血漿蛋白は,分泌液や排泄液として生理的にも血管外にでているが,その血漿蛋白が異常にしかも多量に血管外に漏出したり,肝障害によりalb合成能が低下すると,著るしい低alb血症を示すことが知られている。 わが国に事ける競走馬の血清alb正常値は3.5±0.379/100mlであるが,最近10年間にalb量3.09/100ml以下の異常低値を示した52症例について,今回臨床学的に検討した。 なお,血清蛋白量,alb量,AIG比などの測定は,蛋白屈折計,セルローズアセテート電気泳動法,brom-cresol green法によった。 これらの症例には,主要な臨床症状として長期にわたる発熱(82.7%),浮腫とか皮膚のびらん(65.4%)削痩や食欲不振(63.5%),咳嗽や肺胞音の異常(48.100),下痢(32.7%)などの所見が観察された。このことは,低alb血症の主要臨床症状として重視したい。 また,各症例の臨床診断名は大腸炎,蹄葉炎,慢性下痢症,回虫症,全身性皮膚炎,肺炎,胸膜炎,腹膜炎,伝貧などであった。 それらのうち,腸管内への蛋白漏出を診断する方法として,糞便のTriboulet反応は最適な方法であり,10,000倍に希釈した血液でも明瞭に識別でき'たことから,鋭敏な試験法であるといえる。 胸膜炎,腹膜炎などの症例では,体腔への蛋白漏出のほか,感染症や肝機能障害を併発し,そのため肝alb合成能の低下にともなうalbの著明な減少や,β-globの増加がみられた。 低alb血症の治療法の一つとして,蛋白同化ステロイド剤を投与したところ,臨床所見とともに血清蛋白像が明瞭に改善された。
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