症例は,17歳男性.7歳時に右肘周囲骨折に対し保存的治療を受けた.当院初診の数週間前より母指のしびれと指・手関節伸展筋力の低下が出現した.初診時単純X像で橈骨頭の肥大変形と前方脱臼を認めた.Bado type 1の陳旧性Monteggia骨折に伴う遅発性橈骨神経障害と診断し,橈骨神経剥離術および尺骨矯正骨切り術を行った.術後9ヵ月現在,術前の症状は消失し橈骨頭の再脱臼なく良好に経過している.
脊髄終糸症候群(Tight Film Terminale:以下TFT)は若年に多く,比較的まれな疾患である.若年発症の腰椎椎間板ヘルニアでもTFTと似た症状が出現することがあり,正確な身体所見を取ることで初めて念頭におくことができる.TFTはMRIでも所見の乏しい疾患であり,たとえ画像で腰椎椎間板ヘルニアを認めても,正確な身体所見を取らなければ誤診を招く疾患であり,非常に注意を要する疾患であった.