日本中央競馬会競走馬総合研究所報告
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1983 巻, 20 号
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  • III. 競走能力を支配するポリジーン座位数の推定
    沖 博憲, 古庄 敏行
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 1-10
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    In an attempt to estimate the number of gene-loci controlling the racing performance and the effect of the genes concerned, an analysis was carried out on the racing results of some Thoroughbreds. These horses were born by foreign sires during a period from 1970 to 1978 and ran on good conditions at the age of three years for 1200m, 1400m, 1600m, and 1800m on the turf or dirt-course. If it is allowed to take a portion where the probability of the chi-square distribution is high, it will be presumed that the number of gene-loci controlling the racing performance may be in the neighborhood of N=7-10 (average, 7.9) and that the effect of the genes may be α=0.8-1.4s (average, 1.02s). Another method of estimation of the number of genetic factors was worked out by Furusho. Then the number of gene-loci controlling the racing performance and the effect of the genes concerned were estimated to be N=9-24 (average, 14.2) and α=0.3-0.8s (average, 0.52s), respectively. Taking these two N-values and two α-values into consideration, it was presumed that the number of gene-loci controlling the racing performance and the effect of the genes concerned might be in the neighborhood of N=7-24 (average, 11.5) and α=0.3-1.4s (average, 0.73s), respectively.
  • 沖 博憲, 深谷 徳善
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 11-15
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    It is an important problem to study diurnal changes in measurements of body parts in the Thoroughbred when a large number of horses are measured in the course of a day. In this study, 24 body parts were measured in 43 Thoroughbreds at three different times, the day before training, immediately after training, and after grazing. As a result, there were significant chronological differences in the measurements of few parts by the analysis of variance, but such difference was significant at 5% levels in thickness of the breast. The difference in thickness of the breast, however, was considered to be within the range of measuring error. It seems to be the best way to measure Thoroughbreds at the same time on the same day, but no statistical errors will be produced, if all horses are measured on the same day.
  • 沖 博憲, 永田 雄三
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 16-26
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    In order to estimate the change of a number of body parts in accompany with the growth, 24 parts of the body were measured chronologically in 259 male and 171 female Thoroughbreds born over a period from 1979 to 1982. The measurement was undertaken over a period from 300 to 1320 days of age. The following results were obtained. (1) In the early period, the height of the croup was greater than the body length. It became the same as the body length until 720 days of age, and was surpassed by the latter at 1200 days of age. (2) From 300 to 1320 days of age, the growth rate of body length was higher than that of body height at the withers, at the back, or at the croup. In this study, the growth rate of length of the breast was 65-75% of that of body length. (3) The growth in thickness of the point of the hip was more remarkable in females than in males. The growth in circumference of the forearm, cannon, gaskin and hind cannon, however, was more distinct in males than in females. (4) The highest growth rate was shown by the circumference of the breast of all the 24 parts of the body.
  • 長谷川 充弘, 富岡 義雄, 吉原 豊彦, 兼丸 卓美, 兼子 樹広, 桐生 啓治
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 27-31
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    4例の馬を用いて実験的点状焼絡術を行い焼絡部の皮膚について病理組織学的検索を行った.
    焼烙術による組織反応は炎症の経過から1. 術後1日目 (滲出期), 2. 術後3-11日目 (細胞遊走期), 3. 術後14-21日目 (修復期) に分けられた. 細胞遊走期から修復期にかけて肉芽組織内の細動脈および毛細血管周囲に顕著な好酸球浸潤ならびに肥満細胞が見られたことは局所免疫学的反応の存在を思わせた. また, 小神経束における神経軸索の膨化および脱落が見られたことは疼痛緩和としての効果に関係があるのかもしれない.
  • 上田 八尋, 吉田 光平, 益満 宏行
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 32-47
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    日高地区の99牧場で育成されている生後3日齢から25カ月齢に至る幼駒延べ282頭を対象として骨端症の調査を行った. 骨端症の臨床所見は局所の熱感および疼痛を伴った硬性腫脹としてみられ, その発症部位は3-5カ月齢の幼駒では第三中手 (足) 骨および基節骨に, 6-8カ月齢では橈骨に, 8-12カ月齢では橈骨にそれぞれ発症が認められた. これら骨端症のX線所見は骨端線を中心とした骨幹端および骨端の肥大, 骨端線外縁のlipping, 骨肥大側における骨硬化像を特徴とし, 多くの症例にみられた. この他, 症例によって骨端線の肥厚およびcrush様所見, 骨幹端および骨端におけるX線透過像, 骨梁の乱れ, 骨梁走行に一致した線状陰影などがみられた.
    骨端症罹患馬は月齢の経過によって一見治癒したかにみえたが, 肢軸の変形をきたすと共にX線検査では骨端線内外側の形状不一致等の影響が認められた. さらに, 骨端症馬は近位種子骨の骨梁走行に一致した線状陰影, いわゆる粗鬆像およびbone cyst様陰影, あるいは腰痿, 飛節軟腫および腱拘縮と密接な関係にあることが分った.
  • 杉浦 健夫, 安藤 泰正, 増澤 均, 栗山 憲司, 小川 諄, 平澤 澄
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 48-54
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    1980年から1982年にかけて, 日本中央競馬会日高育成牧場の育成馬について, 血清疫学調査を行なった. 抗体価の測定は, 馬ヘルペスウイルス1型 (HH-1株, 馬鼻肺炎ウイルス) ゲタウイルス (MI-110株), 馬アデノウイルス (T-1株) およびロタウイルス (ネブラスカ牛下痢症ウイルス, リンカーン株) については補体結合反応で, 馬ライノウイルス1型 (NM-11株) についてはウイルス中和反応で行なった.
    これらのウイルスのうち, この牧場に入厩後最も抗体価の変動が見られたのは, 馬ライノウイルスであり, 毎年11月から2月の冬期にほぼ全頭が感染し高い抗体価を獲得した. 馬アデノウイルスも比較的抗体の陽性率が高かったが, むしろ生産牧場での感染抗体を保有して入厩する傾向が, 1981年と1982年に観察された. 入厩後の感染率は, 年度により4-20%の差が見られた. ロタウイルスについても抗体を保有した状態で入厩する例が多く, 1980年に40%, 1981年に27%, 1982年に14%の陽性率が入厩時に観察された. 入厩後の感染馬は例年1, 2頭であった. 馬ヘルペスウイルス1型に対する入厩時の抗体陽性率および入厩後の感染率は, 年度により差があった. すなわち, 1980年入厩馬の入厩時の陽性率は5%であったが, 1981年6月から7月にかけてその陽性率は50%に上昇し, 流行が示唆された. 1981年の入厩馬では入厩時の抗体陽性率および入厩後の感染率はともに低かった. 1982年入厩馬では47%が入厩時に抗体を保有していたが, その後の感染は認められなかった. ゲタウイルスについては, 入厩時に青森県産の数頭が抗体を保有していたが, その他の育成馬については調査期間中抗体価の変動はなく流行は認められなかった.
  • 今川 浩, 福永 昌夫, 和田 隆一, 平澤 澄
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 55-62
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    馬ロタウイルスとその他の動物およびヒトロタウイルス間の血清学的関係, 馬ロタウイルスの物理化学的性状について検討した. 交差CF反応において, 馬ロタウイルスBIおよびHI-23株の両株はウシ (Lincoln株), ブタ (S-80株), サル (SA-11株), ヒト (Wa株) の各ロタウイルスと密接に交差が認められ, 2株の馬ロタウイルスとその他の株とは区別できなかった. 交差中和試験において, 馬ロタウイルスBIおよびHI-23株の両株とサルロタウイルスSA-11株は, それぞれのホモの反応における抗体価に比べると4-64倍の抗体価の相違が見られたが, 密接に交差が認められた. 一方, 同じ交差中和試験で2株の馬ロタウイルスはその他の株とは交差しなかった. 馬ロタウイルスBI株は, IUDRにより増殖が抑制されないRNA型のウイルスであり, エーテル, クロロホルム, デオキシコール酸ナトリウムに対し抵抗性, 酸 (pH 3.0) に安定性, 温度に比較的安定性, 50℃におけるMgCl2に対して感受性, 100nmのフィルターを通過するが, 50nmのフィルターは通過しなかった. 以上の成績から, 馬ロタウイルスBIおよびHI-23株の両株は血清学的にgenus Rotavirusに属し, 血清型としてサルロタウイルスSA-II株に近いこと, およびBI株はgenus Rotavirusに共通する物理化学的性状を有していることが確認された.
  • 池 和憲, 塗木 隆馬, 野元 泰博, 今井 壮一, 石井 俊雄
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 63-70
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    軽種馬146頭について用途別 (育成馬25頭, 競走馬60頭, 繁殖馬45頭, 乗用馬16頭) に糞便内に排泄される大腸内繊毛虫を調査し, 以下の結果を得た.
    1. 育成馬7科23属49種, 競走馬7科22属49種, 繁殖馬7科22属50種, 乗用馬7科20属45種, 全体として7科23属53種の繊毛虫を検出し, そのうち今回の調査では3種が本邦において未知種であった.
    2. 平均繊毛虫密度は育成馬で4.32×104/ml, 競走馬で9.03×104/ml, 繁殖馬で3.41×104/ml, 乗用馬では2.89×104/mlで, 競走馬のみが有意に優っていた.
    3. 平均検出種類数は育成馬で18.4種, 競走馬で21.0種, 繁殖馬で16.9種, 乗用馬では16.6種で, 競走馬のみが有意に優っていた.
    4. 用途別宿主のいずれの繊毛虫相においても各属および種の検出率と繊毛虫密度との間には有意な相関 (P<0.001) が認められ, 高密度で存在する繊毛虫の分布は広い傾向があった.
  • 高木 茂美
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 71-76
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    1勝以上の競走成績を残しているサラブレッド雌馬4頭を用い, トレーニングが馬の糖代謝に与える影響を糖負荷試験法により観察した. 舎飼のみによる約4カ月間の完全休養後に実施した第1回目の成績では, 前報と同様に, 単胃動物としてはきわめて低い血漿糖の消失速度が観察され, 糖投与後のインスリン反応も最高値への到達時間の遅延および2峰性の増加を示していた. 一方, 6週間のトレーニング後に実施した第2回目の試験時には, 血漿糖の消失速度は前回の3倍以上に増加しており, その数値は他の単胃動物と同等以上を示していた. また, インスリン反応も, きわめて速やかに最高値に達し, 約2倍近い血漿濃度を示していた. しかし, インスリン感受性の一指標と考えられているインスリン指数 (1ml中のインスリン値/100ml中の糖濃度) は, 投与後60分値までトレーニング後の方が高値を示しており, ヒトなどとは異なり馬のインスリン感受性はトレーニングによっては増加しないことを示唆していた. したがって, トレーニングによる糖処理能力の増加は, 膵臓からのインスリン分泌の増加によるものと推測され, この運動に対する膵臓の適応能力により他の動物とは比較できないほど大きな糖代謝能の変化が馬では発生するものと考えられた.
  • 松井 寛二, 天田 明男, 澤崎 徹, 加納 康彦
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 77-86
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    サラブレッド種とシェットランドポニーの心電図の成長にともなう変化について追跡し, 既報告のホルスタイン種牛の成績を加えて比較検討した. 生後1週齢より12カ月間にわたって安静時にA-B誘導心電図と肢誘導心電図を記録した. RR, PQ, QT間隔とP波およびQRS群の持続時間は成長にともなって延長した. P波はほとんど2峰性を示し, その電位は概ね0.2mVであった. QRS群はすべてrS型またはQS型を示した. ポニーのR〓の電位は2カ月齢以降ほとんど認められず, またS〓は漸次減少した. サラブレッドのR〓とS〓はともに減少していない. サラブレッドのPQ間隔とP波の持続時間は3品種の中で相対的に長く, 逆にQT間隔は相対的に短い. サラブレッドとポニーのT波の波型はウシの場合と異なり成長にともなって変化し, 出生直後陰性あるいは陰性要素優勢を示し, その後30日齢まで陽性要素優勢を, 2カ月齢以降に再び陰性あるいは陰性要素優勢を示した. 水平面のQRS群平均電気軸の方向は12カ月齢まで変化を示さず, 成長にともなって変化するウシとは異なる特徴を示した.
  • 藤井 良和, 渡辺 博正, 山本 剛, 仁和 勝広, 水岡 清也, 姉崎 亮
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 87-96
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    馬の各種疾患における診断法の確立を目的として, 骨格筋, 心筋障害に対するCK及びLDHアイソエンザイム分析の臨床的意義について検討した. 競走馬に多発するTying-up syndrome 54例の発症時のアイソエンザイム所見においては, 病勢の程度に応じたCK-MM1及びLDH5分画の上昇を認めた. また重症例では発症時にMM1, LDH5分画が上昇するタイプと, これらの所見に加えてLDH1, CK-MB分画も上昇する2つのタイプが観察された. 前者のタイプは26例中21例で約80%を占め, 血液所見は一週間以内で正常に復し, 予後も良好であった. 後者のタイプでは心筋障害の併発が考えられ, 血液所見の回復は緩徐で数週間を要し, その間に再発あるいは筋痛等を発症し, 競走馬としての予後は概ね悪かった. さらに1例の心筋障害症例では, MM1分画の著増に加えMB分画が1000U/lを越える増加を認めたが, 経時的なアイソエンザイム所見を治療及び休養, 調教再開時期の指標等に応用することによって良好な回復が得られた. このように発症時のアイソエンザイム所見によって, ある程度の予後の推測ができ, さらに治療等に応用することにより, 再発あるいは慢性の筋痛への移行などの予防に役立つと考えられた. またCK及びLDHアイソエンザイムの各分画の増加の程度によって, 骨格筋, 心筋組織のダメージをより明確に把握でき, これらの経時的な分析は, 適切な治療あるいは休養の指標, 治療効果の判定など臨床応用上非常に有用であることが判明した.
  • 兼丸 卓美, 兼子 樹広, 吉原 豊彦, 長谷川 充弘, 富岡 義雄
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 97-102
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    流産胎仔10例の肺を病理組織学的に検索したところ全例の肺組織内に好酸性物質が観察された. 肺組織内の好酸性物質は, 羊水起因性の物質であった. この好酸性物質は, 形態および染色性から4タイプに分類された. 肺組織内では, 全葉性に細気管支から肺胞内に見出された.
  • 健康馬の口腔から分離されたウイルス
    福永 昌夫, 熊埜御堂 毅, 鎌田 正信, 和田 隆一
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 103-109
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    計40株のウイルスが5群の健康馬, 141頭から28.4%の率で分離された. 交差中和試験により, これらは3つの血清型に分類され, それぞれ馬ライノウイルス2型, 3型, および酸安定性馬ピコルナウイルス4442株に一致した. 馬ライノウイルス2型のウイルスは若齢馬から容易に分離されたが, 4442型株のウイルスは各年齢層から一様に分離された. ウイルス分離と血清中和抗体の追跡調査により, 唾液中からは100.75-102.75TCID50/0.1mlのウイルスが分離され, 中和抗体は抗体価にほとんど変化なく検出された. したがって, ピコルナウイルスは馬の口腔に常在し, 健康な馬に広く感染していると考えられた.
  • 杉浦 健夫, 安藤 泰正, 平澤 澄
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 110-118
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    寒天ゲル内沈降反応により馬ヘルペスウイルス1型に対する沈降抗体を検出し力価測定を行なう方法を開発した. 抗原は, 濃縮ウイルスを1%ノニデットP-40および胆汁酸ナトリウムで処理することにより作製した. この抗原は馬ヘルペスウイルス1型のみに特異的であり, 亜型であるHH-1, ケンタッキーD, TH-20およびH-45に共通した抗原性を示した. この反応を実験感染馬および自然感染馬に応用したところ, 発症時に-または+であったほとんどの馬は, 回復期に+++または++++に抗体価の上昇が認められた. +, ++, および++++の反応を示す血清の沈降抗体価はそれぞれ1または2, 4または8, 16または32, および64倍以上であった.
  • 日本の軽種馬におけるHaemophilus equigenitalisの抗体調査
    鎌田 正信, 小田 隆範, 福沢 慶一, 大石 秀夫, 和田 隆一, 福永 昌夫, 熊埜御堂 毅
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 119-125
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    1975年から1980年にかけて集められた北海道日高地方の1-3歳の雌馬および繁殖雌馬ならびに滋賀県の日本中央競馬会栗東トレーニング・センター所属の競走雌馬の血清, 計4312例について, Bryansらの方法に準じた補体結合 (CF) 試験により, Haemophilus equigenitalisの抗体調査を実施した. その結果, CF抗体は日高地方の繁殖雌馬群から1978年以降毎年検出され, 1978年の交配前の血清にも抗体陽性例が認められた. しかしながら, 日高地方の1-3歳の雌馬群および競走雌馬群からは1例も抗体陽性例が検出されなかった. これらの結果から, 1980年の馬伝染性子宮炎 (CEM) の発生以前にH. equigenitalisが日高地方に侵入し, 繁殖雌馬群間に伝播していた可能性が示唆された. また, 1980年のCEMの発生後に日高地方の繁殖雌馬群から種付後2カ月以内に無作為的に集められた血清中のCF抗体保有馬の陽性率は20.9%と高率であった. このことから, 同地域におけるH. equigenitalisの広範な伝播が示唆された.
  • Haemophilus equigenitalisの分離, 継代, 保存培地の検討
    鎌田 正信, 小田 隆範, 大石 秀夫, 和田 隆一, 福永 昌夫, 熊埜御堂 毅
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 126-132
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    Haemophilus equigenitalisの分離, 増殖, 保存培地および培養条件を検討するため, 細菌学的研究を実施した. ユーゴン, 変法サイヤマーチンおよびチオール培地から作成したチョコレート寒天は他の培地よりも菌の良好な発育を示した. 10% CO2, 75% N2および15%空気の条件下で, 寒天培地上の菌の発育は最も良好であった. 8種類の液体および軟寒天培地において, チオールブロスおよびCTA培地が優れた菌の発育を示した. 菌数は培養4日目までに105-108個/0.1mlを記録した. 液体および軟寒天培地におけるH. equigenitalisの生存は選択された培地ならびに温度に依存した. すべての培地でH. equigenitalisは-70℃, -20℃の条件下で3年間生存した. 4℃および37℃の条件下では, ユーゴン, ハートインフュージョン, クックドミート, ブルセラならびにチオールブロス中の菌は少なくとも8週間以上生存した.
  • 実験感染馬における病理学的所見
    和田 隆一, 鎌田 正信, 福永 昌夫, 熊埜御堂 毅
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 133-143
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    馬伝染性子宮炎 (CEM) の原因菌であるHaemophilus equigenitalisの102, 106および1010個を3頭の馬の子宮内に接種した後, いずれも9日目に病理解剖し, 感染菌量が異なる場合の病理学的変化について検討した. また, 1010個接種例では, 3日目と6日目剖検例を加えて, 第9病日までの病理学的変化の経時的推移を調べた. 5頭の実験馬は全て, 2-4日目に子宮膣部炎および膣炎の徴候を現わし, 粘膜の充血や浮腫が認められた. しかしながら, 滲出液の流出は1010個接種例だけに見られ, 102および106個接種例には認められなかった. 病理解剖学的な主要所見は子宮粘膜の浮腫であり, 1010個接種, 6日目剖検例で最も顕著であった. 組織病理学的には生殖器粘膜上への好中球の遊走, 固有層の浮腫および主として単核細胞からなる細胞浸潤が共通所見であった. また, 子宮粘膜上皮細胞の変性脱落および子宮腺ののう胞性拡張が1010個接種, 9日目剖検例だけに認められた. 光学および電子顕微鏡を用いた観察により, H. equigenitalisは両端鈍な短桿状を呈し, 周囲に厚い莢膜を有していた. また本菌は生殖器の粘膜表面や腺腔内の粘液中に遊離の状態で存在, 増殖し, 子宮内膜上皮下への侵入像は観察されなかった. このような菌の増殖部位は感染馬における病理学的変化の形成に大きな影響を及ぼすと推察された. すなわち, CEM感染馬における病理学的変化は生殖器粘膜に限局し, 筋層や漿膜には及ばないものと考えられた. したがって, 本病は病理学的には急性カタール性子宮内膜炎に分類されるものであろう.
  • 日本における本病初発時の臨床像ならびに防あつのための臨床対応 (短報)
    小田 隆範, 大和 康夫, 鎌田 正信
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 144-147
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    1980年度繁殖シーズン中に馬伝染性子宮炎の発生が日本において初めて認められた. すべての感染馬を摘発するために実施された2週間にわたる検査において, 208頭の雌馬および9頭の種雄馬からHaemophilus equigenitalisが分離された. 繁殖シーズン後に引き続いて実施された検査の成績を含めると, 297頭の雌馬および13頭の種雄馬から本菌が分離された. 雌馬における臨床症状は他国で報告されたものとほとんど同様であった. すべての感染雄馬は臨床症状を示さず, 短期間の治療後に交配の再開が許可された. 多くの雌馬は消毒薬および抗生物質療法によって治癒し, その後受胎した. 297頭の感染雌馬のうち, 152頭は受胎し, 131頭は正常に分娩した. 出産率は86.1%で, この地域の過去4年以上にわたる平均出産率93%よりわずかに低下した.
  • 杉浦 健夫, 福沢 慶一, 鎌田 正信, 安藤 泰正, 平澤 澄
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 148-153
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    2-5カ月齢の無熱性肺炎発症馬10頭中7頭の鼻汁からウイルスを分離し, 寒天ゲル内沈降反応により馬ヘルペスウイルス2型と同定した. しかし, 患馬はいずれも幼齢で抗体産生能が未熟であるためか, 有意の抗体上昇は確認できなかった.
  • 今川 浩, 和田 隆一, 平澤 澄
    1983 年 1983 巻 20 号 p. 154-157
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    馬ロタウイルスのMA-104細胞における増殖形態について検討した. 無数のウイルス粒子が感染細胞の細胞質の拡張した小胞体内に認められた. ウイルス粒子は直径30-40nmのcore粒子, 単層の殻を有する直径55-60nmの粒子, 二層の殻を有する直径70-80nmの粒子の三つの型のものが認められた. 二層の殻を有する粒子の外層の殻は小胞体の膜を用いた出芽によって形成された. さらに, 感染細胞の細胞質には管状構造物および蜂の巣様構造物が認められた.
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