日本中央競馬会競走馬保健研究所報告
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1974 巻, 11 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 亀谷 勉, 山岡 貞雄, 渡辺 博正, 池田 正二
    1974 年 1974 巻 11 号 p. 1-14
    発行日: 1974/12/01
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
     血漿蛋白は,分泌液や排泄液として生理的にも血管外にでているが,その血漿蛋白が異常にしかも多量に血管外に漏出したり,肝障害によりalb合成能が低下すると,著るしい低alb血症を示すことが知られている。 わが国に事ける競走馬の血清alb正常値は3.5±0.379/100mlであるが,最近10年間にalb量3.09/100ml以下の異常低値を示した52症例について,今回臨床学的に検討した。 なお,血清蛋白量,alb量,AIG比などの測定は,蛋白屈折計,セルローズアセテート電気泳動法,brom-cresol green法によった。 これらの症例には,主要な臨床症状として長期にわたる発熱(82.7%),浮腫とか皮膚のびらん(65.4%)削痩や食欲不振(63.5%),咳嗽や肺胞音の異常(48.100),下痢(32.7%)などの所見が観察された。このことは,低alb血症の主要臨床症状として重視したい。 また,各症例の臨床診断名は大腸炎,蹄葉炎,慢性下痢症,回虫症,全身性皮膚炎,肺炎,胸膜炎,腹膜炎,伝貧などであった。 それらのうち,腸管内への蛋白漏出を診断する方法として,糞便のTriboulet反応は最適な方法であり,10,000倍に希釈した血液でも明瞭に識別でき'たことから,鋭敏な試験法であるといえる。 胸膜炎,腹膜炎などの症例では,体腔への蛋白漏出のほか,感染症や肝機能障害を併発し,そのため肝alb合成能の低下にともなうalbの著明な減少や,β-globの増加がみられた。 低alb血症の治療法の一つとして,蛋白同化ステロイド剤を投与したところ,臨床所見とともに血清蛋白像が明瞭に改善された。
  • 宮木 秀治, 大西 忠男, 山本 隆幸, 亀谷 勉
    1974 年 1974 巻 11 号 p. 15-20
    発行日: 1974/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     馬における護蹄管理の一環として,蹄角質の水分含量を測定した。供試馬はナラ,ア・ア,中間種ならびに和種で,3歳から14歳までの120蹄を品種,性,年齢,蹄色別(有色蹄,白色蹄)に測定した。 その成績は以下のとおりである。 1. 蹄匣各部の水分含量は蹄壁27.1±5.6%,蹄底33.7±5.7%,蹄叉38.7±9.0%であった。蹄匣の各部位間には1%水準で有意差が認められたが,同部位の前蹄および後蹄間には差異はなかった。 2. 品種別では和種の蹄底,蹄叉が高値を示し,ア・アと和種の蹄底,および和種と中間種の蹄叉との間に有意差が認められた。 3. 年齢別では3歳の蹄叉は,4歳および6歳以上に比べて高値で有意差があった。 4. 牝の蹄壁は騙を含む牡に比べ低値であった。 5. 蹄色別(有色蹄,白色蹄)の水分含有量には差異は認められなかった。
  • 田淵 英一, 福永 昌夫, 安藤 泰正, 熊埜御堂 毅, 平沢 澄, 秋山 綽
    1974 年 1974 巻 11 号 p. 21-27
    発行日: 1974/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     伝貧ウイスルが母馬の胎盤を通過して胎児へ伝播することはすでに証明されている。胎内で感染した初生駒がいつ感染発病し,どのような病的経過をとるか究明したいと考えていた。 今回たまたま,伝貧に自然感染した妊娠馬を試験馬として入手できたので,この試験を行った。 感染母馬エゾシンフジ号はアソグロアラブ種,9才で,過去2回の経産馬である。昭和48年2月16日に伝貧の定期検診で陽性と診断され,2月20日に栃木支所に隔離された。5月9日に妊娠期間331日で子馬(牡)を出産した。 初生駒トチギフジ号は生後母馬からの再感染を防止するために,出生直後母馬から引き離して他の厩舎に収容され,人工哺乳で飼育された。 子馬は生後7日目に最初の発熱があり,その後,生後99日目に斃死するまでに数回の発熱があった。子馬は出生時担鉄細胞陰性,ゲル免疫拡散反応疑反応であったが,発熱と共に強い貧血,白血球の減少,顕著な単球増多,きわめて多数の担鉄細胞の出現およびゲル免疫拡散反応の陽性を示し,激しい伝貧感染症状を示した。よって子馬は母馬の胎内で伝貧に感染し,出生後発病したものと想像された。
  • 福永 昌夫, 田淵 英一, 平沢 澄, 秋山 綽
    1974 年 1974 巻 11 号 p. 28-34
    発行日: 1974/12/01
    公開日: 2011/11/29
    ジャーナル フリー
     1.野外の軽種馬におけるGID反応による伝貧の調査成績 野外の軽種馬における伝貧の浸潤状況を調査するため,定期または臨時検診時の採取血清3,598例について伝貧のGID反応を実施した。その結果,家畜伝染病予防法に規定されている担鉄細胞の検出率規準により伝貧陽性と判定された馬11例から採取された血清は,すべてGID反応陽性であった。しかし,担鉄細胞の検査規準により伝貧陰性と判定された3,587例中3,583例の血清はGID反応陰性で,残り4例(担鉄細胞陰性例の0.11%)の血清が陽性反応を示した。 2.GID陽1生馬血液の馬体接種試験 1馬群のなかに現行法に基づく定期検査で長期間にわたり伝貧陰性と判定され,今回GID反応で陽性馬を3例発見した。この3例の馬から頸静脈血の脱線血を作り,血中ウイルスの証明を馬体接種試験により検討した。それぞれの血液が接種された健康馬のうち2例はそれぞれ17日,26日の潜状期を経て伝貧の発症が認められたが,残りの1頭は伝貧に罹患しなかった。しかし,2年後に同じ供血馬から血液を採取し接種試験を行なったところ16日の潜状期を経て明らかな伝貧発症と3回にわたり熱発作を認め得た。このことから,担鉄細胞陰性,GID反応陽性であった3例の馬の血液には,伝貧ウイルスが保有されていたことがわかった。
  • ―皮膚反応および寄生虫性肉芽腫―
    大川 広行, 吉原 豊彦, 石谷 類造, 山本 脩太郎
    1974 年 1974 巻 11 号 p. 35-50
    発行日: 1974/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Two experiments were carried out in these studies . In the first of them, rabbits were sensitized by intramuscular inoculation with one ml of extract of ethanol-fixed Strongylus equinus, S. vulgaris, and S. edentatus together with Freund's adjuvant 2 times at a 3 days' interval. Then, the sensitized rabbits were inoculated intracutaneously with th e same extract 10 days after the finish of sensitization, when a dermal reaction occurred at the site of inoculation. Histopathologic investigation revealed that this reaction was the immediate type of Arthus phenomenon. In the second experiment, sensitized and non-sensitized control rabbits were inject ed with suspension of triturated Strongylus into the liver, lung, kidney, appendix, and cerebrum and killed on the 2nd, 5th, 7th, 14th, and 28th day after injection. Histopathologic investigation was performed on these organs. The results obtained are as follows. In the early period, including the 2nd, 5th, and 7th day after injection, a difference was obviously recognized in histologic findings between the sensitized and non -sensitized rabbits . At the centers of lesions in liver, lung, kidney, and appendix, the infiltration of pseudoeos inophils, large mononuclear cells, and small round cells were more marked in the sensitized than in the non-sensitized rabbits on the 2nd day after injection. Furthermore, proliferation of epithelioid cells and giant cells, and hyperplasia of fibroblasts accompanied by the new formation of blood capillaries and bile ducts were prominent in the sensitized rabbits on the 5th day after injection. Both sensitized and non-sensitized rabbits had almost the same granulomatous lesions of liver, lung, kidney, and appendix chracterized by eosinophilic infiltration on the 14th and 28th day. Both sensitized and non-sensitized rabbits had encephalomalacic lesions accompanied by a very mild infiltration of eosinophils. They showed, however, marked infiltration of round cells and eosinophils in the meninges where the suspension of Strongylus had been injected. In the cerebral lesions, hyperplasia of glial cells, an increase in fatty-granular cells, penvascular cuffing, and cell infiltration of the meninges were more marked in the sensitized than in the non-sensitized rabbits.
  • 天田 明男, 千田 哲生, 久保 勝義, 大石 幸子, 桐生 啓治
    1974 年 1974 巻 11 号 p. 51-69
    発行日: 1974/12/01
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
     競走馬2例の心房細動に遭遇したので,臨床生理学的に観察した。各症例別の観察結果はつぎのとおりであった。 症例1:サラブレッド,牡,1962年生。 1965年12月のレースにおいて競走途中で突然にスピードが落ち1着馬から5.6秒遅れて入線した。心電図検査の結果,心房細動と診断された。その後,乗馬に転用されたが,1970年3.月に殺処分するまで心房細動が持続した。その間の観察所見はつぎのとおりであつた。 心電図所見:P波欠如し,f波が連続的に出現しその周波数は分あたり400~500であった。心拍間隔は極度に不整で,0.4~2.1秒の間で変動していた。QRS幅は0.12秒,Q-T間隔は0.40秒で正常範囲であった。運動中においても心拍間隔の不整がみられ,f波は消失しなかった。さらに運動中において異常に心拍数が増加した。心音図所見:各弁開口部において1音の振幅が大きく,かつその大きさは拍動毎に変化した。右心房内圧:37~65mmHgであり,a,z,c,x,v,yの各波は認められなかった。頸動脈頸動脈血圧:心拍間隔の不整に伴って血圧曲線も変動し,縮期圧は171~123(142±11.5)mmHg,弛緩期圧は148~99(121±12.1)mmHg,脈圧は40~9(21±4.6)mmHgであった。 症例2:繋駕速歩馬,牝,1963年生。 1967年9,月,調教中に馬場で転倒した。その後,乗馬に転用されたが心電図検査により心房細動と診断された。 心電図所見:基本的所見は症例1と同様であった。安静時心拍間隔は0.8~3.28秒(1.71±0.85秒)の範囲で変動し,QRS幅は0.09秒,Q-T間隔は0.50秒,f波の周波数は360~480/分であった。運動中の心電図検査においても症例1と同様所見がみられたが,心拍数は最高258/分まで増加し,さらに心室粗動の短かい発作が散発した。心音図所見:症例1と同様の所見であった。 本例は細動除去のためにアドレナリン作動β遮断薬(プロプラノロール)を投与したが不成功に終った。ついで1968年7月に硫酸キニジンを3目間に計55g投与したところ,除細動に成功した。その後,殺処分された1970年2月まで細動の再発はなく,洞調律が持続した。
  • 桐生 啓治, 天田 明男, 兼子 樹広, 佐藤 博
    1974 年 1974 巻 11 号 p. 70-86
    発行日: 1974/12/01
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
     心房細動を呈した競走馬2例が病理組織学的に検索された。1例は硫酸キニジンで除細動された例である。両馬には共に右心房筋層の限局性線維化,心臓神経の多発性巣状脱落および肺動脈ならびに大動脈の中膜変性が観察された。右心房病巣内および付近の小ないし細小血管は壁の水腫性粗鬆化ないし膨化(microvascularalteration)を表わしていた。罹患小血管はしばしば囲管性水腫あるいは管腔狭窄を伴っていた。血管変化は非除細動馬において,除細動馬におけるよりも量的ならびに質的に重度であった。非除細動馬には線維性ならびに水腫性肥厚を示めす僧帽弁に亜急性心内膜炎があった。 形態病理発生的に,限局性線維化は,著明な器質的変化を有する心臓神経の障害と密接な関連の下に起ったと考えられるmicrovascular alterationに基因する局所循環障害によってもたらされたものであろうと想像される。心房細動の発生の成因の一つとしては心房における量的ならびに質的に重度なmicrovascular alterationの存在が重視されなければならないだろう。
  • 久保 勝義, 千田 哲生, 杉本 修
    1974 年 1974 巻 11 号 p. 87-93
    発行日: 1974/12/01
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
    61頭のサラブレッドを用いて,調教が心臓におよぼす影響を検討した。 初出走から最後の出走までの月数をトレーニング期間とし,その算定にしたがって次の4つのグループに分類した。A群:長期調教群(平均19か月の調教期間),B群:休養群(平均20か月の調教期間ののち13か月の休養期間),C群:短期の調教群(平均2か月の調教期間),D群:未調教群(レース経験のないもの)。 A,B,C,D群の心臓重量(心臓重量/体重)は平均4,8159±692(1.10%±0.14),4,2509±674(0.99+0.10),4,2828±564(1.00%±0.09),4,1348±550(0.94%±0.16)であった。 A,B,C,D群の左心室壁の厚さは平均4.34,4.07,4.03,3.97cmであつた。また右心室壁の厚さはそれぞれ,平均2.25,1.97,2.13,2.04cmであつた。 左右心室壁の厚さの比はA,D群において同じような値を示した。 以上の知見から,競走馬において,トレーニングによる心臓の発達は,おそらく左室肥大または右室肥大とかたよることなく,両室性に拡大していくものと考える。
  • 高木 茂美, 伊藤 克己, 柴田 浩
    1974 年 1974 巻 11 号 p. 94-105
    発行日: 1974/12/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     競走馬の調教による赤血球沈降速度(赤沈)の変動要因を解明するために,赤沈変動に強く影響すると考えられている血漿中のフィブリノーゲン量(フィブリノーゲン)およびPCVの変動と赤沈変動との関連性を追求した。一方,赤沈変動からは直接観察しにくいが,競走馬の調教状態を判定するためには有用な体力の変化を知る指標として血漿中の甲状腺ホルモン値(T3およびT4)の有効性も検討した。 これらの量的に沿った実験動物としては,計画的な調教により著しく体力が向上すると考えられている育成馬39頭が用いられた。その結果, 1.調教過程の前半では,赤沈の遅延とフィブリノーゲンの減少が著しく,一方,PCVは増加した。しかし,統計学的にはこれら3つの因子とも後半は殆ど変動が認められなかった。また,全時期を通じて赤沈値とフィブリノーゲンの間には正相関が,赤沈値とPCVの間には負相関が認められた。 2.これら因子の変動量間での相関係数の比較から,赤沈値はその著しい遅延期,すなわち競走馬の調教進度が著しく向上する時期では主としてフィブリノーゲンの減少による影響を受けることが判明した。一方,統計学的に殆ど変動が認められない時期の赤沈値はPCVとフィブリノーゲンの両方から複雑に影響されていると考えられた。 3.血漿中のT3値を表わすためにT3結合能指標(TBC index)が用いられ,TBC indexは調教過程の前半に明瞭な減少を示し,その値を後半も維持していた。したがって,調教による甲状腺機能の亢進はT3の変動にかなり良く反映するものと考えられ,体力判定の指標としての可能性も予測された。 4.血漿中のT4濃度は,調教中期には減少したが,終了期には著しく増加した。この終了時でのT4濃度の増加は調教に伴っては初めて観察されたものであり,調教進度との関連から余備力の指標として役立つものと考えられた。
  • 村上 碩, 高木 茂美
    1974 年 1974 巻 11 号 p. 106-119
    発行日: 1974/12/01
    公開日: 2011/11/29
    ジャーナル フリー
     馬に運動を負荷した場合,運動が血中酵素の変動ならびに生理的状態にどのような影響を与えるかを明らかにするために,3頭の馬を使って次のような運動を負荷した。すなわち,1目22,000mを連続5日間,伸長速歩を主体とし,一部軽い駈歩を組み合わせた。 血液試料は運動期間中は各日とも運動前,運動中,運動直後,ならびに運動後1および5時間に採取した。また回復過程を観察するために,運動実験終了後1,2,3,5,7日にそれぞれ1回ずつ採取した。測定した血中酵素は,creatine kinase, aspartate aminotransferaseおよびfructosediphosphate aldolaseである。また馬体がどのような影響を受けたかを観察するために,赤血球沈降速度,好酸球数および体重を測定した。 上記運動負荷により,creatine kinaseは運動後5時間で最高値を示し,以後はむしろ減少した。また運動が強いほど,増加率は大きかった。このように運動の強さに応じて運動中の心拍数の増加ならびに運動5時間後のcreatine kinaseの増加と好酸球数の減少がみられた。aspartate aminotransferaseの増加は顕著ではなかったが,消失速度は遅く,したがつて運動期間中徐々に増加した。fructosediphosphate aldolaseは上記両酵素の変動様式の中間を示すような変動であった。 一方,赤血球沈降速度と体重の変化から,運動の進展にともない,疲労の程度は大きくなるように考えられた。 したがってcreatine kinaseは運動の激しさを示す指標として,またaspartate aminotransferaseは疲労の程度を示す指標として有用であろうと考えられた。しかしfructosediphosphate aldolaseの運動に対する意義については本実験からは明らかにすることができなかった。
  • 村上 碩
    1974 年 1974 巻 11 号 p. 120-127
    発行日: 1974/12/01
    公開日: 2011/11/29
    ジャーナル フリー
     ヒトにおいては激運動時に溶血が起り,hcmoglobinが血中に出現することが知られている。一方,馬においては麻痺性筋色素血(尿)症にmyoglobinが血中に出現することが知られている。 馬に連続長距離走を負荷したところ,血中にbenzidine反応陽性成分の出現することが認められた。したがってこの成分がhemoglobinかmyogiobinかを調べるために,濾紙ならびにcellulose acetate電気泳動法により同定したところ,この成分はhemoglobinであることが認められた。また運動時の血漿中hemoglobinの変動を観察したところ,運動直後に最高値を示し,以後減少して5時間後にはほとんど負荷前値に復した。 また運動時にこのような溶血の起る機序についても若干の考察を試みた。
  • 熊埜御堂 毅, 秋山 綽
    1974 年 1974 巻 11 号 p. 128-132
    発行日: 1974/12/01
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
     呼吸器感染の防禦能として重要な役割を果す鼻汁中の分泌抗体を測定するために,馬の無希釈鼻汁の採取法を考案した。 すなわち,この方法はウレタン製スポンジに鼻汁を吸収させて採取する方法で,綿棒の先端にウレタンスポンジを取り付け,スポンジの吸水性を利用して鼻汁を採取するものである。これは長さ30~40cmの柔軟性のあるアルミ製針金の一端に13~14(長さ)×3.5(巾)cmのウレタンスポンジを取り付けたいわゆる綿棒状のものであり,スポンジ部分を馬の鼻腔内に挿入し,他端を頭絡に固定して30分間程度放置することによって,約6~12mlの鼻汁が採取できる。この採取された鼻汁の総蛋白量は480~1260mg/100mlであり,無希釈鼻汁として直接抗体活性を測定することができる。
  • 秦 良治, 其田 三夫
    1974 年 1974 巻 11 号 p. 133-151
    発行日: 1974/12/01
    公開日: 2011/11/29
    ジャーナル フリー
     4頭の健康馬にそれぞれ4頭の健康馬からの血液を体重kg当り2ml宛,連日,隔日または6~8日の間隔で反復輸血し,その間,臨床学的ならびに血液学的観察を実施した。その成績を総括すると次の如くである。 1)試験第8~72日,平均試験第52日(輸血第6~20回,平均第16回)から血色素尿を伴う明瞭な輸血副反応,すなわち可視粘膜の黄疸,呼吸の速迫,脈数の増加,腸蠕動の亢進,発汗,発熱および横臥がみられたが,これらは24時間後には何れも消退していた。 2)赤血球数,チョッケ値,ヘマトクリット値およびヘモグロビン量は平行した消長をとり,試験初期には増高したが,試験中~ 末期には減少しておおむね輸血前の値に復した。 3)白血球数,白血球百分比および赤血球抵抗の消長には,輸血と関連した一定の傾向は見出し難かった。 4)担鉄細胞は,試験第6~30日,平均試験第19日(輸血第4~13回後,平均第9回後)から出現しはじめ,輸血の反復と共に漸増した。. 5)赤血球貪食細胞は,試験中~ 末期に全例で観察された。 6)黄疸指数および血清ビリルビン量は,輸血開始後やや増量したが,正常値内の消長であった。 7)SGOT,SGPTおよび血液尿素窒素は,終始正常範囲内の消長を示した。 8)溶血素価は4例で試験第6~72目,平均第50日から上昇した,一方,凝集素価は1例のみで,試験第7日から上昇した。 9)受血馬は,何れも試験終了時の血清の寒天ゲル内沈降反応および剖検後の病理組織学的検査から,伝貧は否定された。
  • 鎌田 正信, 秋山 綽
    1974 年 1974 巻 11 号 p. 152-154
    発行日: 1974/12/01
    公開日: 2011/11/29
    ジャーナル フリー
     レースに出走中あるいは調教中に骨折その他の事故を起して当研究所で剖検された競走馬のうち,2頭の馬め肺病巣から溶血性連鎖球菌(以下溶連菌という)を分離した。生前これらの馬は明確な呼吸器症状を示しておらず,そのため競走あるいは調教に供されたものであった。 溶連菌は両例の肺の限局性の暗赤色肝変化巣や化膿巣から直接培養法で純粋に分離され,5%馬血液加ハートインフュジョン寒天の表層および深部集落のまわりに典型的なβ溶血帯を形成した。また莢膜の形成も認められた。 そこでこれらの溶連菌を同定するためLANCEFIELD越智・平尾およびKOBAYASHIの報告に準じ,血清学的ならびに生化学的性状について検査を試みた。その結果,分離された溶連菌は市販の溶連菌群特異血清(北里研究所)を用いて行塗った毛細管沈降反応で,C群の抗血清と反応し,さらに溶血阻止試験では1%グルコースの添加,無添加に関係なく馬,ヒツジおよびウサギの血球を溶解した。また糖類分解試験ではラクトース,グルコース,マルトース,シュークロース,ソルビット,サリシンを分解し,トレハロース,ラフィノース,アラビノース,イヌリン,マンニット,グリセロールを分解しなかった。 以上の成績およびその他種々の性状から分離溶連菌をOGURAのStreptococcus pyogenesA,越智・平尾のII型,小林のII型,すなわちLANCEFIELDによる分類のC群連鎖球菌Strephtococcus zooepidemicusと同定した。
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