環境化学
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12 巻, 1 号
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  • 津田 泰三
    2002 年 12 巻 1 号 p. 1-22
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    世界の湖沼および河川に生息する魚類中のPCB, DDT類およびHCH類の残留について, 1990年代に実施された調査を総説した。合衆国の五大湖およびロシアのバイカル湖におけるPCBおよびDDTの魚体中残留量は他の湖沼と比較して高かった。ミシガン湖の魚体中PCB濃度は琵琶湖と比較して約100倍高いが, 1980年代中頃まで減少傾向を示し, これ以後については横這い状態であるという共通点が認められた。一方, 五大湖周辺の河川およびフランスのセーヌ川におけるPCBの魚体中残留量とインドのガンジス川におけるDDTおよびHCHの魚体中残留量が他の河川と比較して高かった。バイカル湖およびナイバシャ湖における魚体中のpp'-DDTの比率が高いことからロシアおよびケニアにおいてDDTの使用が推察された。一方, 合衆国, エジプトおよびヨーロッパの湖沼および河川については魚体中のpp'-DDTの比率が低く, DDTの未使用が推察された。HCHについては高い魚体中残留量を示す湖沼および河川はなかったが, 日本, 中国およびロシアでは魚体中HCH異性体の構成比率でγ体の比率が低く, HCH原体をそのまま使用したことが推察された。一方, 欧米諸国は逆にγ体の比率が高くリンデンの使用が推察された。
  • 鎌田 亮, 森田 昌敏
    2002 年 12 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    近年の自然環境保護に対する一般社会の関心の高さにもかかわらず, 野生生物を主眼とした内分泌攪乱化学物質 (EDCs) のリスク評価研究は依然として立ち遅れている。有機塩素化合物による野鳥の繁殖障害はEDCsによる野生生物への影響例として最も代表的なものであり, 最も早期から報告されてきた。野鳥の広範な生息環境・食物連鎖における位置を考えると, 鳥類はEDCsによる自然環境破壊の有無および程度を評価するのに最適な動物種と言えるだろう。発生学的な基礎研究により, 鳥類の生殖器発生や生殖行動のメカニズムが徐々に明らかにされてきた。これらの研究がEDCsの作用メカニズム研究やスクリーニング・リスク評価試験法の開発に有用な知見を与えると期待したい。
  • 松永 充史, 安原 昭夫
    2002 年 12 巻 1 号 p. 33-43
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    本総説では, PCBの分解処理法として研究開発されてきたもののうち, 還元的脱塩素化を中心に反応機構の観点から解説する。取り上げる分解処理法は (1) γ線照射法, (2) アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属による還元法, (3) 遷移金属を使った還元法, (4) 電解還元法, (5) 触媒水素化法, (6) 光分解法である。
  • 鈴木 茂, 安原 昭夫
    2002 年 12 巻 1 号 p. 45-62
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    近年, 大気圧化学イオン化法ならびにエレクトロスプレーイオン化法の進歩により, 環境化学物質の液体クロマトグラフィー質量分析法 (LC/MS) による微量分析が可能となってきた。本総説では, LC/MSによる環境化学物質の分析の現状を1995年から2001年の間に発表された336の文献をもとに紹介する。それらの報告で対象となった化学物質の総数は384物質で, 内訳は農薬が55%で, 残りは非イオン界面活性剤とその代謝物, フェノール類, MX, カルボニル化合物, エストラジオールと関連物質である。化学物質の構造とLC/MSの感度, 各種環境媒体中の化学物質の分析例などを記述した。
  • 松本 えみ子
    2002 年 12 巻 1 号 p. 63-72
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    本総説では, バイオレメディエーション, ファイトレメディエーション, およびリゾレメディエーションの研究における最近の知見について報告した。特に, その高い毒性のために関心の高い難分解性有機塩素化合物と重金属汚染を対象とした研究の現状を紹介した。バイオレメディエーションの研究は, 環境微生物の分解能の解析・改変に加え, 汚染現場への適用のために必要な微生物のモニタリング手法や管理手法の報告が多くなってきている。ファイトレメディエーションとリゾレメディエーションは開発途上にある技術だが, バイオレメディエーションよりも維持・管理が容易であることから, 今後非常に注目される技術である。また, 植物や根圏微生物に難分解性物質分解酵素を導入した組換え体の創出の報告も相次いでおり, 今後の展開が大いに期待される。
  • 中田 洋輔, 倉光 英樹, 木村 智之, 川崎 幹生, 田中 俊逸
    2002 年 12 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    近年, 社会問題化している有機汚染化学物質であるフタル酸ジエチル, ナフタレン, およびEDTAの電気化学的酸化分解法への適用をPt/Ti, およびSnO2/Ti電極を用いて検討した。定電流でこれらの有機汚染物質の電気化学的分解・無機化を追跡した結果, いずれの化合物においてもSnO2/Ti電極を用いることにより, Pt/Ti電極を使用した場合と比較して, すみやかな無機化が達成された。
  • ―主成分分析および重回帰分析を用いて―
    早川 健一, 谷 治毅, 高月 紘, 酒井 伸一
    2002 年 12 巻 1 号 p. 79-88
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    都市ごみ, シュレッダーダスト, 排ガス, 灰, 環境媒体, カネクロール製品について, コプラナーPCBs異性体12種, ジオルト異性体2種, 主要異性体5種の計19異性体を対象として, その異性体分布について検討を行った。主成分分析の結果, 3つの主成分が得られ, その特徴から第1主成分は燃焼系か製品系かを示す主成分, 第2, 第3主成分は置換塩素数の違いを示す主成分と解釈できた。排ガス, KC-400, KC-600の異性体分布を説明変数として試料の異性体分布に重回帰分析を行った結果, 2つの主成分得点の大きさによって結果が各試料ごとに異なる傾向, および排ガスおよびカネクロール製品の寄与の大きさが各異性体ごとに異なる傾向が見られた。
  • 清家 伸康, 松本 めぐみ, 松田 宗明, 河野 公栄, 脇本 忠明
    2002 年 12 巻 1 号 p. 89-96
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    松山平野における各種底質 (沿岸, 河川, 湖沼) 中のPCDD/Fsを分析した。その結果, 上流から下流にかけてPCDD/Fs濃度が高くなり, さらに沿岸底質においてPCDD/Fs濃度が最も高くなるという傾向が見られた。また異性体組成から, 燃焼・焼却過程由来のPCDD/Fsは松山平野に広く分布し, 水田地帯付近を流れる河川ではCNPおよびPCP中の不純物のPCDD/Fsの影響が大きいことが予想された。また, 底質コア中PCDD/Fs分布から推定年代1966年からPCDD/Fs濃度が急激に上昇しているが, 推定年代1986年以後濃度が減少していることが明らかになった。
    河口域底質におけるPCDD/Fsの堆積フラックスを求め, 水中におけるPCDD/Fsの沈積速度を算出した。その結果, 重信川河口付近へ大気から直接のPCDD/Fs降下よりも, 流域からPCDD/Fsが河川へ流入し水底へ堆積する負荷量が大きいことが推察された。
  • 鈴木 祥広, 森下 玲子, 高見 徹, 丸山 俊朗
    2002 年 12 巻 1 号 p. 97-103
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    淡水産植物プランクトンの増殖阻害試験によって, 塩素, 二酸化塩素, オゾン, およびUV照射の各種消毒下水処理水の毒性について調べた。消毒処理水の毒性は高い順に, 塩素≫二酸化塩素>オゾンであった。一方, UVでは藻類に対する影響は全く認められなかった。塩素消毒では, 注入した塩素量の約50%が酸化性物質として残留し, その約80%がモノクロラミン (NH2Cl) であった。このNH2Clが藻類の増殖を著しく阻害する原因物質であった。二酸化塩素では, 増殖阻害が認められなかった場合においても, クロロフィル生合成を阻害する可能性が示唆された。増殖阻害試験の結果から判断すると, 下水処理水の消毒プロセスは, UV消毒法が最も適当である。
  • 池田 久美子, 南 卓志, 山田 久, 小山 次朗
    2002 年 12 巻 1 号 p. 105-114
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    TBTおよびTPTは日本海沖合域底層まで分布していた。同海域における底層水のTBT濃度は0.3~0.8ng/l, TPT濃度は検出限界 (0.9ng/l) 以下であった。底泥のTBTおよびTPT濃度は, それぞれ4.4~16および3.9~7.4ng/g乾重であった。同海域で漁獲された魚介類中のTBTおよびTPT濃度は, それぞれ1.8~240および5.0~460ng/g乾重であった。胃内容物より解析した栄養段階との関係を調べたところ, 魚介類中TPT濃度は高次の栄養段階に位置する種ほど高く, TPTは食物網を通して濃縮されることが明らかであった。一方, 魚介類中TBT濃度と栄養段階との関係は明瞭でなく, TBTでは食物網を通した濃縮が認められなかった。この差は, 水生生物における蓄積・排泄機構がTBTとTPTで異なるためと考えられた。底泥のTPTは底生生物へ移行し, 底泥―底生生物間の濃縮係数は, 底生生物―捕食者間の濃縮係数より大きかった。したがって, 食物網を通したTPTの再循環において底泥から底生生物への移行過程が重要であると考えられた。
  • Kengo MORIMOTO, Kenji TATSUMI, Ken-ichi KURODA
    2002 年 12 巻 1 号 p. 115-126
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    The effect of a model humic constituent, protocatechuic acid, on the enzymatic transformation of 3, 4-dichloroaniline (DCA) catalyzed by horseradish peroxidase (HRP) was studied. The presence of protocatechuic acid caused an increase in the rate of DCA transformation, resulting in an 80% transformation after 15 min of incubation, compared with 50% when DCA was incubated alone.
    The polymeric reaction products were analyzed by pyrolysis-GC/MS. More than 60% of the pyrolysis products from the DCA alone reaction product were tetrachlorodiazobenzene while this compound was not detected at all in pyrolysis products of DCA in the presence of protocatechuic acid. The major pyrolysis product in the latter case was DCA itself, which appears to have been cleaved from anilinoquinone or enaminone subunits.
    In addition to these major pyrolysis products, some minor peaks i.e. formanilide, diphenylamine, phenylpyrrole and isocyanobenzene were also detected. These were consistent with NMR data on the same product and are thought to represent major subunits that are resistant to cleavage from the polymer by pyrolysis.
  • 中田 晴彦, 宮脇 崇, 境 泰史
    2002 年 12 巻 1 号 p. 127-134
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    有明海干潟域から採集した底質についてPCB異性体分析を行った。残留濃度は概して数10ng/g (dry wt.) の範囲であり, 日本の海洋底質の濃度値とほぼ同程度で, アジア沿岸域の底質濃度と比較して全般にやや低値であった。ところが, 一部河川底質よりER-M値 (Effect Range-Medium: 400ng/g dry) を越える極めて高濃度のPCBsが検出され, 本河川におけるPCB汚染源の存在が示唆された。PCB異性体組成を指標に主成分分析を行ったところ, 有明海は全般に三および四塩素成分主体の低塩素型の汚染である一方で, 六, 七塩素成分が主体の組成を示す地域も確認され, それぞれ異なる汚染源の存在が示唆された。また, 底質とPCB製剤 (KC-300, 400, 500, 600) の異性体組成についてブインガープリント解析によるPCB発生起源の推定を行ったところ, 本河川はKC-400による汚染を受けている可能性が高いことが示唆された。さらに, 底質-カキ間のBSAFとlog Kowの相関モデルを調べた結果, 汚染源に近い場所が高塩素異性体の割合が高く, この種の成分が河川内で底質に沈降している様子が窺えた。一方, PCBsの低塩素および一部の高塩素成分は河川を通過し有明海へ流入していることが予想され, 今後, 本河川を介した汚染流入の定量的解析など詳細で多面的な環境調査を行い, その保全対策を早急に考える必要がある。
  • 鈴木 守正, 大石 一男
    2002 年 12 巻 1 号 p. 135-140
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    花粉培養法の液体培地法は簡易, 迅速であり, 揮発性物質でも培養瓶内に密封することができることからTCE・PCEの毒性評価について検討した。花粉管は液中に生長することから液中濃度が毒性評価に重要な要素であり毒性の強さは液中濃度で示した。IC50はTCEで71.6~140mg/l, PCEで5.9~12.7mg/lと推定され, 花粉管生長に対するTCE・PCEの阻害が確認できた。このことから, TCE・PCEの毒性を花粉培養法により評価することが可能であることが示唆された。
  • 沖田 智, 石井 善昭, 尹 順子
    2002 年 12 巻 1 号 p. 141-145
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    底質中のMBCとTBZを液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法を用いて定量する手法を開発した。底質からの抽出特性を検討し, 抽出溶媒に0.5M塩化アンモニウム60%メタノール水溶液を選択した。この抽出液に固相カートリッジによるクリーンアップを組み合わせることで, 試料マトリックスによる感度低下を抑制することができた。さらに, 検出器に選択性の高いMS/MSを用いることでS/N比が改善され, 検出下限値の向上が可能となった。底質への5ng/g添加試料の回収率は, MBCが92.9%, TBZが95.6%で, この時の検出下限値 (S/N=3) は, それぞれ0.06ng/gと0.07ng/gであった。
  • 北原 滝男, 高野 二郎, 北見 秀明, 渡辺 哲男
    2002 年 12 巻 1 号 p. 147-152
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究では, 水質汚濁防止法に掲げられている環境基準項目かつ排水基準項目であるチウラム, シマジン, ベンチオカーブを測定対象物質として, その分析法の検討を行った。その際, 排水基準に定められている揮発性有機化合物11種類に含まれていない抽出溶媒であるアセトンに着目し, その効果を調べた。その結果, 固相抽出法とHPLC/UV法を併用することにより, これら農薬の環境基準値および排水基準値を満たすことができ, HPLC/UVにより同時に分析できることを示した。
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