日本中央競馬会競走馬総合研究所報告
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1984 巻, 21 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 益満 宏行, 上田 八尋, 吉田 光平
    1984 年 1984 巻 21 号 p. 1-7
    発行日: 1984/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    オレイン酸ナトリウム製剤を馬の骨損傷部に投与した際の骨損傷治癒経過への影響について実験馬5頭を用いて検討した. 全身麻酔下にて各馬の第三中手骨骨幹中央部に近位, 遠位2ヵ所の骨損傷を形成し, 遠位の骨損傷に薬剤を投与した後6ヵ月にわたり両者の治癒経過を比較観察した. 骨損傷部の治癒程度の判定は, X線写真像上の肉眼的変化および濃度変化を基に行ない, 1例について組織学的検査を実施した. その結果, 本薬剤の投与により, 明らかな骨損傷治癒促進効果が認められた. しかし, 骨損傷発生から治癒までの機転に変化は認められず, 本薬剤の作用は単に治癒経過を早めるものと思われた。
  • 3. 駈歩時の垂直, 前後分力波形と馬体動作との関連性
    仁木 陽子, 上田 八尋, 益満 宏行
    1984 年 1984 巻 21 号 p. 8-18
    発行日: 1984/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    The vertical and fore-aft components of the force exerted by each limb on the ground, at canter, have been measured by means of the piezo electric platform. The materials and methods used were the same as those in the previous study of walk and trot, except that horse-riding was adopted. The force curves of vertical and fore-aft components had approximately the same character for the trot, except at the point of impact (the beginning of the stance phase). The maximum values of vertical components were 132.4% of total weight in the trailing forelimb, 111.1% in the leading forelimb, 93.7% in the trailing hindlimb, and 82.3% in the leading hindlimb. The fore-aft components for the leading fore and hindlimb indicated that the positive values representing a braking force were larger than the negative values representing a propelling force. On the contrary, those for the trailing hindlimb indicated that the negative values were larger than the positive values. This uneven distribution of positive and negative values resulted from the disparity of time at which the fore-aft component changed from a braking to a propelling force, and the disparity of their maximum values. These results suggest that the forelimb may provide a function to support and the hindlimb a function to propel. At canter, which is an asymmetrical gait, such function differed with a condition whether a limb became a leading one or trailing one. A trailing limb might play a more important role as a supporter and propeller than a leading one.
  • 杉浦 健夫, 福永 昌夫, 平澤 澄
    1984 年 1984 巻 21 号 p. 19-27
    発行日: 1984/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    1983年8月中旬から9月中旬にかけて関東地方にある栃木県那須郡の騎手教育施設, あるいは宇都宮市, 足利市, 東京都大田区, 神奈川県川崎市および千葉県船橋市の競馬場において, 38.3-40.0℃の発熱, 全身または躯幹の一部の発疹および下肢の浮腫を主徴とする流行性疾患が発生した. 発症時および回復期に採取した血清について, 補体結合反応によりゲタ, 馬鼻肺炎, 馬アデノ, ロタおよび日本脳炎ウイルスに対する抗体価を測定したところ, 46頭の調査対象馬中56.5%の馬にゲタウイルスに対する有意の抗体価上昇が認められた. また, 計6頭の馬の血漿からウイルスが分離され, 寒天ゲル内沈降反応でゲタウイルスと同定された. 以上のことから本流行性疾患はゲタウイルス感染症と判断された. なお, 同じ関東地方にある日本中央競馬会の施設に繋養されている競走馬については同様の疾患の発生が報告されておらず, ゲタウイルスに対するワクチンが接種されている効果が現われているものと考えられる.
  • 鎌田 正信, 和田 隆一, 福永 昌夫, 熊埜御堂 毅
    1984 年 1984 巻 21 号 p. 28-38
    発行日: 1984/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    A total of 16 disinfectants were examined for bactericidal effect against Klebsiella pneumoniae, capsule type 1, isolated from a mare with chronic metritis, to find disinfectants suitable for controlling the spread of this type among horses in Japan. Organisms of this type in distilled water were inactivated by the conventionally used concentrations of all the disinfectants, except four which were saponated cresol solution, isopropyl alcohol, mercurochrome and diluted tincture of iodine. In general, Hilite, a chlorine disinfectant, was the most effective of all. Iodine preparations, chlorhexidine and anionic soap were effective disinfectants for the equine body, chlorine products for the stable, and an orthodichlorobenzene preparation was for the door mat of the stable. All the disinfectants decreased more markedly in bactericidal effect when placed in the vaginal exudate than in distilled water. Most of them increased in this effect against the organism by heating, but decreased gradually in the effect with an increase in the number of bacteria inoculated.
  • 久保 勝義, 高木 茂美, 村上 碩, 甲斐 真
    1984 年 1984 巻 21 号 p. 39-45
    発行日: 1984/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    競走馬の運動処方の指標として, %HR maxを用いるために, また最大血中乳酸濃度とパフォーマンスの関係を調べるために, 競走馬の最大心拍数, 最大血中乳酸濃度が得られる運動方法について検討した. 供試馬として満2歳, 雄の6頭の競走馬を用いた. これらの馬に4種類の最大運動負荷, すなわち, 200m走, 1000m走, 1600m走, オールアウト走 (700m/分の一定速度で走らせ, その速度が維持できなくなるまで) を行い, その間の心電図をテープ心電計で記録し, 心拍数を測定した. また, 運動負荷終了後3分を経過してから, 頸静脈血を採取し, 血中乳酸濃度を酵素法により測定した. その結果, 4種類の最大運動負荷の中でオールアウト走の途中, 運動開始後約5分のところで最大心拍数が得られた. その時の値は, 平均233±7拍/分で安静時の約7倍であった. また, 最大血中乳酸濃度は4種類の最大運動負荷のうち1600m走において得られた. その時の値は平均24.50±3.35mmol/lであり, 1-2分前後の最大運動の時に得られることが示唆された. 今回得られた個々の馬の最大心拍数および最大血中乳酸濃度と各テストの走行タイムおよび走行距離との関係を調べたところ, 1600m走の走行タイムと最大血中乳酸濃度との間に, 走行タイムのよいものほど低い値を示す傾向がうかがわれた.
  • 甲斐 真
    1984 年 1984 巻 21 号 p. 46-50
    発行日: 1984/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    筋機能研究に広く用いられている中殿筋の筋線維構成を, 健康なサラブレッド種16頭について, 解剖検体および筋生検法で観察し, さらに筋生検法の再現性を検討した. その結果, 馬の中殿筋の筋線維構成は均一なものではなく, 深層になるに従ってslow twitch (ST) fiberの比率が増加し, 逆にfast twitch (FT) fiberの比率が減少することが明らかとなった. したがって, 中殿筋に対し筋生検を実施する場合には深度について厳密な規定が必要なことが示唆された. そこで, より正確に深度を規定し, 筋生検法の再現性を検討したところ, ST fiberでは多少の誤差が認められたものの, 全体的にはこれまでの報告に比べて比較的高い再現性をのある成績が得られた. このことから, 馬の中殿筋において筋生検法を実施する場合, 深度に最も注意を払うべきである. しかしながら, 正確な深度規定が実施されても, 多少の誤差を考慮する必要があると考えられた.
  • 兼丸 卓美, 兼子 樹広, 吉原 豊彦, 長谷川 充弘, 富岡 義雄
    1984 年 1984 巻 21 号 p. 51-55
    発行日: 1984/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    幼騎10例の肺を病理組織学的に検索した. 日齢は生後1日齢から13日齢であった. 種類別ではサラブレッド種7例, アングロアラブ種3例, 性別では雄6例, 雌4例であった. 肺の病理組織学的検索の結果, 幼駒において流産胎仔で見られたと同様の羊水物質がみいだされた. 羊水物質は, 生後5日齢以上の症例における吸入性あるいは吸引性肺炎の限局性の像を惹起していた. また, この羊水物質は, 気管支から排出あるいは肺胞壁から吸収されるものと思われた.
  • 福永 昌夫, 和田 隆一, 鎌田 正信, 熊埜御堂 毅, 秋山 綽
    1984 年 1984 巻 21 号 p. 56-64
    発行日: 1984/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    馬ウイルス性動脈炎の清浄地においても安全に使用できるような不活化ワクチンを試作した. E. Derm細胞のローラーボトル培養 (培養面積840cm2) にmoi (multiplicity of infection) 0.6でBucyrus株ウイルスを接種し, 馬アルブミン0.2%添加199培地を維持液として25ml加え, 24時間培養してウイルス抗原を作成した. 培養液を8-10%のポリエチレングリコールで処理したところ, ウイルスは十分に濃縮され, 不要な蛋白は除去された. 0.1%ホルマリンによるウイルスの不活化所要時間を検討したところ, 6時間で完全に失活した. ホルマリンで48時間処理したウイルス抗原を4頭の実験馬に接種したところ, 馬に対する副作用は認められなかった. またウイルス抗原を2回接種することによって高い値の中和抗体が産生されたが, 接種間隔は2週よりも4週あけて実施した方が効果的であった.
  • 今川 浩, 和田 隆一, 鎌田 正信, 熊埜御堂 毅, 福永 昌夫, 平澤 澄
    1984 年 1984 巻 21 号 p. 65-71
    発行日: 1984/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    我が国の生産地において急性下痢を呈した子馬の糞から分離された馬ロタウイルスの病原性を調べるため, 2頭の新生子馬に馬ロタウイルスHO-5株を経口接種した. 腸管内容物からのウイルス回収および腸管における特異螢光抗原の検出によって2頭の接種子馬の感染が証明された. 接種子馬のうちの1頭は明瞭な下痢を起こした. このことから, 分離馬ロタウイルスHO-5株が新生子馬に下痢を起こし, 生産地で発生している子馬の下痢の重要な原因の一つであることが確められた. さらに, 空腸の絨毛上皮細胞および絨毛固有層の細網細胞が子馬における馬ロタウイルスの増殖のために最も重要な組織であることが分かった.
  • 和田 隆一, 今川 浩, 鎌田 正信, 福永 昌夫, 熊埜御堂 毅
    1984 年 1984 巻 21 号 p. 72-80
    発行日: 1984/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    馬ロタウイルスの経口接種によって発熱を呈した2頭の新生子馬を病理学的に調べた. 下痢ば, 接種後5日目に剖検された2号馬に顕著であったが, 同2日目に剖検された1号馬には認められなかった. 主な肉眼所見は小腸および大腸の粘膜の浮腫であった. 小腸の病理組織学的変化は絨毛の短小化と融合, 絨毛上皮細胞の剥脱による固有層の裸化および絨毛固有層におけるリンパ球の浸潤と組織球の増殖であった. 大腸では, 盲腸と大結腸において粘膜上皮細胞の変性と固有層へのリンパ球やプラズマ細胞の浸潤が認められた. 走査型電子顕微鏡による観察で空腸と回腸の一部の絨毛上皮細胞の微絨毛が減少ないし欠損していることが明らかにされた. さらに, これら上皮細胞の間隙から粘液粒が湧出しており, 大量の組織液が腸管腔へ移動していることが示唆された. 以上の成績から, 馬ロタウイルスの感染による子馬の下痢症は病理学的には急性カタール性腸炎に分類されるものであった.
  • 高鳥 浩介, 鎌田 正信, 福永 昌夫, 熊埜御堂 毅, 平澤 澄, 仁岸 正之, 高田 潔, 及川 正明
    1984 年 1984 巻 21 号 p. 81-87
    発行日: 1984/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    鼻出血で斃死した3頭の馬の真菌性喉のう炎病巣部から, Aspergillus nidulansの完全世代であるEmericella nidulansが分離された. 斃死馬はいずれも鼻出血を発症する1ヵ月前に膿性鼻漏を伴う鼻炎, 咽頭炎, 軽度の肺炎などの呼吸器病に罹患していた. 3例から分離された真菌はいずれも培養および形態学的検査において酷似しており, E. nidulansと同定された. 真菌性喉のう炎例は日本では極めてまれな疾病として見出されてきたが, 外国では一般的な疾病である. 今回の報告は日本における真菌性喉のう炎馬から分離されたE. nidulans同定の最初のものである.
  • 鎌田 正信, 和田 隆一, 福永 昌夫, 熊埜御堂 毅, 小田 隆範, 仙波 裕之, 大石 秀夫, 西原 克雄, 本間 州二
    1984 年 1984 巻 21 号 p. 88-94
    発行日: 1984/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    Klebsiella pneumoniaeに起因する子宮炎の抗生物質療法の指針を得るため, 生殖器感染症雌馬から分離された莢膜タイプ1型100株に対する60種類の抗生剤の最小阻止濃度 (MIC) を寒天希釈法によって決定した. すべての分離株はアミノ配糖体系, セファロスポリン系, ペプチド系, ニトロフラン系に属する17種類の抗生剤に対して, MIC90が3.13μg/ml以下という良好な感受性を示した. これらのうち, 4種類のアミノ配糖体系 (ゲンタマイシン, シソマイシン, トブラマイシン, ミクロノマイシン) および4種類のセファロスポリン系 (セフォタキシム, セフォテタン, セフティゾキシム, ラタモキセフ) 抗生剤はMIC90が0.39μg/ml以下で, 最も高い抗菌性を示した. これに対して, テトラサイクリン系, クロラムフェニコール系, ストレプトマイシンなどの抗生剤は100μg/mlの濃度でも供試株の90%以上の発育を阻止出来なかった. 結論として, 分離株に高い抗菌性を示したセファロスポリン系およびアミノ配糖体系抗生剤の使用がK. pneumoniae起因性子宮炎の治療に推奨される.
  • 鎌田 正信, 小田 隆範, 和田 隆一, 福永 昌夫, 熊埜御堂 毅
    1984 年 1984 巻 21 号 p. 95-99
    発行日: 1984/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    1980年から1983年にかけて採集した北海道日高地方の子宮炎および不妊雌馬の子宮頸管スワブの細菌学的検索を実施し, つぎのような成績を得た. Haemophilus equigenitalis (Taylorella equigenitalis) は1980年の繁殖シーズン中には15.5%の雌馬から分離されたが, 1981年以降では馬伝染性子宮炎様症状を呈する雌馬の大部分から分離されなかった. 一方, Klebsiella pneumoniaeは1982年には45例中17.8%から, 1983年には41例中43.9%から分離された. 分離されたすべてのK. pneumoniaeは生化学的および血清学的性状から, 莢膜タイプ1型と同定された. この1型はH. equigenitalisと同様に馬の生殖器内の正常細菌叢のメンバーではなく, 交配時に流行性の子宮炎を起こすので, 早急に本菌の伝播を防ぐ適当な処置が必要であろう.
  • 青木 修, 徳力 幹彦, 倉川 佳之, 幡谷 正明, 北 昂
    1984 年 1984 巻 21 号 p. 100-104
    発行日: 1984/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    馬の歩行運動における棘上筋と棘下筋の筋電図を調べた. 筋電図と蹄のひずみの変化はテレメーターで送信し, 毎秒200コマで撮影した16mmフィルムをこれらの記録と同期させた. その結果, 棘上筋と棘下筋は, 非騎乗ないし騎乗の如何を問わず, 常歩, 速歩, 駈歩のスタンス期前半から中頃にかけて筋放電することが明らかになった.
  • 佐藤 儀平, 中岡 祐司, 石黒 直隆, 大石 秀夫, 仙波 裕之, 加藤 秀樹, 本間 州二, 長瀬 昇
    1984 年 1984 巻 21 号 p. 105-109
    発行日: 1984/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    1983年に北海道日高地方の10牧場において, サルモネラ症に罹患して回復または斃死した1-2歳のサラブレッド子馬から分離された12株のS. typhimuriumはすべてコペンハーゲン型で, 7種の抗菌剤に対して5種の耐性パターンを示し, Duguidら (1975) の方法で11株は26e, 1株は26ehの生物型に別れた. しかし, これら12株は一様な3種のプラスミド (58, 5, 3.8メガダルトン) を保有していた.
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