ハエトリグモは障害物を避けながら落下することなく木の枝上を進むことができる.従来の説明では,このようなタスクを行うためには,移動可能な枝の認識(空間と枝の識別),障害物の認識,ルーティングなど,高度な情報処理が必要とされる.しかし,処理能力の小さなハエトリグモの脳でこれらの処理が実現されているとは考えづらく,従来の説明とは異なる,なんらかの別の仕組みが用いられていると考えられる.
一方,生態心理学における直接知覚の考え方を用いれば,ハエトリグモは,枝や障害物の認識を行うことなく,移動可能な所(通行可能のアフォーダンス)を直接知覚していると説明することができる.この際に問題となるのは,その直接知覚を如何にして実現しているかという仕組みの解明である.
本研究ではハエトリグモの目の構造に注目し,ハエトリグモは二つのぼけ画像の差異によって通行の可否を判断しているとの仮説を提案し,小型ロボットを用いた実験により,その仮説の実現可能性を検証する
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