韓国のウミネコの繁殖地で採取した卵について, PCDD/Fs, non-
ortho PCBsおよびその他の残留性有機塩素化合物の濃度レベルと暴露による毒性評価を行った。PCDD/Fsはより毒性が強い, 2, 3, 7, 8-塩素置換体で, しかも低塩素置換体の異性体が優先的に残留しており, 中でも毒性と蓄積性の側面から1, 2, 3, 7, 8-PeCDDと2, 3, 4, 7, 8-PeCDFが特に重要と考えられた。その他にも卵から比較的多種の低塩素置換体が検出されたが, 成鳥の餌である魚の組成を反映しているものと推測された。non-
ortho PCBsの残留順位はPCB 126>77=169>81であり, PCB 126が大きい割合を占めた。pCDD/Fsとnon-
ortho PCBsのうち, 特に5塩素置換体が鳥類に特異的に蓄積していることが判明した。
その他の有機塩素化合物のレベルについてはPCBs>DDTs>HCHsの順に残留しており, 一部の化合物については地域差が認められた。また, 卵の総重量, 湿重量などにおいて有意な地域差が見られたが, PCDD/Fs, non-
ortho PCBs, TEQsとの間に負の有意な関係は見られず, 今回検討した限りにおいては毒性影響など生理的な影響を及ぼす濃度レベルではないものと判断された。しかしながら, 総有機塩素化合物の濃度と卵の湿重量との間に比較的に有意な負の相関関係が観察されたことや卵重量と孵化率は密接な関係にあることから, 汚染物質による生体影響を全面的に否定することは困難である。
TEQに寄与する主な化合物はnon-
ortho PCBsであり, 特にPCB 126はその平均寄与割合が両繁殖地において76%および79%であった。さらに, このTEQをこれまで報告されている投与試験結果と比較すると, ウミネコの生殖に悪影響を及ぼすレベルではないと判断された。しかしながら, 低濃度の長期間の暴露による毒性影響については不明なことが多く, 今後も濃度推移のモニタリングと共に毒性影響の監視について継続的な調査が必要である。
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