本報では, 多環芳香族炭化水素 (PAH) 汚染土壌のエタノール洗浄―フェントン処理プロセスの適用可能性について検討した。
土壌として赤玉を用いて, オランダもしくはカナダの土壌基準値より10倍高い濃度のフルオランテン (FLUT) , アントラセン (ANT) , ピレン (PYN) , ベンゾ (
b) フルオランテン (BBFT) , ベンゾ (
a) ピレン (BAP) 各々により汚染された土壌を作成した。これらの汚染土壌を基準値以下まで浄化するため, エタノール洗浄を最大4回まで繰り返した結果, ANTは1回のみで, FLUT, PYNは4回の洗浄でオランダの基準を満たし, またBBFTやBAPは4回でカナダの基準を満たした。さらに, 純エタノール (模擬洗浄液) 中のアセナフチレン, アセナフテン, ANT, PYN, ベンズ (
a) アントラセン, ベンゾ (j) フルオランテン, BAP及びインデノ (1, 2, 3-cd) ピレンのフェントン処理結果, 73.3~99.0%という高い除去率が得られた。しかしながら, ナフタレン (NAP) , フルオレン (FLU) , FLUT, フェナントレン (PHE) , BBFTの場合, 分解率は9.6~27.6%程度にとどまった。BBFTを除けば, NAP, FLU, FLUT, PHEは易生分解性である。これらの結果から, BBFTを高濃度で含まないPAHs汚染土壌に対してエタノール洗浄―フェントン処理 (もしくは生物処理) を適用することにより, 汚染土壌の浄化が可能であることが示された。
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