環境心理学研究
Online ISSN : 2189-1427
ISSN-L : 2189-1427
1 巻 , 1 号
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発刊の言葉
原著
  • 太田 裕彦
    2013 年 1 巻 1 号 p. 4-11
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    「環境心理学」の定義を踏まえつつ,心理学出自としての発生・展開を遂げてきた狭義の環境心理学と,学際的領域として成立してきた広義の環境心理学の2つの捉え方を紹介した。その上で環境心理学が志向するものとは何かを論じ,学問的視点と方法論について景観研究を具体的な例として概説した。環境認識や環境評価に関して,依って立つ学的立場や具体的研究を行う上で採用する方法論による多様な差異を理解した上で,従来の因果関係に立脚する相互作用論を克服するべく提唱された人間と環境のトランザクションという概念も含めて今後の環境心理学が目指すべき方向を考える必要があろう。
  • 羽生 和紀
    2013 年 1 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    環境表象は認知地図といわれることが多いが,地理的地図とは異なり,空間のアナロジーとしての構造だけではなく命題的な構造ももっている。そして様々な環境・空間表象の断片から利用可能で必要な表象を選択し,必要に応じた精度,情報量,尺度で一時的に生成される空間・環境表象が認知地図である。認知地図を構成する空間の表象・情報は直接的・間接的経験から獲得される。直接的経験においては,オプテック・フローを含む視覚的情報が重要だが,疲労感をともなう運動感覚や固有受動フィードバックによる身体感覚も距離の情報の一部となる。環境における空間行動では,量的な認知距離や認知地図を用いた顕在的な認知処理がおこなわれることもあるが,経験の豊富な環境においてはデフォルトの経路選択あるいは経過時間に関する「感覚」や移動時のオプテック・フローの知覚と身体感覚とそれにともなう疲労の経験に基づく潜在的な判断がおこなわれることが多い。また,疲労感や不快などの情動的な反応が環境認知に影響を与えており,とくに不確実な状況においては支配的な役割をはたすこともある。こうした複雑なシステム全体として環境認知を扱った研究はまだ不足しており,今後より必要とされるだろう。
  • 大沼 進
    2013 年 1 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    はじめに,環境配慮行動研究の思潮について簡単に整理し,態度研究の流れと社会的ジレンマ研究の流れの2つに言及した。次に,環境配慮行動モデルの研究について,頻出する構成概念を簡単に整理し,代表的な環境配慮行動モデルを紹介した。その中で,従来のモデルは行動意図を前提としていることの問題点を指摘し,行動意図によらない行動を説明する新たなモデル研究の展開にも触れた。これらをふまえて,具体的にどのような実践研究があるかを紹介した。このとき,心理変数だけでなく,行動場面や行動の文脈,さらには,外界の影響を取り入れていくことの必要性を論じだ。現場の問題解決に要請される実践研究の流れから,アクションリサーチの考え方について論じ,あわせて,フィールド研究は,仮説検証ではなく仮説発見型に向くことを説明した。最後に,ミクロからマクロへという方向の視点から研究をしていくことの必要性を述べた。
  • 平田 乃美, フィッシャー ダレル L.
    2013 年 1 巻 1 号 p. 27-37
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    環境心理学領域の教育環境研究は,認知学派と生態学派に大別できる。どちらの起源もLewinの人間行動の定理B=f (P, E)に遡る。認知学派の初期,Murrayの「要求−圧力モデル」は,人間と環境の符合関係の基本的枠組を推進して人間−環境適合の概念に多大な貢献をした。SternやHuntはこれを引き継ぎ,「人間−環境適合理論」を展開した。認知学派の教育環境研究は,子どもたちの現実と選好する学級環境の一致(人間−環境適合)による教育効果の向上を報告している。生態学派の初期,Barker と Wright は,行動にかかわる場の特異性の発見から「行動セッティング」を提唱した。生態学派の教育環境研究は,行動パタンと物理的場面の形態の一致,類似性を意味する「シノモルフィ」によって教育効果の向上がもたらされることを報告している。最後に,環境心理学における教育環境研究の再活性化にむけて,ICT(情報通信技術 Information and Communication Technology)を備えた教育環境の測定指標,学習者の個人差,相互作用論から相互浸透論への移行,について今後の研究を展望した。
  • 芝田 征司
    2013 年 1 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,自然環境を対象とした心理学研究が数多く行われるようになってきた。自然を対象とした心理学研究は主に,a)自然風景に対する好みについての研究,b)自然との心理的つながりと,環境保護など関連行動・態度との関係についての研究,c)自然体験による心身面への影響についての研究,の3つに大別することができる。自然風景に対する好みの研究は,自然を対象とした心理学研究の中では比較的古くから行われてきた。これらの研究では,人々の自然風景に対する好みには何らかの生得的基礎があると説明されることが多い。自然との心理的つながりは,ここ数年注目されるようになってきた新しい概念である。自然体験による心身への影響としては,精神疲労の回復やストレス低減といった回復効果が注目を浴びている。本稿では,これら自然を対象とした心理学研究を概観し,この領域における現在の課題や今後の方向性について述べた。
  • 島田 貴仁
    2013 年 1 巻 1 号 p. 46-57
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    犯罪研究のアプローチは,犯罪原因論と犯罪機会論とに大別されるが,環境はその両者に重要な役割を果たしている。本論文では,「環境と犯罪」研究の歴史を概観し,マクロ・ミクロ・メソのスケール間や,犯罪原因論と犯罪機会論の間での視座の変遷と,環境心理学との関連を検討する。「環境と犯罪」研究は,マクロスケールの犯罪原因論から起こり,ミクロスケールの犯罪機会論へシフトした。そして,近年は,近隣やコミュニティといったメソスケールで環境が犯罪の加害と被害に及ぼす影響が議論されている。次に,近年発展している方法論として,データの階層性に着目するマルチレベル分析と,データの空間関係に注目する空間情報科学の手法の2つを取り上げた。最後に,犯罪研究と環境心理学研究の共通点として学際性と問題解決志向を指摘し,犯罪原因論と犯罪機会論とを橋渡しする環境心理学の役割の重要性を議論した。
  • 大谷 華
    2013 年 1 巻 1 号 p. 58-66
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    物理的空間は意味を与えられて場所になる。場所と人とのつながりを表す場所愛着,場所アイデンティティ,場所感覚について,研究の現状と課題を考える。1)個人が特定の場所に持つ情動的な絆を場所愛着と呼ぶ。場所愛着体験は心地よさや安心感をもたらし,喪失体験は自己概念を揺るがす。複数の成分ないし次元が抽出されており,深度も表層レベルから深層まで想定される。居住環境への愛着生成は単純な時間の関数ではなく,内部者性が関わる。2)ある場所が個人の自己を定義し,自己概念を維持する力を持つとき,その絆を場所アイデンティティと呼ぶ。転居や避難などで対象が失われると危機に陥る危険性があるが,自己アイデンティティの再構築とともに新たな場所アイデンティティ獲得の可能性が示唆される。隣接領域では,個別の場所をベースとする共同体の意識,特性,「~らしさ」を意味している。3)場所感覚はもっとも単純には場所の意味を理解する能力だが,場所の物理的特性,社会的文脈,共同体の祖先から未来へ続く時間の流れの上に築かれる。場所と個人の情動的つながりは万人に身近な現象であり,かつアイデンティティの形成と維持に関わるクリティカルなテーマである。
日本環境心理学会大会 発表要旨
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