環境化学
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9 巻, 4 号
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  • 松居 正巳, 藤田 登美雄, 西川 雅高, 中杉 修身, 平田 健正
    1999 年 9 巻 4 号 p. 891-897
    発行日: 1999/12/17
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    環境水中の微量ほう素を分析するためにクロモトロープ酸の反応試薬を用いたポストカラム誘導体化法について検討し, フッ素, 塩素, 硝酸, 亜硝酸, 硫酸及びほう素などの陰イオン成分と同時に分析する方法を開発した。この方法はHPLCのカラムで陰イオン成分とほう素を分離し, フッ素, 塩素, 硝酸, 亜硝酸及び硫酸などの陰イオン成分を電気伝導度検出器で分析した後に, ほう素はクロモトロープ酸ポストカラム誘導体化法により励起波長330nm, 蛍光波長355nmの蛍光検出器で分析した。
    環境試料で本法, ICP発光分析法及び他法などとほう素の測定値について比較した。その結果, 本法とICPの測定値は一致した。水道水や河川水中などのフッ素, 塩素, 硝酸亜硝酸及び硫酸などの陰イオンとほう素の一斉分析法として有効と思われる。
  • 相澤 貴子, 澤田 恵枝, 浅見 真理, 野嶋 義教
    1999 年 9 巻 4 号 p. 899-907
    発行日: 1999/12/17
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    Quantification method by liquid chromatography with inductively coupled plasma mass spectrometry (LC-ICP/MS) was developed for analyzing five arsenic species, arsenate (As (III) ), arsenate (As (V) ), monomethylarsonic acid (MMAA), dimethylarsinic acid (DMAA) and arsenobetaine (AB), in environmental water. Addition of EDTA into the samples and into the elluent prevented arsenic complex formation with coexisting metals which had inhibited arsenic quantification, therefore it obviously improved the quantified values of arsenic compounds by 0-40% and stability of quantification. Batch experiments showed no adsorption of arsenic compounds onto kaolin, algae and humic substances. Arsenic species in examined ground waters and hot springs mainly consisted of Asp (III) and As (V) , and the sum of their individual concentration completely matched with the total quantification value obtained by ICP/MS analysis in each sample.
  • 崔 宰源, 松田 宗明, 河野 公栄, 閔 丙允, 脇本 忠明
    1999 年 9 巻 4 号 p. 909-920
    発行日: 1999/12/17
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    韓国のウミネコの繁殖地で採取した卵について, PCDD/Fs, non-ortho PCBsおよびその他の残留性有機塩素化合物の濃度レベルと暴露による毒性評価を行った。PCDD/Fsはより毒性が強い, 2, 3, 7, 8-塩素置換体で, しかも低塩素置換体の異性体が優先的に残留しており, 中でも毒性と蓄積性の側面から1, 2, 3, 7, 8-PeCDDと2, 3, 4, 7, 8-PeCDFが特に重要と考えられた。その他にも卵から比較的多種の低塩素置換体が検出されたが, 成鳥の餌である魚の組成を反映しているものと推測された。non-ortho PCBsの残留順位はPCB 126>77=169>81であり, PCB 126が大きい割合を占めた。pCDD/Fsとnon-ortho PCBsのうち, 特に5塩素置換体が鳥類に特異的に蓄積していることが判明した。
    その他の有機塩素化合物のレベルについてはPCBs>DDTs>HCHsの順に残留しており, 一部の化合物については地域差が認められた。また, 卵の総重量, 湿重量などにおいて有意な地域差が見られたが, PCDD/Fs, non-ortho PCBs, TEQsとの間に負の有意な関係は見られず, 今回検討した限りにおいては毒性影響など生理的な影響を及ぼす濃度レベルではないものと判断された。しかしながら, 総有機塩素化合物の濃度と卵の湿重量との間に比較的に有意な負の相関関係が観察されたことや卵重量と孵化率は密接な関係にあることから, 汚染物質による生体影響を全面的に否定することは困難である。
    TEQに寄与する主な化合物はnon-ortho PCBsであり, 特にPCB 126はその平均寄与割合が両繁殖地において76%および79%であった。さらに, このTEQをこれまで報告されている投与試験結果と比較すると, ウミネコの生殖に悪影響を及ぼすレベルではないと判断された。しかしながら, 低濃度の長期間の暴露による毒性影響については不明なことが多く, 今後も濃度推移のモニタリングと共に毒性影響の監視について継続的な調査が必要である。
  • 牧野 正和
    1999 年 9 巻 4 号 p. 921-929
    発行日: 1999/12/17
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    ダイオキシン関連化合物であるPCDDs, PCDFs, PCBs, PCNsのGC-RRTsと, 量子化学や分子トポロジーに基づいて計算された物性指標との相関解析を行った。溶媒分子接触可能表面積に対するGC-RRTsの変化は, 塩素数が異なる同族体と, 塩素数が同じ異性体間では, その変化の傾向が異なることが分かった。そこで, 異性体が示すGC-RRTs変化を詳細に検討した結果, 3X-3Xvを指標として用いた時, 隣接関係にある塩素原子対数に基づいて異性体をグループ分けすることで, GC-RRTsと3X-3Xvの間に高い相関が成立する事がわかった。また, 酸素原子を分子骨格に持たないTCBsやTCNsでは, 3X-3Xvと水素原子上の電荷総和との間に顕著な相関関係が観測された。
  • 深澤 均, 松下 秀鶴, 寺尾 良保
    1999 年 9 巻 4 号 p. 931-937
    発行日: 1999/12/17
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    2, 4, 6-tribromophenolは, 環境庁が発表した「水環境保全に向けた取組みのための要調査項目リスト」に含まれており, 静岡県内の一般的な下水処理放流水中からは検出されなかったが, 海岸線に近い一し尿処理施設の放流水中で検出された。そこで, 当該処理施設における2, 4, 6-tribromophenolの生成過程を検討した。
    2, 4, 6-tribromophenolは, 最終処理工程の塩素処理により生成し, 放流水中の検出濃度は, 0.26~0.45μg/lであった。塩素処理による2, 4, 6-tribromophenolの生成は, し尿中の有機物の分解物であるフェノール類が臭素化したことが考えられた。前段の脱窒処理によりアンモニア濃度が下がり, クロラミンの生成が抑制されていたため遊離塩素濃度が高く, 塩水化している希釈水に含まれていたBr-が反応性の高い次亜臭素酸になり易い条件が重なったためと考えられた。また, 当該処理施設において, オゾン処理工程に比べ次亜塩素酸ナトリウムによる塩素処理工程の方が, 臭素化反応が起こり易いことが確かめられた。
    臭素イオン共存下の塩素処理による2, 4, 6-tribromophenolの生成は, モデル実験として確認されていたが, 実際のし尿処理放流水中で検出されたという報告は希有である。当該施設が臭素イオンを多量に含む塩水化希釈水を使用していることが最大の理由かもしれないが, 必ずしも特殊なケースと言えないだろう。
  • 小倉 光夫
    1999 年 9 巻 4 号 p. 939-945
    発行日: 1999/12/17
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    ICP質量分析法による環境試料中のウランの正確で迅速な分析方法を検討した。試料を硝酸/過塩素酸/ふっ化水素酸で分解し, 希硝酸に溶解して試験溶液とした。マトリックス効果を補正するため, 白金を内標準元素として用いた。本法による種々の環境標準試料のウラン分析値は, いずれの試料でも保証値等と良く一致した。また, 繰り返し分析精度 (n=5) は, Buffalo River Sediment及びSL-1は, 1.3~2.2%であった。本法のウランの定量限界は溶液中0.004μg/l, 試料中 (固体) 0.004μg/gであった。環境試料から0.28~1.9μg/g (底質) , 0.80~6.5μg/g (下水汚泥, 飛灰, 浮遊粉じん) , 0.004~0.068μg/l (河川水, 湧水) , 2.6μg/l (海水) のUが検出された。
  • 山本 智, 柿井 一男, 荷方 稔之, 白樫 高史
    1999 年 9 巻 4 号 p. 947-953
    発行日: 1999/12/17
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    Hg2+のクロレラによる還元気化, 吸着と細胞内取込み, 及びクロレラに与える毒性について, Cl-及びBr-が存在する条件下で検討を加え, 以下の知見を得た。 (1) クロレラによるHg2+の還元気化は, 無電荷錯体 [HgCl2] 0の存在比が最大となる条件で最も促進された。 (2) この還元気化反応は光の影響を強く受け, 初期15分間の気化量は照度約3001xまでは照度に比例して増加し, それ以上ではほぼ一定となった。 (3) 暗条件下でのクロレラ細胞表面への吸着量は添加Cl-及びBr-濃度の増加に伴い低下したが, Hg2+添加1時間後での細胞内取込み量は無電荷錯体 [HgCl2] 0, [HgBr2] 0の存在比の増加とともに増加した。一方, ハロゲン化物イオン無添加の系では12時間にわたり緩やかな細胞内取込み量の増加が見られた。 (4) 無電荷錯体 [HgCl2] 0, [HgBr2] 0の存在比の増加に伴い, Hg2+細胞内取込み量も増加し, その結果クロレラに及ぼす毒性も高くなった。 (5) クロレラ生細胞によるHg2+の還元におけるクロロフィルの直接的関与の可能性は低いことが示された。
    以上から, Hg2+は水中にハロゲン化物イオン (X-) が存在するとき, その濃度により, 電荷の異なる各種の錯体 [HgXn] 2-n (n=1, 2, 3, 4) を生成するが, このうち, 特にHg2+が無電荷錯体である [HgCl2] 0や [HgBr2] 0を生成するとき, 細胞内へのHg2+の取込みが促進され, 明条件下での還元気化が急速化したり, 毒性が強められることが明らかとなった。
  • 小谷野 道子, 孫 成均, 遠藤 治, 後藤 純雄, 渡辺 征夫, 町井 研士, 峯木 茂, 松下 秀鶴
    1999 年 9 巻 4 号 p. 955-968
    発行日: 1999/12/17
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    東京都内及び近郊にある一般家庭 (10家庭) を対象に, 1回24時間, 3日間, その室内・室外で低流量小型カスケードインパクターを用いて浮遊粒子 (10μm以上, 10~2.5μm, 2.5μm以下の3段階に分級) を採取し, その抽出物の変異原性並びにPAH濃度を測定して, 本装置の有効性について検討を行った。その結果, (1) YG1024ではS9mix添加時より無添加条件下の方が強い変異原性を示すこと, (2) 室内空気よりも室外空気試料の方が強い変異原性を示すこと, 及び (3) 粒子径が小さくなるにつれて変異原性が強くなること, などが認められた。一方, PAH濃度は2.5μm以下>2.5~10μm>10μm以上となり, その80~90%以上が2.5μm以下の粒子に含まれていることが認められた。
  • 雅楽川 憲子, 茨木 剛, 田辺 顕子, 中野 友香, 川田 邦明
    1999 年 9 巻 4 号 p. 969-973
    発行日: 1999/12/17
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    プラスチックの可塑剤等として用いられるアジピン酸エステル9種類について, ディスク型固相を用いた一斉分析を検討した。溶媒抽出についても併せて検討した。ディスクからの溶出溶媒について検討した結果, アセトン及び酢酸エチル各10mlを用いることとした。河川水を用いて, ディスク型固相及び溶媒抽出により添加回収試験を行った結果, 低分子量のDMAを除くアジピン酸エステル類についてはおおむね同様の結果が得られたことから, ディスクを用いた方法でも溶媒抽出による方法と同等であると評価できた。
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