寒天ゲル内沈降反応を使用して, 本ウイルスの疫学調査を大規模に集中管理された競走馬群において実施した。1982年10月から翌年3月まで, 継続的に在厩した競走馬の沈降抗体のレベルを比較したところ, 736頭中292頭 (39.7%) で有意の上昇が観察された。これらのうち, 発熱と抗体の上昇によりEHV-1感染があったと診断されたのは13頭 (1.8%) であった。さらに, 1983年10月から翌年3月までの調査では, 646頭中314頭 (48.6%) が抗体レベルの上昇を示したが, 臨床的に発熱を伴なう感染を受けていたのは8頭 (1.2%) のみであった。これらのことから, 競走馬におけるEHV-1の自然感染で不顕性感染が多いことが明らかとなった。
EHV-1感染により発熱を示し, 有意な抗体レベルの上昇が観察された153頭について発熱時の沈降抗体レベルを調べたところ, -が61頭 (39.9%), +が83頭 (54.2%), ++が9頭 (5.9%) であった。このことから, ++以上の沈降抗体を保有している馬はEHV-1感染により発熱を免れる可能性が高いと推測された。
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