生態心理学研究
Online ISSN : 2434-012X
Print ISSN : 1349-0443
5 巻, 1 号
生態心理学研究
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特集 William Mace教授来日講演
研究論文
  • 柴田 崇
    2012 年 5 巻 1 号 p. 5-28
    発行日: 2012/06/20
    公開日: 2021/08/30
    ジャーナル フリー

     環境の特性に注目して生態心理学を提唱したJ ・J ・ギブソン(1904~1979) は,20世紀の心理学史の中で際立った地位を占めている.しかし,環境に注目して理論を展開した心理学者はギブソンだけではない.F・ハイダー(1896~1988) は,ギブソンに先駆けて20 世紀初頭から半ばに心理学の焦点を環境に移行させるための研究を行っている.ギブソンとハイダーは親しく交わり,二人の理論はメディウムのへの着目という点で共通する.しかし,つぶさに見ると,二つの心理学理論の差異は,メディウムの捉え方の違いに顕著に現われている.ハイダーが媒質の考察から出発してメディウムの概念を道具や人工物に拡大したのに対し,ギブソンはメディウムを空気と水の媒質に限定した.本稿の目的は,本邦で紹介されることが稀なハイダーの知覚理論を概説した上で,アフォーダンス理論と対照させるところから,生態学的な道具論,または人工物論の方向性を探ることにある. 第1節では,ハイダーの知覚理論の基礎となった“Thing and medium" (Heider, 1926/1959)を解題し,メディウム,道具,道具より複雑な機構を持つ人工物についてのハイダーの思想を理解する.第2節では,ギブソンによるハイダー批判を皮切りに,両者のメディウム概念を比較,検討する.第3節では,自動車の研究(Gibson and Crooks, 1938/1982)を中心にギブソンの道具論と人工物論を概観する.以上の考察から,使用時の道具が“透明になる現象"を“メディウム化"として説明したハイダーに対し,extensionの概念で“現象"を記述したギブソンの思想が,道具論,人工物論を“身体化"として説明するための生態学的基礎を提供することが明らかになる.

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