生態心理学研究
Online ISSN : 2434-012X
Print ISSN : 1349-0443
最新号
生態心理学研究
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
研究論文
  • 七原 真紀, 松井 淑恵
    2023 年 15 巻 1 号 p. 3-19
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/03
    ジャーナル フリー

     脳卒中による患者群と統制群によって, 手のリハビリテーションのために鍵盤楽器を訓練し, 表面筋電図(sEMG)とMIDI(musical instruments digital interface)ヴェロシティを客観評価として測定した.同時に打鍵の正確さとテンポ調整の訓練効果を音楽療法士が聴いて判定したものを主観評価として解析した. 併せて, 患者の心理的な行動変容についても検証した.客観評価と主観評価のどちらが鍵盤楽器の評価に使用できるか分析した結果, ヴェロシティはsEMG よりも指の動きの変化を捉えやすく,ff(とても強く)とpp(とても弱く)を弾き分ける指示をすることにより訓練効果を観察しやすいことがわかった.打鍵の正確さとテンポ調整の評価からは,既成曲をpp で演奏すると訓練の効果が表れやすいことが示唆された.脳卒中発症後に時間が経過した後も指の動きに改善が見られた.鍵盤楽器による訓練で,患者の手指のリハビリテーションに対する高いモチベーションの維持および向上が期待できる.

  • 伊藤 一之, 鉢嶺 大治, 高野 翔吾, 西山 賛
    2023 年 15 巻 1 号 p. 21-41
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/03
    ジャーナル フリー

     ハエトリグモは障害物を避けながら落下することなく木の枝上を進むことができる.従来の説明では,このようなタスクを行うためには,移動可能な枝の認識(空間と枝の識別),障害物の認識,ルーティングなど,高度な情報処理が必要とされる.しかし,処理能力の小さなハエトリグモの脳でこれらの処理が実現されているとは考えづらく,従来の説明とは異なる,なんらかの別の仕組みが用いられていると考えられる.

     一方,生態心理学における直接知覚の考え方を用いれば,ハエトリグモは,枝や障害物の認識を行うことなく,移動可能な所(通行可能のアフォーダンス)を直接知覚していると説明することができる.この際に問題となるのは,その直接知覚を如何にして実現しているかという仕組みの解明である.

     本研究ではハエトリグモの目の構造に注目し,ハエトリグモは二つのぼけ画像の差異によって通行の可否を判断しているとの仮説を提案し,小型ロボットを用いた実験により,その仮説の実現可能性を検証する

特集
  • 佐藤 由紀, 青山 慶, 佐々木 正人
    2023 年 15 巻 1 号 p. 45-46
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/03
    ジャーナル フリー
  • 西尾 千尋, 青山 慶
    2023 年 15 巻 1 号 p. 47-66
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/03
    ジャーナル フリー

     古典的な描画の発達研究は主に描かれた図像の形態の変化に着目し,意味のないなぐりがきからシンボルへ,単なる運動の痕跡から透視図法的なリアリズムへという図式を前提にしていた.本研究では描かれた形態やシンボルの現れを問題とせず,描画の発達に関わる根本的な問いとして,面の二重性の知覚がどのように進むのかを検討した.1 名の幼児の家庭での描画行為を縦断的に観察し,痕跡を残す行為において,描画面の性質が行為の調整に影響を与える場面に焦点を当てた.描き始め,描画面のずれに対する調整,描画面からはみ出した時,描画を停止し引いて見る時,描画を停止し描画面にシールを貼る行動を観察した.事例に基づき,描画面それ自体,物としての知覚は,画具と面との接触によりもたらされること,それと同時に表示としての不変項も知覚され始めていることについて考察した.

  • 野澤 光
    2023 年 15 巻 1 号 p. 67-86
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/03
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,書道熟達者1名の書字技能を,全身協調という観点から検証することである.実験では,大型の紙面に複数の文字をかく臨書課題を熟達者に課した.臨書中の書家の筆先・頭部・体幹の3変数のうちの2変数同士の機能的な結合関係を,相互相関関数で評価した結果,書家は,筆先と体幹の速度を結合させており,なおかつ,その結合度合いは字画のかたちに応じて動的に変化していた.書家は,字画のかたちに応じて書字動作に体幹セグメントを参加させる,全身を用いた書字姿勢を発達させていた.

  • 佐分利 敏晴
    2023 年 15 巻 1 号 p. 87-95
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/03
    ジャーナル フリー

     アニメーションに作者や監督が込めた意図を哲学や文学で論考すれば,「思想」と呼べるものとなろう.それは,意図の傾向から現れる制作者自身の性格や特質であり,表現の動機である.しかしこれらに関する論考は,描かれた情報を臨床心理学における「箱庭療法」のように「解釈」したものである.一方,生態心理学で扱うのはあくまでも環境に埋め込まれた情報である.表現媒体に人間が付けた痕跡を心理士が「解釈」したものを「思想」と呼ぶのならば,それは生態心理学の枠組みで扱われるものではない.ギブソンが述べるところの「知覚の二重性」で想定されているような2つの「一次情報」,スクリーンそのものと,映し出されている光学的配列以上の意味があるわけではない.ただし,アニメーション制作者がこの表現方法について「何でも表現することができる」という確信については,これを否定すべきではない.

  • ホンマ タカシ
    2023 年 15 巻 1 号 p. 97-108
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/03
    ジャーナル フリー
博士論文紹介
報告
feedback
Top