日本肘関節学会雑誌
Online ISSN : 2434-2262
Print ISSN : 1349-7324
25 巻, 2 号
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I.小児骨折・先天性疾患
  • 山本 康弘, 市原 理司, 原 章, 梶原 一
    2018 年 25 巻 2 号 p. 1-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     当院での小児上腕骨顆上骨折Gartland分類3型の手術治療成績について調査した.対象は男児5例,女児1例の6例,平均年齢は8.7歳,手術までの待機期間は平均1日であった.手術は徒手整復後経皮鋼線刺入術1例,観血的骨接合術5例に行い,全例骨癒合が得られた.術後合併症は内反肘1例(経皮鋼線刺入術),術後神経障害2例(尺骨神経障害1例,後骨間神経障害1例)認めた.尺骨神経障害は内側のwireを抜去後,後骨間神経麻痺は自然軽快した.本症の治療において比較的良好な成績が得られた.内反肘を認めた1例は,整復不良が原因であった.Garland分類3型の手術を行う場合,観血的治療を念頭においた治療を行うことが重要である.

  • 鈴木 雅生, 市原 理司, 原 章
    2018 年 25 巻 2 号 p. 4-7
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     はじめに:小児上腕骨顆上骨折の観血的整復術に関して明確な治療方針は存在しない.当施設で加療した小児上腕骨顆上骨折の観血的整復術について後ろ向きに検討した.

     対象と結果:2013年4月から2017年10月まで当院で手術加療を行った小児上腕骨顆上骨折33例中,観血的整復術を行った15例を対象とした.骨折型,骨折の転位方向,平均手術時間,術前の神経血管損傷の有無,術中の介在物の有無,術後単純X線評価,合併症について検討した.15例のうち,神経血管損傷を認めた症例は4例.上腕筋,骨膜の陥入を認めた症例は7例であった,内反肘,外反肘などの合併症は認めなかった.

     考察:小児上腕骨顆上骨折の観血的治療法に関して明確な基準が設けられておらず,一致した見解がない.今回の症例を通して整復阻害因子を解除できること,直視下に解剖学的整復位を得ることが観血的整復術の利点である.

  • 辻沢 容彦, 大幸 英至, 山口 太平
    2018 年 25 巻 2 号 p. 8-10
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     遠位端の関節面に及ぶT字の骨折線を認め上腕骨顆間T字骨折と診断し,Van Gorder法によるアプローチを用いて観血的整復固定術を施行した.術後2年の単純X線像では左右差,可動域制限を認めなかった.成人においてはolecranon osteotomyアプローチが一般的であるが,小児においてはtriceps-splittingアプローチが術後可動域改善に優れていると報告されている.小児上腕骨顆間T字骨折においてtriceps-splittingアプローチの中でも関節面を大きく展開できるVan Gorder法の有用性について検討した.

  • 別所 祐貴, 関 敦仁, 江口 佳孝, 稲葉 尚人, 高山 真一郎, 高木 岳彦
    2018 年 25 巻 2 号 p. 11-14
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     当院における後外側進入による上腕骨外側顆骨折の手術成績を報告する.症例は術後6か月以上の経過観察を行った25例25肘で,固定法は鋼線固定法13例,鋼線締結法12例であった.肘関節可動域,単純X線像での骨癒合,肘外偏角(CA),Fish tail deformity(FTD)につき検討した.全例に骨癒合,良好な可動域が得られた.CAの健側差は,平均2.1度(-2~6)内反方向への有意な偏位を認めたが,問題となる症例はなかった.1例に軽度のFTDを認めたが,術後5年の時点で疼痛や機能障害はなかった.固定法による治療成績の有意な差はなかった.小児上腕骨外側顆骨折に対する後外側進入による手術治療は安全で良好な成績が得られる方法と考えているが,最終的な判断にはさらなる症例と長期の経過観察が必要である.

  • 大浦 圭一郎, 轉法輪 光, 島田 幸造
    2018 年 25 巻 2 号 p. 15-18
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     われわれは上腕骨外側顆骨折に対して鏡視下整復と経皮的鋼線刺入を試み,不能な場合は直視下に整復固定するという方針をとっている.2012年以降にこの方針で治療を行った11例について調査した.軟骨ヒンジを認めたものは8例,軟骨ヒンジを認めなかったものは3例であった.軟骨ヒンジがあるものは全例鏡視下に整復可能であった.軟骨ヒンジがないものは,1例は鏡視下,残り2例は直視下に整復した.ポータルの位置は,前外側,前内側,direct lateral(以下,DL)ポータルのすべてを用いたのが6例,前外側,前内側ポータルが3例,DLポータルのみが2例であった.DLポータルのみから鏡視下整復を行った1例で変形治癒・早期骨端線閉鎖を認めた.

     鏡視下整復・鋼線刺入は上腕骨外側顆骨折に対して有効であった.関節面を観察する際は軟骨ヒンジ部から離れた骨折部を確認することが重要であり,前方鏡視が有用である.

  • 石井 紗矢佳, 原 章, 市原 理司, 鈴木 雅生, 志村 有永
    2018 年 25 巻 2 号 p. 19-20
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     はじめに:上腕骨外側顆骨折は転位がある場合,保存治療では偽関節となり将来,外反肘や遅発性尺骨神経麻痺を生ずる可能性が高い.今回,上腕骨外側顆骨折後偽関節の2例を経験した.

     症例:症例1:3歳男児.転倒受傷した.他院で経皮鋼線刺入術を受けたが,抜釘後に骨片が転位し当院を紹介された.偽関節の診断に対し,骨移植せずに骨接合術を行った.骨癒合が得られ,最終観察時の肘関節可動域は伸展-5°,屈曲140°であった.骨折部に短縮を認めるも,明らかな外反肘は認めなかった.症例2:2歳男児.転倒受傷した.他院で保存加療行うも骨癒合が得られず,当院を紹介された.偽関節の診断に対し,骨移植せずに骨接合術を行った.骨癒合が得られ,最終観察時の肘関節可動域は伸展-10°,屈曲130°と痛みなく使えている.

     まとめ:骨欠損を認めても骨移植せずに治療しえた上腕骨外側顆骨折後偽関節の2例を報告した.

  • 大中 敬子, 岳原 吾一, 金谷 文則
    2018 年 25 巻 2 号 p. 21-23
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     上腕骨内側上顆骨折のWatson-Jones分類特にtype I,IIに対して,保存療法を勧める報告がある一方,偽関節や肘関節不安定性への懸念から手術療法を勧める報告もあり,治療方針に明確な基準はない.私たちは健側比2mm以上の転位例や投球に起因する例にはtension band wiring法を行っている.対象は15歳以下の肘関節周辺骨折140例中9例(6.4%)で,type I 5例,type II 2例,type III 1例,type IV 1例であった.術後約3週間外固定を行った.5~16週(平均9.6週)で抜釘した.通院自己中断し経過不明な1例を除き全例で骨癒合が得られ,骨端線早期閉鎖はなかった.最終平均肘関節可動域は伸展5°,屈曲144°であり,尺骨神経麻痺,肘関節不安定性などの合併症はなかった.本法は上腕骨内側上顆骨折に対して有用な治療法と考えられた.

  • 森崎 真介, 藤原 浩芳, 小田 良
    2018 年 25 巻 2 号 p. 24-26
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     当院における上腕骨内側上顆骨折に対する治療成績を検討した.対象は手術療法を施行した26例を対象で,内訳は男子22例女子4例,平均12.1歳であった.術後観察期間は,平均209日であった.骨折型はWatson-Jones分類でtype I:2例,II:16例,III:1例,IV:7例であった.合併損傷は肘関節脱臼7例,橈骨頚部骨折2例,上腕骨外顆骨折1例認めた.術式は引き寄せ鋼線締結法(TBW)を21例に施行し,観血的整復および鋼線のみの固定(K-wire固定)が5例であった.術後外固定期間は,平均18.4日,抜釘は術後平均125日であった.骨癒合は全例で得られた.最終経過観察時の肘関節可動域は屈曲134°伸展1.7°だった.肘関節の動揺性はなく,疼痛の持続した症例もなかった.TBW群およびK-wire固定群ともに手術成績は良好であった.

  • 黒沢 一也
    2018 年 25 巻 2 号 p. 27-30
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     新鮮Monteggia骨折の治療は橈骨頭脱臼の確実な整復が重要である.橈骨頭の観血的整復術を要した新鮮Monteggia骨折を後ろ向きに検討した.対象は17例17肘,骨端線閉鎖前(小児例)は14例で年齢は2~14歳(平均7.9歳),骨端線閉鎖後(成人例)は3例で年齢は18,32,73歳である.14例で手術治療,3例で保存治療を行った.全例透視下に橈骨頭の整復位を確認し,前腕回内でわずかでも橈骨頭が前方脱臼を示した症例は全て観血的に橈骨頭の観血的手術を行った.観血的整復術を要したのは,小児例では14例中5例(35.7%),成人3例は全てであり,小児と成人例を合せると47.1%であった.全例で輪状靱帯と関節包が上腕骨小頭を覆うように腕橈関節に介在し橈骨頭の整復障害因子となっていた.新鮮Monteggia骨折の治療にあたっては前腕回内位での橈骨頭の整復状態を注意深く確認することが重要である.

  • 成田 裕一郎, 千馬 誠悦
    2018 年 25 巻 2 号 p. 31-34
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     症例:11歳,男性.跳び箱で前方宙返りに失敗して左手をついて受傷.肘関節の疼痛と変形を生じ,同日当科を紹介受診した.

     初診時所見および経過:画像所見では橈骨頚部骨折を伴った肘関節後方脱臼で,橈骨頭骨片は上腕骨内側顆の遠位に位置していた.同日手術を行い,前方から橈骨頭骨片を摘出し,後方脱臼を整復して外側からノンロッキングプレートで固定し,橈骨から骨移植を追加した.初回手術後3か月でスクリューが折損して骨折部が再転位したため,2枚のロッキングプレートに腸骨移植を併用して再骨接合術を行った.再手術後5か月で骨癒合が得られ,術後3年5か月の現在,肘関節は伸展0°,屈曲140°,回外35°,回内45°で疼痛や不安定性はなく,JOA-JES scoreは85点であった.

     考察:本例は肘関節交差脱臼に伴った不安定性の高度な脱臼骨折と考えられ,変形性肘関節症に注意した慎重な経過観察を要する.

  • 高田 秋人, 有薗 行朋, 長尾 聡哉, 守 宏介
    2018 年 25 巻 2 号 p. 35-37
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     Floating elbowは同側上肢に生じた上腕骨骨折と前腕骨骨折の複合骨折である.今回,われわれは橈骨塑性変形を伴う小児floating elbowという極めて稀な1例を経験した.

     症例は10歳,女児,転落し受傷.近医にて左橈尺骨遠位端骨折・左尺骨骨幹部骨折・左上腕骨顆間骨折の診断で当院救急搬送となり,同日緊急手術となった.なおこの時点で橈骨塑性変形の診断はついていなかった.

     上腕骨顆間骨折は,6本のK-wireで固定した.尺骨骨幹部横骨折は髄内釘固定,橈骨遠位端骨折はピンニング固定をした.Alignmentの最終確認時に前腕の変形の残存と肘関節伸展障害に気づき,橈骨塑性変形の診断で徒手整復を施行した.

     塑性変形は本症例では術前診断でついておらず,前腕においては手関節・肘関節を含む単純X線像を健側と比較すると同時に,塑性変形を常に念頭に置く必要がある.

  • 宮城 若子, 仲宗根 素子, 金城 政樹, 大久保 宏貴, 普天間 朝上, 金谷 文則
    2018 年 25 巻 2 号 p. 38-42
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     先天性近位橈尺骨癒合症は,前腕回旋中間位から回内位で強直するため日常生活動作(以下ADL)障害をきたすが,これまで分離授動術前後のADL評価を比較した報告はない.今回,分離授動術前後のADL評価をWeeFIM,Hand 10,PREE-Jを用いて比較した.分離授動術(金谷変法)を施行し1年以上の経過観察が可能であった14例19肢(男4例・女10例,片側7例7肢・両側7例12肢,手術時平均年齢5.8歳)を対象とした.術前の平均回内強直位は45°,術後の前腕回旋可動域は平均75.2°(回外22.6°/回内52.6°)であった.WeeFIMは術前後で有意差は見られなかったが,Hand 10とPREE-Jでは術後有意に改善した.また術後前腕回外位動作が獲得できなかった症例はHand 10とPREE-Jによる評価は低く,ADLが改善しにくい傾向があると思われた.

  • 稲葉 尚人, 高山 真一郎, 鳥居 暁子, 阿南 揚子, 別所 祐貴, 江口 佳孝, 関 敦仁
    2018 年 25 巻 2 号 p. 43-45
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     前腕回内外可動域は肘関節90°屈曲位で測定するが,肘関節屈曲伸展により回内外可動域が異なる報告がある.われわれは,先天性橈尺骨癒合症分離授動術後患者45例60肘を対象に,回内外可動域が肘関節肢位によってどの程度変化するかを調査した.最終観察時の回内外可動域(遠位橈尺関節レベルでの計測)を,肘関節最大伸展位・90°屈曲位・最大伸展位で測定し,回内外可動域の変化を統計学的に検討した.

     結果:回内外可動域(arc)は肘関節屈曲位83±17°,90°屈曲位89±18°,伸展位61±24°と,3肢位で有意差があった.回外は屈曲位(55±21°)より伸展位(18±18°)で有意に小さく,回内は屈曲位(28±19°)より伸展位(43±20°)で有意に大きかった.これらは,新鮮屍体や健常者を対象とした関連研究とほぼ同様で,肘関節屈伸による近位橈尺関節の適合変化や,軟部組織の緊張の変化が影響すると推測される.

  • 磯部 文洋, 中村 恒一, 松葉 友幸
    2018 年 25 巻 2 号 p. 46-48
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     学童期から思春期の上腕骨滑車無腐性壊死はHegemann病として報告されている.われわれはHegemann病に対しMRIを経時的に撮影し経過観察をおこなった.

     14歳男児,バレーボール部に所属している.バレーボールにおけるトス動作をおこない右肘痛が出現した.肘に熱感,腫脹,発赤はなく内側上顆付近に軽度の圧痛を認めた.単純X線像では健側と比較して上腕骨滑車骨端核に骨化中心の縮小を認めた.MRIではT1強調像にて滑車骨端核に低信号域を認め,Hegemann病と診断し保存的治療としてスポーツ活動制限をおこなった.発症から3,6,9か月と上腕骨滑車骨端核の骨化中心は徐々に再生および拡大し,MRIにおける低高信号域は徐々に高信号域となった.発症半年で疼痛がなくなりスポーツ再開を許可し,経過は良好である.Hegemann病は骨折と誤診されることがあり,学童期から思春期の肘痛において鑑別疾患の一つとすべきである.

  • 下江 隆司, 山田 宏
    2018 年 25 巻 2 号 p. 49-51
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     今回われわれは近位橈尺骨間に発生した骨外性軟骨腫の1例を経験したので報告する.症例は53歳男性で,約10年前より左肘周辺の疼痛を自覚していた.前医で近位橈尺骨間の異常陰影を指摘され,当科を受診した.前腕近位に強い圧痛があり,前腕回内外は激痛で不可能であった.単純X線で近位橈尺関節末梢に石灰化陰影がみられた.MRIでは橈尺骨間に介在するT1低信号,T2高信号の腫瘍が存在した.手術所見では橈骨頚部高位に白色シャーベット様の腫瘍を認めた.腫瘍は骨膜との連続性はなく,腫瘍を掻爬すると回内外が可能となった.病理組織学的検査では腫瘍は軟骨基質を主とし一部石灰化を伴う組織で,術中所見とあわせて骨外性軟骨腫と診断した.本症例では長期間に渡り腫瘍性病変の診断に至らず,疼痛と前腕回内外制限の原因が不明であった.前腕可動域制限の原因には軟部腫瘍の存在も念頭に置く必要がある.

  • 樋口 史典, 吉矢 晋一, 高木 洋平, 藤岡 宏幸, 戸祭 正喜
    2018 年 25 巻 2 号 p. 52-54
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     症例:8歳男児.右肘痛を認めたが間欠的であり様子をみていた.肘痛発症後4か月しても症状が治まらず近医を受診しX線異常を指摘され当院紹介受診した.右肘関節の可動域制限(伸展0°,屈曲135°)と上腕骨外側上顆に圧痛を認めた.X線にて上腕骨小頭の骨化核不整を認めMRIにて上腕骨小頭内にT1強調像で低信号,T2強調像で高信号の病変を認めたが関節軟骨の障害はなかった.以上の臨床所見からPanner病と考え保存加療を行った.ギプスシーネ固定を2か月間行った後,エルボーブレースに変更し半年で装具除去した.最終観察時にて右肘関節の可動域制限は認めずX線の上腕骨小頭の骨化核の改変も良好であった.

     考察:Panner病はしばしば離断性骨軟骨炎との鑑別が必要である.本症例ではスポーツ活動量の低さとMRIにて関節軟骨損傷を認めないことなどPanner病と判断して保存加療を選択し良好な結果を得られたと考える.

II.成人骨折・脱臼
  • 安部 幸雄, 髙橋 洋平
    2018 年 25 巻 2 号 p. 55-58
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     目的:complex elbow instability(CEI)における治療方針とその成績について述べる.

     対象:15例,男性10例,女性5例,年齢は26歳~74歳,平均53歳であった.

     結果:損傷形態は後外側回旋不安定症(PLRI)5例,後内側回旋不安定症(PMRI)4例,trans-olecranon脱臼骨折6例であった.全て鉤状突起,橈骨頭,肘頭は再建しLCLを縫合し,不安定性が残存すればMCLの縫合を行った.5例に授動術を行った.6か月以上経過観察が可能であった12例の平均可動域は伸展-13度,屈曲134度,JOA-JES scoreは平均94点であった.

     考察:CEIに対し鉤状突起,橈骨頭,肘頭は再建しLCLを縫合することを基本とし,成績は良好であった.Trans-olecranon脱臼骨折は抜釘時に授動術を行うことにより可動域の改善が得られた.

  • 小林 由香, 齋藤 育雄, 高木 岳彦, 清水 あゆ子, 石井 崇之, 池田 全良
    2018 年 25 巻 2 号 p. 59-61
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     はじめに:terrible triad injury(TTI)の治療戦略は,損傷形態を理解し安定性と可動性の両方を獲得することである.

     対象:症例は11例,男6例,女5例,平均50.5歳.骨折型はO'Driscoll分類type I-1: 4例,I-2: 6例,type II-2: 1例.鉤状突起骨折はtype I -2から内固定し,Lasso法3例,K鋼線固定2例,HCS固定1例,type II-2は橈骨頭で再建した.LCLは全例で一次縫合かbone anchorで縫合し,8例でMCLを縫合した.

     結果:平均可動域は-9.0°から130°,肘関節亜脱臼はなかった.MEPSは平均94.5点,JOA-JES scoreは平均91点.

     まとめ:鉤状突起および関節包を含む前方要素と靱帯性要素の両方を修復した結果は, 肘の安定性と可動性の獲得ができた.

  • 志村 有永, 市原 理司, 原 章, 鈴木 雅生, 石井 紗矢佳
    2018 年 25 巻 2 号 p. 62-65
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     Terrible triad損傷の6例を報告する.橈骨頭骨折Mason分類type I 1例,type III 5例.鉤状突起骨折がO'Driscol分類tip type 2例,anteromedial type 2例,Basal type 2例で,LCL損傷6例.鉤状突起骨折がTBW 3例,HBS固定1例,plate固定1例で1例.橈骨頭骨折はAcutrak固定1例,HBS固定1例,plate固定1例,人工橈骨頭2例.LCL損傷は靱帯縫合を施行した.6例中2例は術後にPLRIが残存し,再手術を要した.結果はJOA-JES scoreは平均78点,Mayo Elbow Scoreは全例95点以上で,PLRIを来たした症例はなかった.Terrible triad損傷は3DCTを用いた正確な評価に基づく治療が不可欠である.鉤状突起骨折の骨折形態や周囲の損傷に応じて固定法・アプローチ法を決定することも重要である.

  • 今泉 泰彦
    2018 年 25 巻 2 号 p. 66-69
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     Complex elbow instability(CEI)は骨性要素ならびに靱帯性要素の破綻を伴う難治性外傷とされる.今回われわれが加療を行ったCEI症例14例に対し検討した.症例の内訳はterrible triad injury 3例,鉤状突起骨折+外側側副靱帯断裂例3例,内側側副靱帯断裂+橈骨頸部骨折例2例,肘頭前方脱臼骨折2例,肘頭後方脱臼骨折4例であった.術後成績はJOA-JES scoreで平均93.1点と概ね良好であったが,鉤状突起骨折+外側側副靱帯断裂例1例で術後骨片の再転位がおこり再度脱臼したため腸骨を用いて鉤状突起の再建を行った例を認めた.CEI症例は複合損傷であるため解剖学的再建をめざし治療を行っているが,術後再脱臼し,鉤状突起再建を必要とした例があった.鉤状突起骨折内固定については十分な靱帯修復が得られない可能性があるならできるだけ解剖学的修復をめざすべきである.

  • 橋本 智久, 佐野 和史, 大関 覚, 木村 和正
    2018 年 25 巻 2 号 p. 70-73
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     目的:肘関節脱臼骨折の手術加療において不安定性遺残によりヒンジ付きIlizarov創外固定器併用となった症例を報告した.

     対象・方法:2007年~2017年において肘関節脱臼骨折37例中,靱帯・骨性再建したにも関わらず不安定性が遺残し創外固定器を併用した症例4例を対象とした.

     結果:経過観察期間は平均15か月(5~18か月),装着期間は平均40.8日(31~52日),肘関節可動域は平均伸展-20°(-60°~0°),屈曲117.5°(70°~140°),JOA-JESスコア79.3点(59~90点),MEPS平均73.8点(45~85点)であった.1例精神疾患にて肘関節拘縮となった.

     考察:complex elbow instabilityに対する手術において術中・術後に靱帯・骨性に再建したにも関わらず易脱臼を生じることを稀に経験する.この様な症例には創外固定器の併用が有用であった.

  • 吉井 雄一, 十時 靖和, 石井 朝夫
    2018 年 25 巻 2 号 p. 74-77
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
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     肘関節周辺骨折に対する3D術前計画ソフトウェアを開発し,過去の症例の画像データからその機能を検証した.また上腕骨遠位部骨折の骨接合術に臨床応用した.過去に肘関節周辺骨折に対して骨接合術を施行した症例の肘関節CTを用いた.1mm,2mm,3mmの異なるスライス幅で肘関節CTを撮像されていた症例を抽出し,3D術前計画ソフトウェア上での描出能,シミュレーションの可否について検討した.画像の解像度を維持するため2mm以下のスライスでのCT撮像が望ましいことがわかった.上腕骨遠位部骨折の1例に臨床応用した.CTデータから上腕骨遠位部の3D画像を作成し,骨折整復と内固定選択,設置のシミュレーションを行った.その後,全身麻酔下に骨接合術を施行した.プレートやスクリュー長の予測精度は高かった.肘関節周辺骨折の3D術前計画は,骨折の整復位とプレート設置の実際的イメージが得られる利点がある.

  • 南野 光彦, 小寺 訓江, 友利 裕二, 高井 信朗
    2018 年 25 巻 2 号 p. 78-81
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     A.L.P.S. Elbow Plating Systemを用いて内固定を行った上腕骨遠位端骨折17例17肘の治療成績と本プレートの有用性を検討した.骨折型はAO分類A2:7例,C1:4例,C2:3例,C3:3例であった.全例後方アプローチで内外側にプレートを設置し,肘頭骨切りは6例に加えた.全例骨癒合し,JOA-JES scoreは平均87.9点,Mayo Elbow Performance Scoreは平均92.9点で良好な成績が得られた.本プレートはlow profileで,小柄な高齢女性に対しても骨表面への適合性が良好で,また仮固定後も骨に合わせて3次元in-situ bendingができることにより,スクリュー刺入方向を調節してより強固な固定が得られる可能性がある.しかし遠位骨片が粉砕,小骨片の場合,スクリュー径3.5mmでは太い傾向があり,径2.7mmを複数刺入できるプレートが勧められる.

  • 池口 良輔, 太田 壮一, 松田 秀一
    2018 年 25 巻 2 号 p. 82-84
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     Anatomical locking plateを用いたdouble plate固定法による骨接合術を行った上腕骨遠位端関節内骨折(AO/OTA type C)12例の治療成績および問題点について検討した.骨癒合については,全例で獲得することができ,術直後と最終観察時での矯正損失は認められなかった.術後可動域については,伸展平均 -10.5°屈曲平均119°であった.合併症については,何らかの尺骨神経の障害があった症例が12例中7例であった.Locking plateを使用したdouble plateによる骨接合術により早期リハビリテーションに耐えうる固定性を獲得することが可能であった.ただし,合併症が多く,特に尺骨神経障害の発生率は高かった.

  • 川島 至
    2018 年 25 巻 2 号 p. 85-87
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     上腕骨通顆骨折に対する内外側double plate固定と外側single plateおよび内側CCS固定の術後成績を比較検討をした.対象は上腕骨通顆骨折(AO分類13-A2,A3)にて骨接合を行った20例,double plate固定15例(以下D群),single plate固定5例(以下S群)である.受傷時平均年齢はD群79.2歳,S群82.0歳であった.検討項目は手術時間,術後尺骨神経障害発生率,骨癒合率,最終観察時JOA-JES score,最終観察時可動域とした.手術時間はD群で有意に長く(P<0.05)術後尺骨神経障害発生率は有意にD群で高かった(P<0.05).骨癒合率,JOA-JES score,可動域はいずれも有意差は認めなかった.本研究では上腕骨通顆関節外骨折に対して内側プレートの追加は必ずしも必要ではなく手術時間短縮および尺骨神経障害発生回避をできることが示唆された.

  • 國分 直樹, 松山 優実
    2018 年 25 巻 2 号 p. 88-91
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     高齢者上腕骨遠位端骨折に対する手術法はdouble plate法が主流であるが,その侵襲の大きさから症例に応じた低侵襲な手術を選択すべきとの意見もある.当院ではAO type Aで内側に骨性支持が得られる症例に対し,内側にHCSを用いたsingle plate法を行っておりその治療成績を検討した.対象は当院にて手術を行ったAO typeA 11例(A2:9例,A3:2例),平均年齢85歳,手術は外側にはLCP-DHP外側(Depuy Synthes),内側はHCS 4.5(Depyuy Synthes) を使用した.結果,合併症なく全例で骨癒合が得られ,肘関節可動域は屈曲120.5度,伸展-16度,MEPSはexcellent 7例,good 3例,fair 1例であった.慎重な症例選択と正確な手術手技を心掛けることで,本法は高齢者上腕骨遠位端骨折AO type Aにおいて有用と考える.

  • 松前 元, 河村 太介, 岩崎 倫政
    2018 年 25 巻 2 号 p. 92-95
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     関節面の整復を要するAO type 13-C2,C3の上腕骨遠位端骨折に対する骨接合術では,良好な術野を得ることが不可欠であり,肘頭骨切りアプローチが行われている.Morreyらは肘筋温存肘頭骨切りアプローチを報告しており,肘筋機能を温存できる利点がある.われわれは上腕骨遠位端骨折に対して同アプローチを用いて骨接合術を行った4症例を対象に,臨床成績・画像評価を行った.全例で肘頭骨切り部・骨折部の癒合が得られ,術後成績は良好であった.肘筋温存の利点として,肘関節での動的・内反安定性に寄与する,肘関節周囲軟部組織欠損に対する筋弁として使用できる,肘頭骨切り位置の決定が容易になる,肘筋血流の温存による骨癒合の促進等がある.一方,肘筋筋膜や筋体に損傷がある症例では,骨切り位置を誤認する可能性があり注意を要する.本アプローチは肘筋機能を温存できる有用なアプローチである.

  • Chieko Kadoma, Isao Sasaki
    2018 年 25 巻 2 号 p. 96-99
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     緒言:骨パジェット病は本邦ではまれであり,罹患骨も上腕骨は低頻度である.骨パジェット病に生じた上腕骨通顆骨折に対し骨折観血的手術を施行し骨癒合を得られた1例を報告する.

     症例:90歳男性.転倒し受傷,X線写真およびCT上,上腕骨での骨透亮像と硬化像の混在と上腕骨通顆骨折を認めた.血液検査ではALP高値,骨シンチにて右上腕骨および右腸骨に異常集積を認め,骨パジェット病が疑われた.高齢でもあり保存的治療を試みたが経過中転位したため手術を施行,大きな展開を避け,十分な硬度の骨質であったためscrew固定した.術中採取骨の病理検査にて骨パジェット病と確定診断し,デノスマブを投与した.術後1年時骨癒合,関節可動域ともに良好である.

     考察:骨パジェット病は骨代謝異常により骨脆弱性をもたらす.罹患骨骨折では,保存治療で骨癒合を得られた報告がある一方,偽関節や再骨折の報告もあり治療には注意を要する.

  • 安岡 寛理
    2018 年 25 巻 2 号 p. 100-103
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     単純な骨折型の肘頭骨折や肘頭骨切り後の骨接合ではTBWが一般的に選択される方法であるが,K鋼線の術後back outを高頻度に経験する.K鋼線と軟鋼線を使用した単純なTBWとTBWにCCSかmini plateを併用した方法間で術後成績を比較した.単純な骨折型の肘頭骨折もしくは肘頭骨切り後に骨接合を行ったTBW群(男14例,女25例,平均年齢64歳)とTBW+CCS等群(男2例,女8例,平均年齢64歳)間でback out発生率,再手術率,骨癒合期間,関節可動域を比較した.K鋼線のback out発生率はTBW群が有意に高かった.再手術率,骨癒合期間,関節可動域に有意差はなかった.TBW以外に主骨片同士をまたぐインプラントを1つ追加すれば,K鋼線のback outを予防できる可能性が示唆され,CCSの1本追加挿入は簡便な方法であり安心して経過観察できる方法である.

  • 淺野 陽平, 山内 大輔
    2018 年 25 巻 2 号 p. 104-107
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     関節面陥没を伴う肘頭骨折に対して,当科では関節面の整復に用いたKirschner鋼線を骨内に打ち込んで内固定する手術方法を行っており,今回,その治療成績について検討した.対象は8例8肘,受傷時平均年齢は65.3歳,術後平均観察期間は10か月,Colton分類2-Cが2例,2-Dが6例だった.術後平均可動域は伸展-7.5°,屈曲133°であり,単純X線では全例で骨癒合が得られ,関節面のstep offやgapは認めなかった.術後合併症も認めなかった.当科の手術方法は,近位骨片を上腕三頭筋ごと後方へ反転し直視下に陥没骨片を内固定しており,粉砕が強く骨片が小さい場合でも比較的容易に固定が可能である.また,整復・固定に使用したKirschner鋼線をそのまま骨内に打ち込んでおり手技に無駄がない.本症例では良好な治療成績を得ることができ,有用な手術方法であると考える.

  • 千葉 紀之, 坪 健司, 上里 涼子, 能見 修也
    2018 年 25 巻 2 号 p. 108-110
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     関節面陥没骨片を有するColton分類2C型の肘頭骨折を,関節面の陥没が軽度で骨片のみを操作して整復した症例はそのまま固定を行い,関節面が大きく陥没した症例ではノミを刺入し海綿骨を圧縮しながら一塊にして陥没骨片を整復し,整復後の欠損部に人工骨ブロックを充填したのちにtension band wiring法で内固定を行った.対象は2008年1月から2016年12月の期間に治療した11例11肘,男性3例,女性8例,平均年齢は62.2歳であった.平均経過観察期間は21.3か月であった.最終経過観察時の肘関節可動域は伸展-4.5°,屈曲130.9°であった.JOA-JES scoreは平均93.7点であった.手術直後と最終観察時の単純X線写真を比較して,関節面の矯正損失が生じた症例はなかった.関節面を整復し必要に応じて人工骨を充填する本法は侵襲が少なく有用な手術法であると思われた.

  • 高畑 智嗣
    2018 年 25 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     関節面が陥没した肘頭骨折を,tension band wiringを2組用いて内固定した.症例は15例15肘.年齢は22~86歳(平均63.3歳)であった.関節面の陥没骨片の数は,1個が8例,2個が6例,3個が1例であった.6例で後方の皮質骨に第3骨片が存在した.陥没骨片整復後の空洞に対し,3例で人工骨を充填したが12例は放置した.全例で骨癒合が得られ,遷延癒合はなかった.関節面に1mm以上のstepが残存したのは3例で,いずれもstepは手術直後から存在して増大しなかった.1例で3mmの関節面のgapを認めた.平均11か月の術後経過観察で肘関節に痛みはなく,可動域は伸展-15~0°(平均-4.0°),屈曲130~155°(平均144.0°)であった.術後K-wireの移動が7例に発生し,5例で突出K-wireのみ早期に抜去したが問題は生じなかった.

  • 川崎 恵吉, 酒井 健, 筒井 完明, 新妻 学, 西川 洋生, 久保田 豊, 久保 和俊, 池田 純, 富田 一誠, 稲垣 克記
    2018 年 25 巻 2 号 p. 115-118
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     65歳以上の肘頭骨折を後ろ向きに調査し,K-wireによるtension band wiring(TBW)法の24例(K群),Ring pinやAI pinによるTBW法の7例(R群),plate固定術の22例(P群)の3群間で比較検討した.全例で骨癒合が得られたが,関節症性変化が各群1例ずつに見られた.各群のMEPSや可動域などの臨床成績は良好で,有意な差はなかった.合併症は,K群では2mm以上の鋼線の逸脱であるbackoutが7例,implantの入れ替えが3例,感染による抜釘が2例,拘縮による授動術が1例,P群ではプレート固定術後に近位骨片が再転位するproximal cutoutが3例,尺骨神経障害による神経剥離術が3例で,R群にはなかった.高齢者の肘頭骨折に対しては,TBW法は鋼線のbackout,プレート固定術はproximal cutoutなどの合併症を予防する必要がある.

  • 難波 二郎, 宮村 聡, 岡本 道雄, 山本 浩司
    2018 年 25 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     経肘頭尺骨鉤状突起基部骨折8例の手術治療経験を報告する.基本手術方法は側臥位下に後方進入し各骨折を内固定とした.症例は男性4例,女性4例,平均50歳であった.前方型2例,後方型6例で,4例に鉤状突起のsublime tubercle(ST)骨片を有し,4例に分節したlesser sigmoid notch(LSN)骨片を認めた.平均経過観察期間14か月時,全例に全骨折箇所は癒合した.可動域(屈曲/伸展)は131/-10度,JOA-JES score 93点であった.内側腕尺関節早期関節症が1例,橈骨頭亜脱臼が2例に確認された.各々に順にST骨片,LSN骨片が存在したことより,両骨片への展開と内固定の関与不足が原因と考えた.過去,多くはuniversal-posteriorアプローチで治療されてきたが,上記骨片を有する例では展開に注意する必要性が示唆される.

  • 森谷 史朗, 今谷 潤也, 近藤 秀則
    2018 年 25 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     アナトミカルロッキングプレート(ALP)固定法を行った尺骨近位部骨折(PUF)の20例(男性11例,女性9例,平均年齢55歳)の臨床成績を調査し,その有用性と注意点を検討した.肘頭・骨幹端部粉砕骨折,肘頭脱臼骨折,Monteggia脱臼骨折などの不安定型のPUFに対して,症例に応じて計7機種のALPが使用され,良好な臨床成績が得られていた.鉤状突起骨折合併例においては,ALPによる肘頭骨片の最終固定が行われる前に,スクリューやミニプレートなどを用いた鉤状突起骨片の安定化を得ておくことで,同骨片の術後再転位例はなかった.また,本邦で使用可能な各ALPのコンセプト・仕様・特徴を理解し,PUFの損傷形態・病態・骨質・体格などに応じてプレート選択および効果的なプレート機能を持たせることが重要となる.

  • 玉置 康之, 田中 康之
    2018 年 25 巻 2 号 p. 128-131
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     緒言:上腕骨外側顆偽関節に対し肋骨肋軟骨移植を行った症例を経験したので報告する.

     症例:46歳,男性.建設現場作業中に車に追突され受傷した.Gustilo IIの上腕骨外側顆開放骨折の診断で骨接合術を施行したが,関節面は粉砕していたため完全な整復は困難であった.術後4か月で骨透亮像が明瞭となったため2回目の手術を施行した.しかし外側顆骨軟骨片は小さく固定に難渋した.術後8か月で外側顆は偽関節となったため3回目の手術を行った.肋骨肋軟骨移植を行いスクリュー固定を行った.術後2週から関節可動域訓練を開始し,術後7か月で骨癒合を認め,関節可動域良好,痛みなく,経過良好である.

     結語:肋骨肋軟骨を新鮮化した偽関節部に十分に挿入し,スクリュー固定を行うことで比較的強固な初期固定が得られ,良好な成績が得られた.

  • 西脇 正夫, 岡崎 真人, 田崎 憲一, 谷野 善彦, 清田 康弘, 堀内 行雄
    2018 年 25 巻 2 号 p. 132-135
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     上腕骨内側顆骨折は極めてまれな外傷であり,特に成人例の報告は少ないが,われわれは,男性2例(74,84歳),女性3例(21,32,75歳)の成人例を経験した.受傷原因は,転倒3例,自転車事故1例,投球時1例であった.骨折線は,滑車溝または小頭滑車間溝付近から内側上顆近位に向かい,内側顆骨片は尺骨滑車切痕内に残ったまま橈尺骨とともに中枢に転位し,腕橈関節は1例は後方脱臼,4例は前方亜脱臼していた.治療は,内側進入1例,後方進入4例(うち肘頭骨切り3例)で観血的整復固定術が行われた.術後観察期間は5~23か月で全例骨癒合が得られ,肘関節自動可動域平均は,屈曲130°,伸展-15°であった.受傷機転は肘頭滑車切痕からの長軸方向の衝撃が主因と考えられた.成人上腕骨内側顆骨折は肘関節屈伸軸を構成する関節面の転位を生じ,かつ長軸方向に不安定なため,正確に整復し,強固に内固定する必要がある.

  • 山本 博史
    2018 年 25 巻 2 号 p. 136-138
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     Mason type IIIの橈骨頭骨折の骨接合術後に偽関節となったが,日常生活上,不自由のない症例を経験した.人工橈骨頭置換の時期を遅らせられる可能性として1例報告をする.

     68歳,女性.粉砕型橈骨頭骨折を受傷し,観血的骨接合術を行った.術後11か月の抜釘の際,頚部は偽関節であったが,骨頭は癒合し軟骨面に明らかな変性はなく,再生した軟骨にスクリュー,ワイヤーは埋もれていた.骨接合術から1年半で,肘屈曲140°,伸展-10°,回外70°,回内80°となり,肘の圧痛,不安定性もなく,quick DASHで6.82点,患者満足度で9/10点となった.

     橈骨頭は肘関節の安定性に重要であるため,骨接合術が不可能な場合,人工橈骨頭置換術が選択されることも多い.人工橈骨頭は,デザインや固定方法,長期成績などの点でまだ未解決であり,偽関節となってもスペーサーとして橈骨頭を残す意義があると考えられた.

  • 遠藤 大輔, 岡崎 真人
    2018 年 25 巻 2 号 p. 139-142
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     88歳女性,アレンドロン酸内服歴11年.布団から立ち上がる時に手で体重を支えてから前腕痛が出現した.初診時,前腕尺側の圧痛を訴え,単純X線にて尺骨骨幹部近位1/4の横骨折を認めた.骨折部のスパイク形成,対側皮質の肥厚あり尺骨非定型骨折と診断した.受傷8日で皮質骨スクリューとプレートを用いた固定手術を施行したが術後4週目に骨折部の再転位を認めたため,初回手術後5週でロッキングスクリューを用いたプレート固定術を再度おこなった.テリパラチド連日投与と超音波骨折治療も術後約2年で骨癒合が得られた.

     尺骨非定型骨折は大腿骨非定型骨折と比較すると報告数も少なく,稀な骨折と思われる.高齢者では杖に頼った歩行や,手をついての起立など,上肢を荷重肢として使用することも多く,それに伴う患側への負担が治療に悪影響を及ぼし,骨癒合を遷延させる一因になったと考えられる.

  • 秋吉 寿, 坂井 健介, 上野 智規, 原口 敏昭, 松浦 充洋
    2018 年 25 巻 2 号 p. 143-145
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     今回,肘関節後方脱臼に外側側副靱帯複合体付着部を含む特異的な外側顆骨折を合併した稀な成人例を経験したので報告する.症例は31歳男性で,サッカー中に転倒し手をつき受傷した.特異的な外側顆骨折および尺骨鉤状突起骨折(O'Driscoll分類tip骨折subtype 2)を合併した肘関節後方脱臼を認め,受傷後6日目に観血的手術を行った.外側アプローチにて展開し,広範な外側顆骨片を4.0 Cannulated Cancellous Screw 2本で固定した.さらに,前内側アプローチを追加し,前方関節包靱帯に対しsuture anchoringを行い,後方不安定性を制動化した.術後は2週間の外固定後にヒンジ付きサポーター装着下で積極的に可動域訓練を行った.術後6年の最終観察時,JOA-JES scoreは100点,DASH scoreは0点であり,仕事,スポーツ競技に支障はなく経過は良好であった.

  • 入江 弘基, 田嶋 光, 倉 明彦
    2018 年 25 巻 2 号 p. 146-148
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     随意性橈骨頭脱臼の報告は極めて少なく,経験症例の報告を行う.

     両肩関節脱臼に対して制動術が行われていた28歳の女性看護師で,2年前より特に誘因なく繰り返す右肘弾発現象を認めたため,症状増強し受診となった.外傷の既往や尺骨の形態異常は認めず,肘屈曲・前腕回外位で力を入れた際に生じることより,随意性橈骨頭前方脱臼と診断した.

     術中所見では,輪状靱帯の腕橈関節への逸脱を伴った弾発現象と橈骨頭の前方脱臼を確認した.橈骨頭の制動方法として,有茎上腕三頭筋筋膜を用いた輪状靱帯再建術を行い,安定性が得られた.6週間固定後に可動域訓練を開始し,術後3か月で復職可能であった.諸家の報告では,尺骨の後方矯正骨切り術や回旋骨切り術によって腕橈関節の安定性を得る方法が報告されているが,輪状靱帯再建術のみで良好な結果を得た.尺骨の形態異常がない場合は,上腕三頭筋筋膜を用いた輪状靱帯再建も有用な方法と考えられた.

  • 橋本 貴弘
    2018 年 25 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     肘関節脱臼は予後良好の外傷である.まれに陳旧性となった症例の報告が散見されるが,まとまった治療成績の報告は少なく治療方針に議論の余地のある病態である.

     今回,受傷3か月経過して治療を行った陳旧性肘関節脱臼の1例を経験したので報告する.

     症例は59歳女性.約3か月前に受傷した.医療保険に加入しておらず放置していたが,1か月前に近医受診し当科紹介となった.陳旧性肘関節脱臼と診断し手術を行った.関節内の瘢痕組織を除去して整復,側副靱帯再建を行った.術後2週間でリハビリテーションを開始した.

     術後1年8か月時,再脱臼を認めず可動域も良好に改善していた.

     比較的稀な陳旧性肘関節脱臼の1例を経験し,靱帯再建術を行い良好な結果を得た.靱帯再建術は,当外傷の観血的整復後に肘関節の安定性を再獲得するための有用な方法の一つである.

  • 北島 祐二, 西浦 康正, 深井 諒介, 神山 翔, 原 友紀
    2018 年 25 巻 2 号 p. 153-156
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     16歳男性,2015年4月転倒受傷し肘が変になった.近医で短期間外固定を受けたが違和感が残存した.2016年4月再度転倒受傷.他医で診断つかず当科を受診した.可動域制限はなかったが屈伸による疼痛があり,屈曲時にclickを認めた.単純X線で内外側の剥離骨片,尺骨鉤状突起偽関節,CTで伸展位での後方脱臼を認めた.8月に手術を行った.透視下に伸展時の易脱臼性が観察された.外側を展開すると伸展回外筋群とLCULが外側上顆から一塊となって断裂していた.前方を展開,鉤状突起偽関節部を新鮮化し固定すると易脱臼性は消失した.LUCL・伸展回外筋付着部を縫合した.術後3週から伸展制限下に自動運動を開始,5週でギプスシーネを除去した.術後約1年で抜釘を行い,以降再発なく経過している.本症例はPLRIに尺骨鉤状突起骨折を合併し,後方不安定性を強く生じていた.安定性を得るため尺骨鉤状突起の固定が有効であった.

  • 金城 忠克, 上原 大志, 堀切 健士, 金谷 文則
    2018 年 25 巻 2 号 p. 157-160
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     尺骨鉤状突起偽関節を伴った後外側回旋不安定症(PLRI)に対し,関節鏡支援偽関節手術を施行し良好な成績を得たので報告する.症例は14歳,男児.約8か月前,サッカー中に左尺骨鉤状突起骨折を受傷した.他院で1か月間のギプス固定が行われ,以後症状なく経過していた.3週間前,サッカー中に左肘関節後方脱臼を受傷した.徒手整復後,2週間のシーネ固定が行われたが容易に再脱臼し当科へ紹介された.肘関節外側に腫脹を認め,PLRIテストが陽性であった.画像所見で尺骨鉤状突起偽関節およびLCL断裂を認めた.関節鏡視下に偽関節部の新鮮化と整復を行い,透視下に鋼線固定を行った.LCLは直視下にアンカーで縫合した.術後3週間ギプス固定を行い,術後8か月で抜釘術を行った.術後1年の時点で,疼痛,可動域制限,関節不安定性は認めず,JOA-JESスコアは100点であった.本術式は低侵襲で有用な方法と思われる.

  • 長沼 靖, 佐竹 寛史, 澁谷 純一郎, 石垣 大介, 高木 理彰, 花香 直美
    2018 年 25 巻 2 号 p. 161-163
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     目的:靱帯修復術を行った外傷性単純肘関節脱臼の治療成績について報告する.

     対象と方法:外傷性単純肘関節脱臼に対して靱帯修復術を行った9例9肘を対象とした.男性6例,女性3例,手術時年齢は平均33(16~59)歳,術後経過観察期間は平均15(3~46)か月であった.術後の外固定期間,肘関節可動域,最終観察時のJOA-JESスコアについて調査した.

     結果:術後外固定期間は平均20(13~42)日であり,肘関節可動域は経時的に改善を認めた.JOA-JESスコアは平均94(80~100)点であり,90点未満は2肘あったが,いずれも合併損傷を有し,両側側副靱帯修復を必要とした.

     考察:成績不良であった2例は両側靱帯と屈筋群の修復を必要とする不安定性の強い症例であった.不安定性が強い症例では術後外固定期間と可動域訓練の開始時期を症例に合わせて検討する必要があると考えられた.

  • 洪 淑貴, 堀井 恵美子, 大塚 純子, 山賀 崇, 井戸 洋旭, 長谷 康弘
    2018 年 25 巻 2 号 p. 164-167
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     Osborne-Cotterill lesion(OCL)は,肘関節後外側回旋不安定症(PLRI)に伴う上腕骨小頭後外側部の陥没病変を指す.OCLを伴う陳旧性PLRI4例を経験した.男女各2例,手術時年齢14~47歳で,全例肘外傷の既往があり,主訴は反復する脱臼感と疼痛であった.可動域制限はなく2例で軽度の内反肘を認め,不安定性が高度でpivot shift test陽性であった.OCL近傍に1~3個の遊離骨片を認め,OCLは小頭幅24~63%を占めた.手術は,遊離骨片を切除しLUCLを再建し,OCLは放置した.術後平均22か月の最終診察時,全例疼痛・不安定感は消失し,可動域制限はなく,学生1例を除く3例で原職に復帰した.OCLを伴うPLRIは,初回外傷でLUCL損傷を見逃した結果高度な不安定性を生じたと考えた.OCLの大きさにかかわらず,骨片切除とLUCL再建術にて良好な成績を得た.

III.神経
  • 山口 幸之助, 加地 良雄, 中村 修, 飛梅 祥子, 山本 哲司
    2018 年 25 巻 2 号 p. 168-171
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     目的:肘部管症候群に対する内視鏡補助下小切開尺骨神経皮下前方移動術の治療成績を検討した.

     対象と方法:約2~3cmの皮切で本法を施行した9肘,術前赤堀分類は,III期:2肘,IV期:4肘,V期:3肘であった.術前と術後6か月時の理学所見,電気生理学的検査,知覚評価の結果,Quick DASH(QD),6か月時の術後成績,合併症を検討した.

     結果:術前後のMCV,SCVは有意に改善した.Semmes-Weinstein test,m2PD値,s2PD値は改善傾向を認めたが有意差は無かった.握力健側比,ピンチ力健側比は有意に改善し,QDも有意に改善した.術後成績は優4肘,良5肘であり,内側前腕皮神経損傷などの合併症は認めなかった.

     考察:本法により各種検査値は良好に改善し,再発例や合併症もなく術後成績も概ね良好であった.本法は低侵襲かつ有用な手術方法であると考えられた.

  • 伊佐治 雅, 尼子 雅敏, 有野 浩司, 藤巻 亮二, 山田 真央, 近藤 晋哉, 千葉 一裕
    2018 年 25 巻 2 号 p. 172-175
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     肘部管症候群の診断は,一般的に神経伝導速度検査が用いられる.有野はMRIを用いて,Osborne band近位・遠位の高信号変化と径の腫大に着目しA,B,Cの3群に分けて治療の参考としてきた.本研究の目的はMR neurographyと神経伝導速度,臨床所見との関連を明らかにすることである.対象は肘部管症候群の24例とし3群に分類した.運動神経伝導速度(MCV)は尺骨神経と同側の正中神経を計測し,両者の比率(MCV比)を算出した.臨床所見には赤堀分類を用いた.A群において赤堀分類の重症例を多く認めた.MCV比はA群0.35,B群0.61,C群0.74であり,A群はB群に比べ有意に低かった(P=0.02).A群はMCV比が低く臨床的にも重症例を多く認め,手術の適応と考えられた.肘部管症候群に対するMR neurographyはMCV,臨床所見を反映し治療方針決定の参考になると思われた.

  • 長尾 聡哉, 冨塚 孔明, 山口 太平, 豊泉 泰洋, 竹迫 久亨, 長岡 正宏
    2018 年 25 巻 2 号 p. 176-179
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     肘部管症候群に対する小皮切単純除圧術の術後成績を調査したので報告する.2年以上経過観察可能であった53例54肘を対象とした.年齢:平均52.5(19~78)歳,性別:男性34例34肘,女性19例20肘,罹患側:右29例,左23例,両側1例であった.原因疾患,赤堀による術前重症度および術後成績,再発の有無を調査した.術後経過観察期間は平均39(24~94)か月であった.原因疾患は変形性肘関節症が半数以上を占め,外反肘を10肘,ガングリオンを3肘に伴っていた.重症度はIII期が最も多かった.術後成績は優33肘,良16肘,可5肘で不可はなかった.合併症はなかったが,3例(5.6%)再発し,高度外反肘:2肘,ガングリオン:1肘であった.Tinel徴候や電気生理学的検査で近位病変を,超音波検査により神経脱臼や占拠性病変を,単純X線像により重度外反肘を除外することで術後成績の向上が期待できると考えている.

  • 横田 淳司, 藤野 圭太郎, 仲野 春樹
    2018 年 25 巻 2 号 p. 180-182
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/25
    ジャーナル フリー

     神経伝導検査で伝導障害が軽度であった滑車上肘筋による尺骨神経障害の2例を経験したので報告する.症例1は45歳女性.MRIで滑車上肘筋と思われる構造物を認めたが,肘上-手の運動神経伝導速度(MCV),感覚神経伝導速度(SCVの低下は軽度であった.術中,滑車上肘筋を認め,これを切除すると筋の直下で神経が細小化していた.症例2は36歳男性.MRIと超音波で滑車上肘筋と思われる構造物を認め,inching法で内上顆の中枢0-1cmで潜時差の開大を軽度認めた.術中,滑車上肘筋を認め,その中枢で神経は軽度腫大していた.2例はいずれも比較的若年者で,肘運動時に症状が増悪していた.労作時に発症・増悪する尺骨神経障害例では,電気生理学的に軽度の障害であっても,滑車上肘筋の関与を念頭に置き,MRIなど画像診断や,inching法など詳細な電気生理学的評価を行う必要がある.

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