口腔衛生学会雑誌
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最新号
令和8年4月
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 川村 淳, 菅野 範, 岡林 一登
    原稿種別: 原著
    2026 年76 巻2 号 p. 86-93
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル フリー

     地域在住高齢者において,口腔機能の低下はフレイル,要介護,死亡,認知症などのリスクファクターとなることが報告されている.また,高齢者の健康維持の重要な点として,外出機会があるかなどといった社会性についても重要であることが報告されている.

     そこで,本研究においてはさまざまな自治体で行うことができる口腔健康プログラムを目指し,地域在住高齢者に対して,計2回の介護予防教室と,3か月間1日3回のガム咀嚼トレーニングを含んだ口腔体操を行う口腔健康プログラムを提供し,その効果の検証を目的とした.本プログラムの前後において,歯の状態や咀嚼能力などの口腔機能,歩行速度などの身体機能,食事摂取状況アンケートなどの生活状態について測定し,評価した.

     その結果,34名の参加者のうち1日3回の口腔体操を66%以上行った人は32名であった.この32名についてプログラムの効果を検証すると,プログラム参加者の口腔機能が有意に改善した(咀嚼能力p=0.001,舌圧p=0.020,オーラルフレイル該当項目数p=0.047).また,身体機能,食品摂取状況についても有意に改善していることが確認された(握力p=0.005,歩行速度p=0.002,開眼片足立ちp=0.006,食品摂取の多様性スコアp=0.015).

     本研究の結果より,介護予防教室と口腔体操をセットとした口腔健康プログラムは,高齢者の口腔状態のみならず,身体機能および食品摂取状況の改善に効果があることが確認された.

  • 中田 裕万, 藤木 政志, 木村 光夫, 栗田 啓
    原稿種別: 原著
    2026 年76 巻2 号 p. 94-101
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル フリー

     本研究は,1,450ppmFのフッ化物処理による脱灰エナメル質表面におけるフッ化カルシウムの形成が,歯の表面粗さに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.

     鏡面研磨したウシエナメル質を初期試料とし,24時間の脱灰処理後,1,450ppmFのフッ化ナトリウム溶液に3分間20回または60分間1回浸漬した.その後,水酸化カリウム溶液により歯面のアルカリ溶解性フッ素(フッ化カルシウム)を抽出し,抽出液中のフッ素量をフッ素イオン電極により定量した.さらに,各処理における表面粗さの変化を原子間力顕微鏡により評価した.なお,超純水に60分間浸漬した試料をControl群とした.

     抽出されたフッ化カルシウム量は,Control群に対して,3分間20回群および60分間1回群で有意に高く,60分間1回群が最も高値であった.表面粗さに関して,脱灰による粗さの増加に対するフッ化物処理による粗さの減少の割合(平滑化率)を算出した結果,Control群(-2.6%)に対して3分間20回群(25.3%)および60分間1回群(40.0%)は有意に高値を示した.また,60分間1回群において,アルカリ抽出前後の表面粗さを比較した結果,アルカリ抽出後には表面粗さが有意に増加した.以上より,1,450ppmF相当のフッ化物は,脱灰したエナメル質表面にフッ化カルシウムを形成し,表面を平滑化することが示唆された.

  • 久保田 悠, 眞野 晃寿
    原稿種別: 原著
    2026 年76 巻2 号 p. 102-109
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル フリー

     本研究は,わが国の女子大学生における口臭の有病状況と関連要因を検討することを目的とした.対象者は,医療福祉系大学の女子学部生131名である (平均年齢:19.1±1.4歳).口臭は,口臭測定機器を用いて,呼気中の揮発性硫化物であるメチルメルカプタン濃度を測定し,①口臭なし,②かすかな口臭,③明らかな口臭の3群に分類した.口腔乾燥は,口腔水分計を使用して,舌背中央部の口腔粘膜湿潤度を計測し,測定値27.0未満を口腔乾燥とした.舌苔は,Winkle Tongue Coating Index (WTCI) を用い,舌背を6 ブロックに分け,各ブロックの合計スコアを算出した.また,口臭の自覚状況,睡眠状況,メンタルヘルス,口腔保健行動を質問票で調査した.統計解析は,多項ロジスティック回帰分析を用いた.

     口臭の自覚症状があると回答した者は34.4%であり,その中で5年以上の口臭を自覚する者が最も多かった.口臭検査により,軽度な口臭,明らかな口臭がみられた対象者の割合は,ともに12.2%であった.多項ロジスティック回帰分析の結果,口臭なし群を基準とした場合,明らかな口臭群では,舌苔スコア,25時以降の就寝が有意に関連していた (オッズ比=1.34; 95%信頼区間=1.01–1.78; p=0.041, オッズ比=4.90; 95%信頼区間=1.30–18.43; p=0.019).

     本集団において,長期にわたり口臭を自覚する者が最も多く,舌苔付着量,および遅い就寝時刻が口臭の関連因子である可能性が示された.

  • 十川 悠香, 吉岡 昌美, 長濱 太造, 中江 弘美, 坂本 治美, 篠原 千尋, 福井 誠, 日野出 大輔
    原稿種別: 原著
    2026 年76 巻2 号 p. 110-118
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル フリー

     近年,「よく嚙まない」「丸飲み」などの幼児期の食べ方が問題視され,幼児期に好ましい食行動を身につけるための支援の必要性が望まれている.しかしながら,保護者が気になる食べ方がどのような要因と関連しているのかを示すエビデンスは十分ではない.本研究では,5歳児における気になる食べ方の現状と食事に対する保護者の配慮を調査し,両者がどのように関連するのかを明らかにすることを目的とした.幼稚園に通う5歳児62名の保護者を対象とし,現在の幼児の気になる食べ方や口呼吸に関する要因,食事に対する保護者の配慮について,22項目のアンケート調査を実施し,各項目間の関連について検討した.Spearman順位相関係数検定を用いて分析した結果,「偏食がない」は「硬い食品を取り入れる」「嚙み切って食べる食品を取り入れる」「食材を大きめにしている」と有意に関連した(それぞれ,r=0.386, p<0.01; r=0.294, p<0.05; r=0.299, p<0.05).また,「よく嚙まずに飲み込むことがない」は「硬い食品を取り入れる」や「嚙み切って食べる食品を取り入れる」と有意に関連した(それぞれ,r=0.310, p<0.05; r=0.252, p<0.05).さらに,「食事時の姿勢」や「食べることに集中」は,「硬い食品を取り入れる」と有意に関連した(それぞれ,r=0.403, p<0.01; r=0.411, p<0.01).以上の結果から,幼児の気になる食べ方は食事に対する保護者の配慮と関連することが示唆された.

資料
  • 安藤 雄一
    原稿種別: 資料
    2026 年76 巻2 号 p. 119-126
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/15
    ジャーナル フリー

     高齢歯科医師の大量引退が始まり,歯科医不足の地域の増加が懸念されるなか,どのような影響が生じうるのか予測する必要があるため,医療施設静態調査・歯科診療所票の二次医療圏別公表データを用い,人口あたり歯科診療所数の多寡による違いを検討した.

     データソースとしてe-Statで公表されている医療施設静態調査(歯科診療所票,2023年)と住民基本台帳による市町村別人口(2024年1月1日現在)を用い,二次医療圏単位で公表されている医療施設静態調査の各調査項目について4区分した人口10万人あたり歯科診療所数とクロス集計を行った.

     その結果,自治体や事業所の委託健診を実施した割合で強い負の関連が認められた.在宅医療サービスの実施件数では強い正の関連が認められたが,医療保険による在宅サービスにおける実施歯科診療所の割合では逆に負の関連が認められた.また,歯科診療所の特性のうち,表示診療時間「18時以降」の割合と非常勤の歯科医師数で強い正の関連が,常勤の歯科技工士数と事務職数で強い負の関連が認められた.

     これらの結果から,人口あたり歯科診療所数が減少する地域では,自治体や事業所等の健診事業の円滑実施に支障が生じること,歯科の在宅医療サービスの供給不足が生じることが示唆された.今後,個票単位データ等を活用した多面的な検討が望まれる.

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