「ナホトカ」から回収した重油を風化させたもの及び新潟県内の海岸に漂着した重油中に含まれる
n-アルカン類31化合物, Pri, Phy, アルキルジベンゾチオフェン類8化合物, PAH類22化合物及びアルキルベンゼン類24化合物を同定した。その結果, 比較的分子量の小さいC
10~C
22は, C
23~C
40に比べて速やかに消失することがわかった。また, C
17/Pri及びC
18/Phyから,
n-アルカン類の微生物分解の可能性も考えられたが, いずれのアルカンも, 海水への溶解や微生物分解よりも空気中への揮発による消失が早いものと考えられた。アルキルジベンゾチオフェン類及びPAH類はいずれも風化に伴って消失して行き, その速度はC
30より大きかった。そして, 海水への溶解や微生物分解よりも空気中への揮発による消失が早いものと考えられた。また, PAH類では光分解による消失も考えられた。さらに, 重油の識別に, C
23~C
40の
n-アルカン類, ジメチルジベンゾチオフェン類及びPAH類の組成比の比較を試みたが, いずれも必ずしも有効な手法ではないことがわかった。
1997年5月~8月に新潟県内の海岸で採取した重油6試料について検討した結果, いずれもは「ナホトカ」から流出した重油でない可能性が高いものと推定された。今後, 「ナホトカ」から流出した重油中の有機化合物類は, 気象条件等により異なるが, 環境中においてより分子量の小さいものほど速やかに消失して行くものと考えられた。
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