日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌
Online ISSN : 2189-7085
Print ISSN : 1882-0123
10 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総 説
  • -改訂ガイドラインに基づいて-
    佐伯 秀久
    2016 年 10 巻 3 号 p. 183-189
    発行日: 2016/07/30
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル 認証あり

     アトピー性皮膚炎の炎症に対してはすみやかに,かつ確実に鎮静させることが重要であり,そのために抗炎症外用薬であるステロイド外用薬とタクロリムス軟膏をいかに選択し組み合わせるかが治療の基本である。急性期の治療によって寛解導入した後は,ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を定期的に(週2回など)塗布し,寛解状態を維持するプロアクティブ療法が有効である。また,抗炎症外用薬による治療で皮膚炎が寛解した後に,保湿外用薬を継続して使用することも,寛解状態の維持に有効である。さらに,保湿外用薬によるバリア機能の改善は,アトピー性皮膚炎の発症予防にも有効であることが最近示された。

  • 加藤 則人
    2016 年 10 巻 3 号 p. 190-194
    発行日: 2016/07/30
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル 認証あり

     気道粘膜や消化管粘膜を介して感作が成立すると考えられていた食物アレルギーや気道アレルギーなど皮膚以外の臓器を反応の場とするアレルギー反応の感作経路として,近年は経皮感作が注目されている。経皮感作が成立するためには,皮膚のバリア機能低下,微小環境におけるサイトカイン,ランゲルハンス細胞の樹状突起の伸長など,いくつかの条件が満たされることが必要だが,アトピー性皮膚炎ではこれらの条件が揃いやすいと考えられる。反対に,アトピー性皮膚炎の湿疹病変を抗炎症外用薬を用いた治療等で良好な状態に保つことは,経皮感作を生じにくくさせアレルギーマーチを防ぐ可能性が期待される。

研 究
  • 田中 博之, 有山 智博, 石井 敏浩
    2016 年 10 巻 3 号 p. 195-201
    発行日: 2016/07/30
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル 認証あり

     日本における薬剤性光線過敏症の発症状況を把握する目的で,日本の有害事象自発報告データベース(JADER)を用いて薬剤性光線過敏症症例の調査を行った。

     JADERに登録された症例のうち,“光線過敏性反応”,“日光皮膚炎”,“光線性皮膚症”および“光線性口唇炎”が報告された症例を対象とし,患者背景,使用薬剤,発症日,転帰を解析した。

     総報告件数は293件(男性 : 160件,女性 : 133件)であり,年齢は60歳代が75件,70歳代が83件と高齢者が多かった。被疑薬はロサルタンカリウム・ヒドロクロロチアジドが72件と最も多く,次いでケトプロフェンが25件であった。発症月は4~8月に集中する傾向があった。多くは回復または軽快するが,なんらかの障害が残る症例も確認された。

     本調査より,薬剤性光線過敏症の発症状況が明らかとなった。これらの知見は薬剤性光線過敏症の予防や治療の一助となると考えられる。

  • 白田 阿美子, 渡邊 みどり, 猪又 直子, 松倉 節子, 蒲原 毅, 北村 薫, 中山 哲, 相原 道子
    2016 年 10 巻 3 号 p. 202-212
    発行日: 2016/07/30
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル 認証あり

     【目的】果物(キウイ,リンゴ,モモ),大豆のアレルギー診断におけるアレルゲンコンポーネント特異的IgE抗体測定の臨床的意義を検討した。【方法】果物(23~27名),大豆(13名)のアレルギー患者に対し,粗抽出抗原とコンポーネント特異的IgE抗体を測定し,陽性率ほかを比較した。【結果】特異的IgE抗体の陽性率は,粗抽出抗原ではキウイ,リンゴ,モモ,大豆で40%,74%,63%,8%に対し,コンポーネントでは52%(Act d 8),87%(Mal d 1),70%(Pru p 1),92%(Gly m 4)だった。特にMal d 1は,特異度,陽性的中率も90%以上と優れていた。【結論】粗抽出抗原に加え,コンポーネント特異的IgE抗体の測定を行うことで,正確な診断により近づいた。今回の検討は,対象集団が花粉感作後発症した患者が大多数であったが,今後対象を増やし,さらなる臨床的検討の集積が望まれる。

症 例
  • 小野 慧美, 種村 篤, 田中 文, 片山 一朗
    2016 年 10 巻 3 号 p. 213-218
    発行日: 2016/07/30
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル 認証あり

     69歳男性,尋常性白斑を発症し当科を受診した。外用治療で一部軽快傾向だったが,高血圧に対しバルサルタン・ヒドロクロロチアジド(hydrochlorothiazide,以下HCTZ)合剤を内服2年後から露光部の紅斑を自覚した。その後急速に脱色素斑および周囲に色素沈着が出現し始め,バルサルタン・HCTZ合剤による光線性白斑黒皮症(photoleukomelanoderma,以下,PLM)を疑った。入院のうえ,内服を中止し紫外線暴露の防止を励行したところ,紅斑,色素沈着はすみやかに消退した。調べえた限りでは,尋常性白斑とPLMを合併した報告例は認めなかった。自験例を供覧するとともに,これまでの薬剤性PLMの文献および病変部の組織変化に基づいた発症機序を考察する。

  • 白井 成鎬, 一角 直行, 小猿 恒志, 佐々木 祥人, 足立 厚子, 大西 尚
    2016 年 10 巻 3 号 p. 219-224
    発行日: 2016/07/30
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル 認証あり

     海外では全身麻酔使用薬剤によるアナフィラキシーの診断方法がまとめられ,疫学報告がなされている。今回2例について,この方法に従い検査を進め,原因薬を決定し代替薬を検索した。症例1 : 31歳女性。子宮筋腫摘出術においてレミフェンタニル塩酸塩,ロクロニウム化合物,プロポフォール投与直後より血圧低下,喘息出現。皮内テストにてプロポフォールが1,000倍希釈まで陽性のため原因薬と診断した。塩酸ケタミン,フェンタニルクエン酸塩は皮内テストas isまで陰性のため,代替薬として使用できると考えた。症例2 : 53歳女性。腹腔鏡下胆嚢摘出術においてプロポフォール,フェンタニルクエン酸塩,ロクロニウム化合物投与直後より上半身紅潮,血圧低下出現。ロクロニウム化合物as isのプリックテスト,皮内テスト100倍希釈陽性のため原因薬と診断。レミフェンタニル塩酸塩と塩化スキサメトニウムはプリックテスト,皮内テスト陰性で代替薬として使用できると考えた。

  • 篠田 純子, 松倉 節子, 久田 恭子, 守田 亜希子, 中村 和子, 山川 有子, 相原 道子, 蒲原 毅
    2016 年 10 巻 3 号 p. 225-231
    発行日: 2016/07/30
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル 認証あり

     柑橘類によるアレルギーの4例を経験した。すべて柑橘類単独でなく,他の果物野菜のoral allergy syndromeを伴っていた。感作花粉はさまざまで,4例中スギが3例,シラカンバ・ハンノキは2例,イネ科花粉は1例,ほかにブタクサ1例,ヨモギ1例であった。プリックテストでは,施行した3例全例においてBet v2が陽性であったことから,プロフィリンの関与が強く示唆された。柑橘類アレルギー患者においてプロフィリン抗体陽性の場合,海外ではイネ科花粉感作の報告が多くみられるが,自験例ではイネ科花粉感作は1例のみであり,シラカンバ・ハンノキ花粉やヨモギ,ブタクサとの交叉反応の可能性が考えられた。また,スギ花粉は3例で陽性であったことや過去の報告から,スギとの交叉反応の可能性も否定できないと考えられた。また,1例については,花粉症はみられたものの,アナフィラキシー症状がみられ重篤であったことから,LTPの関与も否定できないと考えられた。

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