加藤與五郎は明治38年,米国留学より帰り直に東京高等工業学校教授となり,昭和4年大学昇格後も引続き勤務し,昭和17年退官するまで実に38年間の勤続となった。
此期間に我国が欧米に比較して立遅れていた電気化学関係の諸企業の創立,拡大,充実に貢献したことは数限りなく,又財団法人電気化学協会を創設して初代会長となり,更に300余件の発明を完成している。そうした行動の人ではあるが,然し乍ら彼は在職中も退官後もどんな企業にも没入したことはなかった。終始一貫教育者としての生涯を過した.彼にとって人材を養成することは大企業を興すこと以上に興味があるらしかった。それで彼の業蹟を省る前に彼の教育思想を明らかにすることが必要であろうと思われる。
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