環境化学
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11 巻, 4 号
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  • 李 炳大, 中井 智司, 細見 正明
    2001 年 11 巻 4 号 p. 765-772
    発行日: 2001/12/19
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    本稿では, 多環芳香族炭化水素類 (PAHs) 汚染土壌を常温・常圧で浄化する技術として, 物理的方法や化学的方法の単独処理とこれらと生物処理を連続させたハイブリット処理を紹介した。界面活性剤もしくは有機溶媒洗浄による物理的洗浄法, またはフェントン酸化, 光分解, オゾン酸化のような化学的分解法により良好なPAH除去率を得ることが可能であった。また, ハイブリット処理の実験室レベルでの結果では環境負荷が懸念される有機溶媒や酸化剤の使用量が単独処理の場合よりも削減されることが示された。
  • 近年の傾向
    崔 宰源, 森田 昌敏
    2001 年 11 巻 4 号 p. 773-783
    発行日: 2001/12/19
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    近年, 新しい環境問題として挙げられている臭素系難燃剤による環境汚染について汚染地域の状況, 生物濃縮, 人体暴露および近年の経年変化に関する情報をまとめた。臭素系難燃剤の毒性に関する報告は少ないが, PBDEによる甲状腺ホルモン (T4) の減少, Ah受容体のアゴニスト/アンタゴニストとして働く同族体の存在, EROD誘導など, 既存の有機塩素化合物と同様な影響を及ぼす可能性が指摘された。動物実験による体内半減期の長さが, あるPBDE同族体について塩素化ダイオキシン類に匹敵するという見解や有機塩素化合物と同様に胎盤と授乳による次世代への暴露も証明された。
    一方, 人体への暴露経路として食事だけでなく, 製品のリサイクル現場で呼吸による暴露経路の存在なども明らかになっている。大気中でPBDEは粒子態―ガス態間の分配が生じることや大気輸送により汚染源が存在しない場所の生物にも蓄積されている。また, 様々な環境試料および人体試料の経年変化は臭素化難燃剤の使用期間に相関して増加傾向にある。最近, 話題になっている臭素化ダイオキシン類については, 生成, 分解に関する報告と実態調査の結果が散見されるが, まだ基礎的な段階にあると考えられる。今後, 臭素化ダイオキシン類についても臭素系難燃剤とあわせて環境中の存在や挙動を詳細に調べていく必要がある。
  • 天野 昭子, 鍵谷 俊樹, 形見 武男
    2001 年 11 巻 4 号 p. 785-792
    発行日: 2001/12/19
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    水田除草剤のチオベンカルブとメフェナセットについて, 水田内での挙動を調査すると共に, 流出抑制のための水管理について検討した。土壌への吸着と水深との間には相関が見られ, チオベンカルブは水深0.8cmのとき投入量の約90%が吸着したが, 3.2cmでは60%未満となった。また, 土壌吸着後の再溶出について調査したところ, 土壌吸着量の約23%が水中へ脱着した。メフェナセットは水深が深くなるほど土壌吸着量は減少したものの, チオベンカルブほど顕著ではなく, 水深3.2cmにおいても添加量の95%以上が土壌へ吸着した。また土壌からの脱着も認められなかった。チオベンカルブ及びメフェナセットの流出軽減対策として, 薬剤が土壌に吸着しやすいよう極端な深水管理は避け, 散布後少なくとも4日間は田面水を動かさず, また田面水中の薬剤量が低くなるまでの14日から20日間は水田の止水を徹底させることが, 効果および環境負荷軽減の両面から見て最も有効な対策と考えられた。
  • 平井 康宏, 加藤 利崇, 高月 紘, 酒井 伸一
    2001 年 11 巻 4 号 p. 793-804
    発行日: 2001/12/19
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    ヘキサクロロベンゼン (HCB) 排出量の推定と動的環境挙動モデルによるHCBの運命予測を組み合わせ, 底質中HCB濃度トレンドを推定した。HCB発生源として農薬 (PCP, PCNB, TCTP) 不純物, テトラクロロエチレン蒸留残渣焼却, 都市ごみ焼却を考慮した。この底質トレンド推定結果を琵琶湖北湖東岸と大阪湾西宮沖の底質コア濃度実測値と比較した。底質到達への時間遅れにより, HCB排出量トレンドとHCB底質濃度トレンドの差違を部分的に説明できた。琵琶湖と大阪湾の底質トレンドの違いは, 発生源と流入経路の違いを反映したものと思われる。
  • 大林 宏至, 古澤 茂美, 斎藤 哲, 細見 正明
    2001 年 11 巻 4 号 p. 805-813
    発行日: 2001/12/19
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    PCBを使用した電気機器構成部材のうち, 絶縁紙のようにPCBが含浸している部材の処理に有効である真空加熱分離法では処理温度によっては絶縁紙が炭化することにより, その絶縁紙が活性炭のような吸着作用を示し, PCBを分離除去することが困難となることが懸念された。そこで, PCBと類似した蒸発挙動を示す絶縁油を含浸したモデルサンプルを作成し, PCB分離に及ぼす絶縁紙の炭化の影響を調べた。その結果, 200℃~270℃では99.9%の分離効率が得られたが, 270℃~400℃の間では再び残留量が増加した。それは炭化に伴い, 表面が活性化していることと関係が深いことが判明した。表面が活性化したことにより, 一度分離した絶縁油が再び吸着することが原因であった。これらの結果を踏まえて実際にPCBが含浸している試料を用いて実験したところ, 絶縁油と同様に400℃で再吸着が起きた。そこで再吸着を防止するために処理後, 窒素ガスを充填することによる残留PCB蒸気の希釈を行った結果, その効果が認められ, 絶縁紙への残留PCB濃度を20から0.15mg/kgに減少することができた。
  • ―GC/MSを用いた鉱物油のペンタン抽出成分及び水溶性揮発性成分の分析―
    中牟田 啓子, 福嶋 かおる, 松原 英隆, 神野 健二
    2001 年 11 巻 4 号 p. 815-826
    発行日: 2001/12/19
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    地表水または地下水が鉱物油により汚染された場合の原因究明法として, 以下の方法を開発した。
    (1) 地表水が汚染された場合は, 試料水をペンタン抽出後濃縮しGC/MS分析を行い, 直鎖型脂肪族炭化水素類の比較およびジメチルアントラセンおよびトリメチルアントラセンのピーク面積比の比較により, ガソリン, 灯油, 軽油, 重油の識別が可能であることがわかった。
    (2) 地下水汚染の場合は, パージトラップGC/MS分析結果から鉱物油成分中のわずかに水に溶けた成分である芳香族炭化水素類を比較することにより鉱物油の識別が可能であることがわかった。
    また, 重油の河川流出事例とガソリン及び重油による地下水汚染事例を示した。
  • Ken-ichi NAKAMURA, Chieko TAKAYA, Kiyonori HIRAOKA
    2001 年 11 巻 4 号 p. 827-834
    発行日: 2001/12/19
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    A simple method of assaying phosphatase activity in soils from tidelands was developed. This method is based on the colorimetric estimation of phenolphthalein release from phenolphthalein phosphate. Both the colorization of the product and termination of the phosphatase reaction occur at the same time by adding an alkaline phosphate solution to the reaction mixture. Phenolphthalein has an absorption maximum around 550 nm with a higher molecular extinction coefficient than that of p-nitrophenol commonly used in a conventional phosphatase assay.
    A blank value was obtained by adding the alkaline phosphate stop solution to the reaction mixture prior to the substrate addition. This value included the absorbance of the colorimetric substance derived from soils and any phenolphthalein spontaneously liberated from the substrate. Thus, the absorbance caused by the actual enzymatic reaction can be easily calculated by subtraction of the blank value from the total absorbance after the reaction.
    In this assay, we employed a new soil unit, “packed volume”, which means the volume of tideland soil after centrifugation at 650 g. By measuring the compression ratio of the soil by centrifugation, the obtained specific activity of a packed soil can be easily converted to the phosphatase activity value in the tideland soil in the native state. Most phosphatase activity and ATP were present in the tideland sediment soil fraction. These results suggest that the present method is useful for the practical estimation of phosphatase activity of a bentotic environment and for comparison of the phosphatase activity among various tidelands.
  • 後藤 純雄, 峯木 茂, 遠藤 治, 河合 昭宏, 白石 不二雄, 松下 秀鶴
    2001 年 11 巻 4 号 p. 835-839
    発行日: 2001/12/19
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    ガス状α-クロロエーテルの変異原性検出にはE.coli WP2uvrA/pKM101株でS9mix添加時が最も感度が高かった。WP2uvrA株での活性はわずかであり, S.typhimuriumTA98株, TA100株, およびTA1535株では検出できなかった。また, S9mixの添加の有無にかかわらず, 変異原性の強さはBCME>CMME>CMEE>DCDEE>DCMMEの順であった。しかしながら, BCMEでは復帰変異コロニー数がピークに達した後, 高濃度になるに従って減少し, CMMEが最大の変異原性を示すようになった。また, さらに高濃度ではCMMEでの復帰変異コロニー数も減少し, S9mix無添加ではDCMMEが, またS9mix添加ではCMEEが最大活性を示した。
  • 棚田 京子, 後藤 純雄, 門上 希和夫, 平井 正名, 今枝 孝夫, 鈴木 學
    2001 年 11 巻 4 号 p. 841-848
    発行日: 2001/12/19
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    発光系のサルモネラ菌TA1535/pTL210を用いる発光umu試験法を検討した。本法は, 試薬の添加を必要とせず, また, 96ウェルプレートを用いることによって同時に多くの試料を簡単に処理でき, 発光量の測定も迅速に行うことが出来るため, Ames法や従来のumu試験法に比べて簡便な試験法である。本法による代表的な変異原性物質を用いた試験では, 良好な用量一反応関係を示し, 従来のumu試験法やAmes法に比べて高感度であることが認められた。また, 本法を海域底質や土壌試料へ適用した結果, 良好な用量一反応関係が得られ, 環境試料への適用の可能性が示された。
  • 大林 宏至, 吉田 幸弘, 芳賀 直樹, 高橋 康之
    2001 年 11 巻 4 号 p. 849-854
    発行日: 2001/12/19
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    固体試料の分析において正確に定量するには, その固体試料から目的物質を完全に抽出することが重要である。本研究では, 吸着性能を有するため, その抽出が特に困難とされている炭化物および活性炭から微量PCBの抽出率を調査した。トルエン, ベンゼン, ジクロロメタンおよびn-ヘキサンの4つの溶媒を用いてソックスレー抽出によるそれぞれの抽出率を比較した結果, トルエン, ベンゼン, ジクロロメタンはほぼ同じ抽出効率であったのに対し, n-ヘキサンの抽出率はこれらの10%であった。また, トルエンを溶媒に, 16時間抽出を同一試料に対して4回 (計40時間) 実施し, さらに高速溶媒抽出を2回実施したが, 1回目の抽出で全抽出量の95%以上の抽出率が得られた。従って, 本研究により, トルエンを溶媒に用いた16時間のソックスレー抽出が吸着性能を有する炭化物および活性炭からのPCBs抽出に有効であることを確認、した。
  • 田頭 昭二, 中井 隆行, 村上 良子, 佐々木 義明
    2001 年 11 巻 4 号 p. 855-861
    発行日: 2001/12/19
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    ドデシル硫酸ナトリウム (sodium dodecylsulfate, SDS) を用いる界面活性剤ゲル抽出法によるニッケル (II) と銅 (II) の相互分離を行った。ニッケル (II) と銅 (II) を含む溶液にニトリロ三酢酸 (H3NTA) 共存下でエチルキサントゲン酸カリウム (KEtX) を加えると, ニッケル (II) は水に可溶性のNTA錯体を生成するために水相に残り, 銅 (II) は水に不溶性のエチルキサントゲン酸錯体を生成し界面活性剤SDS相に抽出された。抽出, 逆抽出操作は一回では不十分であったが, 連続した抽出, 洗浄, 逆抽出操作を行うことによって, 満足な結果を得た。本法で合金中のニッケルと銅の分離に応用した。銅30%, ニッケル66%, 鉄1.9%, マンガン1.6%からなる電磁シールド材であるニッケル銅合金ワイヤメッシュテープを硝酸に溶かし, サンプル溶液とした。SDS相に抽出された銅は, 塩酸で酸分解後, 水相に逆抽出して回収した。ニッケル, 鉄,
    マンガンを含む水相に臭素水を加えて加熱することによって, 鉄, マンガンを沈殿させ, ニッケルを分離回収した。
  • 岡本 哲志, 大石 一男
    2001 年 11 巻 4 号 p. 863-866
    発行日: 2001/12/19
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    (1) 枯草菌rec-assay液体法において, Pre-incubation時の被験物質の漏れを防ぐ為に密栓状態で行うこと, 致死感受性の指標である生存率の測定に, 生菌数を用いることの2点の改良を行い揮発性有機塩素化合物 (TCE, PCE) の検出の可能性について検討した。その結果, 供試した枯草菌2株がPCEに対して従来法に比べて低濃度で感受性を示すことがわかり, 揮発性有機塩素化合物を被験物質とした場合に本研究の改良が有効であると考えられた。
    (2) TCEでは, H17株 (rec+) とM45株 (rec-) の間に生存率の違いは見られなかった。これに対しPCEでは, H17, M45両株の間に生存率の差が認められ, DNA損傷性を有することがわかった。しかし, 環境基準 (PCE: 0.01mg/l以下) の範囲の検出に本法を適用するのは困難であることもわかった。
  • 岩下 正人, 佐藤 幸代, 島村 匡
    2001 年 11 巻 4 号 p. 867-879
    発行日: 2001/12/19
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    相模川水系上流部 (桂川) から採水した試料について, その溶存成分の長期的変動を解析した。試料は1993年5月から1999年4月までの6年間, 毎月1回, 14の採水地点で集められた。ICP-Msにより24元素 (Li, Mg, Al, Ca, V, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, As, Rb, Sr, Mo, Ag, Cd, Sb, Cs, Ba, WTI, Pb, U) , およびpH, 電気伝導度, 流量 (1995年4月より) について計測した。長期傾向変動は12ヶ月の移動平均を取ることにより解析した。
    流域最上流においては富士山麓の湧水の影響が強く, ほとんどの元素濃度は変化していなかったが, V等は河口湖, 山中湖からの放流水の影響を受け, 降水量の多い時期に一時的に濃度が低下する現象が見られた。
    湧水の影響が少ない支流においては, 工場排水, 廃鉱の浸出水などの影響が見られ, Ni, Sb, Zn, Cd等の濃度が高かった。工場排水の影響は1998年頃から少なくなりつつある。
    流域が比較的広い支流では, V, Mn, Rb, Cs等に季節変動が明瞭に見られた。多くの元素で傾向変動は少なかったが, Mg, Caでは流量変化に伴う変化が見られる場合があった。
    桂川本流の水質は, 発電用の利水の関係で, 流入する支流の影響を強く受け, 採水地点により水質が大きく変化する。
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