初回前十字靱帯再建術を受けた233例を後ろ向きに調査し,半月板損傷・軟骨損傷の合併率とそのリスク因子を解析し,至適な再建時期を検討した.半月板損傷は114/233例(48.9%),軟骨損傷は12/233例(5.2%)に見られ,靱帯単独損傷例に比べ受傷から再建術までの期間が有意に長かった.二次的半月板損傷・軟骨損傷合併予防の観点から,受傷後4.5ヵ月以内に再建術を施行することが望ましい.
脊椎悪性腫瘍の画像診断における単純X線の意義を評価するため,画像診断時点での単純X線像における椎弓根消失,片側椎体圧潰,骨陰影変化の有無を調査した.単純X線での有所見率は,臨床所見とMRIを基に専門医が遡及的に読影した場合には63%であったのに対して,非専門医が主訴のみの情報で盲検的に読影した場合には44%であった.参照値と比較し,ガス像や軟部陰影および変形性変化と誤認する例が多かった.
PIP関節内骨折に対する経皮的鋼線固定併用DDA2創外固定術10例の術後関節可動域(ROM)の影響因子を検討した.手術待機期間は平均8.3日,最終経過観察時のPIP関節平均ROMは伸展-11.0°,屈曲89.5°,DIP関節は-6.0°,60.5°,PIP関節・DIP関節ROMの総和は133°であり,関節面gap・step-offはおのおの平均0.8 mm,0.7 mmであった.DIP・PIP関節ROM間には相関があり,術後ROMは手術待機期間・術後伸展不足角に影響される一方で,関節面整復の残存は短期的には許容された.
担癌患者の治療のためストーマ増設を要することがあるが,それらの患者に装具治療が望まれる腰椎疾患が合併したときの対応の報告や考察は少ない.腰椎軟性装具のストーマと接触する部位に穴を作成することにより歩行能力は改善し,ストーマ合併症なく経過した.がんロコモの対策の一つとして検討すべき対応策の一つと考えられた.
Bisphosphonate(以下,BP)の長期使用は非定型骨折のリスク増加をもたらすことが示唆されている.BP療法による非定型骨折は大腿骨幹部または転子下領域に発生する報告が多く,その他の部位での報告は少ない.本症例はADL自立している85歳女性であり,3年前よりBP療法されており,軽微な外傷,皮質骨の肥厚を伴う非粉砕,完全横骨折であり,大腿骨の大基準をすべて満たしたことから尺骨非定型骨折と診断した.
症例は55歳女性で主訴は恥骨部痛であった.X線像で恥骨結合部の骨硬化像と関節面の不整が見られた.血液検査で炎症所見がなく,非化膿性恥骨結合炎と診断した.保存療法で症状が改善せず,恥骨結合固定術を行い軽快した.一般に恥骨結合炎は骨盤部の手術後やスポーツが原因で生じると報告されているが,本症例の原因は不明であった.本症例は明らかな原因が不明な,比較的珍しい非化膿性恥骨結合炎と考えられた.
本研究の目的は手術待機による大腿骨近位部骨折の特徴の分析である.2016年6月から2019年5月に当院で手術加療した253例を対象とし,手術待機期間が3日以内と4日以上の2群間で比較した.結果として,手術待機症例は術後7病日のHb値が有意に低く,周術期には心疾患の発生があった.大腿骨近位部骨折では可及的早期に手術を行い,待機例では輸血を要する可能性があると推察された.
ハローベスト(halo-vest:HV)は頚部の強固な外固定として有用であるが,使用時には合併症が問題となり,対策については統一化されていない.われわれがHVを使用した36例における合併症について調査し,対策について検討した.本研究では36例中23例(64%)で合併症を認めた.HV使用時には合併症に注意する必要があり,患者の状態を把握し,他職種と協力することが大切であると考えられた.
67歳女性の右母指痛.大菱形骨切除およびsuture button suspensionplastyの術後2年で,母指痛が再燃した.小菱形骨舟状骨間関節狭小化に対し,同部の石灰沈着物(CPPD結晶)を除去し,小菱形骨の近位切除間隙にアンカーを用いて腱球を引き込んだhybrid suspensionplastyを行った.術後2年で,画像上小菱形骨舟状骨間腔は保たれ,疼痛も消失した.
間欠性跛行を呈した膝窩嚢腫の1例を経験した.嚢腫は膝窩動脈を圧迫しており動脈外膜嚢腫と診断した超音波ガイド下に穿刺吸引を施行したところ,嚢腫は縮小し,症状は消失した.治療後1年以上再発なく経過している.
小児の化膿性肘関節炎は比較的まれな疾患である.今回,市中感染型MRSAによる化膿性肘関節炎の1例を経験した.洗浄・デブリードマンとバンコマイシンの投与を行い後遺症なく感染を鎮静化した.小児化膿性関節炎は診断・治療が遅れると重篤な後遺症を残す可能性が高く,緊急性の高い病態として常に念頭におく必要がある.初期対応としては早期手術および黄色ブドウ球菌,特にMRSAを想定した抗生剤選択が重要と考える.
今回,鏡視下手根管開放術(以下,ECTR)を契機にGuyon管症候群を発症した1例を経験した.ECTRは低侵襲な手術ではあるが,まれに本症例のような合併症が術後に発症することがある.保存療法によりその症状は改善する余地があるが,3ヵ月程度保存療法を行ったにもかかわらず,改善しない場合は手術療法も検討すべきである.
人工膝関節全置換術後に急激な膝関節の腫脹,疼痛が生じ,反復性関節内血腫と診断,治療した3症例を経験した.血管造影検査で診断が確定し,経カテーテル的動脈塞栓術を施行し症状の改善を得た.人工膝関節全置換術後の関節内血腫に対しては,血管造影検査のうえ,経カテーテル的動脈塞栓術が有効な治療の選択肢となる可能性がある.
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