口腔衛生学会雑誌
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70 巻, 4 号
令和2年10月
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 澤田 ななみ, 竹内 倫子, 田畑 綾乃, 江國 大輔, 森田 学
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 70 巻 4 号 p. 190-195
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

     これまで幼児や小・中学生のう蝕発症の要因に関する報告は多いが,高校生では少なく,縦断研究はほとんどない.本研究では高校生のう蝕発症に関連する要因を調べることを目的に,2年間の前向きコホート研究を行った.対象者は岡山市内の私立高等学校で,2016年4月(1年生)(ベースライン)と2018年4月(3年生)(再評価)に定期健康診断で歯・口腔の健康診断を受診した生徒とした.口腔内診査と質問票調査を行い,2 年間のDMF歯数増加とベースライン時の口腔保健行動との関連をロジスティック回帰分析で検討した.160名(男子62名,女子98名)(平均年齢15.0±0.24歳)を分析した.ベースライン時のDMF歯数は0.86±1.75であった.DMF歯数増加群は72 名(45.0%)であった.ロジスティック回帰分析の結果から,DMF歯数増加と有意な関連が認められたのは,「1年生時のDMF歯数が1以上」「フッ素入り歯磨剤を使用しない」「糖質ゼロ等表示食品を選ぶ」および「過去1年間に歯科医院で歯のそうじを受けた」の4項目であった(p<0.05).結論として,高校生において,フッ素入り歯磨剤を使用することがう蝕発症を抑制する可能性が示唆された.

  • 山中 富, 晴佐久 悟, 宮園 真美, 窪田 惠子, 角森 輝美, 森中 惠子, 町島 希美絵, 宮坂 啓子, 松尾 里香, 内藤 徹
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 70 巻 4 号 p. 196-203
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

     訪問看護師の口腔アセスメント,歯科相談・紹介による看護・歯科との連携促進のために,訪問看護師の口腔アセスメントの実施状況,口腔アセスメントに関連する因子を調査した.対象は訪問看護事業所勤務の看護師(以下,訪問看護師とする)とし,全国事業所から1,000施設を無作為抽出し,質問紙を郵送法により送付し,訪問看護師に記入を依頼した.206名(男性15名,女性191名,平均年齢47.3±8.5歳)から回答を回収できた(回収率20.6%).80%以上の訪問看護師は高齢期,重度の要介護者,脳血管疾患有病者,経管栄養・人工呼吸器装着者に対し口腔アセスメントを実施していたが,成人期,精神疾患有病者に対する実施率は低かった.口腔アセスメントツールの認識率は20.4%,使用率は5.8%であった.回答者の50%以上は在宅療養者の口腔アセスメントの拒否,口腔アセスメントの知識や口腔アセスメントツールがないことに困っていた.口腔アセスメントの実施は口腔アセスメントツールの認識,使用頻度,歯科医療従事者の相談頻度と有意に関連していた(相関係数:r=0.153–0.361).以上より,訪問看護師の口腔アセスメント,訪問看護・歯科医療従事者の連携を促進のために,口腔アセスメントツールの使用法も含んだ口腔アセスメント教育を充実し,歯科相談・紹介できる環境を作るための歯科医療従事者からの支援が必要であると考えられた.

  • 晴佐久 悟, 中島 富有子, 青木 久恵, 原 やよい, 陣内 暁夫, 石塚 洋一, 窪田 惠子, 眞木 吉信
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 70 巻 4 号 p. 204-214
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は看護師に泡状高濃度フッ化物配合歯磨剤(以下,泡状HF歯磨剤)を患者に試用してもらい,その使用状況,使用感を調査することであった.

     対象は精神病院,一般病院に勤務する看護師と入院患者であった.看護師は患者に泡状HF歯磨剤を1週間使用してもらい,その使用状況,使用感を聞き取り,質問紙に記入した.

     看護師25人,患者109人が本研究に参加した.看護師はすべての患者に対し,その歯磨剤を1日1回以上,1回1プッシュ以上使用していた.73.8%の患者が歯磨剤使用後に潤いを感じ,74.1%は味や香りは適切であると感じていた.看護師は80%以上の患者に対し,その歯磨剤は汚れを取り除くのに使いやすく,口臭抑制に効果があると感じていた.また,看護師は約80%の患者に対し,試用後もその歯磨剤の使用継続を希望しており,すすぎができる患者よりもできない患者に対してより希望する傾向が認められた.

     以上により,看護師の泡状HF歯磨剤の患者への使用はう蝕予防のために適切な量で使用されており,対象者の多くはその歯磨剤の有用性を感じ,看護師は大部分の患者に対し継続使用を希望していた.したがって,患者および看護師にとって,泡状HF歯磨剤の使用感は良好であり,継続使用は患者のう蝕予防や口臭予防に貢献すると考えられた.

  • 中島 千穂, 竹内 倫子, 江國 大輔, 森田 学
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 70 巻 4 号 p. 215-221
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

     日常生活動作ADLと現在歯数,咀嚼能力,オーラルディアドコキネシス(ODK)との関連が報告されているが,一定の見解を得られていない.また,過去の研究では単一施設内での報告が多く,複数施設での報告は少ない.本研究の目的は多施設で口腔機能とADLとの関連を調べることであった.岡山県北部の6箇所の福祉施設を利用した高齢者61名を対象とし,年齢,性別,要介護度,基礎疾患,ADL,食事形態,現在歯数,義歯の使用の有無,舌圧,ODKを調査した.食形態は「常食」と「常食以外」の2群に分類し,ODK は「/pa/」「/ta/」「/ka/」それぞれを「4.0回/ 秒未満」「4.0回/ 秒以上」の2群に分類した.ADLはランクJを「生活自立群」,ランクAを「準寝たきり群」,ランクBおよびCを「寝たきり群」と3群に分類した.ADLと年齢の関連はKruskal-Wallis検定を用い,ADLと年齢以外の各項目,ODKと食形態の関連はFisherの正確確率検定を用いて分析した.その結果,ADLの重症度は要介護度,糖尿病,骨関節疾患,食形態に加え,ODK「/pa/」「/ka/」との間に有意な関連がみられた.また,ODKすべての音節と食形態との間に有意な関連がみられた.ODKの低下が食形態の変化を介して栄養状態の悪化を招き,ADLの重症度に関連した可能性が示された.

報告
  • 野川 敏史, 竹原 順次, 中村 公也, 本郷 博久, 三宅 亮, 高橋 大郎, 兼平 孝
    原稿種別: 報告
    2020 年 70 巻 4 号 p. 222-230
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

     本研究では札幌市の保育園の乳幼児を対象として,各年齢層でのう蝕の保有状況を明らかにし,それぞれのう蝕保有に関連するリスク因子を検討した.

     2018年5月から7月の間に北海道札幌市の16保育園で歯科検診を受けた園児の口腔内診査および生活状況に関するアンケート結果を収集し,う歯の有無に関してロジスティック回帰分析を行った.

     対象者1,764名のうち分析対象となった園児は1,537名(男児730名,女児698名,アンケート記載漏れのため性別不明109名)で,各年齢層における人数(う蝕保有者率)は0歳児32名(0%),1歳171名(0%),2歳児257名(1.2%),3歳児350名(9.4%),4歳児320 名(24.7%),5歳児330名(29.7%),6歳児77名(49.4%)であった.3, 4歳では,う歯保有に有意に関連する項目は含糖飲料の月4回以上の摂取,その他のう蝕リスク習慣があるおよび男児で,オッズ比がそれぞれ1.69(p=0.046),2.08(p=0.016)および1.84(p=0.007)となった.5, 6歳ではう歯保有に有意に関連する項目は,「仕上げ磨きを毎日はしない」で,オッズ比が5.08(p<0.001)であった.

     以上からう蝕保有のリスク因子は各年齢層で異なることが示され,各年齢層に合わせた保健指導が重要であることが示唆された.

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