日本中央競馬会競走馬総合研究所報告
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最新号
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  • 藤川 洋史, 朝井 洋, 水野 豊香, 山本 修
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 1-4
    発行日: 1993/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    北海道日高地方の西部, 中部, 東部地区に分布する25の軽種馬生産牧場の放牧地牧草成分のうち, 子馬の骨疾患に関連するとされているカルシウム, 銅および亜鉛の各含有率について調査した。同時にこれらの牧場で1990年に生産された子馬278頭を対象とし球節部骨端症の発症状況を調査した。
    その結果, 放牧地牧草中のカルシウム, 銅および亜鉛の平均含有率はそれぞれ0.363%, 7.08ppm, 26.4ppmでありNRC成分表に比較し, いずれも低い傾向が認められた。また, 中部地区の銅含有率は他め2地区に比べ低かった。
    球節部骨端症は調査対象馬の23.0% (64頭) に認められ, 発症時期は100-200日齢であった。放牧地牧草成分と骨端症発症率との関係について検討したところ銅含有率の低い放牧地 (6.0ppm未満) を持つ牧場で生産された子馬の球節部骨端症発症率は34.3%と高率であることが認められたが, カルシウムおよび亜鉛含有率には同様の関係は認められなかった。
  • 山野辺 啓, 平賀 敦, 久保 勝義
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 5-8
    発行日: 1993/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は, ウォーミングアップ (以下W-upと略す) 中の低い強度の運動でも日々の心拍数を頻繁に測定することにより, トレーニング効果の評価を行えるかどうかを検討することであった。供試馬はサラブレッド種3歳5頭 (雄2頭・雌3頭) を用いた。供試馬は運動強度を徐々に増加しながら, 約4ヵ月間, 週6日のトレーニングを実施した。W-upは毎日, 分速約400mの速度で1,250m行うように騎乗者に指示し, そのときの心拍数を測定した。W-up時の心拍数は日々のW-up速度のバラツキによる影響を少なくするために5日間の移動平均値とした。W-up時の心拍数はトレーニング開始後約60日までは減少する傾向を示したが, その後はほぼ横ばいになった。また, トレーニング開始前とトレーニング期間中2週間ごとに行った規定運動負荷試験で算出されたV200値とV175値 (心拍数が200および175拍/分の時の速度) を用いてトレーニング効果の評価を行った。両者ともトレーニング開始後約60日までは増加する傾向を示したが, その後はほぼ横ばいになった。規定運動負荷試験により算出されたV200値と規定運動負荷試験を行った日のW-up時の心拍数は有意な負の相関を示した (r=0.765, P<0.001)。このことから, W-up程度の低い強度の運動でも, 日々の心拍数を測定することにより, トレーニング効果の評価を行えることが示唆された。
  • 高井 伸二, 安斉 了, 佐々木 由香子, 椿 志郎, 鎌田 正信
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 9-14
    発行日: 1993/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    12頭感染子馬から分離されたRhodococcus equi 13菌株についてプラスミドDNAを検索した。JRA-11株を除く12株からプラスミドが分離され, その内訳は10株が85kbの病原性プラスミドで, 2株は90kbの病原性プラスミドであった。全ての病原性プラスミド保有株は15-17kDaの菌体抗原を発現し, マウスに対して強毒であった。病原性プラスミドpREAT 701プローブを用いてサザンハイブリダイゼーションを行ったところ, 12株全てが強い反応を示し, 遺伝学的にも病原性プラスミドと判定された。本症感染子馬からの臨床分離株の殆どが強毒株であったという今回の成績は, 子馬のR. equiによる自然感染が, 弱毒株ではなく強毒株によってのみ引き起こされるであろうことを示唆している。
  • 山口 守, Alissa WINNARD, 竹花 一成, Michio MUGURUMA, 山野 秀二, Lu AIPING, Jerome ...
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 15-25
    発行日: 1993/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    サラブレッド種の横行胸筋, 中臀筋, 橈側手根伸筋, 腓腹筋, 下行胸筋, 内肋間筋, 頸長筋, 横隔膜および咬筋の骨格筋9ヵ所から骨格筋ミオシンを分離し, 速筋および遅筋の分布とミオシンのL鎖とH鎖のサブユニットとの関連性を検討した。
    その結果, 橈側手根伸筋と腓腹筋ミオシンは, H鎖 (HCf:f=速筋) 90%以上およびL鎖 (LC1f+LC2f:LC1=21,000, LC2=19,000ダルトン) 100%で速筋性分子構成が優勢であった。下行胸筋と内肋間筋ミオシンは, 速筋性L鎖 (LC1f&LC2f) が遅筋性L鎖 (LC1s&LC2s:S=遅筋) よりやや優勢であるが, 速筋 (HCf) および遅筋性 (HCs) H鎖がほぼ同等量含まれていることより中間型に分類された。咬筋のL鎖およびH鎖は, ともに遅筋性のミオシン分子構成をもち, 典型的な遅筋に分類された。頸長筋と横隔膜ミオシンは, ほぼ同等量の速筋および遅筋性L鎖を含み中間型に分類されたが, H鎖は遅筋性のみであることより特殊な分子構成をなしているものとみなされた。内肋間筋, 橈側手根伸筋および横隔膜筋は, 遅筋性L鎖の異性体 (LC1s) を含んでいた。内肋間筋と下行胸筋は, ほぼ同等量の速筋および遅筋性H鎖を含んでいた。横行胸筋と中腎筋はLC1fとLC2fサブユニットが優勢で, 計量可能なLC3f (LC3=17000ダルトン) が存在することや, 速筋性H鎖が100%存在することより速筋に分類された。
    以上の成績より, 馬の骨格筋ミオシンの分布には, 一個体間に多様性がある事が明らかとなった。
  • 甲斐 眞, 久保 勝義
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 26-29
    発行日: 1993/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    健康なアングロアラブ種, 1頭を使用し, スターティングゲートから発走時の呼吸曲線と前肢の加速度曲線を同時記録し, 高速度16mmフィルム撮影をするとともに, 完歩を蹄跡から測定し, 呼吸と歩法との関係を検討した。その結果, 馬はスターティングゲートが開くと同時にゲート内で, 呼気相で素早く後肢を後方に移動し, 体勢を低くして発進態勢を取り, それに続く吸気相で止息して発進し, 数秒間呼吸を停止した。そして, 呼吸が出現すると同時に完歩と同期した。呼吸を停止している間に, 歩法として, 回転襲歩もしくは手前変換して交叉襲歩を取った。また, 呼吸の出現時期と手前変換時期とは一致しなかった。以上のことから, 馬は急発走のような最大努力時には呼吸を一時的に停止し, この呼吸停止は回転襲歩や交叉襲歩などの歩法と無関係であり, さらに, 呼吸の出現と手前変換とも無関係であると考えられた。
  • 山内 龍洋, 及川 正明, 平賀 敦
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 30-32
    発行日: 1993/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    臨床的に健康なサラブレッド種競走馬377頭を用いて, 種々な区間のトラック輸送が末梢血中の白血球数にどのような影響を及ぼすかについて観察した。その結果, サラブレッド種競走馬の生理基準値と比較して, 輸送後の白血球数, とくに好中球数は増加すること, 輸送距離が長くなる程, 白血球数が増加傾向を示すことが判明した。これら白血球増多は輸送直後をピークとして, 以後減少した。
    白血球, とくに好中球が輸送距離の増大と共に増す傾向にあったことから輸送ストレスに起因したストレス性好中球増多であったことが示唆された。
  • 福永 昌夫, 今川 浩, 和田 隆一, 兼丸 卓美, 鎌田 正信
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 33-36
    発行日: 1993/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    馬ウイルス性動脈炎 (EVA) の清浄国で安全に検査できる血清反応として, 不活化抗原を用いた補体結合 (CF) 試験の開発を試みた。抗原の不活化はそれぞれ紫外線照射, 50%エーテル, 70℃加熱, 0.1%ホルマリンで実施した。抗原はウイルス感染価においてエーテルとホルマリンで効率良く不活化されたが, 紫外線照射とホルマリン処理はCF価へ何等影響を及ぼさなかった。エーテル処理はCF価を容易に低減させ, 紫外線照射のウイルス感染価への作用は不確実であった。加熱処理はウイルスを充分に不活化しないばかりか, CF価も低下させた。従って, 以降のCF試験にはホルマリン不活化抗原を用いて実験した。
    不活化抗原を用いたCF試験の評価を行うため, 中和試験においてEVA陽性の6頭の馬血清について試験した。中和抗体価1:128-1:256を有する3頭の血清はCF抗体価1:4-1:8を示したが, 中和抗体価1:64以下の3頭の血清はCF反応で陰性であった。
  • 太齊 雅幸, 高島 郁夫, 苅和 宏明, 橋本 信夫, 近藤 高志, 杉浦 健夫, 鎌田 正信
    1993 年 1993 巻 30 号 p. 37-42
    発行日: 1993/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    日本の馬におけるライム病ボレリア感染症の血清学的調査を螢光抗体 (IFA) 法と螢光酵素抗体 (ELISA) 法により実施した。北海道の14支庁の馬血清 (主として重種) 700例のうち, IFA抗体陽性 (≧:312) の検体は32例 (4.6%) であった。14支庁のうち釧路, 十勝, 網走と上川の4支庁において他の支庁と比べ高い陽性率が得られた。これらの4支庁の血清について, 螢光ELISAにより抗体価を測定し, 相対螢光率 (%RS) として表現した。螢光ELISAにおける%RS値とIFA抗体価を各血清について比較し, IFA抗体価1:32と%RS値2を各々の試験法のカットオフ値とした。日本各地の軽種馬血清549例のうち, 14例 (2.6%) が螢光ELISAによリライム病ボレリア感染陽性と判定された。
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