飛灰, 焼却灰, 廃ガラス, 廃陶磁器類を試料として, 溶出液のpHとホウ素溶出濃度との関係を調べた。溶出液のpHが低いほどホウ素の溶出濃度は高く, また一度溶出したホウ素は, 溶出液のpHを上昇させると再吸着か水酸化物への吸着・共沈によって液相から失われることが判明した。ホウ素の溶出・吸着にはpHが大きな影響をもつことが再確認されたが, そのメカニズムは不明である。
逐次抽出法とICP発光法・即発ガンマ線分析を組み合わせて各種廃棄物に含まれるホウ素の分画 (「イオン交換態」, 「炭酸塩結合態」, 「Fe-Mn酸化物結合態」, 「有機物結合態」, 「ケイ酸塩結合態」) を行った結果, 飛灰などはもっとも溶出しやすい「イオン交換態」に, ガラス・溶融鉱滓は最も溶出しにくい「ケイ酸塩」分画に, それぞれ多くのホウ素を含む傾向があった。しかし同じカテゴリーの廃棄物でも試料によって5分画の相対存在度が異なり, カテゴリーごとに一般化することはできなかった。告示46号試験法による溶出量は「イオン交換態」分画に存在するホウ素量をよく説明できたが, 潜在的に溶出可能なホウ素量を予測するには不十分であった。鉱滓以外の廃棄物は, 高温 (1300℃) 処理によって試料中ホウ素が「ケイ酸塩」分画に移行し, 溶出しにくくなり, 試料を溶融後に埋め立てることでホウ素溶出を低減できることが示唆された。
抄録全体を表示