口腔衛生学会雑誌
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最新号
平成31年1月
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原著
  • 皆川 久美子, 葭原 明弘, 佐藤 美寿々, 荒井 節男, 清田 義和, 宮﨑 秀夫
    2019 年 69 巻 1 号 p. 10-18
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/10
    ジャーナル フリー

     高齢化が進み,有病者への対応や医療連携体制の必要性が高まる現在,診療所は一次医療機関として,多岐にわたる患者への対応および地域における多職種連携等が求められている.本調査の目的は,新潟県の診療所に勤務する各業種の従事状況と,診療所で担える診療内容の関連について評価することである.

     平成24年8月1日現在,新潟県で開設されている県内すべての歯科診療所(1,186施設)を対象に調査を行い,平成24年7月の1カ月間の実施状況について,質問紙による調査で回答を得た,欠損値のない950施設を分析対象とした.診療所に勤務している歯科医師数あるいは歯科衛生士数を説明変数とし,歯科業務補助者数,技工士数,事務職数を共変量に在宅歯科医療サービスの実施状況についてロジスティック回帰分析,障害者および摂食嚥下指導への対応状況については順序ロジスティック回帰分析を行った.

     その結果,歯科衛生士数のみと関連がみられたのは在宅歯科医療サービス,施設への歯科訪問診療,訪問歯科衛生指導,障害者への対応(それぞれ調整済オッズ比〔95%信頼区間〕=1.12〔1.03–1.23〕,1.11〔1.01–1.23〕,1.31〔1.16–1.47〕,1.27〔1.16–1.40〕)であった.一方,摂食嚥下指導への対応については歯科医師数(1.24〔1.04–1.48〕)とのみ関連がみられた.

     診療所の多岐にわたる患者への対応や病診連携を推進するには,まずは歯科医師の意識向上が前提であり,それを基に診療所における歯科医師および歯科衛生士の人材確保が必要である.

  • 角田 聡子, 邵 仁浩, 葭原 明弘, 福井 誠, 岩﨑 正則, 諏訪間 加奈, 鶴田 実穂, 平山 綾, 片岡 正太, 茂山 博代, 横田 ...
    2019 年 69 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/10
    ジャーナル フリー

     歯肉炎の評価は視診もしくはプロービングによる方法が一般的であり,検診の場で使用可能な非侵襲的で簡便性,客観性,再現性を併せもつ検査方法はないのが現状である.本研究では,歯肉溝滲出液( GCF) 中の成分が歯肉炎バイオマーカーとして有用であるかを検討した.

     対象は北九州市内某小学校5,6年生107名である.ブロッティングブラシ(以下,ブラシ)で採取したGCF中のα-1 アンチトリプシン(A1AT),ラクトフェリン(Lf) 他4成分(AST,ALT,ALP,LDH)を定量し,PMA index(PMA),プラーク付着状態(PlI)との比較を行った.PMA,PlIを低値群と高値群に2値化し,GCF成分との比較を行ったところ,PMAではすべての成分,PlIではLDH以外の成分で有意(p<0.05)に関連していた.さらに,ROC曲線から求めたPMA,PlIに対する各成分のカットオフ値はそれぞれ,A1ATが283.8,248.3,Lfが152.1,114.4,ASTが4.5,2.5,ALTはともに1.5,ALPは2.5,PMAでのLDHが26.0であった.陽性尤度比は1.5から3.0程度となった.

     以上の結果からGCF中A1AT,Lf,AST,ALTおよびALPは小児を対象とした歯肉炎スクリーニングのバイオマーカーとして有用であることが示唆された.

  • 金子 昇, 葭原 明弘, 濃野 要, 山賀 孝之, 財津 崇, 川口 陽子, 宮﨑 秀夫
    2019 年 69 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/10
    ジャーナル フリー

     職域における歯科保健事業として,疾病の早期発見を目的とした歯科健診が主に行われてきた.こうした従来型の歯科健診から,行動・環境リスク発見型・行動変容支援型歯科健診への転換を目的として,日本歯科医師会で「標準的な成人健診プログラム・保健指導マニュアル」(生活歯援プログラム)が策定された.本調査ではこのプログラムに基づいた歯科健診と保健指導が,歯科健診単独に比べてどの程度優れているのか検討を行った.新潟市内の3企業の従業員129名(44.6±11.5歳)を対象としてランダムに2群に分け,介入群には生活歯援プログラムに準じた歯科健診と保健指導を,対照群には歯科健診のみを行った.保健行動を把握するための質問紙調査をベースライン時,3カ月後,6カ月後および1年後に行い,この間の行動変容を調べた.その結果,介入群と対照群のいずれにおいても「職場や外出先での歯磨き」や「フッ素入りの歯磨剤の使用」,「歯間ブラシ・フロスの使用」が有意に改善していた.ただ,介入群では1年後まですべての時点でベースライン時に比べ有意に改善していたのに対し,対照群では一部の時点で有意な改善がみられたのみであった.したがって,従来型の歯科健診でも保健行動の変容がある程度期待できるが,その期間は限定的であること,歯科健診に加え生活歯援プログラムに準じた保健指導を行うことで行動変容はより確実となり,効果が少なくとも1年間持続することが明らかとなった.

  • 三好 健太郎, 高橋 大郎, 栗田 啓子, 本郷 博久, 竹原 順次, 中村 公也, 三宅 亮, 兼平 孝, 森田 学
    2019 年 69 巻 1 号 p. 34-42
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/10
    ジャーナル フリー

     本研究では,1歳6か月児健康診査における乳歯の萌出歯数の33年間の推移と,萌出歯数に関連する因子の解析を目的とした.対象は1980年から2012年まで北海道江別市の1歳6か月児健康診査の受診児,27,454名である.歯科健康診査と身体計測結果に基づき,男女別に,年次ごとの1人平均萌出乳歯数,16歯以上保有者割合,癒合歯保有者割合を算出し,年次との関係を回帰直線で求めた.さらに,出生年,性別,出生順位,出生体重,1歳6か月時の身長,同胸囲,癒合歯数,母親の年齢を説明変数,16歯以上萌出の有無を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った.その結果,1)出生時体重,1歳6 か月時の体重,同身長,同胸囲,1人平均萌出乳歯数,および16歯以上保有者割合は,男女とも経年的に減少した.年次(x)から1人平均萌出歯数(y)を求める回帰直線の傾きは男児-0.0188,女児-0.0181であった.2)1人平均萌出歯数は男児が女児より多い傾向にあった.3)癒合歯保有者割合は年々増加する傾向にあり,男児のほうが女児よりもその傾向が強かった.4) 16歯以上萌出については出生体重,1歳6か月時身長,1歳6か月時体重と有意な関連がみられた.

     以上から,ここ33年間では,乳歯の萌出が遅れる傾向にあり,乳歯の萌出には児の出生体重や1歳6か月時身長,1歳6か月時体重が関連している可能性が示唆された.

症例報告
  • 中野 由, 小幡 純子, 西山 毅, 長田 恵美, 山口 泰平, 鶴田 実穂, 於保 孝彦
    2019 年 69 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/10
    ジャーナル フリー

     症例は68歳の男性で,鹿児島大学病院にて食道癌stage Ⅱに対する手術および化学放射線療法施行後,繰り返す誤嚥性肺炎を認めていた.化学放射線療法から3年後に両側反回神経麻痺の診断のもと緊急入院,気管切開が施行され,術後,気管カニューレ管理となり退院したが,その後も誤嚥性肺炎による入退院を繰り返していた.誤嚥性肺炎予防を目的として,気管カニューレをレティナへ変更すると同時に口腔衛生管理にて経過観察を行う方針となり口腔保健科へ紹介された.

     初診時の患者の口腔衛生状態は極めて不良であり,また口腔内細菌が誤嚥性肺炎発症に関連しているという認識は低かった.まずは誤嚥性肺炎の知識に関する患者教育を行い,徹底したプラークコントロールを実現するために本人および配偶者へのブラッシング指導を行ったところ,徐々に口腔衛生状態の改善を認めた.気管カニューレの変更および歯科管理の開始から現在まで,食道狭窄に起因する肺炎の再発を認めたが,口腔衛生管理の点からは患者の満足度は高く保たれている.

     誤嚥性肺炎による入退院を繰り返していたという過去の経緯から,口腔衛生指導が正の強化因子として口腔衛生習慣の動機付けに機能したこと,ADLが自立している患者本人のセルフケアだけではなく配偶者による献身的なケアの有効性が確認されたこと,さらに周術期口腔機能管理における退院後のフォローの重要性を再認識した.

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