日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌
Online ISSN : 2189-7085
Print ISSN : 1882-0123
10 巻, 2 号
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総  説
  • 相原 道子
    2016 年 10 巻 2 号 p. 81-87
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/30
    ジャーナル 認証あり
     薬剤がおもな原因となるSteven-Johnson症候群(SJS)と中毒性表皮壊死症(TEN)は,皮膚粘膜障害をきたす重篤な疾患である。SJSとTENの治療の第一選択はステロイドの大量投与である。しかし,ステロイドを投与しても効果が十分にみられない場合や基礎疾患によりステロイドの大量投与がむずかしい場合など,ステロイドとの併用療法が必要となる。その一つとして免疫グロブリン製剤大量静注療法(IVIG療法)があり,免疫調整作用により炎症反応をコントロールしようとするものである。SJS/TENの治療としてのIVIG療法の評価は,それぞれの施設間で投与量,投与時期,併用療法が大きく異なるため結果の比較がむずかしく,現在でも議論があるところである。しかし,近年ステロイドとの併用によるIVIGの早期投与の有用性が報告された。今後,血漿交換療法と並び治療の選択肢として使用が拡大し,予後が改善することが期待される。
  • 伊藤 明子, 増井 由紀子
    2016 年 10 巻 2 号 p. 88-96
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/30
    ジャーナル 認証あり
     ジャパニーズスタンダードアレルゲン(Japanese standard allergens:JSA)は,接触皮膚炎の診療に欠かせない診断ツールである。製品のパッチテストが偽陰性を呈し,JSAにより原因が判明する場合もある。可能な限りJSAを貼布することが重要である。2015年5月末に,わが国においてもready to useで貼布できるパッチテストパネル®(S)が発売された。JSAとは若干違いがあるが,JSAの多くのアレルゲンに対応し貼布が簡便となったことから,今後,皮膚科医がパッチテストを日常診療に積極的に取り入れることが期待される。
シンポジウム
  • 伊藤 泰介
    2016 年 10 巻 2 号 p. 97-105
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/30
    ジャーナル 認証あり
     脱毛症には先天性,男性型,円形,瘢痕性,休止期脱毛,抜毛症などがあるが,このうち免疫反応が関与する代表的な疾患は円形脱毛症である。瘢痕性の一部にも関連しているが,今回は円形脱毛症に着目して免疫からみた病態を解説する。円形脱毛症の病態の捉え方の一つとして,遺伝的背景と誘因が重なりIFN-γ産生性の細胞傷害性T細胞(CTL)を中心とした自己免疫反応があげられる。MICA,CXCL10を発現した病変部毛包にNKG2D陽性CTLが集簇し,メラニン蛋白など毛包由来の自己抗原に対して自己免疫反応を起こしているという捉え方である。さらに毛包のケラチノサイトからのIL-15がCTLを刺激する。爪にも症状が出ることから,爪と毛包に共通した抗原がターゲットになる可能性もある。こうした病態理解の進歩とともに,最近,JAK阻害薬の有効性が検討されている。今後の新たな治療展開が期待される。
症  例
  • 生野 麻美子, 平吹 明子
    2016 年 10 巻 2 号 p. 106-111
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/30
    ジャーナル 認証あり
     症例は62歳女性。11年間オフセット印刷工場の廃棄物回収に従事し,印刷に使われる「湿し水」中のエッチ液の原液に接触するうち,両前腕に瘙痒性浸潤性紅斑を生じた。パッチテストにて,エッチ液と,エッチ液を構成する2成分に陽性で,これら2成分には,3種類のイソチアゾリノン系防腐剤,すなわち5-chloro-2-methyl-4-isothiazolin-3-one(MCI),2-methyl-4-isothiazolin-3-one(MI),2-n-octyl-4-isothiazolin-3-one(OIT)が2剤ずつ含まれていた。また試薬で調製したMIとOIT,および類似イソチアゾリノン防腐剤の1,2-benzisothiazolin-3-one(BIT),Kathon CGにも陽性であった。エッチ液に新たにMCIが添加されて4ヵ月後に皮膚炎を生じたことから,MCIに感作され,MI,OIT,BITにも同時に反応するようになったと思われ,交差感作の可能性も考えられた。
  • 安池 理紗, 峠岡 理沙, 加藤 則人
    2016 年 10 巻 2 号 p. 112-118
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/30
    ジャーナル 認証あり
     45歳,女性。幼少期よりアトピー性皮膚炎に罹患している。顔面・四肢に湿疹が生じ,近医にてロコイド®軟膏,リドメックス®クリームを処方され外用した。翌日より紅斑・腫脹を認め,軽快しないため当科を紹介された。外用剤による接触皮膚炎を疑い,使用を中止しパッチテストを行ったところ,ロコイド®軟膏,リドメックス®クリームに陽性を認めた。成分パッチテストでは,いずれも主剤である酪酸ヒドロコルチゾンとプレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルに陽性を認めた。また他のステロイド外用剤のパッチテストでは,当科受診後に外用を始めたアルメタ®軟膏が陽性であり,今回の使用で感作された可能性や,ステロイド骨格の部分構造の類似により交叉反応を起こした可能性が考えられた。
  • 新井 円, 宗次 太吉, 高山 かおる, 横関 博雄
    2016 年 10 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/30
    ジャーナル 認証あり
     87歳女性。両側下腿に境界不明瞭な熱感,腫脹を伴う紅斑が出現した。炎症反応の上昇から,当初蜂窩織炎を疑い抗生剤を投与するも改善しなかった。両側性であることから,その他の脂肪織炎をきたす疾患を鑑別として考え皮膚生検したところ,隔壁性脂肪織炎で結節性紅斑と診断した。安静にて経過観察していたが紅斑の消褪は遷延し,炎症反応はさらに上昇した。同時に食思不振が顕著となったためCTを施行したところ,胃壁肥厚,胃周囲および大動脈周囲に多発リンパ節腫大を認め,胃癌が疑われた。上部消化管内視鏡検査にて周堤を伴う潰瘍があり,生検にてdiffuse large B-cell lymphomaと診断した。本症の経過から悪性リンパ腫に伴って生じた結節性紅斑と考えた。結節性紅斑をきたす基礎疾患は多岐にわたり,原因検索が十分に行われないことも多いが,難治性の場合や,特に高齢者の場合は悪性腫瘍のデルマドロームである可能性を考える必要がある。
  • 足立 厚子, 高井 佳恵, 干谷 奈穂
    2016 年 10 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/30
    ジャーナル 認証あり
     48歳女性。ケトプロフェン含有湿布剤で左足背の光接触皮膚炎を起こした翌年の夏に,前腕にサンスクリーンによる光接触皮膚炎を起こした。ケトプロフェン含有湿布剤の成分別光パッチテストにて,ケトプロフェンの光パッチテスト陽性とともに,ケトプロフェンの光感作を抑制させる目的で添加されていたUVA吸収剤アボベンゾンに,パッチテストおよび光パッチテスト陽性を示した。翌年夏に光接触皮膚炎を起こしたサンスクリーンにはアボベンゾンが含まれていたため,原因成分と考え,以降アボベンゾン含有サンスクリーンを禁止とした。ケトプロフェン含有湿布剤による光接触皮膚炎患者においては,原因成分がケトプロフェンによるものと決めつけずに,全成分の成分別パッチテストをすべきであること,それをもとに,その後のサンスクリーンをはじめとした紫外線吸収剤含有製品の選択を指導すべきであると考えた。
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