生態心理学研究
Online ISSN : 2434-012X
Print ISSN : 1349-0443
2 巻, 1 号
生態心理学研究
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
研究論文
  • 本多 啓
    2005 年 2 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2005/05/30
    公開日: 2021/11/01
    ジャーナル フリー

     本稿は,認知言語学の立場から,生態心理学の知見を導入することによって明らかになる言語の姿の一端を,特に自己知覚との関連から紹介する.第2節では,認知科学の中での認知言語学の位置づけ,認知言語学の意味観,および認知言語学と生態心理学の関係について概説する.第3節では,言語における自己の表現機構について,生態心理学の自己知覚論と関連づけて概説する.第4節では第3節の議論に基づいて,感情表現のレトリック,形容詞,可能表現,美化語など,具体的な言語現象を検討する.第5節では共同注意を自己知覚の共有,ひいては共感,をもたらすものと捉えた上で,それによって可能になる感情経験の伝達の諸相をみる.具体的には,日本語の一名詞句文(一語文),現象描写文,そして英語の現象描写文を検討する.

  • 柴田 寛
    2005 年 2 巻 1 号 p. 13-31
    発行日: 2005/05/30
    公開日: 2021/11/01
    ジャーナル フリー

     ダイナミックタッチ研究のひとつとして,視覚的な情報を制限された状況で紐の長さを知覚する課題を行った.被験者は4名であり,様々な高さから吊り下がる紐の下端を持って自由に動かすことにより,紐の上端(紐の長さ)を報告するように求めた.本課題を能動的な情報探索場面と捉え,課題終了後の動作の説明などを参考にしながら,課題解決に適した情報を抽出しやすい適切動作が選択される過程や,試行が進むことによって知覚が変化していく過程を詳細に分析した.特に,知覚した長さに関するフィードバック情報の有無が本課題の学習過程にどのような影響を及ぼすかについて検討した.その結果,紐の長さを正確に知覚できるようになるには,能動的な情報探索運動やフィードバック情報が重要であることが示された.また,ダイナミックタッチ研究の目的のひとつである刺激構造(不変項)についても検討され,手を動かしたときに生じる触覚的な情報だけではなく,紐の触覚的情報と視覚的情報の関係についても議論された.

  • 豊田 平介, 三嶋 博之, 古山 宣洋
    2005 年 2 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2005/05/30
    公開日: 2021/11/01
    ジャーナル フリー

     本研究は,成人片麻痺者の歩行能力の発達と,それに照応する知覚能力の発達の関係について検討し,またそれらの発達について評価する指標を発見することを目的として行われた.成人片麻痺者2名を被験者として,通路の途中に設定された間隙の通過可能性について視覚的に判断させる条件,および,その間隙を実際に通過させる条件を設定し実験を行った.実験は,麻痺を伴った被験者が最初に歩行が可能となった時点からその歩行が自立した時点まで,およそ1週間の間隔で行われ,12週ないしは7週に亘って継時的な変化が測定された.その結果,(1)歩行が自立した時点では,視覚的に通過可能と判断された間隙幅と実際に通過可能な間隙幅とが近接すること,一方で,(2) 成人片麻痺者では,視覚的に通過可能と判断された間隙幅と実際に通過可能な間隙幅とが相対的に大きく乖離する時期があり,その際,視覚的判断において自身の歩行能力を健常な成人よりも過大に見積もってしまうことが示された.また,先行研究での提案(Flascher, 1998; Shaw, Flascher & Kadar, 1995)を参照しつつ,本研究で提案された“実効π”(Ⅱ)の指標を導入することによって,これらの結果が成人片麻痺者の知覚・行為能力の発達を説明しうることが示された.

  • 李 銘義, 岡田 美智男, 足立 紀彦
    2005 年 2 巻 1 号 p. 43-51
    発行日: 2005/05/30
    公開日: 2021/11/01
    ジャーナル フリー

     本研究では,生態心理学の行為システム論の視点から,行為調整における秩序化に対して,観測実験を基に議論を行う. 我々は行為調整に必要とされる一要素を行為システムによるものと見立て,かつその行為システムを構成する志向性と調整過程のデザインを試みた.そして,デザイン構成した行為システムをロボットエージェントに導入し,ロボットエージェントが環境もしくは他のロボットエージェントとインタラクションする際に変化する身体配置や姿勢の調整をシミュレーションした.その結果,調整過程としての行為システムの分化は,行為の組織化に寄与することが示された.

特集:幽霊も機械もいらない
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