日本肘関節学会雑誌
Online ISSN : 2434-2262
Print ISSN : 1349-7324
26 巻, 2 号
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I. 基礎
  • 速水 直生, 面川 庄平, 飯田 昭夫, 藤谷 良太郎, 田中 康仁
    2019 年 26 巻 2 号 p. 1-3
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    【目的】橈骨頭前方脱臼において軟部組織損傷が如何に脱臼度に関与するか生体力学的に調査した.【方法】新鮮凍結屍体11上肢を対象とした.橈骨頭内に三次元位置センサーを挿入し,橈骨頭を前方に20Nで牽引して脱臼度を測定した.切離なしをstage0,輪状靭帯切離をstage 1,方形靭帯切離をstage 2,近位骨間膜の追加切離をstage3,中間部骨間膜の1/2切離をstage 4とした.肢位は前腕回内位,中間位,回外位で測定した.【結果】Stage 1では大きな変化を認めなかった.stage 2では回内位で大きく脱臼度が増加し,Stage 3では回外位で脱臼度が増加した.stage 4で全肢位で大きく脱臼度が増加した.【考察・結論】軟部組織損傷が大きくなると橈骨頭前方脱臼度は増加し,中間部骨間膜損傷後で顕著であった.方形靭帯は回内位で,近位骨間膜は回外位で橈骨頭の安定化に寄与した.
Ⅱ. 先天性疾患
  • 金谷 耕平, 射場 浩介
    2019 年 26 巻 2 号 p. 4-8
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    【目的】先天性橈尺骨癒合症に対するKanaya法の長期治療成績を報告する.【対象と方法】Kanaya法を行い術後3年以上経過観察した9例12肘を対象とした.手術時年齢は8歳(5~16歳),強直肢位は,中間位が1肘,10°~30°回内位が9肘,80°回内位が1肘,線維性癒合が1肘であった.術後経過観察期間は平均7年(3~12年)であった.術前,術後経過および最終観察時の可動域,X線像を調査した. 【結果】前腕の回内/回外可動域は,術前が24度回内強直位,術後1年が50/26°,最終観察時が50/5°であった.再癒合例はなく,橈骨頭の肥大が4肘,橈骨頭脱臼が3肘に認められた. 【考察】先天性橈尺骨癒合症に対するKanaya法は,術後1年で76°の前腕可動域が獲得できたが,長期経過では徐々に減少する傾向が認められた.
Ⅲ. 外傷・外傷合併症
  • 今泉 泰彦, 瀧川 悟史, 新倉 路生
    2019 年 26 巻 2 号 p. 9-11
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     小児上腕骨内上顆骨折に対して転位の大きな例に対し当院では手術を行っている.当院にて手術加療を行った11例11肘を対象とした.骨折型はWatson-Jones分類で2型7例,3型1例,4型3例であった.術前に尺骨神経領域のしびれがあったものが2例,肘頭骨折の合併を3例に認めた.Kirschner鋼線と吸収糸による8の字締結にて固定した.術後外固定期間は2~8週,平均3.7週であった.骨癒合は全例に得られ,肘関節可動域は屈曲130~150°(平均138.6°),伸展-10~0°(平均-2.7°)であった.MEPSは全例100点であった.小児上腕骨内側上顆骨折に対し,骨癒合率が保存療法は劣るため,将来的な尺骨神経障害などを考え,内上顆骨片が大きく転位している場合は手術療法を選択している.吸収糸による8の字締結は抜釘時にKirschner鋼線のみでよいため,侵襲が少なくよい方法と考えられる.
  • 川本 祐也, 奥井 伸幸
    2019 年 26 巻 2 号 p. 12-14
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     神経麻痺を合併した小児上腕骨顆上骨折の14例を報告する.障害神経は正中神経6例,前骨間神経1例,橈骨神経6例,正中・橈骨神経1例であった.骨折型は全例Gartland type IIIであった .神経障害が確認された時期は術前11例,術後3例であった.感覚障害のみが5例,運動障害を伴うものが9例であった.不全麻痺は4例で,その全てが経過観察で完全回復した.完全麻痺は5例で,そのうち4例で観血的に神経の確認を行った.いずれも橈骨神経麻痺の症例であった.初回手術時に神経の確認を行ったのが3例,麻痺が改善せず3か月後に神経を展開したのが1例であった.初回に神経展開した1例は神経の発赤,2例は近位骨片による神経牽引であった.3か月後に展開した症例で神経の部分断裂を認め,神経移植を行った.完全麻痺では神経断裂や神経嵌入があるため初回手術時に神経展開すべきである.
  • 能瀬 宏行, 若林 良明
    2019 年 26 巻 2 号 p. 15-17
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     小児上腕骨顆上骨折の手術治療50例を,術中徒手整復可能であったS群,36例と,徒手整復不能で観血的整復を行ったF群,14例にわけ,術前のX線画像,橈骨動脈触知の有無,神経麻痺の合併,更に,受傷から手術までに要した時間を調査した.F群は全てGartland type3骨折であり,その中でも,骨折線の近位幅と遠位幅の差が倍以上ある回旋や,顆部全てが骨折線よりも近位に転位している短縮を認める高度変形では6割が術中徒手整復困難であった.また,橈骨動脈が触知できなかった例は全てF群であり,神経麻痺の合併を認める例ではF群が有意に多い結果となった.手術までに要した時間に関しては,両群間で有意差は認めなかった.これらの術前評価は,小児上腕骨顆上骨折の手術治療において,術中徒手整復が可能かどうかを予測する参考となりうると考えられた.
  • 大浦 圭一郎, 轉法輪 光, 島田 幸造
    2019 年 26 巻 2 号 p. 18-22
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     われわれは伸展型小児上腕骨顆上骨折に対して,肘を深屈曲させて整復し深屈曲位のまま外固定する保存療法を行っている.本法を行い6か月以上観察した25例を調査した. Gartland分類type IIが19例,IIIが6例であった.初診時のtilting angleは3±22度で,深屈曲で36±6度まで整復され,骨癒合時は28±9度であった.3例が手術に移行し,いずれもtype IIIであった.最終humeral-ulnar angleと初診時Baumann角に正の相関を認めた.初診時の内側骨皮質粉砕がある例では最終humeral-ulnar angleは-2±4度で,粉砕がない症例では8±6度であった.対健側差10度以上の内外反は3例に認めた.本法は,骨癒合後にも自家矯正が期待できる年少児で特に有用であり,年長児や内外反転位が強い例,内側骨皮質粉砕がある例に行う際には注意を要する.
  • 玉置 康之, 田中 康之
    2019 年 26 巻 2 号 p. 23-26
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    【緒言】小児上腕骨内側上顆骨折Watson-Jones Type2の偽関節の1例を経験したので報告する.【症例】9歳の男児で,スケードボードで転倒受傷した.上腕骨内側上顆骨折Watson-Jones Type2と診断し骨接合術を行った.術後4か月で骨癒合が確認できたために抜釘を行った.術後6か月(抜釘後2か月)で骨折部が離開,術後7か月で痛みが出現した.透視下ストレス撮影では明らかな不安定性はなかったので保存治療を選択した.次第に痛みは軽減し,術後2年で痛みは消失し柔道が行えている.【考察】小児上腕骨内側上顆骨折Watson-Jones Type2に対し手術を行ったが偽関節に至った.不安定性がなかったので保存治療を選択したが良好な成績が得られた.
  • 藤本 秀太郎, 小笹 泰宏, 早川 光, 射場 浩介, 山下 敏彦
    2019 年 26 巻 2 号 p. 27-29
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     14歳男性.2m程の高さから落下し受傷した.単純レントゲン像で明らかな骨折は認めずMRIにて左上腕骨小頭骨挫傷,内側側副靭帯損傷と診断され保存治療を施行されたが,受傷後16週で伸展制限と左手指のしびれを認めたため当科紹介となった.当科初診時,左肘関節に30度の伸展制限と小指球筋の萎縮および小指・環指尺側のしびれを認めた.単純レントゲンおよびCTにて内側側副靱帯に沿った骨化を認めた.外傷後の異所性骨化による可動域制限と肘部管症候群と診断し骨化巣成熟を待機し,受傷後1年3ヵ月で観血的関節授動術と尺骨神経皮下前方移所術を行った.内側アプローチにて内側側副靱帯を展開しAOLに限局した骨化巣を認め,関節授動にはAOLを含めた切除を要した.術中の透視で明らかな外反不安定性はなかった.術後,可動域と尺骨神経領域のしびれ,筋力低下は改善し明らかな不安定性は認めていない.
  • 森田 晃造, 梅澤 仁, 増本 奈々
    2019 年 26 巻 2 号 p. 30-32
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     不安定性を有する上腕骨遠位端骨折に対し近年double plate固定による強固な内固定が推奨されているが過度の内固定は軟部組織への侵襲及び医療経済の観点から疑問である.一方single plate固定と1本のスクリュー固定では骨粗鬆症例では癒合不全も散見される.著者らは粉砕の軽度な本骨折に対し外側柱はanatomical locking plate固定,内側柱は2本のcannulated screw固定というハイブリッド固定法を行っており本法の治療成績について検討した.本法を施行した8例8肘全例で骨癒合が得られ,平均関節可動域は伸展-9度,屈曲126度であり術後尺骨神経障害残存などの合併症は認められなかった.本法は2本のスクリュー固定により内側柱の回旋トルクに対する固定性を高めることにより骨癒合を獲得しdouble plate固定に比べより低侵襲で慎重な症例選択を行えば有用な方法である.
  • 松浦 充洋, 吉田 史郎
    2019 年 26 巻 2 号 p. 33-35
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     上腕骨遠位端coronal shear fracture,Dubberly分類 Type3Aの2症例を経験し,アプローチを検討したので報告する.手術は症例1は前外側appで,症例2は外側Appで展開し,acutrak mini/acutwist screwで骨接合を行い,後療法は術後7日目より自動可動域訓練を開始した.術後1年で異所性骨化や骨壊死なく骨癒合良好,可動域はどちらも130°/-10°,JOA-JESスコアは症例1:96,症例2:97,握力は健側比症例1:94%,症例2:95%と改善した.本骨折は骨折型により適したapproachの選択が重要で,Type3Aは前外側appを推奨されている報告がある.今回小頭骨片の転位が大きい症例2に対して外側Appで用いたが骨折面が見やすく整復が容易であり術後成績も症例1と変わなかった. 小頭骨片が大きいType3Aは外側appも有用であった.
  • 大塚 純子, 堀井 恵美子, 洪 淑貴
    2019 年 26 巻 2 号 p. 36-39
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    当院で手術加療を行い,術後3か月以上経過観察可能であった10例を対象とした.受傷時平均年齢は46.8歳,平均観察期間は13か月であった.Dubberley分類は1Bが1例,2Aが3例,3Aが4例,3Bが2例だった.手術アプローチは9例で拡大外側アプローチを用いた.内固定方法はheadless compression screwを使用した症例が7例,プレートが3例であった.術後ギプス固定期間は10日から3週間だった.骨癒合は全例に認め,平均肘関節可動域は屈曲123度,伸展-28度,JOA-JES scoreは平均82 点であった.肘関節可動域が90度以下であった症例は5例で,これらは正しい整復と強固な内固定が行えなかったことが成績不良の原因と考えられた.成績向上のためには骨折部のアプローチ方法,内固定方法について検討が必要であると考えられた.
  • 入船 秀仁, 阿久津 祐子
    2019 年 26 巻 2 号 p. 40-44
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     腕骨遠位1/3骨幹部骨折に対し,肘頭窩穿孔式順行性髄内釘固定にて治療を行った症例の治療成績を検討した.対象は11例,男性9例,女性2例で,平均年齢は40.3歳である.骨折型はAO分類A型が3例,B型が7例,C型が1例であった.全例術後合併症無く平均10.2週で骨癒合は得られ,最終経過観察時のUCLA shoulder rating scaleは平均33.4点,Mayo elbow performance scoreは平均100点でいずれもexcellentであった.本法は上腕骨遠位1/3骨幹部骨折の治療の上で,有用な選択肢の一つと考えられる.
  • 小林 樹, 松浦 佑介, 山崎 厚郎, 赤坂 朋代, 小曽根 英, 向井 務晃, 松山 善之, 山崎 貴弘, 鈴木 崇根, 國吉 一樹
    2019 年 26 巻 2 号 p. 45-48
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     高度な外傷性肘関節骨軟部欠損に対し,肩甲皮弁および人工肘関節置換術を施行し良好な機能改善を認めた症例を経験した.症例は62歳女性.交通事故にて右肘関節開放骨折を受傷した.受傷当日,前医にて洗浄デブリードマン,創外固定術を受けるも肘関節の高度骨軟部組織欠損をきたした.当院搬送後,受傷14日目に初期治療として肩甲皮弁を用いた軟部組織再建を行った.受傷後11か月にて人工肘関節挿入術を行った.受傷後15か月時点で,可動域は他動伸展0°,自動屈曲100°,前腕自動回外90°,回内30°まで改善した.本症例では肩甲皮弁による軟部組織修復を行い感染を来すことなく術後リハビリテーションが可能であった.また高度な骨欠損による上肢の短縮を認めたが,人工肘関節挿入にて短縮を解消し肘の自動屈曲力の改善を得た.肘関節周囲の高度な骨軟部組織欠損に対して肩甲皮弁および人工肘関節を併用した治療選択は時に有用である.
  • 黒沢 一也, 栗原 秀行, 中島 大輔, 永井 彩子, 安藤 貴俊
    2019 年 26 巻 2 号 p. 49-53
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     Press-fit stem人工橈骨頭(P群)5例とsmooth stem人工橈骨頭(S群)4例の治療成績を調査した.機能評価は前腕回内外可動域,Mayo elbow performance score(MEPS),JOA-JES score,X線評価はstem周囲lucent zone,stress shieldingによる骨頭下骨吸収,橈骨頚部の異所性骨化を観察した.平均MEPSはP群90.0±5.0,S群98.8±2.5,平均JOA-JES scoreはP群85.4±3.3,S群99.0±2.0であった.Lucent zoneはP群の2例に発生し,stress shieldingはP群4例,S群1例に認めた.回内外可動域はP群とS群で有意差はないが,異所性骨化例では有意に低下していた.Press-fit stem人工橈骨頭はstress shieldingが発生しやすいと思われた.
  • 志村 治彦, 若林 良明, 新関 祐美, 鈴木 志郎, 鈴木 英嗣
    2019 年 26 巻 2 号 p. 54-57
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     橈骨頭粉砕骨折に対する人工橈骨頭置換術の治療成績について検討した.2005年から2017年に人工橈骨頭置換術を行い術後6か月以上の経過観察が可能であった17例を対象とした.受傷時年齢は平均61±16(36~82)歳,男性5例,女性12例であった.使用した機種はnon-cementの2種類で,経過観察期間は平均29.8±18.9(6~72)か月であった.肘関節可動域は伸展平均-13.5±8.7度,屈曲平均128.9±11.1度,前腕可動域は回内平均73.9±22.8度,回外平均74.5±15.8度であった.合併症は遅発性尺骨神経障害を1例,異所性骨化を2例に認めたが,神経損傷,人工橈骨頭抜去,再置換術を認めなかった.自験例の成績は短~中期であるが比較的良好であり,少なくとも高齢者に対しては積極的に行ってよい手術方法であると考えられた.今後,長期にわたり術後経過を観察する必要がある.
  • 千葉 紀之, 坪 健司
    2019 年 26 巻 2 号 p. 58-60
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     Mason分類Type IIの橈骨頭単独骨折に対して,我々は長橈側手根伸筋と短橈側手根伸筋の間から進入するアプローチでDTJスクリュー固定を行っている.今回,橈骨頭の骨折部位,本アプローチの有用性について検討した.骨折部位は3DCTで評価し,橈骨粗面を真下として橈骨頭関節面から見て,前方内側,前方外側,後方の3つに分類した.骨折部位は全例で前方内側と前方外側の範囲にあった.3 partの症例では前方外側骨片が大きい主骨片であり,前方内側骨片はそれより小さく転位も小さかった.全例で骨癒合が得られ,術後に神経障害を生じた症例はなかった.今回の症例群では橈骨頭の骨片は全て前腕中間位で前方に存在していた.本アプローチで展開して前腕を回内外させることで,骨折部の観察および整復・固定が容易であった.Mason分類Type IIの橈骨頭単独骨折に対しては本アプローチが有用であると思われた.
  • 城内 泰造
    2019 年 26 巻 2 号 p. 61-63
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    【目的】成人橈骨頚部骨折対して鋼線による髄内釘整復固定術で良好な結果が得られたため報告する.【症例】症例1:25歳女性.元大学器械体操部選手でアクロバット演技中に着地に失敗し受傷.Morrey分類type II(橈骨頚部角13度)の橈骨頚部骨折の診断.鋼線による髄内釘固定術を選択.術後3ヶ月時で骨癒合し抜釘.疼痛なく可動域も左右差なし.術後5ヶ月で演技に復帰.症例2:22歳女性.事務職.自転車通勤中に転倒し受傷.Morrey分類type II(橈骨頚部角26度)の左橈骨頚部骨折と内側側副靭帯・屈筋損傷を受傷.鋼線による橈骨頚部の髄内釘固定術と靭帯・筋修復術を施行.術後4ヶ月で抜釘し,疼痛なく可動域制限なし.いずれも最終診察の術後12か月で経過良好.【考察】観血的操作では肘関節周囲組織への侵襲が大きい.小児で適応が多い髄内釘固定術だが,成人でも十分な固定力があり,有用な選択肢の一つと考えられた.
  • 安井 行彦, 片岡 利行, 市場 雄大, 難波 二郎
    2019 年 26 巻 2 号 p. 64-66
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    【緒言】 陥没中間骨片を伴う肘頭骨折は,滑車切痕の曲率に着目しなければ転位に気づきにくく診断に留意すべき骨折型である.【対象と方法】 肘頭骨折25例を対象とし,Colton分類Stage Bを中間骨片の転位がないStage B-Nと中間骨片の近位のみが陥没したStage B-Dに分けて,受傷時の単純X線画像を読影・分類し,検者間信頼性を検討した.CTで分類したものを正解として,正診率を算出した.【結果】 全体の検者間信頼性を示すKappa係数は0.61で,比較的高い信頼性を示した.単純X線画像での正診率は全体では62.0%で,陥没中間骨片を伴うStageでは正診率が低く,誤診の86%は過小評価であった.【考察】 陥没中間骨片をともなう肘頭骨折は単純X線写真の診断では過小評価してしまう傾向があるため,術前にCTを撮影し,滑車切痕の曲率に着目して評価することが望ましい.
  • 南野 光彦, 小寺 訓江, 友利 裕二, 高井 信朗
    2019 年 26 巻 2 号 p. 67-70
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     ALPS Olecranon plateを用いて内固定を行った肘頭粉砕骨折18例18肘(平均年齢64.8歳)の治療成績と問題点について検討した.骨折型はColton分類group 2C:8例,2D:7例,4:3例であった.近位小骨片を有する10例にファイバーワイヤーによる締結を追加した.全例骨癒合を認め,JOA-JEA scoreは平均91.6点,Mayo elbowperformance scoreは平均95.0点,Quick DASHは平均12.6点であった.またplate遠位固定後も骨に合わせてplate近位を3次元のin-situ bendingが可能で,近位screwの刺入位置を調節でき,強固な初期固定が得られる利点がある.しかし近位骨片が粉砕,小骨片の場合,近位スクリュー径3.5mmでは太く,症例に応じて2.7mm径を持つVALCPやVariAxを使用すべきと考える.
  • 安原 清文, 坪 健司, 千葉 紀之
    2019 年 26 巻 2 号 p. 71-74
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    【はじめに】高齢者の肘関節後方亜脱臼に伴ったRegan分類typeIIBの尺骨鉤状突起骨折に対してスプリントによる保存療法を経験し,良好な成績が得られたので報告する.【症例】92歳女性.屋内で転倒受傷.同日当院紹介となる.初診時CTにてRegan分類typeIIBの尺骨鉤状突起骨折と診断された.年齢的な活動レベルを考慮し,伸展制限を有したスプリントによる保存療法とした.受傷後23週のCTでは骨性の癒合は認めていないが,関節可動域は屈曲145度,伸展-20度,不安定性もなく,JOAスコアは95点で終了となった. 【考察】尺骨鉤状突起骨折Regan分類typeIIの治療に関しては統一の見解が得られていない.また,スプリントによる保存療法として,3~4週間のギプス固定後装具を使用することが一般的だが,今回我々が早期から用いた伸展制限を有した肘関節用スプリントは有用であると考える.
  • 鈴木 雅生, 市原 理司, 原 章
    2019 年 26 巻 2 号 p. 75-78
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    (はじめに)小児モンテジア骨折は比較的まれな骨折のうちの一つである.適切な診断と治療を行えば予後良好な小児の骨折の一つである.今回我々は,側方へ転位した小児モンテジア骨折に対してプレートを用いて加療したので報告する.(対象と結果)2015年1月から2018年3月までに当院で手術加療を行った側方へ転位したモンテジア骨折3例を対象とした.男児1例,女児2例平均年齢は6.2歳であった.全例plateを用いて治療した.最終経過観察時の外反肘などの合併症はなく可動域制限も認めていない.(考察)モンテジア骨折は一般的には保存加療が第一選択であるが,整復困難な症例は手術加療が選択される.一般的には鋼線を髄内釘として整復位を得るものが一般的であるが,粉砕があり側方転位がある症例に関しては鋼線での整復位保持が難しく,転位方向側からのbutress固定が良いと思われる.
  • 林 進, 野村 英介
    2019 年 26 巻 2 号 p. 79-81
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     上腕骨顆上骨折とMonteggia骨折を同側上肢に合併し,正中神経障害を認めた1例を経験したので報告する.症例は6歳男児で,遊具より転落して受傷した.正中神経領域のしびれを認め,橈骨動脈の触知は可能だった.単純X線では上腕骨顆上骨折Gartland分類type III,Monteggia骨折Bado分類type Iを認めた.同日手術施行,前腕開放創を洗浄デブリすると,尺骨近位骨片に持ち上げられた正中神経を認めた.上腕骨顆上骨折は前方アプローチで展開し,経皮ピンニング固定した.尺骨は肘頭から髄内釘で経皮ピンニング固定した.この時点で橈骨頭は整復されていた.術後5週で可動域訓練を開始し,術後4週で正中神経障害は改善し,術後8か月で骨癒合は良好で,可動域は良好で,疼痛,内反肘はない.同側上肢に上腕骨顆上骨折とMonteggia骨折を合併した報告は極めて稀で,文献的考察を含めて報告する.
  • 岡村 直樹
    2019 年 26 巻 2 号 p. 82-85
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     近年,尺骨塑性変形を伴ったHume骨折の報告も認められる.今回,当院で経験した3例について報告する.受傷時年齢は4歳と7歳と10歳で,初診時に3例とも見逃されており翌日に全身麻酔下に尺骨の塑性変形と橈骨頭の前方脱臼を徒手整復可能であり外固定を継続した.最終観察時に尺骨の弯曲が残存している例もあるが疼痛や可動域制限は認めていない.受傷機転としては,転落が多く見逃しも多い.治療法としても,徒手整復から尺骨の骨切りと様々であるが,受傷後早期であれば整復可能である.橈骨頭の前方脱臼が認められる際には,尺骨の塑性変形と肘頭骨折が合併することが多く見逃さないように注意することが重要である.また,時期を逸すると徒手整復が困難となるため早期の的確な診断が重要であると考える.
  • 黒岩 宇, 志津 香苗, 船橋 拓哉, 長谷川 正樹, 鈴木 克侍
    2019 年 26 巻 2 号 p. 86-89
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     小児の肘関節脱臼は骨折を伴うことが多く,骨性要素の修復が重要とされるが,靱帯損傷の修復については見解の一致は得られていない.今回われわれは手術加療を要した,小児肘関節脱臼骨折6例の臨床成績について,文献的考察を加え報告する.対象は2012年以降に手術を施行した,男児5例,女児1例で,合併骨折は,内側上顆骨折2例,外側顆骨折2例,橈骨頚部骨折2例,外側上顆骨折1例であった.靱帯損傷は4例に内側側副靱帯損傷を認め,靱帯修復を行った症例は2例であった.外固定期間は平均3週で,術後3か月での平均可動域は,屈曲 128°,伸展-8°であった.小児肘関節脱臼骨折において,内側上顆骨折や外側顆骨折合併例では靱帯修復の必要性は低いが,橈骨頚部骨折を伴う症例では靱帯修復が必要な可能性がある.骨折だけでなく軟部組織損傷の正確な診断と評価を行う必要があると考える.
  • 西脇 正夫, 岡崎 真人, 田崎 憲一, 久島 雄宇, 堀内 行雄
    2019 年 26 巻 2 号 p. 90-94
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     肘関節terrible triad injuryで橈骨頭が粉砕した7例の治療成績を後向きに調査した.橈骨頭粉砕骨折には,27~50才の男性3例で骨接合を行い,うち1例は腸骨移植を併用した. 61~80才の女性4例では1例で骨接合,3例で人工橈骨頭置換術を行った.尺骨鉤状突起骨折は,lasso法やscrew等で固定した.外側側副靭帯と内側側副靭帯の断裂はすべて縫合した.橈骨頭の骨接合を行った4例は全例骨癒合した.2例は抜釘前には可動域制限があったが,抜釘時に橈骨頭周囲の癒着剥離で改善した.骨接合,人工橈骨頭置換術とも疼痛や不安定性が残った例はなく,可動域は良好であった.Terrible triad injuryでの橈骨頭粉砕骨折に対し,高齢女性では人工橈骨頭置換術が有用であるが,青壮年者では生涯患肢を制限なく使用するために骨接合を行い,骨移植や抜釘時に癒着剥離を要したが良好な結果が得られた.
  • 千葉 充将, 高橋 信行, 入船 秀仁, 小笹 泰宏, 射場 浩介
    2019 年 26 巻 2 号 p. 95-98
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     有茎広背筋移行を用いた肘屈曲再建であるZancolli法を行った6例6肘を検討した.手術時年齢は平均55歳(28~73歳),全例男性.原因疾患は外傷3肘(上腕・前腕開放骨折1肘,肘関節完全離断1肘,肘関節不全離断1肘),軟部肉腫2肘,頚椎症性筋萎縮症1肘,平均観察期間は3.5年(5ヶ月~11年)であった.術式はZancolliらの方法に従って行い,軟部組織欠損例は皮島をつけたmyocutaneous flapとして挙上し軟部組織欠損の再建も同時に行った.術後合併症は感染,部分壊死を1例ずつ認めた.肘関節可動域の平均は自動屈曲107(80~140)°,自動伸展-17(-50~0)°,肘屈曲のMMTは平均3.8(2~5)であった.本法は良好な肘屈曲力や肘関節可動域が得られるだけではなく自然な肘屈曲が得られ,四肢外傷や悪性腫瘍広範切除後の軟部組織再建にも応用できる優れた方法である.
  • 大本 慎也, 本宮 真, 渡辺 直也, 岩崎 倫政
    2019 年 26 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     肘関節側副靭帯損傷を伴う複合損傷は,拘縮等合併症の回避を講じる必要がある.当院における肘関節側副靭帯修復術を要した脱臼および脱臼骨折の治療成績を調査し,残存した可動域制限に関してリハビリテーションの観点から検討した.2015年4月~2018年4月に肘関節側副靭帯修復術を施行した症例のうち,術後3か月以上経過観察可能であった16肘を調査した.男性10肘,女性6肘,平均年齢46歳(18~89歳),平均経過観察期間は12か月(3~22か月)であった.人工肘関節置換術を要した1肘を除いた15肘の平均可動域は,伸展-13°,屈曲139°,回内77°,回外82°であった.MEPSは平均95点であった.伸展可動域不良症例に対しては早期から屈曲拘縮の可能性を念頭に置き改善を図ることが重要と考える.回内・回外制限を生じた2例は前腕bipolar injury例であった.肘関節重度損傷では,前腕bipolar injuryの存在に留意する必要がある.
  • 佐野 栄, 阿部 圭宏, 斉藤 忍
    2019 年 26 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    【症例】47才 男性.交通外傷受傷.輪状靭帯嵌頓による徒手整復不能な右肘関節脱臼と広範囲の骨間膜損傷を伴った同側橈尺骨骨幹部骨折に対して観血的手術を行った.日常生活に支障はないものの,仕事時に重い台車を手前に引く際の橈骨頭前方脱臼に伴う症状が出現したため骨性アライメントの矯正手術を行ったが,同肢位での新たな疼痛の出現と不安定性の残存を認めたため輪状靱帯再建術を行った.術後,仕事時の症状が消失し毎日300kgの荷物の載った台車を引っ張っている.【考察】本症例では特有の肢位で生じる近位橈尺関節不安定症が問題となった.当初骨間膜の再建術も検討したが未だ確立した方法ではなく侵襲も大きいため,アンカーを用い簡便な方法としたBell-Tawse変法で手術を行い良好な成績が得られた.今後の経過観察が必要だが,骨性アライメントの矯正だけでは不安定性が残存する症例に対して一つの選択肢となり得る術式と考えた.
  • 篠原 孝明, 能登 公俊, 中尾 悦宏, 中村 蓼吾
    2019 年 26 巻 2 号 p. 107-109
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     外傷性肘関節脱臼後に中等度以上の肘不関節安定性を認めた39例に対して手術加療を行った.両側不安定性を認めた33例中,29例は両側側副靱帯(LCL,MCL)を修復し,4例はLCLのみ修復した.外側不安定性を認めた6例は全例LCLを修復した.尺骨鉤状突起骨折以外の合併骨折は観血的整復固定術を行った.最終観察時の肘伸展は平均-5度,屈曲は平均134度であり,肘関節不安定性は全例認めず,明らかな合併症も認めなかった.Mayo elbow performance scoreは平均98点であった.本損傷に対する保存治療は肘不安定性が残存する可能性があるが,靱帯修復を行うことで安定した肘関節と良好な肘機能を獲得することができると考えられた.
  • 松田 匡弘, 櫛田 学, 徳永 真巳
    2019 年 26 巻 2 号 p. 110-113
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    【はじめに】肘関節PLRIは,軸圧,回外,内反の結果生じるLCL損傷である.今回,初回受傷時に見逃され,慢性PLRIを呈した症例を経験したので報告する.【症例1】54歳女性.橈骨頭骨折と上腕骨小頭に欠損像とそれに相対する陳旧性の骨片を認めた.PLRIテスト陽性で骨接合,偽関節手術,LCLの縫縮を行なった.術後経過良好である.【症例2】32歳男性.著明なOA変化と上腕骨小頭・橈骨頭の欠損と陳旧性骨片を認めた.骨片摘出とLCLの縫縮を行なったが,術後2ヶ月時に再受傷してPLRIの再燃を認め,LCL再建を行なった.術後1年半で経過良好である.【考察とまとめ】PLRIは近年広く周知されているが,受傷機転や合併する骨折型から受傷機転を推測することが肝要である.本報告では,上腕骨小頭と橈骨頭に骨折を認めた.OA症例では骨性支持の破綻や靱帯不安定性があると考え,靱帯再建が望ましい.
  • 仲 拓磨, 坂野 裕昭, 石井 克志
    2019 年 26 巻 2 号 p. 114-116
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     肘関節靭帯損傷を疑う外傷に対し,MRIで完全断裂を認めるか,ストレス撮影にて明らかな不安定性を認めるものを靭帯修復の手術適応としている.外傷性肘関節靭帯損傷に対しアンカーを用いた靭帯修復が行われ術後3か月以上経過観察が可能であった33例33肘のうち,骨接合を必要とする骨折を合併したものを除外した17例17肘(男8女9例 平均38.8歳)の成績を調査した.受傷部位はMCL単独5例,LCL単独6例,MCLとLCL両側が6例であった.最終診察時,疼痛のないものが16例で,スポーツ活動中に軽い痛みを認めるものが1例であった.平均可動域は伸展-1.1度,屈曲135.6度,回内87.8度,回外88.1度であり,平均QDASHは3.6点であった.合併症は1例で前腕外側に軽い痺れを認め,1例でアンカーの緩みを認めた.骨性因子の破綻のない外傷性肘関節靭帯損傷に対するアンカーを用いた手術成績は良好であった.
  • 飯田 昭夫, 面川 庄平
    2019 年 26 巻 2 号 p. 117-119
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     遠位上腕二頭筋腱断裂術後に超音波を用いて経時的に観察を行った.症例は46歳男性,野球のバッティング時に受傷.初診時前腕回外力はMMT4と低下し,MRIにて遠位上腕二頭筋腱の蛇行と筋腹の近位への退縮を認め,遠位上腕二頭筋腱完全断裂と判断した.受傷11日目に前方1皮切から腱を脛骨粗面に縫着した.術後3週間肘屈曲90°前腕回外50度でギブス固定の後自動回内外運動を開始,徐々に肘伸展を許可し術後3か月で完全伸展とした.術後3週より超音波による二頭筋腱の評価を開始した.前腕長軸像では,腱の連続性,形態,質が確認でき,前腕回内外運動に伴う滑走が確認できた.上腕長軸像では,二頭筋の筋腱移行部が皮下直下に確認でき,前腕回内外運動に伴う筋腱移行部の動きを定量することができた.術後の腱の状態を超音波により観察することで安心したリハビリテーションが可能で,患者のモチベーション維持にも有用であったと思われた.
  • 国分 毅, 美舩 泰, 乾 淳幸, 片岡 武史, 黒澤 尭
    2019 年 26 巻 2 号 p. 120-122
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     比較的稀な肘頭裂離骨折を伴う上腕三頭筋腱皮下断裂4例に対して手術加療を行い良好な経過を得たため報告する.Krackow縫合にて三頭筋腱にポリエチレン糸をかけ肘頭に作成した骨孔に縫着し,さらに骨片に不安定性を認めた3例にはtension bandwiring を追加し,約2週間の外固定後に可動域訓練を開始した.最終経過観察時,全例疼痛なく可動域も良好であった.上腕三頭筋腱皮下断裂は牽引による介達外力によるものが多いとされる.本検討では2例が打撲による直達外力によるものであったが,裂離骨折していることを考慮すると打撲前に牽引による介達外力で受傷していた可能性がある.三頭筋腱をKrackow縫合にて肘頭に縫着した後に,骨片をtension bandwiringで修復した結果,強固な固定により再断裂も防げ早期の可動域訓練を行えたことが良好な術後成績につながったと思われた.
  • 白幡 毅士
    2019 年 26 巻 2 号 p. 123-125
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    背景:上腕二頭筋において皮下腱断裂の報告は多いものの筋腹断裂の報告は非常に少なく,定まった治療方針もない.今回,上腕二頭筋筋腹断裂に対し薄筋腱を用いて補強しつつ修復した1例を経験したので報告する.
    症例:39歳,男性.作業中,回転する機械に上着を巻き込まれ,衣服によって左上腕を締め上げられて受傷し救急搬送された.左上腕中央前面に横走する擦過傷と筋腹の陥凹を認めた.肘屈曲はMMTでFair,回外筋力はGoodであった.上腕MRIでは左上腕二頭筋筋腹が断裂しており,上腕二頭筋筋腹断裂と診断し手術を行った.上腕二頭筋筋腹を薄筋腱を用いて再建した.術後7カ月時,肘屈曲と回外筋力はともにNormalまで回復した.
    考察:上腕二頭筋筋腹断裂に対して薄筋腱を用いて補強修復することにより早期リハビリが可能となり肘屈曲・回外機能の再獲得に有用であった.
  • 市場 雄大, 片岡 利行, 安井 行彦, 難波 二郎
    2019 年 26 巻 2 号 p. 126-128
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    【症例】症例は26歳男性で,ベルトコンベアに右上肢を巻き込まれて,右肘関節脱臼を受傷した.橈骨神経領域の麻痺を認め,近医で徒手整復を受けたが,神経麻痺について受傷後1週間で当院紹介となった.来院時には橈骨神経領域の知覚脱失を認め,腕橈骨筋以下の橈骨神経領域のMMTは0であった.肘関節では著明な内反動揺性を認めた.肘関節外側アプローチで,靭帯修復術と神経移植術を行った.外側側副靭帯,腕橈骨筋,長橈側手根伸筋は起始部近傍で断裂し,橈骨神経も完全に断裂していた.橈骨神経は腓腹神経を用いて,神経移植を行った.術後神経障害の改善を認め,術後3年現在は疼痛なく,筋力も比較的良好に回復した.【考察】一般に開放創を伴う橈骨神経断裂の報告は散見されるが,開放創のない外傷による橈骨神経断裂は稀である.受傷後改善を認めない神経麻痺については本例のような稀な皮下断裂も念頭に置き手術計画を立てることが重要である.
  • 成田 裕一郎, 千馬 誠悦
    2019 年 26 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    【症例】 2 歳 9 か月の男児.四つ這いで兄に背中に乗られて左肘を受傷した.初診時の単純X線では上腕骨外側顆は小骨片を伴い尺骨近位部とともに後内側に転位していた.翌日に手術で直視下に上腕骨遠位骨端線離開と診断し,整復して内外側からKirshner 鋼線で骨接合した.術後 9 か月で 10 °の内反肘を認め,以後, 4 歳, 5 歳,7 歳時に上腕骨外側顆骨折を受傷して内反肘変形が進行した. 16 歳時には 23 °の内反となり,単純X線では外側顆幅が健側比 112% ,内側顆幅が 91% であった.肘関節は 10 ~ 135 °,回内外 70/90 °で疼痛や不安定性はなく, JOA-JES score は 80 点であった.【考察】上腕骨遠位骨端線離開では正確な整復と確実な固定が大切で,内反肘変形を生じた場合には外側顆骨折の危険性と矯正骨切り術の必要性を十分に説明する必要がある.
  • 大野 義幸, 白井 之尋
    2019 年 26 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     高齢者における上腕骨通顆骨折後の偽関節は骨接合術による治療が困難で,人工関節置換術などの報告が散見される.近年,骨移植を併用したダブルプレート固定による強固な内固定での骨接合術の良好な成績が報告されているが,その骨移植方法についての具体的な記載は少なかった.今回,2例の高齢者上腕骨通顆骨折後の偽関節に対し,萎縮,硬化した内,外側柱を骨切除や大きく開孔することなく,K-wireによる多数ドリリングによる穿孔で新鮮化し,内,外側柱の骨断端間には腸骨からのブロック状の骨を挟み込む様に骨移植を行った.特に先細りした内側柱においては先細りした部分をブロック状移植骨の海綿骨部分に差し込むように骨移植し,さらに間隙には十分な海綿骨移植を追加した.その後,ダブルプレート固定術にて強固に内固定することで早期に可動域訓練を開始でき,骨癒合を得ると同時に,良好な可動域,機能改善も得られたので報告する.
  • 磯崎 雄一, 松久 孝行, 鈴木 昌, 小原 賢司, 大澤 一誉, 田鹿 佑太朗, 古屋 貫治, 木村 亮介, 西中 直也
    2019 年 26 巻 2 号 p. 138-141
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     小児の肘関節拘縮は稀である.今回,外傷後肘関節拘縮に対し鏡視下授動術を施行したので報告する.症例は8歳の女児である.転倒受傷し,上腕骨外側顆骨折の診断にて,前医で骨折観血的手術を施行された.術後3.5か月で抜釘されたが,可動域は増悪し抜釘後4.5か月で屈曲80度,伸展-35度となり,当院紹介受診となった.保存加療を継続するも屈曲25度,伸展-20度と悪化し,ロッキング症状も加わり鏡視下授動術を施行した.術前JOA-JES scoreは60点であった.鏡視下に関節内遊離体の摘出,関節包の切離を施行し,内側側副靭帯後斜走繊維を小皮切で切離した.術後2.5年の最終経過観察時の屈曲は115度,伸展-10度,JOA-JES scoreは83点である.小児の肘関節骨折後の拘縮は稀で,保存的加療が第一選択であるが,治療に抵抗する場合は小児であっても手術を考慮すべきであり,鏡視下授動術は有効であった.
Ⅳ. スポーツ障害
  • 野口 亮介
    2019 年 26 巻 2 号 p. 142-145
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     15歳男子.野球にて右肘外側部痛出現.近医より紹介され,X線検査にて分離型の上腕骨OCD認めた.ノースローにて疼痛軽減したが,バッティング中に違和感出現.X線にて病期の進行を認め手術施行.関節鏡視にて10×12mm の不安定性骨片摘出後,上腕骨小頭後方からの有茎肘筋弁付き骨移植術を行った.術後3か月からキャッチボールを開始し,6か月で全力投球許可した.術後13か月の最終観察時,疼痛および肘関節可動域制限なく競技復帰している.ICRS OCD分類stage III以上の病変に対しては,不安定性病変の掻爬を要し,10mm以上の欠損では関節面再建が必要である.Mosaic plastyや肋骨肋軟骨移植はドナーの合併症リスクがある.本術式は,他部位からの骨軟骨移植を必要とせず,局所で手術は完結し骨癒合にも有利である.ただし,採取できるサイズには限度があり,10-15mmの欠損に対して有用である.
  • 佐野 友彦, 大井 徹, 森田 哲正
    2019 年 26 巻 2 号 p. 146-150
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     外側壁を含むICRS分類ⅢおよびⅣの上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に対し,病巣郭清と海綿骨移植を併用した骨釘移植術を施行したのでその成績について報告する.症例は7例7肘を対象とした.手術では全例母床および遊離骨片の軟骨下骨を十分に郭清し,肘頭部から採取した海綿骨を充填した後に肘頭部骨皮質で作成した骨釘で固定した.平均術後JOA肘関節スポーツスコアは96.0点(88~100点)で,全例がもとの競技へ復帰した.最終観察時の単純X線像において全例で骨癒合を確認できた.4例に小頭関節面の不整を,1例に小頭の扁平化を認めた.骨釘固定に十分な病巣郭清と海綿骨移植を併用することで,ICRS分類ⅢおよびⅣの上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に対しても短期的に満足できる結果を得ることが出来た.最終観察時において半数以上に関節面の変化を認めており,長期的には更なる観察と評価が必要と考えられる.
  • 米川 正悟, 渡邊 幹彦
    2019 年 26 巻 2 号 p. 151-155
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     われわれは野球選手の上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に対して骨軟骨柱移植術を行なう場合がある.骨軟骨柱の挿入角度によっては,術後の可動域制限の原因となる可能性がある.今回,移殖した骨軟骨柱の挿入方向及び挿入角度と術後可動域の関係について検討したので報告する.対象は上腕骨小頭離断性骨軟骨炎と診断されて骨軟骨柱移植術を行った野球選手15名とした.骨軟骨柱は内側の適合性を重視して移植した.術後CTを用いて,移植された骨軟骨柱の挿入確度と挿入方向を測定し,術前後の可動域との関連性を評価した.術後に可動域が悪化したのは4例であり,4例中3例で関節面より約10-15度,外側から内側に傾いて骨軟骨柱が挿入されていた.術後の可動域を悪化させる原因として,移植骨軟骨柱の挿入方向と角度が傾いた状態である症例で多かった.骨軟骨柱の挿入方向と角度には十分に注意をして骨軟骨柱を移植する必要があると考えられた.
  • 戸祭 正喜
    2019 年 26 巻 2 号 p. 156-161
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     腕橈関節の除圧を目的とする尺骨矯正骨切りを行うことで関節面の修復を試みた上腕骨小頭離断性骨軟骨炎症例の治療成績を報告する.調査対象となったのは7例(野球少年・右肘)であった.手術時の平均年齢は12.1歳,術後経過観察期間は平均35.6か月であった.手術は離断骨軟骨片の摘出と腕橈関節部の病巣掻爬を行い,尺骨矯正骨切りを追加した.骨片の固定には術中に変形矯正の操作を繰り返しできることから創外固定器を使用した.変形矯正量は主に角状に10°と5mm延長となっていた.創外固定器装着期間は平均10.1週であった.術後早期から自動での関節可動域訓練を開始し,平均肘関節可動域は術前屈曲118°伸展-35°が最終調査時には屈曲129°伸展-17°に改善していた.術前は全例で運動時痛を認めたが,5例は運動時痛なしとなり,利き手変更した1例以外は運動復帰していた.X線像では腕橈関節の関節裂隙は保たれていた.
  • 大井 徹, 佐野 友彦, 森田 哲正
    2019 年 26 巻 2 号 p. 162-164
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     はじめに:上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(以下OCD)に対して自家骨軟骨移植術(以下OAT)を行った成長軟骨開存例と閉鎖例での術後成績を比較検討した.対象と方法:2008~2017年かけて当院でOCDに対してOATを行った初診時成長軟骨開存14例(全例野球少年)を対象とした.手術時に成長軟骨開存例は8例で,閉鎖例は6例であった.評価項目は術前と最終観察時の臨床評価(可動域,JOA-JES sport score),レントゲン評価,スポーツ復帰状況とした.結果:臨床評価では成長軟骨開存群,閉鎖群ともに改善を認めた.レントゲン評価では内外反肘は認めなかったが,小頭扁平化を開存例で3例,閉鎖例で2例認めた.また閉鎖例で有意に橈骨頭肥大を認めた.競技変更はそれぞれ1例ずつであった.結語:成長軟骨開存OCDに対するOATでは成長軟骨障害は認められなかったが,閉鎖群で橈骨頭肥大の傾向が強かった.
  • 原 章, 鈴木 雅生, 市原 理司, 丸山 祐一郎
    2019 年 26 巻 2 号 p. 165-168
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     肘離断性骨軟骨炎は10歳~20歳前後の男性の利き手側に多く,野球やテニスなどのスポーツが誘因となって発症することが多い.今回,肘関節ロッキングを初発症状とした骨端線未閉鎖の上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に対して鏡視下に遊離体を摘出したのみで良好な結果を得た2症例3肘(1症例は両肘罹患例)を経験した.
  • 阿蘇 卓也, 田村 将希, 千葉 慎一, 鈴木 昌, 西中 直也
    2019 年 26 巻 2 号 p. 169-173
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     目的:上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)症例の投球側と非投球側におけるゼロポジション近似肢位での肩関節外旋筋力(Zero外旋筋力)及び肘関節伸展筋力(Zeroリリース筋力)を比較することを目的とした. 材料及び方法:OCDと診断された野球選手6名(年齢163.0cm,体重53.5kg,年齢13.3歳)を対象とした.Zero外旋筋力及びZeroリリース筋力はハンドヘルドダイナモメーターを使用し,立位にて肩関節ゼロポジション,肘関節90度屈曲位,前腕回内外中間位での等尺性肩関節外旋筋力及び肘関節伸展筋力を測定し,投球側と非投球側で比較した. 結果:Zeroリリース筋力のみ投球側が非投球側より低値を示した. 考察:投球時加速期以降の肘関節伸展位保持機能を評価するZeroリリース筋力の低下はOCD発症の一因になることが示唆された.
  • 井上 悟史
    2019 年 26 巻 2 号 p. 174-177
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    【目的】肘内側障害に対して,当院では裂離骨片の有無に関わらず,コンディショニングや投球フォームの修正などの積極的なリハビリテーションを行っている.本研究の目的は,裂離骨片の有無が保存的治療早期の患者立脚型評価へ与える影響を検討することである.【対象と方法】投球障害で肘内側のみに疼痛を有していた野球選手で,非投球側の上腕骨内側上顆骨端線が残存していた45例中,治療開始3か月後でKJOCscoreにて評価ができた31例を対象とした.裂離骨片を有した16例をF群,有しなかった15例をN群とし,両群を比較検討した.検討項目は治療開始3ヶ月後におけるKJOCscoreの合計とサブスケールとした.【結果】合計,サブスケールの全項目において,両群間に統計学的な有意差を認めなかった.【考察】本研究の結果より,裂離骨片の有無は保存的治療早期の患者立脚型評価へ影響しないことが示唆された.
  • 岩堀 裕介, 筒井 求, 伊藤 岳史, 梶田 幸宏, 原田 洋平
    2019 年 26 巻 2 号 p. 178-180
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     野球選手の肘関節UCL損傷に対する収束型対外衝撃波療法(ESWT)の臨床成績を調査した.対象は野球選手15例15肘で,初診時年齢は平均18.2歳,全例男性で,ESWT照射回数野は平均4.1回で,経過観察期間は平均10.3か月であった.投球時痛VASが照射前68±13点から最終観察時12±9点,JOA-JES肘スポーツスコアが42±12点から84±11点,quick DASH sportsが65±22点から9±15点,投球パフォーマンスは22±8%から89±10%へと有意に改善した.治療開始から投球再開までの期間は平均4.2±0.8週,試合復帰時期は治療開始後平均1.9±1.4か月だった.JOA-JES肘スポーツスコアのスポーツ能力は24.7±8.2点で,完全復帰は10例(63%)で得られた.収束型ESWTは野球選手の肘関節UCL損傷の有用な局所療法の一つになりうると考えられた.
  • 柴田 英哲, 後藤 昌史, 村松 由崇
    2019 年 26 巻 2 号 p. 181-183
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
     上腕三頭筋腱断裂は腱断裂の中でも比較的稀な病態であり,関節リウマチ・慢性腎不全・ステロイド内服・ステロイド局注・上肢を主に使うスポーツなどにより発生する例の報告が散見される.今回我々は比較的稀な上腕三頭筋腱断裂を経験したので報告する.症例は51歳,男性である.柔道歴30年,現在は柔道の指導者である.柔道練習中に左肘に違和感を覚えた翌日のウエイトリフティング中に轢音とともに左肘の疼痛が出現し(受傷時のアームポジションなどの詳細は不明),翌日当院を受診した.初診時,肘頭近位部に陥凹を認めており完全伸展は不可能であった.MRI,エコーにて完全断裂を認めたため手術を施行した.術後7か月現在経過良好である.上腕三頭筋腱の裂離タイプにおける手術方法として骨孔法とアンカー法があるが,今回我々はアンカー法を選択した.手術方法に関して文献的考察を加えて検討する.
Ⅴ. 上顆炎・腱付着部炎
  • 花香 恵, 佐藤 攻
    2019 年 26 巻 2 号 p. 184-186
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    目的:上腕骨外側上顆炎の保存治療はストレッチやステロイド注射などが行われている.今回ステロイド注射によって発生した外側側副靭帯・伸筋群断裂を経験した.
    症例:39歳女性.2年前より左肘関節外側部痛のため近医を受診し左上腕骨外側上顆炎の診断で肘バンドを処方,理学療法を施行された.疼痛改善なくステロイド注射を計9回施行された.注射後2か月程度は症状改善していたが徐々に効果が減弱,疼痛が著明となったため当院紹介となった.初診時,外側上顆の著明な圧痛,伸展可動域制限,肘関節内反不安定性を認めた.MRIで外側側副靭帯・伸筋群の断裂を認め手術を施行した.手術所見では伸筋群の広範囲な断裂と外側側副靱帯の部分断裂を認めた.伸筋群・外側側副靱帯を,アンカーを用いて修復した.術後5か月,疼痛は消失し可動域も改善した.
    結語:頻回もしくは高用量のステロイド注射は靱帯損傷を生じる可能性があることに注意が必要である.
  • 山本 博史, 向井 章悟, 中川 泰彰
    2019 年 26 巻 2 号 p. 187-190
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル フリー
    【症例1】67歳,女性,右利き.5ヶ月前に趣味のバドミントン中に右肘外側部痛を発症した.前医でステロイドの局注を6回受けたが,日常生活に困難を生じていた.関節鏡視で橈骨頭周囲の滑膜の増生を認め,これをshavingした.術後2年では再発なく,バドミントンを週3回行えていた. 【症例2】50歳,女性,右利き.趣味でロードバイク,ボルダリングなどをしていた.5年前より右肘内側部痛を生じ,前医でステロイドの局注を受けたが効果なかった.関節鏡視では特記すべきものなく,直視下に内側の腱付着部を展開し,肥厚している部分を切除した.病理学的に炎症細胞浸潤,毛細血管増生を伴っていた.術後1年で再発なくボルダリンが行えていた. 【考察】肘関節内側や外側の疼痛の原因はさまざまで,ステロイドの局注が有効であることもあるが,効果が乏しい場合,病態の再考が治療,生活指導において大切である.
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