯科医を対象として 1)将来設計およびキャリア教育受講の実態把握とその関連性の検討ならびに,2)具体的な志望進路の実態把握を目的とした.2,323名に対し自記式調査票を郵送し1,590名から回答を得た(回収率68.4%).主要な変数に欠損のない1,428名のデータで解析を行った.「将来設計を描けている」と回答した者は212名(14.8%)であった.将来設計を描けていると回答する者の割合はキャリア教育受講経験を有する群で高く(p=0.015),性別,年齢,婚姻状態,出身大学,親の職業を調整したうえでもその関連は支持された(prevalence ratio=1.18, 95%信頼区間=1.08-1.29, p<0.001).希望する進路の最多回答は,研修直後および研修修了5年後では診療所勤務(570名:39.9%および723名:50.6%),研修修了10年後では診療所の開業(705名:49.4%)であった.本研究より,キャリア教育は将来設計を描くにあたり有効である可能性が示唆され,約半数の研修歯科医が10年後以降には歯科診療所を開業したいと考えていることが明らかになった.
  • 大山 篤, 安藤 雄一, 森田 学
    2015 年 65 巻 3 号 p. 283-294
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー
     近年,歯科疾患と生活習慣病の関連性が多くの研究で示されている.これは歯科疾患と生活習慣病に共通のリスクファクターがあるためと考えられる.歯科受診の頻度は他科受診に比べて高く,歯科はさまざまな生活習慣病に対するCommon risk factor approachを実施する環境として適している.日本歯科医師会の開発した新しい成人歯科健診プログラム(生活歯援プログラム)は,このアプローチを実践するための機会の一つである.本研究は糖尿病/Body Mass Index(BMI)と,生活歯援プログラムの口腔保健アセスメント項目およびその回答パターンに従って類型化(リスク評価)した口腔保健支援型との関連性を調べることを目的とした.
     本Web調査は2014年の2月に実施した.対象者はWeb調査会社の登録モニタであり,2型糖尿病のある408名と2型糖尿病のない408名であった.
     糖尿病を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析では,いずれの口腔保健支援型にも有意差はなく,男女別に有意差のみられた口腔保健アセスメント項目に関する情報を活用することが現実的であると考えられた.一方で,BMIを目的変数とした多重ロジスティック回帰分析では,有意差のある口腔保健アセスメント項目とともに,口腔保健支援型がCommon risk factor approachに活用できる可能性が考えられた.すなわち,何を目的(変数)とするかによって,効果的なアプローチ方法が全く変わってしまう可能性がある.また,Common risk factor approachには性別や高齢も影響するかもしれない.
報告
  • 瀬川 洋, 大橋 明石, 齋藤 高弘
    2015 年 65 巻 3 号 p. 295-299
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー
     歯学部学生の喫煙行動を把握して,禁煙支援に活用するとともに,禁煙教育の充実を目的に喫煙状況,心理的ニコチン依存度,タバコ1箱の適正価格および喫煙しているタバコのニコチン量などを調査した.喫煙状況は学年が進むに伴い,禁煙・前喫煙群が増加したが喫煙群は減少した.5年時に実施した禁煙支援教育の講義前後の加濃式社会的ニコチン依存度調査票(KTSND)による効果検証では,講義前のKTSNDの平均得点は各群ともに規準範囲外であったが,講義後の得点は各群とも減少し,非喫煙群は規準範囲内となった.併せて5年時に実施したタバコ1箱の適正価格については禁煙・前喫煙群が1,880円と最も高く,喫煙群は低価格に設定する傾向にあった.同じく5年時に実施した喫煙者のニコチン量は0.2〜0.9mgのタバコが最も多く,その銘柄の多くは世界保健機関タバコ規制枠組条約(FCTC)の11条で規定しているタバコの包装やラベルにライト,マイルドなどの不適切な表現を使用していることからFCTCの11条の遵守とFCTCの周知は急務と考えられる.したがって,喫煙者へのより効果的な禁煙に関わる情報提供を考慮した禁煙支援教育をより一層充実させるとともに全学的視野から禁煙支援の推進に取り組む必要性が示唆された.
資料
  • 三島 公彦, 鎮守 信弘, 古田 美智子, 晴佐久 悟, 山下 喜久, 熊澤 榮三
    2015 年 65 巻 3 号 p. 300-304
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2018/04/13
    ジャーナル フリー
     福岡市の歯周疾患検診は,市からの委託事業として,平成14年度より福岡市歯科医師会協力医療機関で実施されている.福岡市および福岡市歯科医師会の保有する歯周疾患検診事業に関する資料によると,平成25年度に歯周疾患検診を実施したのは644箇所の協力医療機関のうち48%であった.一方,受診率は平成25年度でも1.5%に留まっている.
     平成25年に,歯周疾患検診の協力医641名を対象に行われたアンケート調査の結果では,自院の患者に検診の案内をしたことがあった者は29%で,歯周疾患検診の内容が難しいと回答した者が33%であった.
     行政や歯科医師会から市民に周知をするほかに,協力医が来院患者に歯周疾患検診について情報提供をして家族や友人に情報伝達を促せば,市民の検診に対する認知が向上し,受診率の増加につながることが期待できる.
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