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─セメントステムとセメントレスステムを使用した比較検討─
梅林 ありな, 植松 卓哉, 斎藤 大暉, 榎 俊孝, 坂本 裕輔, 眞島 任史
2025 年 37 巻 1 号 p.
1-4
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
大腿骨頚部骨折に対する人工骨頭置換術にはセメントステムかセメントレスステムを使用する.専攻医が執刀する機会の多いこの術式において,セメントステムには挑戦しづらい傾向がある.当院で行った専攻医が執刀した人工骨頭置換術の術後成績をセメントステム群とセメントレスステム群で比較検討した.どの項目でも有意差は認めず,専攻医であってもセメントステムに挑戦できることが示された.
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三上 諒樹, 結城 一声, 大石 隆太, 宇野 智洋, 鈴木 朱美, 高木 理彰
2025 年 37 巻 1 号 p.
5-10
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
8歳女児.両上肢挙上困難,周囲との容姿の差異を主訴に受診.両側Sprengel変形と診断し,片側ずつ手術を施行した.短期的な術後経過は良好で,可動域は改善し,結髪結帯動作が可能となった.Sprengel変形の治療は手術に限られ,2歳以降は若年であればあるほど成績が良いとされている.早期診断・治療が必要であるが,両側例では外見の異常に気づかれにくく,治療介入が遅れる可能性があるため注意を要する.
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明妻 裕孝, 川崎 恵吉, 酒井 健, 岡野 市郎, 荻原 陽, 工藤 理史
2025 年 37 巻 1 号 p.
11-14
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
内固定が困難であった関節リウマチ肘に合併した上腕骨遠位端骨折に対して一期的にTEAを施行した6肘を経験したため,その治療成績について検討した.最終診察時の肘関節平均可動域は,屈曲が121.7°,伸展が-29.1°であり,Mayo Elbow Performance scoreの平均は93.3 pointと良好な結果であった.術後合併症は表層感染を1例に,尺骨神経症状を1例に認めた.短期成績はいずれも良好であった.
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筒井 完明, 天野 貴司, 西川 洋生, 荒木 渓, ウエストファル結衣 , 工藤 理史
2025 年 37 巻 1 号 p.
15-19
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
症例は54歳女性.肘頭骨折に対し,前医で手術を施行するも再転位し疼痛と可動域制限が強く当院紹介となった.2種類の縫合糸による固定を組み合わせたdual suture fixationを用いて内固定を行った.術後9ヵ月で骨癒合が得られており,疼痛はなく,可動域の改善も得られ良好な結果を得た.本法は,再転位やインプラントの突出による課題を解決し,安定した骨癒合が得られる可能性が示唆される.
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筒井 完明, 天野 貴司, 西川 洋生, 諸星 明湖, 向坂 瑛志朗, 工藤 理史
2025 年 37 巻 1 号 p.
20-23
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
高齢者の肘頭骨折治療後の近位骨片脱転を予防するため,インプラントでの内固定にtension band suture fixationを併用した治療の有効性を検討した.70歳以上の女性4例を対象とした.全例で骨癒合が得られ,平均可動域は屈曲138°,伸展-6°,Mayo Elbow Performance Scoreは平均96.2点であった.合併症は認めず,本法は安定した治療成績であった.
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岸 達也, 加藤 裕幸, 野村 慧, 檜山 明彦, 酒井 大輔, 渡辺 雅彦
2025 年 37 巻 1 号 p.
24-27
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
びまん性特発性骨増殖症(以下DISH)は,軽微な外力で椎体骨折を起こしやすい.今回,仰臥位手術で椎体骨折が発生した後弯位のDISH症例を経験した.第9胸椎のDISH骨折に対して後方固定術を施行し,術後は愛護的な体位変換と側臥位での管理を指示したにもかかわらず第3腰椎のDISH骨折も生じた.手術や病棟管理の際は,枕等で後弯下脊椎を支持する工夫が必要であると同時に,その危険性について周知する必要である.
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太田 聖也, 若本 諒, 千葉 紀之, 田中 直, 大石 裕誉, 沼沢 拓也
2025 年 37 巻 1 号 p.
28-32
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
症例は37歳,女性.誘因なく右大腿部痛を自覚し当科紹介となった.単純X線像では右大腿骨骨幹部内側に偽骨折の所見を認めた.血液検査では低リン血症を認め,骨軟化症疑いとして内分泌内科に精査を依頼したところ,FGF23上昇およびPHEX遺伝子の変異を認めX連鎖性低リン血症性骨軟化症の診断となった.ブロスマブ投与が行われ,大腿痛・低リン血症および偽骨折の改善傾向を認めている.
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高野 聖志, 中山 政憲, 中村 宗一郎, 船尾 陽生, 八木 満
2025 年 37 巻 1 号 p.
33-38
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
近年,免疫チェックポイント阻害薬の使用頻度が高まっている.有害事象としてさまざまな免疫関連有害事象を生じることがあり,その一つに関節炎がある.治療に難渋した免疫関連有害事象関節炎の2例を経験したので報告する.免疫関連有害事象関節炎の頻度は5%前後とされ決して多くはないが,免疫チェックポイント阻害薬の普及により整形外科外来で遭遇する数は増加傾向にあり,見逃すことなく適切な治療を行うことが求められる.
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藤本 華奈, 金子 晴香, 田中 健太, 鎌田 浩史, 前澤 克彦, 石島 旨章
2025 年 37 巻 1 号 p.
39-44
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
2022年と2023年の箱根駅伝予選会で医務室に訪れた選手の外傷と疾病について調査した.2022年と2023年の医務室利用はそれぞれ19件(0.037件/人),17件(0.026件/人)で,病院受診はそれぞれ3件,1件であった.熱中症・脱水症,筋痙攣が多かった.湿球黒球温度の高い2022年で疾病の発生が多い傾向にあり,気候に合わせた事前冷却等を促すことが重要である.給水体制も検討を要する.
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陸 伊洋, 大原 建, 土屋 流人
2025 年 37 巻 1 号 p.
45-48
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
77歳女性.頚髄症に対し頚椎椎弓形成術を施行した.術後22日に創部より排膿があり,術後感染と診断した.洗浄デブリードマンを行ったが感染は鎮静化せず,創部が離開し皮膚欠損が生じた.術後37日にCLAPと局所皮弁を行った.感染は鎮静化したがチューブ抜去後に皮下血腫が生じ,血腫除去とCLAPを行い治癒した.頚椎術後感染と皮膚欠損に対しCLAPと局所皮弁が有用だったが,安全性は今後も検討が必要だと考える.
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野々口 マリア, 及川 伸也, 佐々 航, 佐々木 悠相, 菊地 修平, 土井田 稔
2025 年 37 巻 1 号 p.
49-53
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
大腿骨頚部骨折のPauwels分類III型は剪断力により術後初期の骨折部転位進行,経過中の骨頭壊死,late segmental collapseなど合併症による再手術率の高さが問題である.今回われわれは4例の大腿骨頚部骨折Pauwels分類III型を経験した.固定材料は近位骨片を強固に固定できるASULOCK®を使用した.骨折部の正確な整復を行いASULOCK®を使用したことにより4例とも良好な骨癒合経過を得た.
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─多施設前向き研究による実態調査─
西田 善郎, 清水 智弘, 髙橋 大介, 岩崎 倫政
2025 年 37 巻 1 号 p.
54-57
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
高齢者の大腿骨頚部骨折に対して人工股関節全置換術(THA)と人工骨頭挿入術(BHA)が多く選択されるが,その術式選択は議論が分かれる.本研究は多施設前向き研究により,高齢者大腿骨頚部骨折に対するTHAとBHAの患者背景と手術関連因子を比較検討した.その結果,股関節外科医が術者であれば,手術時間や出血量は両群間で差はなかった.適切な患者選択と手術管理によりTHAに付随するリスクは抑制可能であった.
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大原 建, 土屋 流人, 陸 伊洋
2025 年 37 巻 1 号 p.
58-61
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
糖尿病の既往がある54歳男性.転倒し受傷,左下腿に開放創を認め,脛骨遠位骨幹部開放骨折と診断した.創外固定と創部のデブリードマンを施行,皮膚欠損が生じ,骨折部の髄内釘固定と有茎皮弁を施行した.その後,遅発性感染,化膿性足関節炎による関節変形を生じ,髄内釘抜去により感染は鎮静化した.受傷後21ヵ月現在,装具装着し歩行可能であり,慎重に経過中である.合併症を伴った糖尿病患者は特に注意が必要と考える.
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小川 裕生, 清水 智弘, 髙橋 大介, 岩崎 倫政
2025 年 37 巻 1 号 p.
62-64
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
発育性股関節形成不全症(DDH)や大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)などの股関節骨形態異常が,大腿骨近位部骨折の骨折型に与える影響について検討した.頚部骨折群ではDDH有病率が,転子部骨折群ではFAIの有病率が高かった.骨折型によりリスクとなる股関節の形態的異常が異なることが示唆された.
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塩入 央尚, 笹沼 秀幸, 檜山 秀平, 中島 寛大, 松村 福広, 竹下 克志
2025 年 37 巻 1 号 p.
65-69
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
上腕骨近位部粉砕骨折に対するリバース型人工肩関節置換術(FR-RTSA)後,5年以上経過観察した15肩の臨床成績を検討した.術後2年と5年時の成績はConstant score:78.0,75.2,ASES score:85.0,83.1,前方挙上126°,121°,下垂位外旋30°,28°,結帯L3,L2であった.合併症や再手術はなく,ADLは5例が低下していた.
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矢倉 一道, 清家 正貴, 西尾 拓実, 岡村 祐太朗, 朝倉 智也, 神﨑 浩二
2025 年 37 巻 1 号 p.
70-75
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
アテトーゼ型脳性麻痺は若年から頚髄症を合併することが知られている.環軸椎亜脱臼や歯突起後方偽腫瘍を伴う頚髄症では固定術を併用することが多いが,固定範囲について一定の見解はない.今回,アテトーゼ型脳性麻痺患者の上位頚椎病変に対して環軸椎固定を行った2例を経験した.スクリュー挿入が可能であれば,環軸椎固定は頭蓋骨頚椎間の動きを温存できるため有用な術式と考えられる.
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栗原 美里, 中村 聡
2025 年 37 巻 1 号 p.
76-80
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
本研究は,大腿骨近位部骨折後に対側の大腿骨近位部骨折を受傷する患者の特徴を明らかにすることを目的とし,当院で手術加療を行った690例を対象に調査を行った.対側骨折の多くは初回骨折受傷後6ヵ月以内の早期に生じており,施設退院患者の比率が有意に高かった.初回受傷後早期の骨折予防として,推奨される二次骨折予防に加え,初回受傷以前からの骨粗鬆症治療導入が必要であり,病院施設間の連携を要すると考える.
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成澤 将大, 三又 義訓, 和田 俊太郎, 土井田 稔
2025 年 37 巻 1 号 p.
81-85
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
症例は,骨Paget病に伴う右大腿骨転子下病的骨折をきたした61歳女性.髄腔が著明に狭小化しておりプレート固定を行った.術後1年2ヵ月で架橋形成を認め,術後2年2ヵ月で完全な骨癒合が得られた.骨Paget病による病的骨折は,骨癒合に時間を要するため,耐久性のある強固なインプラント選択が重要である.
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松浦 智史, 上杉 雅文, 川瀬 宙夢, 星野 健, 市村 晴充
2025 年 37 巻 1 号 p.
86-89
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
2019年4月以降に当院で下肢切断術を実施した34例について調査した.平均年齢は66.0歳で維持透析症例が9例,糖尿病を有する症例は25例であった.血液検査ではアルブミンが低値で低栄養状態を示唆し,入院期間内にCRPは低下した.比較的若年症例が多いため環境調整に時間を要し,入院期間が平均63.6日,術後平均40.9日で退院した.4例は入院中に死亡しており,術後の全身管理に注意を要する.
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鈴木 諒, 土屋 流人, 髙地 祐輔, 志賀 康浩, 折田 純久, 大鳥 精司
2025 年 37 巻 1 号 p.
90-93
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
滑膜嚢胞は多彩な画像所見・組織学的所見を認め,腱鞘巨細胞腫との鑑別が困難なことがある.本症例は両者の鑑別に難渋したため,椎間関節切除を行い,腫瘤を完全切除することとし,最終的に滑膜嚢胞の病理診断にいたった.滑膜嚢胞は必ずしも完全切除は必要とされないが,本症例のように腱鞘巨細胞腫との鑑別に難渋し,かつ神経圧排を伴う症例においては,完全切除を要することもあるため注意が必要である.
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─縫合材料の残存状態と痛みの関連に関する考察─
鈴木 優樹, 佐野 博高, 阿部 博男
2025 年 37 巻 1 号 p.
94-98
発行日: 2025年
公開日: 2025/05/16
ジャーナル
認証あり
Suture bridge法による腱板修復後,6ヵ月以内に再断裂を起こした2例を経験した.症例1は筋腱移行部における断裂で,保存治療で痛みがほとんど消失した.症例2は縫着した腱板断端がfootprintから剥離し,修復に用いたテープが近位断端と遠位断端を橋渡しした状態で関節内に残存していたため,直視下にテープを除去して再修復を行った.再断裂の発生部位や縫合材料の残存状態が異なっていたことが,痛みの違いに関与した可能性があると考えた.
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