【背景】当院における整形外科手術患者を精神科疾患合併患者と，非合併患者に分けて比較検討した．

【方法】2015年4月から2017年4月までの国府台病院における整形外科手術患者44例50手術例の精神科疾患合併例と非合併例の治療結果を調査した．

【結果】44患者のうち，19例が精神疾患を合併していた．平均年齢は精神科疾患合併例が69.0±18歳，非合併例は78.0±13歳で有意差はなかった．精神疾患合併例に入院後合併症にとして誤嚥性肺炎3例，深部静脈血栓症1例，無顆粒球症1例があった．精神科疾患非合併例では，誤嚥性肺炎1例を認めた．

【結論】当方の知見の限り，精神疾患を合併する整形外科手術症例における深部静脈血栓症の発生率の報告はない．精神科疾患患者における入院中の深部静脈血栓症の合併率は0.91％と言われているが，本研究では0.8％であり有意差はなかった．

症例は25歳，右利きの女性，職業は女子サッカー選手．Herbert分類stage IIIのPreiser病の診断でZaidembergらによる1,2 ICSRAを血管柄とする骨移植術を施行した．術後8ヵ月のCTで舟状骨近位の分節化の骨癒合を認め，術後1年3ヵ月のMRI像にて舟状骨の信号変化の回復を認めた．Preiser病はまれな疾患であるが，治療としては血管柄付き骨移植が主流となりつつある．自験例においても壊死部の完全な回復を認めており，Zaidembergらによる1,2 ICSRAを血管柄とする骨移植は有用であった．

手指屈筋腱滑走障害の臨床的特徴について報告した．この病態には，A：手根管狭窄由来，B：手指滑車部狭窄由来，C：AとBの合併の3つが含まれる．屈筋腱腱鞘滑膜炎が存在する場合，滑膜肥厚が比較的限局する場合はA，Bの原因となり，手全体に及ぶ場合はCの原因となる．手根管症候群，関節リウマチ，屈筋腱腱鞘滑膜炎の疾患群と本病態は互いにoverlapする．このoverlap関係の理解が手の障害の臨床診断の際に有用である．

砂時計腫の約7割は神経鞘腫で，徐々に増大することが多い．13年の経過で縮小した砂時計腫を報告する．症例は57歳女性で，内科疾患の精査で胸部異常影を指摘された．MRIで脊柱管内から椎間孔，胸腔内に広がる砂時計腫が見られた．無症候性のため経過観察を行った．初診7年後のMRIで腫瘍内部に出血を示唆する所見が見られた後に縮小し，初診13年後に終診とした．腫瘍内出血が見られる場合は，自然縮小の可能性がある．

寛骨臼骨折に対し待機期間を2～3週設けた亜急性期の一期的THAを経験した．症例は9例（男性6例，女性3例），年齢は平均62.6歳，6例で骨盤不連続性があった．インプラントは京セラ社KTプレートS^®＋セメントレスステムを使用した．術後は全例で術翌日から全荷重を許可できた．骨盤不連続性がある寛骨臼骨折でORIFでは関節面の整合を得ることが難しいと予想される症例や合併症などで手術を待機する症例において亜急性期THAは有効である．

果部骨折を伴わない足関節脱臼はまれである．

閉鎖性脱臼に関して明確な治療方針が決まってないのが現状だが，保存加療では足関節の不安定性が残存するため，外側靱帯修復術を推奨する報告が散見される．

今回，骨折を伴わない閉鎖性・開放性脱臼の2例に対して，両者に関節包・外側靱帯修復術を施行し良好な成績を得たので報告する．

症例は9歳男児．外傷の既往なく，背部の疼痛と腫瘤を自覚した．疼痛が増悪したため前医を受診し，傍脊柱筋膿瘍が疑われた．抗菌薬治療で症状が改善せず，軟部腫瘍が疑われ当院に転院となった．¹⁸F-FDG-PET/CTで腫瘤に一致した集積があり，悪性腫瘍も鑑別に挙がったが，腫瘤辺縁の石灰化を認めた．切開生検を行い，骨化性筋炎と診断した．生検後5ヵ月で疼痛は消失し，画像検査でも腫瘤は縮小し，経過は良好である．

早期胃癌の術後15年で局所再発を認めずに，背部痛および下肢不全麻痺を呈し，手術を施行した転移性脊椎腫瘍の1例を経験した．術後，麻痺は改善し，脊椎転移巣はコントロールされ局所および臓器転移を認めなかった．胃癌は，日本における罹患者数が最も多い癌腫である．また内視鏡検査により早期に発見されることが多く，がんサバイバーの多い癌腫だ．がんサバイバーに対しては，常に転移の可能性を念頭におき，診療に当たるべきだと考えられた．

第6から第8胸椎および肋骨に直接浸潤した右肺下葉の非小細胞肺癌に対して，術前CT画像を用いたナビゲーションシステムを利用し，比較的安全に肺・椎体，肋骨浸潤部の腫瘍全体を一塊に切除し，短期間ではあるが経過が良好な症例を経験した．脊椎周囲の直接浸潤を伴う非小細胞肺癌に対して，手技的に可能であれば根治的手術を考慮すべきであると考えられた．

長腓骨筋腱裂離骨折は，報告が少ないまれな骨折である．今回，第1中足骨基部長腓骨筋腱裂離骨折に対して，観血的整復術を施行し，良好な経過を経た症例を経験した．CCSとMini ThightRope^®（Arthrex社，USA）を使用し骨片を固定した．治療方法に関しては，確立したものはなく，転位の大きさや，骨片の大きさ，体重などを検討して決定するべきである．

肘外側部痛を呈した長橈側手根伸筋内神経鞘腫の1例を報告する．症例は30歳の男性で，3年以上持続する左肘外側部痛に対し，他院で上腕骨外側上顆炎の診断で保存療法が行われたが，症状の改善が得られず当院を受診した．MRI所見で筋肉内腫瘍を認め腫瘍摘出術を施行した．腫瘍は被膜を有する境界明瞭な充実性腫瘍であり，病理診断は神経鞘腫であった．術後に疼痛は消失した．肘外側部痛の鑑別疾患として腫瘍も考慮すべきである．

鋭的な頚神経損傷に対して神経縫合術により良好な上肢機能の回復が得られた1例を報告する．症例は56歳の男性．ナイフによる頚部刺創を受傷した．初診時の徒手筋力検査では左三角筋［0］，左上腕二頭筋［3］であった．左C4，5神経の完全切断に対して同日神経縫合術が行われた．術後3年の時点で，左三角筋［4］，左上腕二頭筋［5］と筋力回復を認めた．早期の神経縫合術により良好な神経機能の回復が得られたと考えられた．

類骨骨腫は良性腫瘍の一種で，主には長幹骨の骨幹部発生が多いが，椎体では椎間関節や椎弓根など後方要素に多く発生することが知られている．

　治療としてはnidusの完全摘出が必要だが骨切除量を最小限とするため，今回われわれはナビゲーションシステムを用いた腫瘍摘出術を行い良好な成績を収めることができたのでこれを報告する．

悪性腫瘍との鑑別に難渋した慢性拡張性血腫の1例を経験したので報告する．症例は51歳男性．主訴は右鼠径部痛で大腿骨小転子剥離骨折と周囲に緩除に拡大する腫瘤を認めた．成人の大腿骨小転子剥離骨折はきわめてまれであり，悪性腫瘍を背景とした病的骨折を疑い画像精査したが鑑別困難であり，病理結果より慢性拡張性血腫と判断した．悪性腫瘍と慢性拡張性血腫との鑑別は困難であるため，病歴や画像所見，病理所見を総合的に判断する必要がある．