馬の血漿リポタンパク構成成分と構成比を明らかにするため, 密度勾配遠心法による分析によって種牡馬19頭 (6-20歳), 繁殖牝馬16頭 (5-20歳), 2歳牡馬および2歳牝馬の各6頭を用いて雌雄ならびに成馬と若馬の間における年齢構成比を調べた. その結果, 密度勾配遠心法によるリポタンパクは, 高比重側から, HDL, VLDLおよびCMの3つの分画に分離された.
雌雄ならびに成馬と若馬の間の年齢構成比を調べたところ,
1) 血漿脂質では, 牡馬より牝馬の方が総コレステロール (TC) は有意に高かった.
2) 高密度リポタンパク (HDL) は最大の分画で, その構成脂質はPLが約65%, TCが約30%をしめ, 牡馬及び牝馬でほぼ一定していた.
3) 低密度リポタンパク (LDL) の構成脂質のうちTC, リン脂質 (PL) および総脂質 (TL) は牡馬より牝馬の方が有意に高値を示した. 種牡馬では, 繁殖牝馬に比較して, LDL中のPL/TC比の有意な低値 (0.59), TC比率の有意な高値 (57.6%) が認められた.
4) 超低密度リポタンバクおよびカイロミクロン (VLDLおよびCM) のPLおよびTC濃度は各約10%とほぼ一定で, この分画はTGを主体とするものと判断された.
したがって, 牝馬で, 牡馬より血漿TCが高いのは, 牝馬でLDL分画中TC濃度の増大によると考えられた. また, 種牡馬では, LDLのTLは低いものの, TC比率の高値, PL/TCの低値を示すことから, LDLの構成になんらかの変動要因があったものと考えられた.
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