生態心理学研究
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最新号
生態心理学研究
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
研究論文
  • 豊泉 俊大(大阪大学大学院)
    2021 年 13 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,ギブソンによる画像理論の全容を解き明かすことである.ギブソンは画像経験の本性を,その二重性にみる.画像経験が二重性を伴うことは事実である.われわれは画像をまえにして,たしかに,画面と画面に描写されているものとを見る.しかし,私の見るところ,そうした二重性によって画像経験の内実が尽くされることはない.画像経験の本性は二重性にではなく,むしろ三重性にあると,本稿は論ずる.そして,そのことが,ギブソンが示した画像の定義そのものから導きだされうることを,したがって,本稿の提示する見解が,ギブソンによる画像理論の正統な解釈たりうることを,精緻なテクスト読解によって証明する.本稿は,これまでには十分に検討されることのなかった,ギブソンによる画像理論の真意を精確に見定めるものとなる.

日本生態心理学会第8回大会 シンポジウム
  • 山﨑 寛恵, 西尾 千尋, 野澤 光
    2021 年 13 巻 1 号 p. 17-19
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

     本シンポジウムは,子どもと住環境について生態心理学の立場から検討する.山﨑は,縦断的に収集した写真をもとに,保育室の大小さまざまなモノの移動の変遷を調べ,ヒトの集団的なレイアウト変更の特徴について報告する.西尾は,家庭環境での乳児の物の運搬行動についての縦断的データから,乳児が関わるモノに注目して,家庭という場所に潜在するアフォーダンス群の知覚探索の可能性を報告する.野澤は,Rosch Basic objectBateson の情報学的議論を参照して,山﨑・西尾の報告に含まれている理論的・方法論的問題を明らかにする.

  • ホンマ タカシ, 佐分利 敏晴, 野澤 光, 佐藤 由紀
    2021 年 13 巻 1 号 p. 21-22
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー
     J.J. Gibson1979)は,「画家にしても写真家にしても,自分が現実の場所やもの,人,出来事をまさに見ているという感じを,見る人に与えようとするべきではない.そんなことをする必要はないし,そうしようとしたところで,その努 力は失敗に終わるに違いない」と述べた.これは,いかに精巧であったとしても,自然の不変項のすべてを提示することはできないためであり,また,情報には限りがないからである.
     むしろ開口視を強制されていない鑑賞者は,そこに提示されている何かについて知覚しながらその表面自体も知覚している.画像は光景でもあり表面でもあるのだ.
    Gibson はこれを二重性(Duality)と呼んだ.
     さて,画家や写真家が「まさに見ているという感じを与えようとしている」のではないとすると,表現とは何に向かう活動なのか,また表現を鑑賞するものは何を体験しているのか.本シンポジウムでは,ギブソンの指摘する二重性を,表現の限界としてではなく,むしろ表現が発生する本質的な裂け目として積極的に
    位置づけ議論を深めたい.
日本生態心理学会第8回大会 オープンフォーラム
  • 山本 尚樹
    2021 年 13 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

    本研究ではろくろ挽きという同じ木の加工技術を用いつつも,異なる作風をもつ木工作家2名の制作過程について,道具の設えと制作プロセスの変動に着目して分析した.結果,ろくろ挽きの際に使用する主要な道具,「鉋」「ハメ」「馬」 について,制作物に応じて,使い分けがなされていたこと,作家間で質の異なる変動が制作プロセスに見られるということが示唆される結果が得られた.

  • 板垣 寧々, 谷貝 祐介, 古山 宣洋
    2021 年 13 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

     本研究は,ヴァイオリン合奏における,奏者間の身体動作によって構築されるリード関係を定量化し,ヴァイオリン合奏がどのように成立しているかを解明することを目的とし,本稿では予備的な探索結果を報告する.2 者で同パートを演奏した際のリード関係を,グレンジャー因果性分析を用いて定量化し,奏者の合図,および奏者が評価した曲の難易度と対応づけて考察した.その結果,奏者が技術的に難しいと評価した部分ほど大きなまとまりでリード関係を構築する一方で,奏者が技術的に簡単であると評価した部分では小さなまとまりでフレーズの節目ごとにリード関係を構築していた.さらに,双方からのリードが抽出された部分は,合図を出す奏者がリーダーであると判断できる部分と,他の要因でリーダーが特定される部分,あるいは両者が働きかけ合っていてリーダー・フォロワーが存在しない部分がある可能性が示唆された.

  • ヒュース 由美, 工藤 和俊
    2021 年 13 巻 1 号 p. 33-35
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

    本研究は演劇における即興性に着目する. 即興演劇とは, 台本がなく, 役柄やストーリーが未決定な状況から, 観客が見ている前で, 時間の中断なしに, 架空の演劇を創作するものである.この劇空間 を成立させるためには, 相手の俳優の行為(発話を含めて)を読み取り, 方向性を予知して, もし予期せぬ状況に直面した場合は, すぐさま解決を見出し行動するという, 柔軟な行為の修正が必要となる. そこで本研究では, 実際に演じられた即興演劇の映像と俳優へのインタビューのデータから, 2名の俳優がどのように相手の行為を読み取り, 自分の行為を開始するか, どのように環境の資源を使ってアイデアを生成するかという点に関して検討を行った. その結果, 俳優たちは, 劇中に行われたアイコンタクト , 身体の向きや行為, セリフの言い方など, 劇空間に埋め込まれた相手の行為を, 自分の創作の資源として活用していることが分かった.

  • 梛木 功介, 谷貝 祐介, 古山 宣洋
    2021 年 13 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

     津軽三味線は,三本の弦を備える弦楽器の一種だが,打楽器的な奏法が用いられることに特徴がある.弦を弾きつつ打面を叩くという独特な制約が課される課題では,熟達によってどのような違いが見られるだろうか.本研究では,3つの熟練度の参加者(初心者,中級者,熟練者)が,二つの要因(テンポ:90bpm120bpm150bpm,弦:一の糸,三の糸)を組み合わせた叩き課題に参加した.打面に設置した圧力センサから得られたデータについて,各打の開始点から終了点までの時間幅(接触時間)について検討した.分析の結果,熟練度によって接触時間の傾向が分かれ,初心者では制約によって接触時間が左右される傾向が,熟練者では制約によらず接触時間が一貫する傾向が,中級者では熟練者的特徴,初心者的特徴,熟練者と初心者の中間的特徴の三つの特徴が条件によって変化して現れる傾向が見られた.津軽三味線叩き動作において打圧データの特性が重要な意味を有することが示唆された.

  • 西尾 千尋
    2021 年 13 巻 1 号 p. 41-43
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

     本研究では,2 名の乳児の歩行開始前後の日常生活を観察し,物との関わり方の変化について検討した.歩行開始前と比べるとそれ以降は,物と関わる行為の出現頻度,複数の物を組み合わせる行為,運搬が増加した.これらを踏まえ,複数の物を組み合わせた事例の検討を行った.事例の検討より,乳児向けのおもちゃや本だけでなく,日常生活で使用される様々な物と乳児は関わることが示された.また,歩行開始直後の1歳台の乳児でも,物を拭く,容器に出し入れする,ある物で他の物を操作するといった行為を行っていることが分かった.歩行開始期の乳児の物の操作の発達,発達を取り巻く環境について議論を行った.

  • 中澤 剛, 野中 哲士
    2021 年 13 巻 1 号 p. 45-47
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

     人が目的地までの経路をナビゲートする時, 近道を発見し目的地に短距離で到着する人と,近道を発見せず回り道で到達してしまう人に分かれる. 今回の研究では, 其々のパターンに見られる視線を計測した。この計測データから, 近道を発見する人がナビゲーション中に見せる視線の動きと, 遠回りをする人がナビゲーション中に見せる視線の動きの違いを分析する.

  • 谷貝 祐介, 三嶋 博之, 三浦 哲都, 古山 宣洋
    2021 年 13 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

     従来の体肢間協応研究では,課題達成に直接かかわる“局所”部位の協応を,身体の一部を固定するなどの実験統制により,“姿勢”と切り離して研究してきた.しかしながら,実践的な運動をより良く理解するためには,“局所”の課題達成を,“姿勢”を含む全身の“大局的な”協応構造から捉える必要がある.本研究では,左右の振り子を音に合わせて動かす課題を二つの条件で行った:immobile 条件(前腕を固定し局所部位のみで行う条件),mobile 条件(身体を解放し部位間を連動できる条件).これらの条件下で,左右振り子の位相モードや課題周波数に応じて,どのような協応構造が出現するのか,局所の課題達成と大局的な協応はどのように関係しているのか,について探索的に比較検討した.分析の結果,身体が解放されたmobile 条件では状況に依存した課題特定的な協応構造が創発し,大局的な協応を妨げることによって課題達成度も低下する可能性が示唆された.

  • 野澤 光
    2021 年 13 巻 1 号 p. 53-55
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

     本研究は,文字をかく書家の描画姿勢を,全身協調という観点から検証した.プロの書家1 名が,漢字を臨書する過程の筆尖・頭部・体幹軌道の相互結合の度合いを,相互相関関数を用いて評価した.その結果,書家の身体が,筆尖と体幹の運動を強く結合させていること,また,この結合度合いが,字画の特定の描画局面に応じて変化することが示された.筆尖と体幹の2 変数は,とりわけ「点」の収筆動作や「払い」動作において,強く結合していた.この結果は,書家の身体が,字画を描画する場面に応じて協調パターンを変化させる,全身を使った描画姿勢を獲得していたことを示している.

  • 森山 徹, 齋藤 帆奈, 園田 耕平, 右田 正夫, 飯盛 元章
    2021 年 13 巻 1 号 p. 57-58
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

     行動抑制ネットワーク仮説は,動物が環境に適した行動を発現すること,その行動にゆらぎが生じること,そして,動物が未知の環境で創発的行動を発現することを,動物行動学が取り組んできた行動の生得性の研究と干渉することなく説明する.また,このネットワークの動的維持機構は,“心(こころ)”という日本語から失われつつある“うら”という意味によく一致し,それらの現代社会における有用性をも含意する.本発表では,以上のような行動抑制ネットワーク仮説の性質を,日本語の“心”の語源研究と照らし合わせながら概説する.

  • 酒井 千恵
    2021 年 13 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

     看護の技術において体位変換は,身体に直接触れる行為を伴い,かつ,すべての安楽ケアを成立させるのに必要な基礎的な技術の一つである.一方で,症状や障害をもつ患者の変化する状況に合わせて実践しなければならない応用的な技術でもある.患者に合わせて体位変換を実践することが求められるとき,どのような情報を利用しながら看護師は体位変換をしているのか.人との直接的なかかわりとそこに存在する環境とのかかわりあいの中から,看護師の知覚と行為を見出すには,アフォーダンスの観点が参考になるのではないかと考えた.そこで本研究は,以下の実験を行った.模擬患者団体の70 歳代男性1 名に,『右麻痺のある患者がベッド上に左向きで横になってテレビを2 時間見た後に,同じ姿勢が辛くなったためナースコールを押す』という場面を演じてもらい,看護師2 名にそのナースコール対応を3 日連続で行うという設定で,体位変換を実施してもらった.その場面をビデオカメラ2 台で撮影し,その映像から,看護師が行う体位変換を構成している知覚と行為を解析した.

  • 青井 郁美, 野中 哲士
    2021 年 13 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2021/06/10
    ジャーナル フリー

     座位獲得までの生後0か月から7か月頃までの乳児の育児記録をもとに,日常生活において,手が自発的に動いて触れた環境対象についての記述から分析し,対象と手の動きの関係について明らかにしていきたい.43 の記録を自発的に手が触れた18 種の環境の対象によって分類し,それらを5つの視点で分析した.A)姿勢;仰臥位、伏臥位、支座位に分けられた.B)環境にかかわる手の動きの開始;自ら手が向かった対象物と、他者が手に持たせたり置いたりする対象物があった.C)環境にかかわる手の動き;「触る」「握る」「振る」「開く」「移動する」「止める」が見られ,各々が組み合わさって見られる記録があった.D)手の動きにより環境に起こること; 手の行為により環境対象は「音がなる」「揺れる」「落ちる」「見える」「近づく」「ちぎれる」「はねる」「自分の感触」「無変化」という事象が起きていた.E)他者のかかわり;環境内の対象が手の動きにより変化したことに対して,直接的あるいは間接的な他者のかかわりが起こっていた.本研究の結果は,誕生直後から座位前段階までの乳児の手の動作を,環境との関係形成として記述する可能性を示唆するものである.

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