日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌
Online ISSN : 2189-7085
Print ISSN : 1882-0123
11 巻, 3 号
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総説
  • 川原 繁
    2017 年 11 巻 3 号 p. 203-209
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/08/30
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     外用療法は軽度から中等度の尋常性乾癬に対する基本的な治療法であり, ステロイドとビタミンD3外用剤が広く用いられてきた。ステロイド外用剤は速効性を示すが, 長期間の連用により皮膚萎縮, 毛細血管拡張, 毛包炎などの副作用を示す。また, ステロイド外用剤を大量に用いた場合, 中断により乾癬が膿疱化する場合もある。ビタミンD3外用剤は, ストロングクラスのステロイド外用剤と同等の効果を示し, 皮膚刺激感などの副作用は少ない。ビタミンD3外用剤の単独治療ではベリーストロング以上のステロイド外用剤に比べて効果が劣るため, 両者が併用されてきた。近年, ビタミンD3とステロイドの新しい配合剤が発売された。その臨床試験はビタミンD3とステロイドの単独使用よりも配合剤が有効であり, ステロイド外用剤の連用と比べて副反応が減少することを示した。ビタミンD3とステロイドの配合剤は軽度から中等度の乾癬に対する第一選択として推奨される。

  • 高橋 英俊
    2017 年 11 巻 3 号 p. 210-214
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル 認証あり

     乾癬患者において, 尋常性乾癬は90%以上を占める主たる乾癬における疾患で, 有病率は日本では0.1%前後と推定されている。各種の乾癬治療が現在行われているが, その基本は外用療法である。しかし, 外用療法はその治療の煩雑さ, コンプライアンスが悪いことから外用アドヒアランスは必ずしもよくない。そのため, 外用がしっかりと行われないことから皮疹が悪化し, さらに患者アドヒアランスが低下することが多い。しかし, 外用治療がうまくいかないような症例においても, 患者および治療特性を勘案して, 外用療法を1日1回の簡便な方法に変更または, 外用療法と紫外線療法あるいは内服療法と併用などしてすみやかに皮疹を寛解導入することで, 患者アドヒアランスを上げ乾癬治療を成功させる重要なポイントであることを報告する。

  • 加藤 則人
    2017 年 11 巻 3 号 p. 215-219
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/08/30
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     日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版のポイントのなかでも, 外用療法を中心に概説した。本疾患の治療は薬物療法, 生理学的異常に対する外用療法・スキンケア, 悪化因子の検索と除去の3つが柱となる。治療開始に際しては, 治療の目標とゴールを患者に伝えることが大切である。また, 皮膚の炎症によって湿疹の悪化因子が増加するため, 抗炎症外用薬を中心とした薬物療法で制御することが重要である。抗炎症外用薬を用いたプロアクティブ療法, ステロイド外用薬の眼周囲への使用による眼合併症, ステロイド外用薬の妊婦や授乳婦への影響, などについても概説した。医師は, 診療ガイドラインの限界も知ったうえでこれを活用して, 患者と協働して臨床現場での最終的な判断を行う必要がある。

  • 常深 祐一郎
    2017 年 11 巻 3 号 p. 220-226
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル 認証あり

     アトピー性皮膚炎の重症度や病勢の参考となる検査として, 従来末梢血好酸球数や血清LDH値, 血清総IgE値などが使用されてきた。最近導入されたのがケモカインTARC (thymus and activation-regulated chemokine) である。TARCはアトピー性皮膚炎の病態に重要な役割を果たしている。血清TARC値はアトピー性皮膚炎では種々の皮膚疾患と比較して高値を示し, 皮疹の重症度とともに変化し, 病勢を反映する。適切な治療により皮疹が改善すると, それに伴って血清TARC値も低下するが, 比較的すみやかに数値が大きく変化するのでわかりやすく, 従来のマーカーよりもモニタリングに適する。治療効果を患者に明確な数字の形でフィードバックすることもできて, さらなる治療意欲向上につなげることもできる。保険適用もあり, 毎月の測定が可能である。新しい測定方法の開発で短時間に結果が得られるようになり, 診察前検査も可能となった。

研究
  • ‐ 接触皮膚炎難治例と過去15症例について ‐
    鈴木 麻生, 松倉 節子, 佐藤 麻起, 中村 和子, 相原 道子, 蒲原 毅
    2017 年 11 巻 3 号 p. 227-233
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/08/30
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     イソチアゾリノン系防腐剤であるKathon CGは, ヘアケア製品や化粧品, ウェットティッシュなどに幅広く使用され, 近年接触皮膚炎の増加が問題となっている。今回, Kathon CG含有ヘアケア製品による接触皮膚炎が疑われた女性例を経験した。初診5年前より頭皮, 顔面, 上腕, 背部に紅斑丘疹の出没を繰り返し, パッチテストでKathon CGに陽性を示した。使用していたヘアケア製品と洗顔料はパッチテスト陰性であったが, いずれもKathon CG含有製品であった。これらの製品の使用中止後, 皮膚症状はいったん軽快したが, その後もときに顔面頭部や背部に紅斑, 紅色丘疹の出現をみたことから, 日常使用しているなんらかの製品にKathon CGが含まれている可能性が考えられた。本例を含むわれわれが過去に経験したKathon CGのパッチテスト陽性例15例の検討では, 14例が女性で, 皮疹は顔面, 手に多く, 患者背景としてアトピー性皮膚炎が6例と, 比較的多くみられた。

  • 鈴木 加余子, 松永 佳世子, 矢上 晶子, 足立 厚子, 池澤 優子, 伊藤 明子, 乾 重樹, 上津 直子, 海老原 全, 大迫 順子, ...
    2017 年 11 巻 3 号 p. 234-247
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/08/30
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     背景 : 1994年からジャパニーズスタンダードアレルゲン (JSA) 陽性率を報告している。目的 : JSA陽性率の検討。対象 : 2013年度2,209例 (男性533例, 女性1,676例) , 2014年度1,929例 (男性424例, 女性1,505例) 。結果 : 陽性率 (2013年度, 2014年度) の高いアレルゲンは, 硫酸ニッケル : 15.1%, 16.7%, ウルシオール : 10.5%, 12.5%, 塩化コバルト : 8.8%, 8.4%, パラフェニレンジアミン : 7.2%, 7.7%, 硫酸フラジオマイシン : 7.7%, 7.6%, 金チオ硫酸ナトリウム : 5.2%, 5.7%, 香料ミックス : 6.0%, 5.6%であった。2014年度性別陽性率で, 男性が有意に高いアレルゲンはウルシオール, 重クロム酸カリウム, ラノリンアルコール, エポキシ樹脂, プリミンで, 女性が有意に高いアレルゲンは硫酸ニッケル, 金チオ硫酸ナトリウム, 硫酸フラジオマイシン, 香料ミックスであった。

症例
  • 藤盛 裕梨, 土井 知江, 亀井 理沙, 横見 明典
    2017 年 11 巻 3 号 p. 248-253
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル 認証あり

     50歳, 女性。初診の1ヵ月前に脳動脈瘤, クモ膜下出血にて当院脳神経外科に緊急入院となり, 穿頭ドレナージ, 内頸動脈トラッピング術を施行された。初診の8日前よりランソプラゾールが経鼻胃管より投与され, 初診の3日前から体幹に紅斑が出現した。薬疹が疑われ, 薬剤が中止されたが, 全身に紅斑が拡大し, びらん・表皮剝離も認めたため当科紹介となった。初診時, 剝離面積は体表面積の36%に値した。腹部紅斑部位よりの生検にて, 表皮角化細胞の個細胞壊死, 基底層の液状変性を認め, 中毒性表皮壊死症と診断した。自験例では肺炎の合併が否定できなかったため, ヒト免疫グロブリン製剤静注療法を20g/day×5日間施行すると, 投与開始4日目より皮疹の拡大停止を認めた。後療法としてステロイド投与を検討していたが不要であり, ヒト免疫グロブリン製剤静注療法のみで治癒した。

  • 岸部 麻里, 菅野 恭子, 山本 明美
    2017 年 11 巻 3 号 p. 254-258
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル 認証あり

     87歳男性。気管支喘息の悪化があり, テオフィリン徐放錠が処方された。その後, 体幹に多形紅斑様皮疹が出現し, 徐々に浸潤を触れる紫紅色局面が癒合散在し, 一部環状局面を呈した。テオフィリン徐放錠によるinterstitial granulomatous drug reaction (IGDR) を疑い内服を中止したところ, 皮疹は消退した。病理組織学的に, 表皮真皮境界部に液状変性があり, 好酸球浸潤を伴っていた。詳細な薬剤テストは施行できなかったものの, テオフィリン徐放錠による苔癬型薬疹と診断した。テオフィリンによる薬疹の報告は少なく, 特に苔癬型薬疹をきたした例は, 自験例のほかは他剤との併用で生じた1例のみである。テオフィリンによる薬疹では, 特定の薬疹型を呈さず, 原因薬と疑われずに長期経過する可能性がある。また頻度は少ないものの, drug combinationで薬疹を生じる点も注意すべきと考えた。

  • 飯島 茂子, 津田 毅彦, 森山 達哉, 荻野 龍平, 横大路 智治, 松尾 裕彰
    2017 年 11 巻 3 号 p. 259-265
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/08/30
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     17歳, 男子高校生。冷凍スパゲッティによる小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの1例を報告した。アスピリン内服後にスパゲッティを摂取し運動負荷試験を行ったところ, 15分後にアナフィラキシー症状が出現したため, 確定診断とした。なお, パン食摂取後の自転車通学では症状は出なかった。小麦粉 (鳥居) のプリックテストは陽性, パン小麦 (薄力粉・強力粉) およびデュラム小麦粉を用いたプリックプリックテストは強陽性を示した。特異的IgE (ImmunoCAP®) は小麦陽性, グルテン・ω-5グリアジン・高分子量グルテニン陰性であった。パン小麦粉・デュラム小麦粉を用いたイムノブロット解析を行ったところ, デュラム小麦粉に40kDa付近, 50kDa付近, 60kDa付近, 28~30kDa付近のバンドを認めた。さらに, 小麦蛋白質を4画分に分けた解析では, おもに水溶性アルブミン画分に60kDa付近のバンドがみられ, これが自験例での原因抗原である可能性を考えた。

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