生態心理学研究
Online ISSN : 2434-012X
Print ISSN : 1349-0443
10 巻, 1 号
生態心理学研究
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
研究論文
  • 佐藤 将人
    2017 年 10 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    本研究は,行為者の姿勢制御系の制約が系列行為に与える影響を明らかにすることを目的に,マイクロスリップの観点から動作系列の推移を修復モデルに基づいて分析した.被験者は健常成人 10 名とし,統制群と姿勢制御系に制約を与える実験群に無作為に振り分け,お茶を 1 杯淹れる課題を遂行した.動作系列の推移は修復対象,非流暢,修復と 3 つの連続する区間に分けて記述し,特徴的なタイプを抽出した.実験群においては,修復対象の抽出,非流暢の有意な増加,中でも躊躇と接触が特徴的に抽出された.動作系列レベルにおける修復対象については,次の行為に向けた準備的役割や対象知覚の補償といった探索機能的な意味を再検討する必要性が示された.修復区間では,視知覚系による探索過程が躊躇と関連して続行が有意に増加し,転換と代替は課題対象と対象間における場の知覚と操作制御の知覚に関連していることが確認された.少なくとも姿勢制御系に困難性を抱えるということは,系列課題遂行の戦略となる知覚‐運動の探索過程に影響を与えることが明らかとなった.それは,予期的に行為が連結されず,全体構造を安定して知覚することを困難にするが故に,マイクロスリップの生起によって環境と行為者の持続した関係を保ち,行為を繋いでいることが示された.

ショートノート
  • 下川 遥子, 廣瀬 直哉
    2017 年 10 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    自然環境問題の要因の一つとして,自然に対する見方(自然観)が挙げられているが,子どもの自然観を実証的に検討した研究は少ない.そこで本研究は,日本の児童の自然観を,宗教意識との関連において,明らかにすることを目的とした.大阪府内の小学 3 年生から 6 年生の児童を対象に,自然観および宗教意識に関する質問紙調査を実施し,218 名の有効回答を得た.因子分析の結果,“神仏の存在”,“神秘性”,“自然との一体感”,“自然保護”,“自然の脅威”,“自然の温情”の 6 因子を抽出し,宗教・自然観尺度を構成した.各尺度について学年間の比較を行ったところ,学年が高くなると,宗教意識や自然との心理的つながりが低くなっていることがわかった.さらに自然観と宗教意識の関連について検討するため,6 つの下位尺度を高次因子分析によりモデル化したところ,最終的に“宗教的自然観”,“客体的自然観”の 2 つの二次因子を含むモデルが導かれた.このことから,自然を客観的にみる科学的な自然観だけでなく,宗教性を帯びた日本の伝統的な自然観が児童に存在することが示唆された.

書評
学会報告
  • 野澤 光
    2017 年 10 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    19 回知覚と行為に関する国際会議の参加報告として,本稿にて発表した研究を紹介する.この研究では,書道熟達者 1 名が 16 試行を通じて臨書作品を制作する過程を,16 枚の臨書画像を縦断的に分析することにより検討した.臨書された文字の諸変数を検討した結果,行中央の文字が上下に移動して,紙面の余白を埋める最適な位置を探索していたこと,またこの探索の過程で行中央と行頭の文字が,相補的にプロポーションを変形させていたこと,さらにこれらの調整の足場となるために,行頭文字の位置変動が抑えられていたことが明らかとなった.つぎに 16 試行を通じた字間調整を行った.字間の試行間差分をダイヤグラムとして視覚化し,性質の異なる 2 種類の調整タイプを,斉一型,伸縮型と区別し分類を行った.その結果,試行を通じた字間調整の質的な変化をマクロに捉えたとき,伸縮型調整から斉一型調整への交代として捉えることができることが明らかとなった.このように,臨書制作中の書家の方略は,(A)生態学的制約に従って自らの調整レベルを複数の背景レベルに差異化する能力と,(B)複数の変数を相補的な入れ子にする能力から成っていた.

  • 野中 哲士
    2017 年 10 巻 1 号 p. 38
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
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