環境化学
Online ISSN : 1882-5818
Print ISSN : 0917-2408
ISSN-L : 0917-2408
9 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 水戸部 英子, 茨木 剛, 田辺 顕子, 川田 邦明, 坂井 正昭, 貴船 育英
    1999 年 9 巻 2 号 p. 311-320
    発行日: 1999/06/18
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    農業用排水路として利用されている河川において河川水中の農薬を3年間モニタリングした。その結果, 57物質 (除草剤が27農薬, 殺菌剤が11農薬, 殺虫剤が14農薬, 分解生成物5物質) が検出され, 水田施用農薬が大半を占めていた。その経時変化は毎年ほぼ同様で, 除草剤は主に5月~9月, 殺菌・殺虫剤は6月~9月に検出され, 特に除草剤は5月~6月, 殺菌・殺虫剤は7月~8月に高濃度で検出された。これらの濃度変動は農薬の使用状況に対応していた。また, 空中散布による農薬の河川への流出率は0.1%~7.4%であった。
  • 李 炳大, 細見 正明
    1999 年 9 巻 2 号 p. 321-328
    発行日: 1999/06/18
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    アントラセン (ANT) は多環芳香族炭化水素 (PAH) 汚染土壌において, 最もよく見られる物質である。本報では, 高濃度ANT汚染土壌 (500mg ANT/kg soil) の新たな, かつ効率的なエタノール添加フェントン処理法を検討した。2種類の土壌 (堆積土と川砂) にANTを付着させて人工ANT汚染土壌を作成し, 汚染土壌1gに対してエタノールを0.75ml加えて24時間振盪した。そして, これをフェントン処理 (30%H2O2 0.3mlと0.5M Fe2+0.2ml添加) した結果, 98%以上の除去率を得た。しかし, エタノールを添加せず, 水もしくはドデシル硫酸ナトリウムを加えた場合, 除去率は10%未満にとどまった。また, 土壌に含まれる有機物 (セルロースとリグリン) がフェントン処理のANT除去率へ及ぼす影響を評価した結果, これらの有機物の含有量が多くなると, 除去率が低くなることを明らかにした。さらに, GC-MSによりANT分解生成物の同定を行った結果, 9, 10-アントラセンジオン (ANTDI) が主なANTのフェントン処理生成物であり, 分解生成物の約80%を占めることを確認した。ANTとANTDIの生分解性を評価すると, ANTDIの生分解性はANTよりはるかに優れており, 30日間で90%が好気的培養に分解されることを確認した。これらの結果から, 高濃度ANT汚染土壌の浄化プロセスとして, エタノール添加フェントン処理―生物処理プロセスが適用できることが示された。
  • 白石 不二雄, 佐々木 裕子, 白石 寛明
    1999 年 9 巻 2 号 p. 329-338
    発行日: 1999/06/18
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    海洋発光細菌の無発光変異株を用いた遺伝毒性試験のMutatoxTM試験 (発光細菌遺伝毒性試験の商標) 法について, 廃棄物埋立地浸出水の遺伝毒性を簡便にモニタリングするため改良を試みた。MutatoxTM試験法は特殊なキュベット (ガラス製試験管) を用いて1本ずつ操作するのに対して, 改良発光細菌遺伝毒性試験は96ウェルプレートを用いて多試料を同時に試験することができるため, 迅速で, 操作性にすぐれた簡便な遺伝毒性試験法である。本法を用いて埋立地浸出水10例についてS9の存在及び非存在下で遺伝毒性の評価を試みたところ, 全ての試料で遺伝毒性強度を検出した。また, 埋立地浸出水の遺伝毒性評価を試みたエームス試験やほ乳動物培養細胞によるSCE試験に比べて, 簡便で, 感度が高く, 廃棄物埋立地浸出水の遺伝毒性モニタリングに適していることが示唆された。
  • 李 炳大, 細見 正明
    1999 年 9 巻 2 号 p. 339-345
    発行日: 1999/06/18
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    本報では, 多環芳香族炭化水素 (PAH) 汚染土壌のエタノール洗浄―フェントン処理プロセスの適用可能性について検討した。
    土壌として赤玉を用いて, オランダもしくはカナダの土壌基準値より10倍高い濃度のフルオランテン (FLUT) , アントラセン (ANT) , ピレン (PYN) , ベンゾ (b) フルオランテン (BBFT) , ベンゾ (a) ピレン (BAP) 各々により汚染された土壌を作成した。これらの汚染土壌を基準値以下まで浄化するため, エタノール洗浄を最大4回まで繰り返した結果, ANTは1回のみで, FLUT, PYNは4回の洗浄でオランダの基準を満たし, またBBFTやBAPは4回でカナダの基準を満たした。さらに, 純エタノール (模擬洗浄液) 中のアセナフチレン, アセナフテン, ANT, PYN, ベンズ (a) アントラセン, ベンゾ (j) フルオランテン, BAP及びインデノ (1, 2, 3-cd) ピレンのフェントン処理結果, 73.3~99.0%という高い除去率が得られた。しかしながら, ナフタレン (NAP) , フルオレン (FLU) , FLUT, フェナントレン (PHE) , BBFTの場合, 分解率は9.6~27.6%程度にとどまった。BBFTを除けば, NAP, FLU, FLUT, PHEは易生分解性である。これらの結果から, BBFTを高濃度で含まないPAHs汚染土壌に対してエタノール洗浄―フェントン処理 (もしくは生物処理) を適用することにより, 汚染土壌の浄化が可能であることが示された。
  • 欧陽 通, 王 寧, 岩島 清, 栗山 清治, 古庄 義明
    1999 年 9 巻 2 号 p. 347-357
    発行日: 1999/06/18
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    イミノニ酢酸キレート膜を用い, 河川水および工場排水中の金属9元素を捕集濃縮する方法は, ICP-AESによる金属元素の分析に極めて有効であることが確認された。本法の50倍濃縮による検出限界はそれぞれ, Al0.024μg・l-1, Cd0.001μg・l-1, Co 0.003μg・l-1, Cu 0.002μg・l-1, Fe0.034μg・l-1, Mn0.009μg・l-1, Ni0.005μg・l-1, Pb0.0l1μg・l-1, Zn0.031μg・l-1, 定量下限値はそれぞれAl0.08μg・l-1, Cd0.004μg・l-1, Co0.008μg・l-1, Cu0.008μg・l-1, Fe0.11μg・l-1, Mn0.031μg・l-1, Ni0.018μg・l-1, Pb0.037μg・l-1, Zn0.10μg・l-1であった。本法を用いて容易に50~250倍の濃縮率が可能であり, 溶媒抽出法と比べて, 迅速, 簡便で, 多試料の同時処理に有効であることが明らかになった。実試料への9元素の添加回収率は良好であり, 幅広い濃度範囲において精度のよい分析ができた。
    また, 本法を用いて, 予備ろ過などの前処理方法と本法の組合せにより環境水中に溶存する金属元素の存在形態別の濃度分布状況を明らかにすることができた。なお, 本法を用いて有機物が溶存する環境水中の微量金属の全溶存態濃度を求める際には, 試料を予め適切に酸分解処理する必要があることがわかった。今後, さらに, 溶存する金属元素の形態別分析と有機物種の分析結果における係わりを明らかにすることによって, 環境水中の金属元素の挙動の解明に有用な情報を提供することが期待される。
  • 田頭 昭二, 奥園 高太郎, 村上 良子, 佐々木 義明
    1999 年 9 巻 2 号 p. 359-367
    発行日: 1999/06/18
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    界面活性剤抽出-吸光光度法を用いてppbレベルでのニッケル (II) の定量を行った。ニッケル (II) の検量線は, 0~7.78×10-7mol dm-3の範囲で直線となり, この直線の傾きから求めたニッケル (II) の見かけのモル吸光係数は5.01×105dm3 mol-1cm-1また検出感度は1.6ppbであった。ニッケル (II) をドデシルキサントゲン酸錯体としてSDS (ドデシル硫酸ナトリウム) 界面活性剤相に抽出後, 水相を除去した。残ったSDS相に塩酸を加えて錯体を分解した後, ニッケル (II) を2- (2-ベンゾチアゾリルアゾ) -5-ジメチルアミノ安息香酸 (BTAMB) を用いて吸光光度定量した。鉄はトリエタノールアミンを用いSDS抽出時にニッケルから分離した。またBTAMB発色時にタイロンを加えることで銅, マンガンなどをマスキングした。本法は海水のような高塩濃度サンプル溶液中の5~20ppbのニッケルを精度よく定量することができた。
  • 上野 大介, 高橋 真, 田辺 信介, 池田 久美子, 小山 次朗
    1999 年 9 巻 2 号 p. 369-378
    発行日: 1999/06/18
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    イガイ科二枚貝の有機塩素化合物蓄積特性を理解するため, 油壼湾と東京湾 (蒼鷹丸桟橋) において1998年7月~10月の間, 8週にわたってムラサキイガイとミドリイガイの移植実験を行った。移植後2週間でイガイ中のPCBsおよびDDTsの濃度は上昇し, その後自生のイガイやカキとほぼ同等の濃度レベルに達した。また, DDTsやCHLsの組成の変化も同様の傾向を示し, イガイは2週間程で海水中のPCBsやDDTs汚染を体内に反映することが明らかとなった。このことは, 海水汚染の短期変動を理解したい場合, イガイは適した指標生物であることを示している。ムラサキイガイとミドリイガイは類似のOCs蓄積特性を示したことから, 同一種でなくても海水汚染のモニタリングは可能であることが示された。
  • 酒井 伸一, 出口 晋吾, 浦野 真弥, 高月 紘, 惠 和子
    1999 年 9 巻 2 号 p. 379-390
    発行日: 1999/06/18
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    ダイオキシン対策を考え, その効果を把握し, ダイオキシン類の環境動態を検討するためには過去からのダイオキシン類の蓄積状態や発生源の変遷を知ることは重要である。本研究では, 琵琶湖および大阪湾で採取した底質コアを用いてダイオキシン類の歴史トレンド解析を行った。
    その結果, 琵琶底質では19世紀半ばの底質層にダイオキシン類の存在が認められ, その後, 20世紀後半に濃度が大きく増加している。そして, 1980年前後に観察されたピークから現在は若干の減少あるいは横這いの傾向が続いていることが示された。異性体や同族体の変化や主成分分析から底質ダイオキシン類の主要な汚染源は燃焼由来のPCDDs/DFsに加え, 除草剤CNPやPCP中に含まれていたPCDDs/DFsの影響があると考えられた。
  • 田中 俊逸, 澤田 章
    1999 年 9 巻 2 号 p. 391-398
    発行日: 1999/06/18
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    土壌浄化技術の一つであるエレクトロレメディエーションを用いて, 六価クロムを土壌中から除去する際の腐植物質及びその前駆体が及ぼす影響を検討した。腐植物質の及ぼす影響はエレクトロレメディエーションを施した後, 土壌中のクロムの分布より調査した。腐植物質が存在しないときはほとんどの六価クロムが電気泳動により正極槽に移動していた。しかし, 腐植物質が存在するときは負極槽への移動が見られるようになった。さらに, 腐植物質前駆体である没食子酸が存在するときは六価クロムは無毒な三価クロムの形態でほとんど負極槽に移動していた。従って, 六価クロムは没食子酸により還元され, 移動挙動を大きく変化させられると考えられる。
  • 小倉 光夫, 斎藤 好一
    1999 年 9 巻 2 号 p. 399-406
    発行日: 1999/06/18
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    電気加熱原子吸光法による底質中のすずの, 正確で高感度な分析方法を検討した。試料をフッ化水素酸/硝酸/過塩素酸または硝酸/塩酸/過塩素酸分解して試験溶液を調製し, 標準添加法ですずを定量した。パイロ化炭素炉を用い, マトリックス修飾剤 (Pd2+1, 000ppm) を添加することで, すずの感度および精度が大幅に向上した。これによって, すずの吸光度は灰化温度800~1200℃で一定となった。アルミニウム, 鉄, カルシウム, ナトリウムおよびカリウムは10%, マグネシウムは4.5% (底質中) まで影響しないことが判った。本法による8標準試料 (底質, 岩石および飛灰) 中のすず分析値 (フッ化水素酸/硝酸/過塩素酸分解法) は, 保証値等と良く一致した。繰り返し分析精度 (PACS-1およびMESS-2) は2.0~3.7%であった。一方, 硝酸/塩酸/過塩素酸分解法による分析値は, 前法と比べ22~83%低値で, 概ね50%程度であった。神奈川県内の河川, 湖沼および海底質 (12試料) 中のすず濃度は硝酸/塩酸/過塩素酸分解法では0.27~4.48μg・g-1 (平均1.79μg・g-1) , フッ化水素酸/硝酸/過塩素酸分解法0.45~7.25μg・g-1 (平均3.33μg・g-1) であった。本法の検出限界は, 0.1μg・g-1 (底質中) であった。
  • 茨木 剛, 水戸部 英子, 川田 邦明, 坂井 正昭
    1999 年 9 巻 2 号 p. 407-410
    発行日: 1999/06/18
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    水及び底質試料中のDMFの定量法として, 活性炭固相カートリッジを用いた方法を検討した。その結果, 水試料で88.5%から112%, 底質試料で94.5%と良好な回収率が得られた。検出限界は水試料で0.065μg/l, 底質試料で1.9μg/kgであった。また, 本法を環境試料に適用したところ, 環境水及び底質試料からDMFが検出され, 本分析法の有効性が確認された。
    (この研究は平成9年度環境庁環境保健部環境安全課の委託によって行ったものである。)
feedback
Top